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ビキニデー

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この歴史的機会(historic opportunity)を逃がしてはいけない
李俊揆(イ・ジュンキュ、韓神大学統一平和政策研究院先任研究員)

2019年3・1ビキニデー日本原水協集会 国際交流会議(2月27日)

皆さん、またお会いできてうれしいです。特に今年のビキニデー集会は、ベトナムのハノイで歴史的な第二回目の朝米首脳会談が行なわれている時期と重なっています。とても意味深い集会として位置づけられると思います。

 今回のビキニデー本大会が開かれる3月1日、もう一歩前進した歴史を迎えることができるよう切実に願っています。

現在の国際政治で、核兵器競争を含めて新しい軍拡を促す傾向が存在していることは否定できない現実です。特に最大の核保有国である米ロは使用可能な核兵器や次世代核兵器の開発を打ち出し、さらには中距離核戦力全廃条約(INF)の廃棄など人類の核軍縮・核兵器撤廃(nuclear disarmament)への努力に背く行動をも取っています。またトランプ政権による「イランとの核合意(JCOPA、包括的共同作業計画)」の破棄は、核不拡散と核兵器撤廃において第一の邪魔者は誰なのかを見せてくれました。さらには国家主義の高揚、右翼ポピュリズムの登場、国内外での嫌悪扇動の頻発も国際政治の不安要素になっています。

しかしその一方で、世界の反核平和運動は、核兵器禁止条約の成立という成果をあげ、条約の発効と、禁止を乗り越えて核兵器撤廃にむかって前進しています。もちろん私たちが注目すべきなのはそれだけではありません。去年のノーベル平和賞の受賞者決定にまで影響を与えたと言われている「#MeToo」運動、銃器規制への声をあげて立ち上がったアメリカの学生たち、アメリカの選挙で「ソーシャリスト」を自称する若い政治家たちの躍進、難民拒否や差別に立ち向かう世界的な動きなど歴史の逆流に対抗する、いや乗り越える市民連帯のさまざまな例は、世界を動かしているのは他でもない私たち市民であるという確信を強める確実な根拠なのです。

また私たちは、去年から進行している朝鮮半島の平和局面を体験しています。いわゆる「北朝鮮核問題」、その三十年近くの歴史はいろいろと紆余曲折がありましたが、その中でも朝鮮半島の平和と非核化が朝鮮半島民衆の歴史課題であり、東アジアにおいて新しい平和の秩序を築きあげるきっかけになるというコンセンサスを作り出し、維持してきたのは、「核戦争防止、核兵器禁止、核兵器撤廃(=反戦、反核、平和)」を掲げてたたかってきた世界反核平和運動の力であると言って良いと私は信じています。

去年1月から始まった朝鮮半島の平和局面は、朝鮮半島の平和と非核化だけでなく、この地域に依然として残されている東アジア冷戦(East Asian cold war)の構造を解体し東アジア国際秩序を変革する歴史的機会(historic opportunity)だと考えています。朝鮮半島の分断体制(division system)は、植民地主義・帝国主義、米ソ冷戦の産物であり、東アジア冷戦の焦点でした。世界の冷戦が崩壊した後には、東アジア地域で冷戦構造が生命力を維持する「餌」のような役割もしてきました。東アジア冷戦を作り出したサンフランシスコ条約は、朝鮮戦争の最中だった1951年に締結され、同じ日に日米安保条約も結ばれました。1965年の韓日条約はそのサンフランシスコ条約の下でできました。振り返ってみれば、歪んだ戦後の韓日関係と朝日関係も、朝鮮半島分断体制と東アジア冷戦によって作り出されたものなのです。だから朝鮮半島平和プロセスによって朝鮮半島の分断体制が揺れると、東アジアの国際秩序も大きく変わらざるをえません。

国際政治の現実の側面からしても、朝鮮半島平和プロセスの進展は東アジアへ大きいインパクトを与えることになります。朝鮮半島の南北は、去年4月27日に分断の象徴である板門店で事実上の戦争終結宣言をしました。しかしまだ公式に朝鮮戦争を終息させて平和体制に入ったわけではありません。七十年にわたる朝鮮半島の南北対決と朝米の敵対関係を清算するには平和交渉と平和条約が必要です。平和会談と平和条約のためには、少なくとも朝鮮半島の南北と、米、中の4者による多国間協議を開かなければなりません。しかも平和条約やそれによって誕生した体制(system)を保証する国際的措置までを考えてみれば、朝鮮半島の平和プロセスによって東アジア地域に多国間の協議体が構成されることになるのです。

さらに去年の板門店宣言は、三番目の項目で朝鮮半島の平和体制を定義しています。その中身は、「不可侵、軍事的信頼構築、軍縮、平和条約、完全な非核化」なのです。つまり板門店宣言によれば、朝鮮半島の平和プロセスには、非核化だけでなく軍事的信頼構築や軍縮が含まれます。まずは北朝鮮の核武装が、通常兵器での劣勢を挽回するための非対称戦力の開発であることを鑑みての内容だと考えられます。北朝鮮はアメリカ、または韓米同盟や韓米日同盟の脅威に対抗する抑止力の確保を核開発の理由として掲げてきました。従ってその核兵器の放棄には、軍事的信頼構築と軍縮が伴わざるをえないのです。

その一方で、その項目―それから板門店宣言の移行のために結ばれた去年9月ピョンヤン宣言での「軍事分野合意」―は、朝鮮半島の平和プロセスを東アジアのレベルに拡散していく方向性を示すところでもあると考えます。つまり朝鮮半島平和プロセスの進展を、東アジアでの信頼構築と軍縮を通じた平和へ拡散していくためには、多国間の共通の安全保障協議への展望と実践につなげていかなければならないということです。

ここで、韓国の平和運動や市民社会が、朝鮮半島の平和体制構築には東アジアにおいての多国間協力が必要不可欠であり、その意味で朝鮮半島平和体制は東アジア的課題でもあると主張してきたことが正しかったことを確認できます。また韓国の平和団体は、東アジアにおいて共通の安全保障を目標とする多国間協力体制構築の過程で、東北アジア非核地帯の実現が重要な踏み台になりえると提案してきました。

私は特に、平和憲法と非核三原則を守り、右傾化している政府・政権与党に対して「被爆国としての平和外交」を要求し戦っている日本の平和運動・市民社会が、朝鮮半島の平和・非核化プロセスが進行している中で、東北アジア非核地帯構想を提起すれば、一層意味深い提案になると考えています。

1994年「ジュネーブ枠組み」から2000年の劇的な第1回目の南北首脳会談と朝米コミュニケ発表、それから2005年「9.19共同声明」から2007年第2回目の南北首脳会談までの時期。私たちは2回の歴史的機会を失いました。ビキニデー集会が行なわれている今現在、朝鮮半島の平和局面がいつまで続けられるか、または「平和体制」と「完全な非核化」がほんとうに達成できるのかを予測できる人は、私たちの中で、だれもいないと思います。しかしこの場に集まった皆さんと私は、今回の歴史的機会は、絶対に逃がしてはいけないという気持ちは共有しているのではないでしょうか。

今回の局面に対しては、懐疑的な見方も少なくありません。例えば、アメリカでは、従来の慣性と先入観、それから嫌悪―北朝鮮またはトランプに対して―が原因で、懐疑的な見方が多数を占めていると言えるでしょう。また朝鮮半島の内外には既成秩序の動揺に抵抗する勢力も存在しています。彼らは既得権益勢力(establishments)なので相当なパワーを持っています。朝鮮半島をめぐる国際政治はもっと複雑で、朝鮮半島は昔から東アジア国際政治の矛盾が凝縮し、強大国の利害関係が交差する空間でした。朝鮮半島の情勢が激動している現在も、米中の微妙な緊張関係をはじめとする強大国の政治(great power politics)が、朝鮮半島を取り巻く国際政治に、錯綜しています。

だからこそ、「反核、平和、人権、環境」という普遍的価値に基づいた、国境を越える市民連帯の力が問われているのではないかと思っています。特に朝鮮半島から東アジア国際秩序の変革の風が吹き始めた今現在、そしてこれからが、韓国と日本の市民連帯がさまざまな分野と色々な歴史的場面で蓄積してきた力を出さなければならない時期であると確信しています。

ご静聴ありがとうございます。



 
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