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原水協通信

毎月発行している日本原水協の機関誌です。国内外の反核平和運動についての情報が満載です。 日本原水協のウェブサイト→ http://www.antiatom.org/

「核兵器の全面禁止を!」

共同コミュニケ 核不拡散条約(NPT)50年を記念して(全文)

共同コミュニケ表紙に記載された17か国の国章

共同コミュニケ
核不拡散条約(NPT)50年を記念して

 アルジェリア、オーストリア、ブラジル、チリ、コスタリカ、エクアドル、エジプト、インドネシア、アイルランド、マレーシア、メキシコ、モロッコ、ニュージーランド、ナイジェリア、フィリピン、南アフリカ、タイは、核不拡散条約(NPT)発効50年を祝う。緊張と不信が高まる時期にNPTが始まったことは、今日の国際安全保障状況のような困難な環境において、国際協力の重要性と多国間外交の成功の証しとなるものだ。

 発効から50年を経たNPTは、今なお国際の平和と安全に寄与するかけがえのない法的文書である。世界の核軍縮・不拡散体制の要として、NPTは核兵器とその拡散の脅威を削減するための国際的努力を支えることに貢献し、同時に、人類の存在を危うくする脅威を取り除くために、核兵器の完全廃絶に至る世界の核軍縮の基礎を提供してきた。

 核兵器の人類にもたらす引き続く脅威と起こりうる壊滅的な人道的影響への深い懸念はまた、大幅で具体的な前進が緊急に必要であることを強調している。この点で、2010年NPT再検討会議の最終文書に示されたように、すべての締約国が核兵器のいかなる使用によっても壊滅的な人道的結末がもたらされることに懸念を表明したことを思い起こす。

 NPTは、核不拡散が原子力の平和利用に対する締約国の権利やアクセスを妨げないことを保証し、原子力の多様な平和利用の促進へ極めて重要な役割を果たしてきた。この点で、国際原子力機関(IAEA)は、NPTの履行に有効な役割を成功裏に果たしてきた。

 NPT発効50年は、この条約の普遍化が重要であることに注意を喚起している。NPTにまだ加盟していない国は、これ以上遅れることなく、無条件で、非核兵器国として条約に参加するべきだ。今、条約の目的を達成する上で不可欠な、平等で相互に強化し合う3本柱を全面的に実行するために、われわれの集団的努力を倍加する時である。これまでの再検討会議で、締約国は、条約の義務を履行するための具体的な誓約を結んだ。NPTで今日までに達成された成果は、その目的に向けた国際的な共同の努力の結果である。

 条約の実行を達成することができるかどうかは、締約国にかかっている。非核兵器国は、核兵器国が自国の核軍備を廃絶することと引き換えに、核兵器を開発しないことを誓約した。核軍縮の進展は、核不拡散や原子力の平和利用の進展よりも遅れている。緊急に必要なのは、NPTの枠内の義務と誓約を履行するために、具体的で透明性があり、検証可能で不可逆的な核軍備撤廃の措置を実行することである。われわれは、NPTの信頼性、実行可能性、有効性を守り維持しなければならない。NPTを守る唯一の道は、この条約を実行することだ。

 過去50年、核軍縮でいくつかの進展がなされたが、それは十分というには程遠く、核軍縮の義務はまだ果たされていない。現在の核兵器近代化・更新計画は、達成された前進を逆行の危険にさらしている。同時に、既存の協定の失効やその他の危険など、多国間軍縮・軍備管理機構は憂慮すべき崩壊の危機に瀕している。現代の世界の安全保障環境は、緊急な進展を求めている。

2000年NPT再検討会議で、核兵器国は、核軍備撤廃に至る自国核軍備の全面廃絶を達成すること、そしてこの点での進展を加速させることを明確に約束した。続いて、2010年行動計画は、NPT第6条の履行を前進させるための13項目の実際的措置を含む、1995年と2000年の決定を再確認した。核兵器国は自らの特別の責任に留意し、核軍備撤廃に至る諸措置の前進を加速させると約束した。われわれは核兵器国に対し、既存の誓約を実行し、NPTの下での自らの義務の履行を加速させるために、その上にさらに前進することをよびかける。

 NPT発効50年は、この条約の無期限延長から25年にあたる。NPTの無期限延長が、条約の再検討プロセスを強化し、核軍縮・不拡散の原則と目的を明らかにするとの決定や、中東非核兵器・大量破壊兵器地帯創立決議を含めた包括的な決定の一部分であったことを思い起こすことは重要である。中東決議とともに、これらの決定は、NPTの無期限延長と切り離せないものと考えられており、すべての締約国が守らねばならないものだ。

 また、この条約の無期限延長は、決して核兵器の無期限保持を正当化するものと解釈されてはならないことも、強調されねばならない。

 世界のすべての地域に非核兵器地帯を確立することは、核兵器の全面廃絶に至るまでのあいだ、世界の核軍縮・不拡散の強化、NPTの目的の達成に向けた、積極的で重要な暫定的措置である。

この重要な機会に、われわれは厳粛に、これまでのNPT再検討会議で合意された過去の誓約を再確認する。次期再検討会議はその上に構築されるべきである。われわれは、他の締約国に対しても同じくこれを再確認するようよびかける。NPTは歴史において困難がなかったわけではなく、今日再び困難な問題に直面している。しかしながら、われわれは、これらの様々な障害を認識していることを理由にたじろいでいてはならない。それどころか、われわれはNPTの枠内で、礼節と外交をもって、よりオープンで包括的、透明性のある多国間の対話を通じて、ともに困難を克服する決意を固めなければならない。国際の平和と安全は、核兵器のない世界というNPTの目標に向けた協力と具体的な前進を通じてのみ達成されるのだ。
 
 来るNPT再検討会議は、COVID-19パンデミックの残念な状況のため延期されたが、それは、締約国が条約の現状、その3本柱、条約の枠組みの中のこれまでの義務と誓約の履行を包括的に再検討し評価するための、時宜にかなった機会となる。再検討会議には、さらに具体的な前進のために、将来なされるべき新たな分野と手段を明らかにする責任がある。われわれはこの点で他の締約国とともに活動できることを楽しみにしている。軍備撤廃の誓約が実行されていれば、持続可能な開発および今回のような人々の健康と世界的な緊急事態に対応する国際協力と準備のために、より多くの資源の配分が可能になっていただろうことは疑う余地がない。

 今こそ、締約国は言葉を、明確で合意された基準と期限に裏打ちされた具体的な行動に移すべき時である。そのような努力によってのみ、われわれは今記念しているNPTの過去50年の重要な成果を発展させ、その上に次の50年の成功を展望することができるのだ。

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