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原水協通信

毎月発行している日本原水協の機関誌です。国内外の反核平和運動についての情報が満載です。 日本原水協のウェブサイト→ http://www.antiatom.org/

「核兵器の全面禁止を!」

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『ヴェラは海の夢を見る』が第34回東京国際映画祭のグランプリ受賞

家父長制度に抵抗する女性を描く作品がグランプリ受賞

2021年10月31日から11月8日まで、第34回東京国際映画祭が開催されました。113の国と地域から1533本の応募があり、15作品が正式出品された今年のコンペティション部門の最高賞にあたる東京グランプリ/東京都知事賞は、カルトリナ・クラスニチ監督によるコソボ・北マケドニア・アルバニア合作映画『ヴェラは海の夢を見る』が受賞しました。

本作は、夫の突然の自殺の後、家がギャンブルの借金の抵当になっていたことを知らされたヴェラが、男性優位の環境に抵抗する姿を力強く描いています。耳が不自由だった母親の「遺産」を持って都会に出てきた彼女が、家父長制の下で受けてきたさまざまな制約に真っ向から立ち向かっていく芯の強さに心を打たれました。終始重苦しい空気が支配しているのですが、ヴェラが頻繁に見る海の夢が、家族の幸せな思い出に繋がるようなラストシーンには、心救われる思いがしました。

コンペ部門の審査委員長を務めたフランス人俳優のイザベル・ユペールさんは「この映画は、夫を亡くした女性を繊細に描くとともに、男性が作った根深いルールに従わない者を絡めとる“家父長制度”に迫っています」と説明。「監督は、国の歴史の重荷を抱えるヴェラの物語を巧みに舵取りしています。その歴史の重荷は、静かに、狡猾にも、社会を変えようとする者に“暴力”の脅威を与えます。演出、力強い演技、撮影が、自信に満ちた深い形によって、集合的な衝突を生み出していました。この映画は、勇気あるコソボの新世代女性監督によって、素晴らしい作品群の1本に加わりました」と称賛しました。

ジェンダーギャップ指数120位の日本へのメッセージ

母国コソボとアメリカで映画について学び、ドキュメンタリーを手掛けてきたクラスニチ監督は、自国で受賞の一報を受けて送られてきたビデオメッセージの中で「初長編となった『ヴェラは海の夢を見る』が東京国際映画祭のコンペ部門に出品されると連絡を受けた時、大変光栄に感じました」と話します。そして、「この映画祭に初めて参加するコソボ映画だったということも大変光栄です。グランプリを受賞したことを知り、喜びのあまりに泣いてしまいました」と語りながら、審査員、作品を支えたキャストやスタッフに謝意を示しました。

世界経済フォーラムが2021年3月、「The Global Gender Gap Report 2021」を公表し、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数を発表しました。この指数は、「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を示しています。2021年の日本の総合スコアは0.656、順位は156か国中120位(前回は153か国中121位)でした。前回と比べて、スコア、順位ともに、ほぼ横ばいとなっており、先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となりました。こうした現状において、家父長制に対決を挑む女性を主役にした女性監督の作品が最も評価されたことは重要なメッセージになりうると思います。今後、本作が国内で上映されるかどうかは未定ですが、ぜひ見てほしい作品です。

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【リトアニア】クピシュキス市での「原爆と人間」展、たくさんの中学生が参加

リトアニア北部の小都市クピシュキスの中等学校で9月から10月半ばまで「原爆と人間」展が開かれ、およそ600人の生徒たちが連日、参観しました。

会場では、写真パネルを教材に、授業もおこなわれました。

この展示会は、医師で原水爆禁止世界大会に何度も訪れたゲディミナス・リムデイカさんの提供により同市の文化センターで開催され、訪れた生徒たちの希望で、会場を学校に移し、継続開催されたものです。

リトアニアは旧ソ連に併合されていましたが、1990年3月に独立の回復を宣言しました。現在はNATO(北大西洋条約機構)加盟国ですが、2016年4月には被爆者と原水協代表団を招いて国会でシンポジウムを開催、国会議長以下、多くの議員が当時の「ヒバクシャアピール」に署名を寄せています。

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【動画あり】国際平和ビューロー(IPB)第2回世界平和会議@バルセロナ開会総会 日本原水協主催オンラインで分科会開催

10月15-17日、スペインのバルセロナで、「我々の世界を想像し直そう:平和と正義のための行動」と題する国際平和ビューロー(IPB)主催の第2回世界平和会議が開催されました。

日本原水協はこの会議にオンラインで参加し、3日目の10月17日に予定されている分科会「核兵器のない世界のための戦略と行動」の開催を担しました。

開会総会

バルセロナ現地で10月15日夜におこなわれた開会総会では、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の和田征子事務局次長が被爆体験を証言しました。ジェレミー・コービン(英国会議員)、ベアトリス・フィン(核兵器廃絶国際キャンペーン=ICAN事務局長)、ヴァンダナ・シヴァ(インド・環境運動家)など、各界の著名な人々が発言しました。

開会総会での和田征子さんの発言ダウンロード

分科会「核兵器のない世界のための戦略と行動」

世界の世論と運動の力で、今年1月22日に核兵器禁止条約が発効しました。核兵器のない世界を作るためには、核保有国・同盟国の核抑止論に固執した核政策を変えるたたかいがカギになります。この分科会では、核保有国とNATO加盟国など「核の傘」の国々の運動の代表をパネリストに迎え、それぞれの国内で反核平和運動がどのように核兵器廃絶の世論を動員し、核抑止論を打ち破り、自国政府の政策を変えていこうとしているかについて、草の根と全国レベルでのとりくみと経験を交流、討論し、連帯した行動を展望します。(英-日、英-スペイン語通訳あり)

パネリスト:デイブ・ウェブ 核軍縮キャンペーン(CND)議長(イギリス)ルド・デ・ブラバンデル 「平和」グループ(ベルギー)キム・ジンヨン 社会進歩連帯 政策教育局長(韓国)ラルフ・ハチソン オークリッジ環境平和連合 コーディネーター(アメリカ)ホセ・マヨラル・イ・アンティガス グラノリェース市長(スペイン)/平和首長会議副会長土田 弥生 日本原水協 事務局次長

IPB世界平和会議_分科会プログラム&発言原稿ダウンロード IPB第2回世界平和会議で採択された「バルセロナから世界へ」アピール全文ダウンロード

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【動画あり】「今週の平和行進」オンライン

「今週の平和行進オンライン2021」再生リスト

第10回(2021年7月16日)

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第5回反基地・反戦国際会議で渡久地修沖縄県議会議員が報告

渡久地修沖縄県議会議員の発言(PDF)ダウンロード

2021年「平和の波」行動(2021年8月2日〜8月9日)にご参加ください

2021年「平和の波」行動のよびかけ

2021年6月17日 原水爆禁止世界大会実行委員会

親愛な内外の友人のみなさん、

ことし1月22日、国連が採択した核兵器禁止条約が要件を満たし、世界のルールとして発効しました。

私たちは、この新しい国際的条件の下で、8月2日から9日まで「被爆者とともに、核兵器のない平和で公正な世界を――人類と地球の未来のために」をテーマに、原水爆禁止2021年世界大会を開催します。コロナのパンデミックがなお各地で続く中で、私たちはオンラインの条件を活かし、核兵器廃絶の流れをリードする世界の市民社会の運動と国際政治をリードする国連や加盟各国のリーダーも招いて核兵器のない世界を実現する知恵と経験の豊かな交流を実現します。

私たちがここにお届けするのは、世界大会と同じ8月2日から9日までの間、大会と全国、全世界の草の根の行動をオンラインで結び、日本を起点に地球の自転に合わせて世界をまわる核兵器廃絶のための草の根行動の連鎖、2021年「平和の波」行動をおこなうことの提案です。

もともと、「平和の波」の運動は、世界がなお「冷戦」の中にあった1987年の8月、原水爆禁止世界大会で当時のソ連と米国の平和運動代表により、核兵器の廃絶を共通の目的とし、核兵器全面禁止・廃絶を求める「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名を共通の形態として、広島・長崎を起点に地球の自転に合わせて西へと世界をまわる創意に満ちた草の根の共同行動として提案され、同年、第10回国連軍縮週間の初日、10月24日の正午に実行されました。それは軍事ブロックによる世界の分断を超え、当時のソ連や東欧諸国でも、西ヨーロッパや北米でも、太平洋の島しょ国でも、核兵器の廃絶のために人々が行動した画期的で壮大な共同行動でした。

核大国のリーダーたちはいまだ世界の軍事的覇権を求めて争い、新たな核兵器の開発・「近代化」を進め、コロナ感染の蔓延、気候危機、貧困や格差、ジェンダー問題など世界が直面する深刻な危機にもかかわらず、膨大な資源を軍事的対立と軍拡のために注ぎ続けています。

しかし、21世紀はもはや、核大国や核に依存する国々のリーダーが、国連憲章や国際法、世界の人々の命の尊厳と平和の願いを無視して、力によって支配できる時代ではありません。「核兵器の廃絶」や「核兵器のない世界」の実現は、すでにこれまでのNPT再検討会議で核大国も受け容れた世界の合意であり、核兵器禁止条約は86か国が署名、54か国が批准し、2¥130か国が支持しています。それへの世界諸国民の支持は、日本でも、米国やカナダ、西欧諸国など、調査がおこなわれた国ではどこでも70%を超えています。

2021年「平和の波」の行動は、核兵器の廃絶を共通の目標とし、すべての核保有国にその実行を求め、自国の政府に核兵器禁止条約の支持、署名、批准を求める行動を共通の形態とするグローバルな連鎖行動です。私たちは、人類の生存と相容れない核兵器の残虐な破壊力を「安全の保証」と信じるリーダーたちが、核兵器禁止条約を受け容れようとしないことを知っています。しかし私たちの行動は、単にそれぞれの国の支配者だけに向けたものではありません。それは、それぞれの国でも国際政治でも、主権者である国民の核兵器禁止を求める圧倒的な意思を創り上げ、発揮するための行動です。

そのために、行動の起点となる日本では、外交や防衛関係の閣僚経験者、ノーベル賞受賞者、科学、文化、スポーツ、芸術、宗教など各界のリーダーによる政府に禁止条約の署名・批准を求める署名をよびかけ、禁止条約調印から4周年の日7月7日には、全国紙の1面を割いた禁止条約への参加を求める全面広告が企画され、すでに30%を超える全国の地方議会が日本の禁止条約参加を求めて決議し、また、5月6日から8月4日まで、全国11のコースを足で、あるいはオンラインで歩く国民平和行進など、2021年世界大会と「平和の波」を成功させる多くの行動が開始されています。

みなさんが、このよびかけを支持し、それぞれの地域社会で行動計画を立て、被爆76年の8月、全国、全世界でヒバクシャと連帯し、核保有国に核兵器の廃絶を、それぞれの国の政府に核兵器禁止条約への支持と参加を求め、人々に核兵器全面禁止・廃絶の行動に加わるよう求めましょう。

なお、8月6日8時15分、9日11時2分、広島・長崎に原爆が投下された時刻、両市では何十万人もの市民や遺族が黙とうをおこないます。その時刻に、2021年「平和の波」行動のシンボルとして、広島・長崎の被爆写真を掲げ、行動をしましょう。海外の友人のみなさんには、広島・長崎の被爆写真のセットを贈ります。みなさんの行動計画とともに、希望をお寄せください。

名称:核兵器廃絶国際共同行動、2021年「平和の波」

日時:2021年8月2日から8月9日

開始宣言:8月2日10時 原水爆禁止2021年世界大会-国際会議

終結宣言:8月9日正午 原水爆禁止2021年世界大会-ナガサキデー集会

共通の目標:核兵器廃絶

共通の形態:自国の政府に核兵器禁止条約の支持、署名、批准を求める行動

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原水爆禁止2021年世界大会 オーストリアとマレーシア政府代表の参加決定

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【動画・資料あり】「つなごうパンフ」オンライン学習会

日本原水協は6月19日、「つなごうパンフ」オンライン学習会をおこない、安井正和事務局長が講師を務めました。

「つなごうパンフ」学習会資料(PDF)ダウンロード

【動画あり】6/16 21:00 IPBアジアウェビナー第5弾:平和と正義を求めるアジアのZ世代の声

210616_IPBアジアウェビナー「Z世代の声」プロフィールなど詳細はこちらダウンロード […]

核兵器・大量破壊兵器の廃絶へ 枯葉剤被害のビデオ・パワポ3点セットDVDの普及を!

左から時計回りに、坂田雅子監督監修のビデオ、石川文洋氏の写真、中村悟郎氏のパワポタイトル画面

「被爆者と枯葉剤被害者へ支援と補償を!核兵器と大量破壊兵器の被害を二度と繰り返すな!」未曾有の被害を受けた日本とベトナムの共同の運動が始まっています。

昨年、枯葉剤被害者協会(VAVA)とベトナム平和委員会は、98万の「ヒバクシャ国際署名」を集め、日本の運動に貢献してくれました。今年、8月10日は、ベトナム戦争で枯葉剤被害を受けてから60年目を迎えます。被爆者と同様に、60年が経とうする今も、枯葉剤の影響で300万人以上が苦しんでいます。

DVDは、これまで枯葉剤被害の実態を広め、支援にとりくんできた写真家や映画監督の協力で完成しました。DVDを普及・活用し、被害者への支援・補償、核・大量破壊兵器の廃絶のための運動を進めましょう。枯葉剤被害者への募金活動もよろしくお願いします。

【DVD内容(3点セット)】・ビデオ「今も続く枯葉剤の傷跡」ベトナム国営放送制作・坂田雅子監督監修・パワポ「ベトナム戦争と枯葉剤」中村梧郎(フォトジャーナリスト)制作・パワポ「今も続く枯葉剤被害」石川文洋(報道写真家)制作頒価:1枚1500円(税込、送料別)。収益の一部が募金になります。問い合わせは日本原水協まで。

【動画(日本語同時通訳)・発言資料有り】第13回アジア・ヨーロッパ人民フォーラム総会(AEPF13)分科会II「核兵器禁止条約を力に‐非核平和のアジア・ヨーロッパを」

210521_AEPFパネリスト発言ダウンロード […]

【動画・日本語同時通訳有り】第13回アジア・ヨーロッパ人民フォーラム 「戦争犠牲者と大量破壊兵器被害者との連帯オープンスペース」

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学習パンフレット「手をつなごう 核兵器のない世界と未来へ」完成!

核兵器のない世界へ向けて、核兵器禁止条約に参加する日本の実現を国民的に働きかける学習パンフレットが完成しました。

いま、尖閣列島、南シナ海、台湾問題での緊張が高まっています。核兵器を持った国同士の軍事対決がエスカレートした結果、核兵器の使用につながりかねません。唯一の戦争被爆国である日本がアメリカにも中国にも言うべきことを言い、アジアと世界の平和と安全に役割を果たすためにも、核兵器禁止条約に参加することが求められています。

このパンフレットは、核兵器禁止条約発効の意義、核兵器のない世界の展望、運動の役割とともに、「核兵器で平和は守れない」「『核の傘』依存は危険」と「核抑止力」論の誤りに切り込んでいます。

核兵器禁止条約への日本政府の署名・批准を求める署名をひろげる大きな力になる内容です。ぜひお読みください。

「手をつなごう 核兵器のない世界と未来へ」(つなごうパンフ)【体裁】B5版24ページ・オールカラー【発行】原水爆禁止日本協議会【頒価】250円(税込・送料別)ご注文は、あなたの街の原水協まで

2020年の世界の軍事支出、約2兆ドルに上昇

SIPRI(ストックホルム国際平和研究所) プレスリリース2021年4月26日

地域ごとの軍事支出額推移(1988–2020)

(ストックホルム、2021年4月26日)ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が本日発表した新しいデータによると、昨年の世界の軍事費総額は、2019年から実質2.6%増の1兆9810億ドル(約214兆円)に上った。2020年の5大支出国は、米国、中国、インド、ロシア、英国で、合わせて世界の軍事費の62%を占めた。中国の軍事費は26年連続で増加した。

パンデミックの初年に軍事支出は増加

主にコロナウイルスパンデミックの経済的影響により世界の国内総生産(GDP)が4.4%縮小したこの年(国際通貨基金による2020年10月の予測)に、世界の軍事費は2.6%増加した。その結果、GDPに占める軍事費の割合(軍事負担)は、2019年の2.2%から2020年には世界平均で2.4%に達した。これは、軍事費負担の前年比増加率としては、2009年の世界金融・経済危機以降最大である。

世界的に軍事費が増加したにもかかわらず、チリや韓国のように、予定していた軍事費の一部をパンデミック対応にはっきりと振り替えた国もある。また、ブラジルやロシアなどいくつかの国では、2020年の当初軍事予算を大幅に下回る支出となっている。

SIPRI武器・軍事費プログラム研究員であるディエゴ・ロペス・ダ・シルバ博士は、「パンデミックが2020年の世界の軍事費に大きな影響を与えなかったことは、ある程度確実に言える」と述べている。「各国がパンデミックの2年目もこのレベルの軍事費を維持するかどうかは、まだわからない」。

米国の軍事費の大幅増加は2020年も継続

2020年の米国の軍事支出は推定7780億ドルに達し、2019年に比べて4.4%の増加となった。世界最大の軍事費支出国である米国は、2020年の軍事費総額の39%を占めた。米国の軍事費は、7年間の継続的な削減から転じて、3年連続の増加となっている。

SIPRIの武器・軍事費プログラム研究員であるアレクサンドラ・マークスタイナーはこう述べている。「最近の米国の軍事費の増加は、主に研究開発への多額の投資と、米国の核兵器の近代化や大規模な武器調達などのいくつかの長期的なプロジェクトに起因すると考えられる。これは、中国やロシアなどの戦略的競合国からの脅威とみなしているものへの懸念の高まりや、トランプ政権が弱体化したとみなした米軍の強化を目指したことを反映している」。

中国の軍事費、26年連続で増加

世界第2位である中国の軍事費は、2020年には合計2520億ドルに達したと推定される。これは、2019年に比べて1.9%増、2011年から20年までの10年間に比べて76%の増加となる。中国の支出は26年連続で増加しており、これはSIPRI軍事費データベースに登録されている国の中で、連続的増加としては最長である。

「中国は、昨年のGDPがプラス成長だったことから、世界の主要な軍事支出国の中で唯一、2020年に軍事費の増加にもかかわらず(支出全体に占める)軍事的負担割合が増えていない国として際立っている」とSIPRI上級研究員のナン・ティアン博士は述べている。中国の支出が継続的に増加しているのは、他の主要な軍事大国に追いつきたいという表明済みの願望に沿った、同国の長期的な軍事近代化と拡張計画によるものでもある。」

経済の低迷により、支出目標をクリアするNATO加盟国が増加

北大西洋条約機構(NATO)のほぼすべての加盟国で、2020年に軍事的負担率は増加した。その結果、NATO加盟国のうち、同盟のガイドライン的支出目標である「GDPの2%以上」を軍事費に費やした国は、2019年の9か国に対し、12か国となった。例えば、世界で8番目に多く軍事費を支出しているフランスは、2009年以来初めて2%の基準値を超えた。

ロペス・ダ・シルバ研究員は、「2020年には、軍事費をGDPの2%以上支出したNATO加盟国の数が増えたが、同盟の支出目標を達成するための意図的な決定というよりも、パンデミックによる経済的な影響の方が大きかった国々だからではないか」と述べている。

その他の注目すべき動き

・ロシアの軍事費は、2020年に2.5%増加し、617億ドルに達した。これは2年連続の増加となった。とはいえ、2020年のロシアの実際の軍事費は当初の軍事予算を6.6%下回り、例年よりもその減少額は大きかった。

・総額592億ドルの英国は、2020年第5位の支出国となった。英国の軍事費は2019年に比べて2.9%増加したが、2011年に比べると4.2%減少している。ドイツは5.2%増の528億ドルとなり、2020年の支出額は第7位となった。ドイツの軍事費は、2011年に比べて28%増加している。ヨーロッパ全体の軍事費は、2020年に4.0%増加した。

・アジア・オセアニア地域では、中国に続いてインド(729億ドル)、日本(491億ドル)、韓国(457億ドル)、オーストラリア(275億ドル)が最大の軍事費支出国となっている。4か国とも、2019年から2020年にかけて、また2011年から20年の10年間で軍事費を増やしている。

・サハラ以南のアフリカにおける軍事費は、2020年に3.4%増加し、185億ドルに達した。支出が最も増加したのは、サヘル地域のチャド(31%増)、マリ(22%増)、モーリタニア(23%増)、ナイジェリア(29%増)のほか、ウガンダ(46%増)だった。

・SIPRIが支出額を把握している中東11か国の軍事費を合計すると、2020年には6.5%減の1,430億ドルとなった。

・石油輸出国機構(OPEC)加盟国のうち、SIPRIが数値を把握している9か国のうち8か国が2020年に軍事費を削減した。アンゴラの支出は12%減、サウジアラビアは10%減、クウェートは5.9%減となった。非OPECの石油輸出国であるバーレーンも、9.8%支出を削減した。

・2020年の軍事支出額上位15か国のうち、軍事的負担率の増加が最も大きかったのは、サウジアラビア(0.6ポイント増)、ロシア(0.5ポイント増)、イスラエル(0.4ポイント増)、米国(0.3ポイント増)だった。

(以下、出典などの説明省略)

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【動画あり】4/21(水)17:00 IPB アジアウェビナーシリーズ第3弾:「現在の非核兵器地帯を超えて考えよう」

IPB アジアウェビナーシリーズ第3弾:「現在の非核兵器地帯を超えて考えよう」日時:2021年4月21日(水) 17:00-18:30(日本時間)主催:国際平和ビューロー(IPB)Zoomを使ったオンライン開催 (日英同時通訳あり・参加無料)

アジア・太平洋の各国・地域での非核兵器地帯の確立、非核の国づくりのたたかいの経験から学び、核兵器禁止条約発効後の現在の世界とこの地域の状況の中で、その成果と意義をどのように生かし広げていくかを討論するウェビナーです。

一国非核化を果たしたモンゴル、非核法を実現したニュージーランド、フィリピン、そして米軍基地建設と軍事化に反対してたたかう韓国、グアムの代表とともに、兵庫県原水協の梶本修史事務局長が非核「神戸方式」と日本の非核化のたたかいについて発言します。

ウェビナーのコンセプトノート:

パンデミックや気候変動だけでなく、核兵器の脅威は依然として存在しています。核兵器禁止条約(TPNW)の発効は、非核兵器国(NNWS)がこの脅威に対処するための重要な一歩であり、核兵器がもはや核兵器国の独占的な領域ではないことを明確に再確認するものとなりました。核抑止力や、究極の平和は究極の恐怖の中にあるなどという論理は、もはや受け入れられるものではありません。しかし、核兵器国とその同盟国の反応を見ると、核の脅威を低減するのは容易なことではありません。

非核兵器地帯(NWFZ)の設立は、非核兵器諸国が核不拡散と信頼構築に向けて行うことができる現実的な貢献であり、5つの核兵器国は非核兵器地帯に対して安全を保証しています。現在世界に存在する5つの非核兵器地帯は、119の国と18の地域で構成されており、約20億人の人々がそこに暮らしています。現在、第二世代の非核兵器地帯を設立しようとする動きがあります。つまり、紛争のさなかにある地域や、中東、北東アジア、北極圏など、大国が地政学的な利害関係を有している地域に非核兵器地帯を作ろうということです。これらの地域的地帯では、多数の国々が集団で安全を確保することは重要な役割を果たしています。

しかし、インド太平洋地域には、その地理的な位置や、政治的・法的な問題などやむを得ない理由で、地域的な非核兵器地帯に加わることができない国家や領土が存在します。これは、国際法上の抜け穴となるだけでなく、実際にはまだ確立されていない「核兵器のない世界」において、核の「死角」や(良く言っても)グレーゾーンを作り出すことになります。周知のように、核兵器のない世界とは、その中で最も弱い部分に等しい強さしか持つことができません。それゆえ、死角やグレーゾーンのリスクにはもっと注意を向ける必要があります。

核兵器国は、地域的なNWFZの設立に原則的には同意していますが、単一国家の非核兵器地帯(SS-NWFZ)に関しては、それを認めると自国に不利な前例ができ、地域的なNWFZ地帯の設立に「水を差す」ことになるとして、これまでのところ受け入れに消極的です。このようなアプローチには論理的な疑問が生じます。つまり、地域的なNWFZと同様に国際的な信頼、安全保障、安定に貢献する単一国家NWFZの前例を作るのか、あるいは故意に核の死角やグレーゾーンを作り出して核軍拡競争を継続し、不信感をさらに深めることのどちらが重要なのか、という疑問です。しかし一方で、この問題にうまく対処することは、地域的な安全保障だけでなく、21世紀の共通の安全保障にも貢献することになるでしょう。

これまでのところ単一国家の非核兵器地帯の問題を推進してきたのはモンゴルだけです。法的な抜け穴や実際の運用を念頭に置きながら、10数か国の国々や地域に影響を与えるこの問題に取り組むべき時が来ているのではないでしょうか。

4月21日に開催される国際平和ビューローのアジアグループによるウェビナーは、小国や自治権のない領土が核兵器のない世界に合流するにあたって直面している課題を学ぶ機会となるでしょう。その共通の大義のためには、IPBをはじめとする国際的なNGOの理解と支援が必要です。みなさんの参加をお待ちしています。

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