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原水協通信

毎月発行している日本原水協の機関誌です。国内外の反核平和運動についての情報が満載です。 日本原水協のウェブサイト→ http://www.antiatom.org/

「核兵器の全面禁止を!」

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吉井英勝元衆議院議員に聞くー核兵器と原発 私たちのくらし

110411_吉井英勝さん

吉井英勝元衆議院議員

核兵器と原発、私たちのくらしについて、吉井英勝元衆議院議員に聞きました。


 

Q1:「原発は廃炉にし、自然エネルギーへ転換を」と主張すると「採算が合わないのでは」という反論も聞かれます。実際のところはどうなのでしょうか。

A1: 政府はかつて原発の発電コストが1キロワット時当たり5.9円で、石炭火力の同6.5円より安いとしてきましたが、電力会社でさえ「現実的でない」としてきました。実際に、関西電力の「原子力発電の原価」は、2013年から既に8.9円/kw時と表示しています。東京電力福島第一原発事故の賠償費用等が10兆円になると9.3円/kw時、20兆円になると10.2/kw時とし、すでに火力発電コストより高くなっています。

経産省が吉井英勝元衆議院議員に提出した資料(2011年7月27日)で原発発電コストを試算すると、これまで発電に直接要したコスト(建設費、燃料費、運転維持管理費等)は、原発建設費核燃料費、運転維持管理コストを合わせて、公租公課や寄付金等を除いても32兆4400億円になります。これに、バックエンド費用の使用済み燃料再処理費用、放射性廃棄物処理・処分費用MOX燃料加工費は、再処理工場解体など今後発生する費用を別にしても19兆円が見込まれます。

 原発には、これまで国から一般会計や特別会計を合わせ14兆4161億円が研究・開発・地元対策費に使われてきました。これからの「再稼働のための安全対策費」や「社会的費用」を別にしても、これまで原発に使ったお金は約66兆円に上ります。

これを1966年に電気を送りだしてから3・11福島事故前〈報告では2009年度まで〉の間に生み出した原発の総発電電力量は、7兆1195億kw時ですから、66兆円÷7兆1195億kw時=約9円/kw時を超えるものとなり、火力発電と較べて安くはないのが事実です。

原発と自然エネルギー発電を較べると、建設時のコストに開きがあっても、太陽のエネルギーを起源とする自然エネルギーには燃料費がいりません。二酸化炭素排出や放射能汚染の心配もありません。数年単位でのコスト比較より、人類社会の持続可能な将来の道筋を考えることが重要です。


Q2:電力会社や日本政府はどうして原発再稼働や輸出にこだわるのでしょうか。

A2:何故、原発再稼働に走るのでしょうか。理由は、電力、原発メーカー、ゼネコン、鉄鋼など素材メーカー、メガバンクなど日本財界の中枢部が構成している「原発利益共同体」(原子力産業協会)が、原発1基輸出で5000億円、送電網や変電設備などインフラ整備含めて数兆円の巨大ビジネスを狙っていることにあります。この原発輸出が安倍内閣の「成長戦略」の大きな柱になっています。

この原発輸出は、自動車などの輸出と違って、輸出先で原発を建設している間に、その国の若者を日本に招いて、国内の原発で実際に稼働する実習や定期点検の時にどの箇所をどのように点検するか、その時の検査機器をどのように扱うかなどを学び取る多数の技術者養成が必要です。つまり原発再稼働と原発輸出は一体不可分の関係にあります。もちろん、日本国内で稼働が認められない原発を海外に売り込むことは困難になりますから、再稼働にむけて「新規制基準」に適合していると「審査書」が認められたということを表に出して強行を図ってくると思われます。


Q3:核兵器と原発は「コインの表と裏」の関係と言われますが、どういうことでしょうか。

A3:1939年にハンス・ベーテが「恒星におけるエネルギー生成」という研究で、水素からヘリウムへの核融合反応が起こり得る可能性を分析して、太陽のエネルギー源は核融合反応であることを発見しました。これに先立って、1938年にオットー・ハーンシュトラスマンマイトナー女史らが天然ウランに低速中性子を照射して、反応生成物にバリウムの同位体を見出し、核分裂反応であることを発見しました。

これらの価値ある発見であった「核分裂」「核融合」の物理現象を、第二次世界大戦の時期で、ナチスが原爆開発にとりくみ始めているという情報をもとに、核兵器開発へ進んでしまい、最初に原爆を開発したアメリカはナチス・ドイツが崩壊した後なのに、ウランを使って広島で14万人、プルトニウムを使って長崎で7万人を超える人々を原爆で殺害しました。

核兵器という立場からは放射性廃棄物まで有用な兵器の一部になります。この核兵器技術を転用して開発した商業用原発でしたから、通常の商品開発のように、商品化後の廃棄物処理・処分まで見通した「製品アセスメント」の発想はなく、原発は「トイレなきマンション」とよばれながら増設され続けました。

 地球上で核分裂を制御することが極めて難しいということが、東京電力福島第一原発事故でも、これに先立つスリーマイル島原発事故やチェルノブイリ原発事故など世界で多数の核事故によって明らかになっています。

 核融合反応でつくられた太陽の光や熱は、いろいろの形で自然エネルギーを人類に送り続けています。しかし、地球上でウランの核分裂で、あるいはウランとプルトニウムを循環させて利用する「軽水炉」と呼ばれる「原発」では、使用済み核燃料の処理・処分の技術はなく、放射能汚染の脅威から人類を守ることはできません

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