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原水協(原水爆禁止日本協議会)
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ビキニデー

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冷戦後の時代: 核兵器廃絶と核戦争防止の緊急課題
ジョゼフ・ガーソン、平和・軍縮・共通安全保障キャンペーン(アメリカ)

2019年3・1ビキニデー日本原水協全国集会・国際交流会議(2月27日)

 ことしもビキニデー集会に参加できることをうれしく思います。北米の先住民にたいする大量虐殺、何世紀にもわたるアメリカの奴隷制と黒人差別、南半球全域での帝国戦争などと同じように、ロンゲラップや他のマーシャル諸島島民は、人種主義と核兵器至上主義の祭壇で生贄にされました。米国民の一般的なイメージのなかで彼らは人間と扱われず、特権と権力の追求の中で犠牲にされたのです。

 しかし砦の壁の外側で犯された暴虐は、そこに閉じ込めておくことができません。最近の研究によれば、1967年までに米国民もまた34万から69万の人々が放射性降下物によって生命を奪われました(注1)。

 とはいえ私たちは、核のトラウマを絶滅兵器である核兵器の廃絶のためのもっとも強力な力に変えたマーシャル諸島や日本の人々の知的道徳的力を称えずにはいられません。

 ご存知のようにトランプ政権の国家安全保障声明が中国とロシアに対する三つの戦線での「長期戦争」(注2)の準備をよびかけ、21世紀の怪獣キメラともいうべき「全領域での優位」を追求するなかで、米国は、南北戦争に至った時代以来もっとも深刻な政治的危機に直面しています。わが国の選挙制度の複合的腐敗、トランプによる議会を迂回した違憲の非常事態宣言、人種主義、真実・メディア・法と科学の支配に対する攻撃、そして気の遠くなるような所得格差などが、米国の衰退を加速させています。しかしわが国の憲法体制と民主的文化の一部の分野はしぶとく生きており、トランプによる専制政治は、遅くとも2020年には終焉を迎えるでしょう。

 しかしながら私たちは、社会の軍事化と、途方もない軍事支出を議会が気前よく承認しているという現実に直面しています。全世界の支配権を維持しようという無駄な努力のために、米国は核軍備と運搬手段全体を刷新し、ロシアと中国を相手に地上、海、宇宙、サイバー空間の全領域にわたる戦争に備えており、大国間で危険な軍事対決が起こる危険がますます増大しています。

 この米国の危機は、重大な時期に起こっています。私たちは今や未知の領域に踏み込んでいます。75年に渡る比類ない米国の軍事的、経済的、外交的優位は終わりました。死滅しつつある秩序と、生れ出るために苦闘している新しい秩序との狭間の空白の期間は、不確実性と核戦争を含む生存に関わる危険が増大する時期です。それはまた、歴史の弧をより大きな平和と正義の方向へとたわめることの不可避性と好機とを私たちの前に提示しています。

 トランプが権力を握る前に、「冷戦後」の時代は終焉を迎えていました。中国が台頭して「対等な競争相手」となり、プーチンはロシアの急落する経済を安定させ、クレムリンを軍事的に再活性化していました。サイバー活動その他の非対称の経済的軍事的能力は米国の戦略的有利を浸食してきました。そしてブッシュとチェイニーのイラク侵攻は、大中東地域を不安定化させ、その油田地帯での米国の覇権に終止符を打ちました。

 共和党員で前国務省政策企画局長のリチャード・ハースは、われわれは新たな冷戦の中にあるわけではないと忠告しています。彼は、むしろ第一次世界大戦に至る時期との類似性を指摘しています。それは、新興諸国と衰退しつつある諸国の間の緊張、複雑な同盟の構造、激化する民族主義、領土紛争、新たな技術を伴う軍備競争、経済統合と競争、何をやりだすかわからない人物の登場などです。

 トランプの貿易戦争、核および気候に関する国際条約の廃棄やじゅうりん、強権的独裁者の擁護、米国の同盟諸国への侮辱、一カ月にわたる政府機能の閉鎖などがこの動きを助長してきました。

 「アトミック・サイエンティスツ」誌は、「核の危険と気候変動により人類は午前0時2分前のところに立っている」、と前年の警告をくり返しました。彼らは、首 尾一貫した米国の対外・軍事政策の欠如の危険性を非難し、トランプの「核態勢見直し」について、米国の第一撃攻撃ドクトリンを再確認し、より使い易い核兵器の製造と配備を促進し、米国の核軍備と運搬手段の強化のために巨額の支出を進め、米国が核戦争の引き金を引きかねない状況を増大させている、と指摘しました。また、全ての核保有国が核兵器への依存を強めており、冷戦のレトリックに逆戻りし、米ロ軍備管理交渉が行われていないことも引き合いに出しました。

 トランプ、ボルトン、ポンペオはそれ以後も米国を中距離核戦力撤廃条約(INF)から脱退させました。それはロシアを懸念してというだけでなく、中国の台頭を封じるためでした。ロシアと米国はどちらも明らかに条約に違反していましたが、前向きの解決は、軍備管理交渉の再開をというロシアの提案を米国が受け入れることでした。それより先の米国による弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM)脱退、テヘランに対して「レジームチェンジ(政権交代)」キャンペーンを進めるためイラン核合意の蹂躙、そして今回のINF条約の破壊について、ロシアのラブロフ外相はいみじくもこう述べました。「(米国による)軍備管理体制全体の破壊とともに、新しい時代が始まった…。次に来るのは、2021年に期限切れとなる戦略兵器削減条約(新START)だろう。」(注3)。

 トランプが外交の分野で鉄球を振り回しながら、「われわれは他の誰よりもはるかに多くカネを持っている」とぶち上げて新たな軍備競争を求めていますが、悲劇的なことに、核依存症の危険の源はワシントンだけではありません。INF条約崩壊から数時間後には、米国、ロシア、フランスがほとんど同時にミサイルの「実験」を強行しました。プーチンはトランプの核の狂気に加わり、人類が核破局の瀬戸際に瀕した「キューバミサイル危機級の事態に備えている」と述べています。ロシアは、自国の核の三元戦力を更新し、ヨーロッパへの米国の新たなミサイル配備にはいかなるものにも対抗すると脅し、中国と核政策を調整しあっています。中国は、軍備を増やし、ミサイルを多弾頭化し、新たな運搬手段を開発することによって、報復攻撃力を強化しています。イギリス、フランス、イスラエルはそれぞれの軍備を更新しつつあります。インドとパキスタンは両国間の核軍備競争にはまり込んでおり、さらにインドの戦略兵器は中国に対する核の戦闘にも備えています(注4)。そして、トランプ・金正恩外交が破局的な「炎と怒り」の脅迫から引き下がる道をトランプに与え、南北関係改善の道を開いている今も、朝鮮民主主義人民共和国は今後何年にもわたり核保有国にとどまる態度をとっています。

 ですが私たちは、来年発効する見込みの核兵器禁止条約の交渉で被爆者の証言が重要な役割を果たしたことからも、下からの人々の圧力で世界を変えることができることを知っています。そのような力がふたたび全世界で活気づき、絶滅を目ざす勢力を抑え、世界の核兵器を最終的に廃絶するために活動しています。

 米国ではいま、民主党の大統領指名を争っているエリザベス・ウォーレン上院議員が、人々の要求に応えて、新世代の核兵器と運搬手段のための支出をやめるよう要求しています。そして彼女と下院軍事委員会のアダム・スミス委員長は、先制不使用宣言を求めています。これだけでは十分ではありません。しかし何年も日陰に置かれた核兵器をめぐる議論はいま、外交・軍事政策討論の中心に戻りつつあります。

 核兵器禁止条約を推進するキャンペーンがあります。しかし「社会的責任のための医師の会」と「憂慮する科学者の会」がよびかけ、「平和・軍縮・共通安全保障キャンペーン(CPDCS)」とアメリカフレンズ奉仕委員会が支持する「瀬戸際から引き返せ(Back from the Brink)」キャンペーンは、よりダイナミックで強い影響力を持っています。1980年代の核兵器凍結運動の伝統の上に立って、このキャンペーンはタウンミーティング、市町村議会、州議会などでの、以下の五つの要素を掲げた決議案への投票を通じ、草の根で勝利しつつあります。それは、核先制使用の放棄、核戦争を開始する大統領の無制約の権限の廃止、米軍の警告即応態勢の解除、1.7兆ドルをかけた核兵器近代化の中止、そして「核武装国間で検証可能な核軍備全廃の合意を積極的に推進する」の五つです。

 マサチューセッツでは、私たちの州全体にわたるネットワークが、核軍縮、イエメン戦争の終結、そして軍事支出を削減して人々の暮らしに資金を転換するなどを掲げた9つの法案を提案しました。

 CPDCS(平和・軍縮・共通安全保障キャンペーン)は、国際平和ビューロー(IPB)、「平和と地球」ネットワーク、ローザ・ルクセンブルグ財団とともに、来るNPT準備委員会の期間中、重要な国際平和軍縮会議の開催を企画しています。著名な運動の代表者や準備委員会に参加する軍縮の提唱者たちの結集は、台頭しつつある世界的な混乱とそれに対してわれわれの運動をどう構築するかについて分析する絶好の機会となるでしょう。私たちの会議はまた、2020年NPT再検討会議の時に、広島・長崎の被爆75年を祈念して運動を積み上げるために、ニューヨークで原水爆禁止世界大会を計画する機会ともなるでしょう。

 最後に、重要なCPDCSのイニシアチブを強調したいと思います。それは現在の危険な瀬戸際政策に代わる、共通の安全保障のビジョンを創ることです。冷戦の終結に大きく貢献したパルメ委員会の伝統の上に、私たちはヨーロッパやロシアのパートナーとともに、新たな共通の安全保障秩序とそれを促進する国際ネットワーク形成を明快によびかける国際的声明の準備を進めています。さらに、米国と中国の両方で強権政治が強まっているもとで、これと並行して米中/アジア太平洋の共通の安全保障に向けた声明を作ろうと取り組んでいます。この重要なイニシアチブの土台作りに、原水協と一緒に取り組めることを楽しみにしています。

 結びに私は、人間と核兵器が長期に共存するなどということはできないこと、そしてもっとも暗いのは夜明け前だという誰もが知っている事実をともに確認し、私たちの希望と決意を新たにしたいと思います。歴史の弧を平和と正義の方向へと曲げることができるのは人民の力です。団結して、勝利しましょう。


注:

1.ティム・フェルンホルツ、「米国の核実験は我々の知る数よりもはるかに多くの市民の命を奪った」 ポートサイド、2017年12月29日

2.マイケル・T・クラーク、「ペンタゴンは三つの戦線で「中国、ロシアとの『長期戦』を計画」、トム・ディスパッチ、2018年4月3日

3.ジェイスン・レモン、「ロシアが警告 - 米国はトランプの核条約離脱後、全軍備管理体制を破壊する!」

4.ベンジャミン・ザラ、「次の核軍備競争は前の競争とどう違うのか」



 
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