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原水協通信

毎月発行している日本原水協の機関誌です。国内外の反核平和運動についての情報が満載です。 日本原水協のウェブサイト→ http://www.antiatom.org/

「核兵器の全面禁止を!」

映画『オッペンハイマー』に見る広島と長崎

アメリカ/平和・軍縮・共通の安全保障キャンペーン議長のジョゼフ・ガーソンさんが、被災70年2024年3・1ビキニデーの後に招かれた映画『オッペンハイマー』についてのパネル討論会への寄稿を日本原水協の高草木博代表理事が日本語に翻訳しました。

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映画『オッペンハイマー』に見る広島と長崎ジョゼフ・ガーソン

映画『オッペンハイマー』(クリストファー・ノーラン監督)の批評が表れ始めて以来、ひとつの疑問が浮かび上がっていました。なぜ広島と長崎への原爆投下が引き起こした大規模な破壊と犠牲の映像が表れてこないのでしょうか? アカデミー賞授賞式の数日前、その質問への答えを知る機会を得ることができました。私は、ちょうど日本から戻った直後のことです。日本では広島・長崎の被爆者と一緒に行進し、1954年3月1日のビキニ水爆実験「ブラボー」の70周年行事に参加しました。その爆弾は広島原爆の1000倍を上回る力を持っていました。それは、ビキニ環礁から125マイル(180km)離れたロンゲラップ環礁のほとんどすべての島民の命を奪い、あるいは被ばくさせました。また、日本の漁船員の命を奪い、1000隻を上回る漁船を放射能で汚染し、日本の食料供給の少なからぬ部分を汚しました。そのなかで1954年から55年にかけてつづいた核兵器の廃絶を求める署名運動は、3150万余の署名を日本の全有権者の65%に上る人たちから集め、世界で最初の、おそらくもっとも影響力の大きな、核兵器のない世界をめざす社会的運動を生み出したのです。

友人であり私の団体(訳注:平和・軍縮・共通の安全保障キャンペーン)の委員でもあるハーバード大学のエレーヌ・スキャリー教授が、映画『オッペンハイマー』の元になった本『アメリカのプロメテウス:ロバート・J・オッペンハイマーの勝利と悲劇』の共著者カイ・バードと一緒に開催するパネル討論会に来るよう私を誘ってくれたとき、私の心には、これらの人びととその歴史とがすでに骨の髄まで固く刻まれていました。カイと彼の共著者の故マーティン・シャーウィンは、私の長年の知己でした。カイは寛大で謙虚な人柄で、学者としても伝記作家としてもすぐれた人物です。パネル討論の前に短時間、言葉を交わし、そこで彼が日曜日にアカデミー賞、オスカーを受けることを知り、喜びました。 カイは、自分の発言で、映画が大部分、彼の本を下敷きにし、セリフも彼とマーティンの著作からそのまま取っていたと言っていました。ハリウッド映画では大変稀なことです。撮影が始まる前に200ページにわたる映画の脚本に目を通すためにカイに与えられたのは2、3時間だったそうです。そこで彼が見つけた間違いは1か所だけで、ノーラン監督はそれを訂正したと言っていました。カイも、もうひとりのパネリストのハーバード大の科学史のピーター・ギャリスンもオッペンハイマーについて、(物理学者としても他の点でも)燦然と輝き、複雑で、情緒的にはひ弱で、もし第二次世界大戦とマンハッタン・プロジェクトが割って入ってこなかったら、1935年に始まったブラックホールについての彼の仕事の方がもっとよく知られていたような男だと描き出していました。 質疑の時間には、私は、日本で知ったことや自分がおこなったことを簡潔に話した後、カイに、この映画の監督のノーランが、オッペンハイマーの爆弾が引き起こしたものを観客にさらけ出すことについて真剣に話し合ったか?と質問してみました。カイの答えは思慮深いもので、映画の最後の部分のもっとも気がかりないくつかの映像について解明するものでした。

カイの直接の返事は「ノー」でした。そのような討論はおこなわれなかったと。カイは前に、映画と原本の劇的な共通項は原子力委員会の聴聞会であり、権力の座にある者たちはそこで世界の最先端の科学者であり影響力の大きい知識人としてのオッペンハイマーの役割を破壊しようとしたのだと説明していました。エドワード・テラー、原子力委員会のルイス・ストローズ(訳注:委員長)、そしてペンタゴン内の強大な力が、オッピー(訳注:オッペンハイマーの愛称)が水爆開発に反対したことに激怒して反応しました。カイが説明したのは、映画も本も基本的にはオッペンハイマーの伝記であり、エレーヌが言ったように映画は「オッペンハイマーの心のなかで何が起こっていたかという視点から話を展開」していたのであって、それとは別のもっと広い視野から展開したのではない、ということでした。 カイは、映画のなかで何か所か、ノーラン監督が原爆による惨害とオッペンハイマーの道義的な危惧について微妙に示唆していたことを認めていました。この映画での最初の場面はトリニティ実験の直後で、ついで原爆投下から3か月後、自分の「装置」が投下された当時、日本が降伏の瀬戸際であったことをオッペンハイマーが知った場面です。 ある個所で、オッペンハイマーがトリニティ実験の直後に、「可哀そうな人びと」とつぶやく場面が出てきます。原爆によって殺され、壊滅させられることがわかっている無辜の日本の市民たちについてのつぶやきです。同時にカイは、オッペンハイマーが軍高官と会い、いかに効果的に原爆を爆発させるか(高度など)などを説明していたことにも注目していました。 焼けただれた体、手から皮膚が垂れ下がった人びと、顔から飛び出した眼球、溜池で溺れている人びとなどを映す代わりに、ノーランはオッペンハイマーが惨劇を伝える新聞の切り抜きを見入っているとき、その顔が自分の爆弾が生み出したものへの恐怖でゆがむ様子を映しています。彼がロスアラモスの集会場で聴衆に話すとき、我々がオッペンハイマーの想像からもっとも心穏やかでないイメージを受け取るのは、原爆の熱で少女の顔が溶けていくシーンです。実際、その顔はノーランの娘の顔です。エレーヌ・スキャリーは後ほど、「これは、日本人の顔を醜くすることによって元の危害を再現することのないようにとの、ノーランにとってまさに倫理的な決断だった」と説明しています。 そしてノーランは、オッペンハイマーがトルーマン大統領やバーンズ国務長官と会い、彼ら全員が手を汚しているという真実を突き付けたことで、彼の罪の意識を描き出しています。エレーヌは、この部分の討論を終える前にこう指摘しました。米国の文化では「観客が負傷した人たちへの同情を求められるような映画のシーンを見ることに抵抗がある。日本では、たとえ幼い子どもでも、原爆がもたらした人的破壊の恐ろしい写真や映像を見せる、と。さらに彼女は付け加えて、こうも説明した: 私と一緒にケンブリッジの公立図書館に額のついた広島・長崎の被爆と被爆者のポスターを展示することを企画した。私たちが展示をした翌朝、図書館に戻ると、私たちの許可もなく、知らないうちにポスターの配置がすっかり変えられていた。死者や負傷者の写真を含むポスターはすべて外されていたのだ、と。 パネル討論会が終わった後、私と妻はもう一度その映画を観ることを決意しました。すでに映画を鑑賞し、アカデミー賞の受賞の様子も観て私と同じ問題を感じた人たちは、私たちと同じことをしたくなるかもしれません。それで何も起こらずとも、人類の生存を脅かす実存的な核の危機を除去する我々の決意がさらに固いものとなることは間違いありません。

第五福竜丸無線長の久保山愛吉さんのお墓がある静岡県焼津市の弘徳院に向けて行進するガーソンさん(左から2人目、2024年3月1日)

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「国際情報資料52」発刊しました

「国際情報資料52」

2022年、ロシアのウクライナ侵攻と引き続く戦争は世界に暗い影を投げかけ、とりわけ、ロシアのプーチン大統領による核兵器使用の威嚇は、人類を核戦争の瀬戸際に立たせています。アメリカのバイデン大統領も、核抑止力強化と先制不使用宣言の拒否で対抗する構えです。さらに、この戦争に乗じて、世界各国と日本で、軍事同盟強化、大軍拡、軍事費の増大が進められ、世界は核破局/戦争に行くのか、核廃絶/平和の方向へ行くのか岐路に立っています。今号に掲載されているグテーレス国連事務総長の発言は、この事態にきびしい警告を発しています。

しかし、国連憲章のじゅうりんや核兵器の使用・威嚇を許してはならないと、世界の圧倒的多数の国と市民社会は立ち上がっています。今号は、2022年の重要な核軍縮をめぐる会議である、6月の核兵器禁止条約第1回締約国会議、8月の第10回NPT再検討会議での議論、採択文書を掲載しました。

これらの会議で大きなたたかいがおこなわれました。第1回締約国会議は核廃絶への道筋を示したウィーン宣言、ウィーン行動計画を採択し、核廃絶への世界の結束をつくりました。ドイツやオランダなどオブザーバー参加したNATO加盟国の発言は必読です。8月に開かれた第10回NPT再検討会議では、核兵器国が核兵器をなくすとの義務や合意の履行に動かなかったことに、厳しい批判が集まりました。この危機の打開に向け、圧倒的多数の国と市民社会のたたかいは、核廃絶への大きなうねりをつくっています。

日本の岸田首相の発言、日本でも話題になりNATO加盟国で実践されている核共有についての論文も掲載しています。学習を力に、2023年の活動に大きく足を踏み出しましょう。

B5版74ページ、頒価800円(送料実費)。

ご注文・お問い合わせは、あなたの街の原水協まで。

【「国際情報資料52」内容紹介】

*第10回NPT再検討会議【各国政府・国際機関代表の発言】国連、オーストリア、非同盟、新アジェンダ連合、マーシャル諸島、人道の声明、アメリカ、日本/成果文書(最終案)/最終案に対する各国政府の意見表明: 新アジェンダ連合、核兵器禁止条約締約国、マレーシア、オーストリア、カザフスタン・キリバス/日本原水協の声明

*第1回締約国会議【各国政府・国際機関代表の発言】議長(オーストリア)、国連、アイルランド、マレーシア、インドネシア、ドイツ、スイス、ノルウェー、オランダ/日本原水協の声明・第6条の履行についての声明/ウィーン宣言/ウィーン行動計画

*論文「核共有」ーベルント・ハーンフェルド/国際反核法律家協会

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学習パンフレット「手をつなごう 核兵器のない世界と未来へ」完成!

核兵器のない世界へ向けて、核兵器禁止条約に参加する日本の実現を国民的に働きかける学習パンフレットが完成しました。

いま、尖閣列島、南シナ海、台湾問題での緊張が高まっています。核兵器を持った国同士の軍事対決がエスカレートした結果、核兵器の使用につながりかねません。唯一の戦争被爆国である日本がアメリカにも中国にも言うべきことを言い、アジアと世界の平和と安全に役割を果たすためにも、核兵器禁止条約に参加することが求められています。

このパンフレットは、核兵器禁止条約発効の意義、核兵器のない世界の展望、運動の役割とともに、「核兵器で平和は守れない」「『核の傘』依存は危険」と「核抑止力」論の誤りに切り込んでいます。

核兵器禁止条約への日本政府の署名・批准を求める署名をひろげる大きな力になる内容です。ぜひお読みください。

「手をつなごう 核兵器のない世界と未来へ」(つなごうパンフ)【体裁】B5版24ページ・オールカラー【発行】原水爆禁止日本協議会【頒価】250円(税込・送料別)ご注文は、あなたの街の原水協まで

2020年の世界の軍事支出、約2兆ドルに上昇

SIPRI(ストックホルム国際平和研究所) プレスリリース2021年4月26日

地域ごとの軍事支出額推移(1988–2020)

(ストックホルム、2021年4月26日)ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が本日発表した新しいデータによると、昨年の世界の軍事費総額は、2019年から実質2.6%増の1兆9810億ドル(約214兆円)に上った。2020年の5大支出国は、米国、中国、インド、ロシア、英国で、合わせて世界の軍事費の62%を占めた。中国の軍事費は26年連続で増加した。

パンデミックの初年に軍事支出は増加

主にコロナウイルスパンデミックの経済的影響により世界の国内総生産(GDP)が4.4%縮小したこの年(国際通貨基金による2020年10月の予測)に、世界の軍事費は2.6%増加した。その結果、GDPに占める軍事費の割合(軍事負担)は、2019年の2.2%から2020年には世界平均で2.4%に達した。これは、軍事費負担の前年比増加率としては、2009年の世界金融・経済危機以降最大である。

世界的に軍事費が増加したにもかかわらず、チリや韓国のように、予定していた軍事費の一部をパンデミック対応にはっきりと振り替えた国もある。また、ブラジルやロシアなどいくつかの国では、2020年の当初軍事予算を大幅に下回る支出となっている。

SIPRI武器・軍事費プログラム研究員であるディエゴ・ロペス・ダ・シルバ博士は、「パンデミックが2020年の世界の軍事費に大きな影響を与えなかったことは、ある程度確実に言える」と述べている。「各国がパンデミックの2年目もこのレベルの軍事費を維持するかどうかは、まだわからない」。

米国の軍事費の大幅増加は2020年も継続

2020年の米国の軍事支出は推定7780億ドルに達し、2019年に比べて4.4%の増加となった。世界最大の軍事費支出国である米国は、2020年の軍事費総額の39%を占めた。米国の軍事費は、7年間の継続的な削減から転じて、3年連続の増加となっている。

SIPRIの武器・軍事費プログラム研究員であるアレクサンドラ・マークスタイナーはこう述べている。「最近の米国の軍事費の増加は、主に研究開発への多額の投資と、米国の核兵器の近代化や大規模な武器調達などのいくつかの長期的なプロジェクトに起因すると考えられる。これは、中国やロシアなどの戦略的競合国からの脅威とみなしているものへの懸念の高まりや、トランプ政権が弱体化したとみなした米軍の強化を目指したことを反映している」。

中国の軍事費、26年連続で増加

世界第2位である中国の軍事費は、2020年には合計2520億ドルに達したと推定される。これは、2019年に比べて1.9%増、2011年から20年までの10年間に比べて76%の増加となる。中国の支出は26年連続で増加しており、これはSIPRI軍事費データベースに登録されている国の中で、連続的増加としては最長である。

「中国は、昨年のGDPがプラス成長だったことから、世界の主要な軍事支出国の中で唯一、2020年に軍事費の増加にもかかわらず(支出全体に占める)軍事的負担割合が増えていない国として際立っている」とSIPRI上級研究員のナン・ティアン博士は述べている。中国の支出が継続的に増加しているのは、他の主要な軍事大国に追いつきたいという表明済みの願望に沿った、同国の長期的な軍事近代化と拡張計画によるものでもある。」

経済の低迷により、支出目標をクリアするNATO加盟国が増加

北大西洋条約機構(NATO)のほぼすべての加盟国で、2020年に軍事的負担率は増加した。その結果、NATO加盟国のうち、同盟のガイドライン的支出目標である「GDPの2%以上」を軍事費に費やした国は、2019年の9か国に対し、12か国となった。例えば、世界で8番目に多く軍事費を支出しているフランスは、2009年以来初めて2%の基準値を超えた。

ロペス・ダ・シルバ研究員は、「2020年には、軍事費をGDPの2%以上支出したNATO加盟国の数が増えたが、同盟の支出目標を達成するための意図的な決定というよりも、パンデミックによる経済的な影響の方が大きかった国々だからではないか」と述べている。

その他の注目すべき動き

・ロシアの軍事費は、2020年に2.5%増加し、617億ドルに達した。これは2年連続の増加となった。とはいえ、2020年のロシアの実際の軍事費は当初の軍事予算を6.6%下回り、例年よりもその減少額は大きかった。

・総額592億ドルの英国は、2020年第5位の支出国となった。英国の軍事費は2019年に比べて2.9%増加したが、2011年に比べると4.2%減少している。ドイツは5.2%増の528億ドルとなり、2020年の支出額は第7位となった。ドイツの軍事費は、2011年に比べて28%増加している。ヨーロッパ全体の軍事費は、2020年に4.0%増加した。

・アジア・オセアニア地域では、中国に続いてインド(729億ドル)、日本(491億ドル)、韓国(457億ドル)、オーストラリア(275億ドル)が最大の軍事費支出国となっている。4か国とも、2019年から2020年にかけて、また2011年から20年の10年間で軍事費を増やしている。

・サハラ以南のアフリカにおける軍事費は、2020年に3.4%増加し、185億ドルに達した。支出が最も増加したのは、サヘル地域のチャド(31%増)、マリ(22%増)、モーリタニア(23%増)、ナイジェリア(29%増)のほか、ウガンダ(46%増)だった。

・SIPRIが支出額を把握している中東11か国の軍事費を合計すると、2020年には6.5%減の1,430億ドルとなった。

・石油輸出国機構(OPEC)加盟国のうち、SIPRIが数値を把握している9か国のうち8か国が2020年に軍事費を削減した。アンゴラの支出は12%減、サウジアラビアは10%減、クウェートは5.9%減となった。非OPECの石油輸出国であるバーレーンも、9.8%支出を削減した。

・2020年の軍事支出額上位15か国のうち、軍事的負担率の増加が最も大きかったのは、サウジアラビア(0.6ポイント増)、ロシア(0.5ポイント増)、イスラエル(0.4ポイント増)、米国(0.3ポイント増)だった。

(以下、出典などの説明省略)

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核保有国・依存国とのたたかいに必携 『国際情報資料51』

2021年1月22日、核兵器禁止条約が発効しました。核兵器は国際法により違法とされ、保有、実験、使用および使用の威嚇を含む、核兵器に関するあらゆる行為が禁止されることになりました。長年、核兵器廃絶を求めてきた被爆者をはじめ、世界の反核平和運動の大きな成果です。

昨年の年明けから世界を襲った新型コロナ禍で、大きなたたかいの場になろうとしていたNPT再検討会議は延期されましたが、国連や各国政府は、核兵器廃絶国際デー行事や国連総会で、人類の生存を脅かす核兵器をめぐる危機に警告を発し、緊急に核兵器廃絶にとりくむよう呼びかけました。

本号には、国連核兵器全面廃絶デー・ハイレベル会合と国連総会第1委員会での主要な国々の発言と決議を収録しています。禁止条約発効への機運が高まるなか、国連と多くの国が核抑止力論を批判し、核保有国・同盟国に対し、NPT第6条の義務や過去の再検討会議の合意の履行を鋭く迫りました。「核兵器禁止条約」決議への支持は130か国、国連加盟国の3分の2に至りました。 一方日本政府は、「唯一の戦争被爆国」を自称しながら核保有国の代弁者・核廃絶の妨害者となっており、日本決議には非核国や同盟国からも批判が相次ぎました。また、米国の対日政策の指針となってきた「アーミテージ・ナイ報告」の最新版(第5次)は、「自由で開かれたインド太平洋」戦略とともに、今後の日米同盟の姿と日本が進む危険な方向を知るのに最適の資料です。3・1ビキニデーを前に、核の正義を求めるマーシャル諸島の現在のたたかいについてのレポートや、今年支援活動を展開するベトナムの枯葉剤被害についての資料も収録しています。

2021年は、再度延期されたNPT再検討会議が8月に予定され、核兵器禁止条約の第1回締約国会議も予定されています。日本政府をはじめ、核保有国・依存国に核兵器禁止条約への参加を迫り、草の根の世論と運動で大きな変化をつくるたたかいが求められています。そのために欠かせない資料集を、ぜひご活用ください。

B5版84ページ。頒価800円(送料実費)。ご注文・お問い合わせは、こちらから。

内容紹介

第75回国連総会・核兵器全面廃絶デー・ハイレベル会合より:国連事務総長、マレーシア、マーシャルほか/第1委員会より:中満上級代表、オーストリア、新アジェンダ、非同盟、ASEAN、米国、日本ほか/核軍縮決議と採択状況:「核兵器禁止条約」、「日本決議」ほかと各国の投票態度表明/NPT発効50周年にあたり17か国共同コミュニケ/NATO同盟国元首脳の核兵器禁止条約支持公開書簡/第5次アーミテージ・ナイ報告/自由で開かれたインド太平洋(米国務省文書)/マーシャル諸島:核の正義を求めるたたかい/枯葉剤とベトナム枯葉剤被害者協会/日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名

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共同コミュニケ 核不拡散条約(NPT)50年を記念して(全文)

共同コミュニケ 核不拡散条約(NPT)50年を記念して(全文)ダウンロード 共同コミュニケ表紙に記載された17か国の国章 共同コミュニケ核不拡散条約(NPT)50年を記念して

アルジェリア、オーストリア、ブラジル、チリ、コスタリカ、エクアドル、エジプト、インドネシア、アイルランド、マレーシア、メキシコ、モロッコ、ニュージーランド、ナイジェリア、フィリピン、南アフリカ、タイは、核不拡散条約(NPT)発効50年を祝う。緊張と不信が高まる時期にNPTが始まったことは、今日の国際安全保障状況のような困難な環境において、国際協力の重要性と多国間外交の成功の証しとなるものだ。

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【広島】「核兵器全面廃絶国際デー」17人が参加、署名67筆 広島市・金座街

190926_原水協通信広島版運動推進ニュースNo.259ダウンロード

意志と行動の人、サーロー・節子さんの決定版自伝!サーロー・節子/金崎由美『核なき世界を追い求めて 光に向かって這っていけ』(岩波書店、2019年)

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広島平和記念資料館リニューアルオープンレポート 日本原水協担当常任理事・大平喜信

広島市中区にある広島平和記念資料館(原爆資料館)の本館が4月25日、展示を一新してリニューアルオープンしました。時期が大型連休とも重なり、10連休中の入館者数は前年同日比62%増の10万5181人、ピーク時には最長2時間待ちの行列までできるなど高い注目と関心が寄せられています。日本原水協担当常任理事の大平喜信さんのレポートです。

展示内容は2年前に改装を終えた東館とあわせて全館ひとつながりのものとなりました。まず東館の導入展示「被爆前の広島」「失われた人々の暮らし」から始まり本館へと続きます。本館のテーマは「被爆の実相」。「【1】8月6日の惨状」「【2】放射線による被害」「【3】魂の叫び」「【4】生きる」という4つのコーナーで構成されています。その後は再び東館へと戻り「核兵器の危険性」「広島の歩み」で終了です。

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【茨城】2019年国民平和大行進へ向けさあ発進!北海道⇨東京(太平洋コース)通し行進者決まる

原水協通信(茨城版)19-4-1ダウンロード

核兵器禁止条約交渉「国連会議」ハイレベル会合におけるアレクサンダー・マーシックオーストリア大使・政治担当副大臣の演説全文<仮訳>

核兵器禁止条約を交渉する国連会議(第1会期)初日の3月27日、ハイレベル会合におけるアレクサンダー・マーシックオーストリア大使・政治担当副大臣の演説全文を紹介します。(仮訳:日本原水協国際部)

<仮訳> オーストリア アレクサンダー・マーシック大使・政治担当副大臣の発言

2017年3月27日

議長、代表、友人のみなさん、

この何十年の間に国際社会は、不必要な苦痛を引き起こす、化学・生物兵器、地雷、クラスター爆弾などの兵器を違法化してきた。これらの兵器は、その帰結が倫理的に非人道的であると考えられたために禁止されたのだ。

われわれは、核兵器が引き起こす結末を知っている。

われわれは、広島、長崎の写真を見て、被爆者の話を聞いた。

なぜ化学・生物兵器の禁止、地雷やクラスター爆弾に適用された論理が、それらよりはるかに有害で、この世の命あるものすべてを一掃してしまう兵器である核兵器に適用されないのだろうか。

2014年、オーストリアは、この問題の回答を追求するためにウィーンで会議を開催した。核兵器の危険要素と危険そのものを、入手しうる最新の情報に基づいて検討し、討論するために専門家を招いた。

何人かは今朝この場にもおられるが、ほとんどの出席者にとって、会議は、今日、核兵器に関わる現実の危険について、目を覚まさせる警鐘であった。

・ われわれは、核兵器爆発の短期的・中期的・長期的影響が、これまで理解されていたよりもずっと重大であることを知った。

・ 爆発後に汚染地域となる可能性のある地理的範囲が、以前に予想されていたよりもはるかに広いことを知った。

・ われわれは、コンピューターの誤作動やミス、貯蔵施設での事故によって、核事故に至りかねない事件が数えきれないほどあったことを知った。

・ 危険性を算定する数学者からは、核戦争の結末の重大さのゆえに、統計的にはわれわれの子どもたちが車の事故で死亡する以上に、核爆発の結果死亡する可能性のほうが高いことを学んだ。

・ 要するにわれわれは、核兵器に関わる危険性について非常に大きな過小評価をしているということを学んだのだ。

2014年のウィーン会議は、核兵器が、それらのいわゆる利益なるものとは到底引き合うものでない危険性を持っていることを、驚くほど明白に示したのである。われわれは、それらの危険性を減らさなければならないこと、そしてそれを減らす唯一の道は、そのような兵器を法的拘束力を持つ文書によって禁止することであることを確信して会議を終えた。

こうして、われわれの多くは、今日この場に集う旅へと導かれたのである。

そして本当にたくさんの、かくも多くの国々が今朝、この会場に集まっているのを目の当たりにし、誇らしく感じるとともに、身の引き締まる思いがする。

核兵器の禁止への広範で世界的な支持があることがここに示されている。

議長、

かくも多くの国が今日、ここに集まっていることを喜ぶ一方で、なおいくつかの国が欠席していることは残念なことである。まだ、すべての国がわれわれのイニシアチブに確信を持っているわけではない。いくつかの重要なパートナー、とりわけ核兵器国は懸念を持っている。

われわれはこれらの懸念を真摯に受け止め、積極的にそれらにとりくまなければならない。なぜなら、われわれは、パートナーたちに、われわれが正しいことを納得させる、説得力のある議論を持っているからである。そしてもし成功を望み、核兵器の危険性をゼロにしようとするのであれば、すべての国々がこのイニシアチブに加わることが必要であるからだ。

だから、ごく手短に、これらの懸念のうちのいくつかに答えたい。

1) 核兵器はすでに存在するのであり、核兵器を発明以前に戻すことは不可能だと言う人々がいる。だが、核兵器を発明以前に戻す必要はないのだ。禁止すれば十分なのだ。われわれは他の兵器禁止条約から、厳格な検証管理の条約体制を創ることができることを知っている。核の分野では、NPT(核不拡散条約)体制と包括的共同作業計画(JCPOA)とが、土台となり拡大することのできる複合的な検証メカニズムを確立した。独立した専門家たちは、高度に精緻な包括的安全保証措置の青写真を作り上げている。

そして、禁止条約はたんに一つの要素であって、核兵器の完全廃絶を達成するために追加的な一連の包括的な追加的措置によって補完されねばならないが、最初の必要なステップだということを忘れてはならない。

われわれは、それには時間がかかることを知っている。だが、それはわれわれを止めるものであってはならない。そのプロセスの目標、つまり核兵器の法的禁止を明確に示すことによって、最初の一歩を踏み出すべきなのだ。

2) もう一つの懸念は、核兵器の禁止は安全保障を低減させる、というものだ。

はっきり言いたい。この会場にいるものは誰一人として、核兵器国であれ非核兵器国であれ、どの国にたいしてもどの個人に対しても、安全の度合いを引き下げることなど望んでいない。

実際、核兵器を持つ国がなくなれば、すべての核兵器国、すべての「核の傘」の国を含め、どの国もどの国の国民も、より安全になる。これは重要な議論だ。なぜなら、核兵器のない世界というわれわれの最終目標は、核兵器国が参加してのみ達成できるものだからだ。核武装の解除ができるのは彼らだけだ。われわれにはできないのだ。

そして核兵器国は、自分たちがさらに安全の保障を得られると感じたときのみ、そうするであろう。だからわれわれは、このイニシアチブに参加することによってさらに多くの安全を得ることが可能になるということを、はっきりと示して見せなければならない。

どの核兵器国も一方的に武装解除するよう求められているのでないということを説明しなければならない。われわれが求めているのは、全般的な法的禁止であって、ひとたびそれが得られれば、われわれは核兵器国と一緒に、核兵器廃絶のシステムを構築するのである。

この文脈でもう一点あげたい。核兵器は安全保障に欠かせないという議論は、NPTの文脈でなされた多くの誓約に逆行する。もし核兵器が本当に安全の保障を提供する上で欠かせないのなら、どうしてすべての国家がこの利点から利益を得てはならないのか? 核兵器は世界をより安全にするという議論に従えば、より多くの国々がより多くの核兵器を持ったほうがよいということを意味することにならないだろうか? われわれはそういう議論を信じない。

明らかに、核兵器が少ない方が、そして核兵器がない方が、われわれはより安全になるのだ。それのみが、誰をもより安全にするのである。

3) もう一つの懸念は、禁止条約とNPTとの関連である。

2015年、われわれはまたまたNPT体制の屈辱的な失敗を目の当たりにした。にもかかわらず、NPTはわれわれが持っている核の安全についての最善のシステムとして、また国際核不拡散・軍縮体制の土台として維持されている。

だからわれわれはNPTを守り、強化しなければならない。

それこそが、われわれの禁止条約がおこなおうとしていることである。それはNPTと完全に両立するだけでなく、第6条の上につくられ、その履行に貢献する。

したがって、それはNPTを弱めるのでなく、全くその逆で、強めることになる。

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【新潟】いかに否定すべき状況下にあっても「核兵器も戦争もない平和な世界」の実現に、決して、諦めることも、怯むこともない ー 被爆2世としての思い

160427_渋谷ハチ公前で語る西山さん

渋谷ハチ公前でスピーチする西山さん (2016年4月27日)

私の父は、「暁部隊」の一員として広島に居たため被爆しました。

その父は、原爆について何も語らぬまま57歳で「がん」に侵され亡くなりました。

父が被爆者と知ったのは高校生の時でした。母親に尋ねると、あっさり認め、父が広島から帰りすぐに授かった子が、生まれてすぐに死んでしまったことを話してくれました。

そして、「‘ヒロシマの毒’は、その子が全部持って行ってくれたから、お前は心配しなくていい」と言われました。母の言葉から「ヒロシマの毒(被爆)」への言い知れない恐怖や不安のようなものが心の底に澱のように残りました。

そんな私に突然の転機が訪れました。

進行がんが見つかったのです。

やはり、「原爆放射線の遺伝的影響」なのかと、心中は激しく動揺しました。

手術が成功し、体調が回復してくると、死んだ父や、原爆で犠牲になった方々の無念が心に迫ってきて、「親父や被爆者のために何か自分にできることはないか」との思いに駆られました。

退院の翌年、広島に向かいました。平和公園の原爆ドームが目に入った瞬間、込み上げるものがあり、原爆慰霊碑の前に立つと、こらえ切れず声を上げて泣いていました。「原爆に向き合おう」と決意した瞬間でした。

「あの日」の死者と、「あの日」以後、苦しみぬいたあげくに亡くなった多くの方々の悲惨さに想像力を持つこと、心と体に苦しみを抱えながらも今を生きている人たちが、無理やりのみ込んでいる核への「恨み・怒り・恐怖」にしっかり触れることが私のやるべきことだと思っています。

したがって、いかに否定すべき状況下にあっても「核兵器も戦争もない平和な世界」の実現に、決して、諦めることも、怯むこともありません。

西山謙介(被爆2世・新潟県原爆被害者の会理事)

「国際情報資料43号」が発行されました!

国際情報資料43

「国際情報資料43号」が発行されました!

第70回国連総会で採択された決議にもとづき設置された「多国間核軍備撤廃交渉の前進に関するオープンエンド作業部会」の会合が、今年2月と5月にスイスのジュネーブで開かれました。今号ではこの会合から主要な発言と作業文書を収録しています。

圧倒的多数の国々は、核兵器の人道的影響に基づき、核兵器を緊急かつ法的に禁止・廃絶するべきことを強調し、禁止条約も含めその目標への道筋について議論しました。中でも、非核兵器地帯グループによる「2017年に交渉開始」のよびかけが注目されています。

一方で、日本やNATO(北大西洋条約機構)加盟国などアメリカの核兵器に安全保障をゆだねる「核の傘」の下にいる国ぐには、作業部会をボイコットした核保有国の代理人であるかのように、禁止条約の交渉開始を究極のかなたに追いやる「漸進的アプローチ」を提起しました。核抑止力論を冷静に鋭く論破するオーストリアの文書、条約に含まれるべき要素を提起したメキシコの文書など、議論の一端がわかる重要な作業文書を収録しました。カナダ在住の広島被爆者セツコ・サーローさん、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)事務局次長の和田征子さんも発言し、重要な貢献をおこないました。これらの文書は、秋の国連総会にむけて国際政治の動きを展望できる内容となっています。

オバマ米大統領が5月27日、現職大統領として史上初めて広島を訪問したことは、大きな論議を呼びました。この歴史的な訪問について出された要請書や声明、解説記事を掲載しています。日本のメディアはオバマ氏の広島での「所感」を高く評価しましたが、「核兵器を使用したただ一つの核保有国として、行動する道義的な責任を持っている」と述べたプラハ演説からは程遠い内容でした。「手ぶらで広島を訪問するな」とキャンペーンしたアメリカの平和運動や著名人たちのオバマ大統領あての書簡は必読です。

さらに今年5月、日本原水協リトアニア・ラトビア訪問団が参加した「チェルノブイリ原発事故30周年国際会議」での発言を収録しました。事故直後に現地での作業に動員された被ばく者救援の「唯一の望み」となった日本との繋がりについて語るリトアニアの医師の発言のほか、ラトビアの被害者の組織化と社会的救済の状況についての発言などを収録しました。

4月に発表された「ヒロシマ・ナガサキのヒバクシャが訴える核兵器廃絶国際署名」は、核兵器を禁止・廃絶する条約の締結を求める、被爆者運動の集大成とも言える国際署名です。国内外で歓迎され、広島、長崎をはじめ全国各地で署名運動が始まっています。核兵器禁止条約締結を求める世界の運動を推進する大きな武器として、数億の規模で国際的に広げていきましょう。

国際情報資料(43)内容紹介

多国間核軍備撤廃交渉の前進に関する国連オープンエンド作業部会での発言・作業文書より/オバマ米大統領の広島訪問をめぐって/日本原水協リトアニア・ラトビア訪問:チェルノブイリ事故30周年国際会議より/ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名

国際情報資料43 2016年7月発行 B5版 全82ページ 頒価800円(送料実費)

御注文・お問い合わせは、日本原水協事務局まで。

Tel: 03-5842-6031/FAX: 03-5842-6033/Email: antiatom@topaz.plala.or.jp

吉井英勝元衆議院議員に聞くー核兵器と原発 私たちのくらし

110411_吉井英勝さん

吉井英勝元衆議院議員

核兵器と原発、私たちのくらしについて、吉井英勝元衆議院議員に聞きました。

 

Q1:「原発は廃炉にし、自然エネルギーへ転換を」と主張すると「採算が合わないのでは」という反論も聞かれます。実際のところはどうなのでしょうか。

A1: 政府はかつて原発の発電コストが1キロワット時当たり5.9円で、石炭火力の同6.5円より安いとしてきましたが、電力会社でさえ「現実的でない」としてきました。実際に、関西電力の「原子力発電の原価」は、2013年から既に8.9円/kw時と表示しています。東京電力福島第一原発事故の賠償費用等が10兆円になると9.3円/kw時、20兆円になると10.2/kw時とし、すでに火力発電コストより高くなっています。

経産省が吉井英勝元衆議院議員に提出した資料(2011年7月27日)で原発発電コストを試算すると、これまで発電に直接要したコスト(建設費、燃料費、運転維持管理費等)は、原発建設費、核燃料費、運転維持管理コストを合わせて、公租公課や寄付金等を除いても約32兆4400億円になります。これに、バックエンド費用の使用済み燃料再処理費用、放射性廃棄物処理・処分費用MOX燃料加工費は、再処理工場解体など今後発生する費用を別にしても約19兆円が見込まれます。

原発には、これまで国から一般会計や特別会計を合わせて14兆4161億円が研究・開発・地元対策費に使われてきました。これからの「再稼働のための安全対策費」や「社会的費用」を別にしても、これまで原発に使ったお金は約66兆円に上ります。

これを1966年に電気を送りだしてから3・11福島事故前〈報告では2009年度まで〉の間に生み出した原発の総発電電力量は、7兆1195億kw時ですから、66兆円÷7兆1195億kw時=約9円/kw時を超えるものとなり、火力発電と較べて安くはないのが事実です。

原発と自然エネルギー発電を較べると、建設時のコストに開きがあっても、太陽のエネルギーを起源とする自然エネルギーには燃料費がいりません。二酸化炭素排出や放射能汚染の心配もありません。数年単位でのコスト比較より、人類社会の持続可能な将来の道筋を考えることが重要です。

Q2:電力会社や日本政府はどうして原発再稼働や輸出にこだわるのでしょうか。

A2:何故、原発再稼働に走るのでしょうか。理由は、電力、原発メーカー、ゼネコン、鉄鋼など素材メーカー、メガバンクなど日本財界の中枢部が構成している「原発利益共同体」(原子力産業協会)が、原発1基輸出で5000億円、送電網や変電設備などインフラ整備含めて数兆円の巨大ビジネスを狙っていることにあります。この原発輸出が安倍内閣の「成長戦略」の大きな柱になっています。

この原発輸出は、自動車などの輸出と違って、輸出先で原発を建設している間に、その国の若者を日本に招いて、国内の原発で実際に稼働する実習や定期点検の時にどの箇所をどのように点検するか、その時の検査機器をどのように扱うかなどを学び取る多数の技術者養成が必要です。つまり原発再稼働と原発輸出は一体不可分の関係にあります。もちろん、日本国内で稼働が認められない原発を海外に売り込むことは困難になりますから、再稼働にむけて「新規制基準」に適合していると「審査書」が認められたということを表に出して強行を図ってくると思われます。

Q3:核兵器と原発は「コインの表と裏」の関係と言われますが、どういうことでしょうか。

A3:1939年にハンス・ベーテが「恒星におけるエネルギー生成」という研究で、水素からヘリウムへの核融合反応が起こり得る可能性を分析して、太陽のエネルギー源は核融合反応であることを発見しました。これに先立って、1938年にオットー・ハーンとシュトラスマン、マイトナー女史らが天然ウランに低速中性子を照射して、反応生成物にバリウムの同位体を見出し、核分裂反応であることを発見しました。

これらの価値ある発見であった「核分裂」「核融合」の物理現象を、第二次世界大戦の時期で、ナチスが原爆開発にとりくみ始めているという情報をもとに、核兵器開発へ進んでしまい、最初に原爆を開発したアメリカはナチス・ドイツが崩壊した後なのに、ウランを使って広島で14万人、プルトニウムを使って長崎で7万人を超える人々を原爆で殺害しました。

核兵器という立場からは放射性廃棄物まで有用な兵器の一部になります。この核兵器技術を転用して開発した商業用原発でしたから、通常の商品開発のように、商品化後の廃棄物処理・処分まで見通した「製品アセスメント」の発想はなく、原発は「トイレなきマンション」とよばれながら増設され続けました。

地球上で核分裂を制御することが極めて難しいということが、東京電力福島第一原発事故でも、これに先立つスリーマイル島原発事故やチェルノブイリ原発事故など世界で多数の核事故によって明らかになっています。

核融合反応でつくられた太陽の光や熱は、いろいろの形で自然エネルギーを人類に送り続けています。しかし、地球上でウランの核分裂で、あるいはウランとプルトニウムを循環させて利用する「軽水炉」と呼ばれる「原発」では、使用済み核燃料の処理・処分の技術はなく、放射能汚染の脅威から人類を守ることはできません。

木村氏の逝去を悼む(長崎県原水協・片山明吉)

長崎県原水協・片山明吉さん

9月17日、前福岡県原水協事務局長の木村勇氏が逝去されました。今年の原水爆禁止世界大会−長崎で会えるものと思い私も会場に向かいましたがお会いできませんでした。まさか病気療養中とは予想もしていなかったので、突然の訃報に驚愕しています。重責を退任され、これから自分自身の人生を、そして一心同体で活動を支えてこられた奥様との時間を過ごしながら、原水爆禁止運動の行方を見定めたかったに違いありません。

私は1994年6月、何もわからないまま被爆地長崎の原水協事務局長に就任しました。木村さんは私より先に、そして私より後まで福岡県の事務局長を務め、その傍ら九州ブロックの全国担当常任理事として九州の運動をリードしてこられました。私も被爆地選出の全国担当として木村さんと共に活動してきましたが、私が大過なく任務を遂行することができたのも、地元の諸先輩とともに木村さんの影響が大きかったと感謝しています。

木村さんは私と同年代で、かつ1960年の安保・三池闘争の最中に青年運動に加わり活動をスタート、その後半は原水爆禁止運動にともに参加することになったのも何かの縁だったのかもしれません。

原水協運動では数々の思い出がありますが、中でも九州ブロック原水協学校を各県持ち回りで沖縄を含むすべての県で開催してきたこと、重要課題推進にあたっては九州各県原水協事務局長会議を開くなどして各県の運動強化と交流に役立てるなどがあります。このように木村さんは福岡県が九州最大の県として、世界大会−長崎がメインの時も広島も長崎も責任を果たす立場で奮闘されてきたし、九州の運動発展にも心を砕いてこられました。もちろん署名をはじめ各種のとりくみでも福岡県が先陣を切り私たちを励ましてきました。

木村さんは私が病に倒れた一昨年春、入院先の病院まで奥様とともに見舞いに駆けつけてくれました。検査室を出てエレベーターまでの数メートルで顔を見合わせただけで木村さんは帰られました。私の病状を察して言葉をかわすことを遠慮されたのだと思います。そしてその後、九州各県に連絡され、各県からのお見舞いを送っていただきました。すでに第一線を退いた私に、これほどの思いやりをいただき、木村さんの人柄をうかがい知ることができました。私はこうした原水協活動を通じて育まれた友情が今を生きる力となっていることを実感しています。

90年代後半、「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名の国民過半数達成を目指して各県が県民過半数達成を競い合った時代が懐かしく思い出されます。今日本原水協は事務局のメンバーも若返り、各県の当時のリーダーたちの多くが後継者と交代する世代交代の時期に入っています。個人の人士に限りがあっても、その時々に果たした役割は新しい後継者に受け継がれ新たな発展が始まります。「核兵器廃絶」の国際的な流れは誰も止めることができないでしょう。安保法制化反対運動の新しい発展は、私たちに限りない希望を与えてくれています。私たちの過去の活動が、喜びと懐かしい思い出に変わるひとときに思いを巡らしながら、木村さんへの感謝の言葉とします。

(長崎県原水協・片山明吉)