ビキニデー

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被爆60年-核兵器廃絶・国際フォーラム

ワリード・ハッガッグ

駐日エジプト大使館書記官

エジプトアラブ共和国・ヒシャーム・バドル大使のスピーチ

みなさんの集会に参加させていただきありがとうございます。ヒシャーム・バドル大使は緊急の用事でこの重要な集まりに出席できませんが、大使のスピーチをお伝えする機会をいただき、とても光栄に思います。
この機会に日本原水協に対し、8月のフォーラムに招かれ、核軍縮の問題で政府の立場を説明する機会をいただいたことに、お礼を申し上げます。
しかしその以前にも、広島、長崎の人々に敬意を表するのは私の責任であると思っていました。彼らの犠牲は無駄になるべきではないと思っています。日本のりっぱな市民の方々が、究極の恐怖に遭遇し、究極の犠牲を払いました。私たちがここに集い、今日促進し、できれば明日達成したいと思っている共通の願いがどれほど重要なものかを、被爆された方々以上に理解できる人は多分誰もいないでしょう。
エジプトは1968年に核不拡散条約に調印、81年に批准しました。その条約の批准書を寄託する際、エジプト政府は、当時、わが国の立場を詳細に述べた声明をつくりました。
「人類の安全を脅かす核兵器の拡散は抑制されねばならないことを確信し、エジプトはNPTを調印し批准した。エジプトは、他国に先駆けこの条約の迅速な締結をよびかけ、1963年の大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約の締結という成果を導いた初期の努力を補完するものとして、NPTの締結に先立つ交渉で建設的な役割を果たした国の一つである。」
1981年のエジプトの声明は、既存の核保有5カ国の核兵器にも言及しました。
「エジプトは、核保有国、特に、二つの超大国に対し、強い不満を表明する。それは、核軍拡競争の中止と核軍縮に関する有効な措置をとらないからである。結果として、エジプトはこの機会に、条約に加盟している核保有国に対し、核軍拡競争をやめ核軍縮を達成するための義務を果たすようよびかける。」
声明はまた、NPTがその目的と目標を達成することができるように、世界各地に、非核兵器地帯を創設することの重要性を明らかにしました。
私が先に申し上げたように、この声明は1981年に出されたものです。以来、24年あまりが経過しましたが、当時出されていた問題が、当時と変わることなく、今でも有効で重要になっています。確かに、世界はこの24年間大きく変わっています。国際関係の構成を進化させる力がはたらいています。しかしそれにもかかわらず、残念ながら、多くの問題がこの期間に変化しなかったのです。核保有国は依然として存在し、NPTの第6条の義務を守ろうとしていません。皮肉なことに、核拡散を防止しそれとたたかうために人的、技術的、財政的資源を増大することを最も声高によびかけてきた人々は、自国の核兵器にいつまでも固執する人たちです。核兵器に新たなチャンスを与えることを考えている人たちもおり、NPTの存在そのものを危うくしています。
私たちは、核兵器は現在、資産よりも負債になっていると強く主張しています。既存の核保有国は、私たちが決して使用されることを望んでいない多数の核兵器を維持するために膨大な資源をつぎ込んでいます。一方で、事実上の核保有国は、軍事的な地位を誇示する最大の象徴と考えられているもののために、国民がとても必要としている資源を彼らから奪っています。
エジプトは、普遍的な核軍縮をすすめるために、あらゆる手段をつくしてきました。この目的のために、国際原子力機関(IAEA)の中で、国連で、そして、関連する多国間のまたは地域の会議などで尽力してきました。また、ブラジル、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ、スウェーデンといった、同じ目標を達成するために努力している国々と、新アジェンダ連合をつくりました。新アジェンダのメンバーは、NPTの各条項は、すべての加盟国に対しいつでもどんな状況のもとでも拘束力をもっている、そして、すべての加盟国は、条約上の義務の厳密な順守に関して全面的に説明責任があると考えています。私たちはまた、国際的に認知される非核兵器地帯の創設は、究極的に世界と地域の平和と安全保障を高め、普遍的な核軍縮の達成に貢献すると確信しています。
中東のように緊張がある地域で、核兵器は邪悪な影を投げかけ、すでに複雑な状況をさらに複雑にしています。核兵器は、それらを所有している人たちに安全をもたらしてきたでしょうか。真実は、真の恒久の安全保障は、正義と、人々が尊厳を持って生きる基本的権利の尊重、民族の主体性と抱負の尊重に基づく平和の機構からしか生まれないということです。エジプトが中東から核兵器やその他の大量破壊兵器をなくする努力を強めているにもかかわらず、この地域で唯一核兵器を保有しているイスラエルは、この問題にほとんど無関係な態度をとっています。IAEAの加盟国は、イラクの時と同様、北朝鮮やイランの核計画の問題を進んで取り上げ長い話をしますが、イスラエルの核問題に多くの関心をむける人はほとんどいないようです。
この明らかな矛盾にもかかわらず、明白な事実は、二重基準が中東における大量破壊兵器の問題の原則となり続ける限り、そして、その地域がひき続きうんざりするような政治問題や未解決の安全保障問題に悩まされている限り、軍事的な不均衡を是正し自国の安全保障を守るために、結局は大量破壊の手段を求めるようになる国が増えるということです。そのような状況を回避するために、私たちはみな、中東の平和と安全という大義を実現するというより強固な意思を示さなければなりません。エジプトはこの地域の平和と安全のために粘り強く努力しています。中東における非核兵器地帯の創設のためのエジプトの努力は、詳細に記録されています。また、中東からすべての大量破壊兵器をなくすことをめざした、1990年4月のムバラク大統領のイニシアティブもひきつづき促進しています。エジプトは、安全で安定した中東を築くためにあらゆる手段を講じ、最も重要なこととして、中東の非核兵器地帯創設のためひきつづき努力します。しかし、国際社会全体の側に、これらの目的にとりくむ、同じほど強力な姿勢がなければ、これらの努力はみじめな失敗に終わる危険があります。
エジプトの外務大臣は、ほんの2週間前、安全保障政策に関する第41回ミュンヘン会議の際にこの問題で明確に言明しました。「中東の平和は、質量ともに最低のレベルの軍備で、すべてにとって平等な安全が保障される状況をつくらない限り、恒久で完全なものにはならない。この点で、いかなる国にもいかなる兵器システムにも例外なく、すべての大量破壊兵器の廃絶が、最優先課題にされるべきである。私は、この点で二重基準の適用は、いかなる国の安全も保障することにならず、逆に、地域的、国際的な平和と安全をおびやかす軍拡競争を激化させることになることを強調しなければならない。」
各国が2005年のNPT再検討会議で5月にニューヨークに集まります。エジプトは、この会議が、NPTが世界的な核軍縮と核不拡散体制の要石としてひきつづき重要であることを、言葉と行動で再確認する場となることを期待しています。それとして、加盟国はこの機会に、条約の下での相互の義務、特に、核軍縮の達成に関して、自分たちの決意を新たにすることが必要です。再検討会議はまた、世界で特に中東地域に関して、核不拡散を追求するという決意を再確認することも求められます。 
結論として、エジプトの確信をくりかえしたいと思います。既存の、および事実上の核保有国が、核兵器は自国の安全保障にとって最大の保証であるという理由で、核兵器を手放さないという行為は、他国も同様の保証を求めることにつながるということです。IAEAがその資源を全面的に使いその主要な目的に貢献できるようにすること、すなわち、原子力の世界の平和、健康、繁栄への貢献の促進、拡大を追求することを保証する唯一の措置は、核兵器の全面廃絶です。
今日、ここに集まっている私たち自身が、同じ確信を持ち、同じ結果を望んでいると思います。日本原水協は、この国際的な運動において、重要で影響力をもつ声です。私たちは、原水協が、人類の究極の理想である、核兵器の恐怖、その破壊力の脅威から解放された世界の実現まで、その崇高な使命をひきつづき果たされることを切に願います。
ありがとうございました。


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