カテゴリー

アーカイブ

原水協通信

毎月発行している日本原水協の機関誌です。国内外の反核平和運動についての情報が満載です。 日本原水協のウェブサイト→ http://www.antiatom.org/

「核兵器の全面禁止を!」

【動画あり】広島被爆者が全英を遊説―核兵器の世界的禁止をめざして スコットランド自治政府首相が被爆者と面会

スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相と面会する左からロンドンCNDの小林さん、山田みどりさん、山田玲子さん(3月29日)

【動画】

被爆者のイギリス遊説について、ロンドン地域CND(核軍縮キャンペーン)の議長のキャロル・ターナーさんが役員グループの一員であるストップ戦争連合の機関紙に書いた記事と、スコットランド地元紙の報道が送られてきました。翻訳は日本原水協国際部です。


広島被爆者が全英を遊説核兵器の世界的禁止をめざして

キャロル・ターナー

(英ストップ戦争連合のウェブサイト掲載)

今週、3月27日から31日にかけてニューヨークの国連本部で、アメリカ、イギリスの反対にもかかわらず、全ての核兵器を禁止する条約の締結を目指して歴史的な交渉が開始された。この交渉会議に合わせてイギリスでは、ロンドンCNDが広島原爆の2人の被爆者による遊説を組織した。

被爆者はロンドン、スコットランド、マンチェスター、オクスフォードを訪問して、英国議会議員、地方自治体議員、宗教界の指導者たちと懇談した。スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相との会合、イギリスの核兵器システムであるトライデントが配備されているファスレーン海軍基地とその近くでおこなわれている平和キャンプにも訪問した。

国連会議も被爆者訪問についても見聞きした人はほとんどいなかっただろう。イギリスのメディアはほとんど報道しなかったのだから。

「ガーディアン」紙の報道は、国連交渉会議への反対のみを取り上げ、アメリカによるボイコットにオーストラリアが参加を決めたことを見出しにしていた。まるで後知恵のように「核不拡散条約に幻滅する国が増え、核兵器の全面禁止への支持が強まりつつある」と述べたに過ぎなかった。

「デイリーメイル」、「ミラー」、「テレグラフ」の各紙は国連交渉会議を無視した。しかし「インディペンデント」紙は際立つ異様さで、「核兵器の一方的禁止に関する危険な国連会議」を警告する見出しを流した。念のために記しておくが、この交渉会議開始を決定した国連決議のタイトルは、「多国間核軍備撤廃交渉の前進」である。

「インディペンデント」の記事は、「母として、娘として」核兵器のない世界以上に望むものはない、というニッキー・ヘイリー米国連大使の言葉を引用した。しかしもちろんそれには、「われわれは現実的でなければならない」という但し書きがついていたのである。

この恥ずべきナンセンスな記事が掲載された日の前夜、ロンドンでは満員の聴衆が2人の被爆者の証言に耳を傾け、「現実的」が真に意味するものは何かを学んだ。山田玲子さんは1945年8月6日、アメリカが広島に原爆を投下した時11歳でまだ小学生だった。彼女は爆心地から2.5キロの地点に住んでおり、原爆投下直後の劫火からは逃れることができた。

逃れられなかった人々は彼女の住む地域まで避難してきたが、「ひどいやけどを負っており人間とは思えない姿だった」という。玲子さんは自分と家族と友人に起こったことをこう話している。

「いつも遊んでいた友達の家では、子どもたち5人がお母さんの帰りを待っていました。2日目に真っ黒い塊が四つん這いで飛び込んできたので、一瞬子どもたちは黒い犬だと思ったそうですが、それがお母さんだったのです。家に着くなり倒れて亡くなり、子どもたちだけが後に遺されました」

 

山田みどりさんは被爆2世である(苗字は同じだが2人は親戚ではない)。みどりさんの父親は広島近郊の町の助役で、広島市内で救援活動に加わった。彼女は後にがんを患い、近年「ヒロシマの少年 じろうちゃん」というマンガ本(ママ)を出版した。これは原爆投下の時に彼女の兄が経験したことを描写したものである。

化学・生物兵器、対人地雷、クラスター爆弾は全て法的に禁止されている。核兵器はそうではない。アフリカの国々が主導する核兵器の世界的な禁止条約をめざす動きは、この現状を修正しようとするものだ。

昨年10月、123の国連加盟国の賛成、38か国の反対、16か国の棄権票により決議が採択され、禁止条約交渉会議への道が開かれた。安全保障理事会常任理事国5か国のうち4か国(米・英・仏・露)は多くのNATO(北大西洋条約機構)加盟国・アメリカ同盟国の多くとともに反対票を投じた。

5番目の常任理事国である中国は棄権したが、最近、条約を支持する準備があることを示唆した。そのほかの核保有国の投票態度はというと、インドとパキスタンが棄権、イスラエルが反対、北朝鮮が賛成であった。

最近おこなわれた世論調査では、禁止条約に人々の強い支持があることを示している。2014年オーストラリアでは、84%がこのような条約を支持した。2016年にはドイツでも94%、オランダで85%、ノルウェーで77%、スウェーデンで81%が支持だった。

アメリカと同様に、イギリス政府も交渉に参加することを拒否した。メイ政権はまたしても世論を裏切る行動をとった。ユーガブ(世論調査会社)が3月15-16日に実施した世論調査では75%の国民がイギリス政府は交渉に参加すべきだと答えた。しかし、労働党の影の平和・軍縮大臣であるファビアン・ハミルトンは、オブザーバーとしてニューヨークの会議に参加した。

国連交渉会議の第2会期は6月15日から7月7日に開かれることになっている。まだこの問題で世論を喚起する時間はある。大衆的な集会を開き、地元の議員に、政府の参加を働きかけるよう要請しよう。

キャロル・ターナーはロンドン地域CNDの議長であり、ストップ戦争連合の役員グループの一員。「コービンとトライデント:労働党の引き続く論争」の著書がある。


国連での核兵器禁止条約会議開幕と時を同じくして

スコットランド自治政府首相が被爆者と面会

核の恐怖の生存者が世界的交渉の期間に平和のメッセージを広げるため、連帯を表明してスコットランドを訪問(コモン・スペース紙)

アメリカの原爆攻撃を受けた日本の都市広島の2人の被爆者が、重要な国連核兵器禁止条約3日目の3月29日水曜2:30から、ニコラ・スタージョン首相と面会する。

山田玲子さんと山田みどりさんは、核兵器とその拡散がもたらす破局的危険についてメッセ―ジを広げるため、待望の被爆者遊説に参加する。

それに加えて2人は木曜日(3月30日)にファスレーンとクールポートに向かい、この2つの核基地を視察し、ファスレーン平和キャンプで平和運動家と交流する。

スコットランドCNDのアーサー・ウェスト議長は、「玲子さんとみどりさんをスコットランドにお迎えできて光栄です。この間私たちはともすると核兵器がいかに恐ろしいものであるかを忘れがちです。2人の訪問は、この厳粛な事実を再認識させてくれるはずです。しかし国連で禁止条約交渉が始まっている今はまた大きな希望の時でもあります。軍縮におけるこの何十年で最大の突破口となるでしょう。しかしスコットランドが核兵器を拒否していることがこの会議で正式な代表によって表明されないことは大きな懸念です」

1934年広島生まれの玲子さんはアメリカの原爆が故郷の街を破壊したとき10歳だった。みどりさんは、太平洋戦争を終結させた原爆から4年後に生まれたが、半生を核兵器反対の運動に捧げてきた。被爆2世の間で続いている、原爆の放射線に由来する遺伝的影響と長期にわたる後遺障害についての懸念を2人とも共有している。

国連での核兵器禁止をめざす新条約の交渉会議は3月27日に開始されるが、イギリスはすでにこの多国間交渉をボイコットすることを決めている。しかしスコットランドを代表して、グラスゴー・アニエスランド選出のスコットランド議会のビル・キッド議員を含む、幅広い市民社会グループが参加する予定だ。

日本に対する原爆の使用に関してアメリカではいまだに論議が続いている。賛成派は、降伏の用意ができていなかった日本に対する核兵器使用によって、数十万人の命が救われたと主張している。反対派は、日本の軍部の中では降伏が検討されていたことや、原爆投下で罪のない日本の民間人が甚大な犠牲となったことを指摘している。

原爆投下で正確に何人が犠牲となったかを推定するのは非常に難しい。控えめに見ても、原爆投下後2か月から4か月の間に、原爆の影響により広島で9万人から14万6千人が、長崎で3万9千人から8万人が死亡し、それぞれの市での死者の半数は原爆投下の当日に亡くなっていると推定され、そのうち60%はひどい火傷が死因と考えられている。

現在、アメリカのドナルド・トランプ政権は、イランが核兵器を取得してイスラエルを脅かしていると主張して緊張を激化させようとしている。昨年、オバマ政権は中国、ロシア、EUとともにイランとの間で、軍事的核研究開発を止めることと引き換えに制裁を解除する多国間合意に調印した。


広島の被爆者がファスレーン平和キャンプを訪問

 クレイグ・ボーランド

(ヘレンズバラ・アドバタイザー紙上級記者)

2017年3月28日

広島への原爆投下の2人の被爆者がスコットランドを遊説中で、この木曜日にファスレーン平和キャンプを訪問する。

山田玲子さんと山田みどりさんは被爆者(直訳すれば爆弾の被害者)遊説の一環としてスコットランドに2日間滞在する。

この遊説は今週国連で開催される核兵器の世界的禁止条約交渉会議と並行して行われるものだが、イギリスはこの会議をボイコットしている。

(後略-上のコモン・スペース紙と同じ内容)

Comments are closed.