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マゲド・アブデルアジズ
エジプト国連常駐代表 第一委員会での発言
2005年10月4日

 この第60回国連総会は、軍縮と国際的安全保障に関する諸問題については、「陰鬱」としか表現できないような雰囲気のなかで開催されている。現在の状況では、さまざまな多国間的制度において各国が行った約束や義務が履行される可能性は低いという兆候がみえる。これはすべてとは言わずとも多くの国々に、自らが行った約束を撤回する道を開くものであり、後世にとって非常に荒涼たる未来を予言するものである。

 1978年、第一回国連軍縮特別総会が最終文書のなかで、国際社会の軍縮分野での優先課題が核軍縮であり、そのつぎにその他の大量破壊兵器と通常兵器であると定めて以来、この三つの分野での国際的な多国間の枠組みにおいてはほとんど成果がなかった。国際レベルでは未検証のままだが二国間レベルでは一定の前進があったという事実にも関わらずである。

 1995年、NPTが無期限延長され、しかもそれはわれわれすべてが知っているように包括的な対策の一環としてのことであったにも関わらず、核軍縮への取り組みでは何ら具体的な前進はなく、同条約の普遍化は実現されず、締約国、特に核保有国は、この条約普遍化達成に向けて何ら意味ある努力を行わず、非締約国のなかに核兵器開発能力を有している疑いや、あるいは核兵器そのものを保有している国があるにも関わらず、われわれが目の当たりにしているのは、核保有国が条約上の約束に反してとこれらの国々との間でさまざまな核活動で協力を強めているという実態である。ここから生じる当然の疑問は、「われわれは、核兵器国として、あるいは非核兵器国として、この条約の誠意ある履行に本当に力を尽くしているのだろうか?」ということである。

 特にNPT締約国で非核兵器国であるわれわれにとって、この疑問への答えをさらに困難にしているのは、核兵器国とその核の傘から恩恵を受けている同盟諸国の側が、非核兵器国に対して条約上の義務を拡大しようと躍起になっていることである。彼らは諸国の条約脱退の権利を制限し、非核兵器国が条約上の譲り得ない義務を行使して平和的核プログラムを開発するのに必要な核物質・技術を入手するのを妨害し、条約府遵守が疑われるケースに対処するのに政治化され多重的な基準を適用し、これらの問題に対処するのに最善な国際的多国間的枠組みを排除し、NPT加盟や包括的保障措置の普遍化が未だに達成されていないのにモデル追加議定書の普遍的適用が必要だと主張している。これらすべてが、過去の経験からの教訓、特にイラクの場合にたいして必要な注意を払うことなく行われているのである。

 NPTの前提条件への逆流となる、さらに破壊的な傾向は、核兵器国の側に、軍縮のための13の措置を多国間的枠組みのなかで実施するという政治的意思が欠如していることである。この措置には、軍縮会議(CD)に核軍縮問題を扱う付属機関を設立すること、国際的に検証可能な核分裂物質カットオフ条約(FMCT)の締結、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効が含まれている。残念ながら、これらの13の項目とそのほかの措置が2000年NPT再検討会議の結果として核兵器国を含むコンセンサスで採択されたにもかかわらず、このような状況がおこっているのである。

 核不拡散についても状況は同じく悪い。中東での非核兵器地帯設立に向けた前進がこの上なく求められているにも関わらず、そしてそれは1995年の「中東に関する決議」の中心点であり、NPTの無期限延長と2000年NPT会議最終文書の関係パラグラフの不可欠な要素をなしており、イスラエルのNPT加盟なくしては達成されないままであるにも関わらず、実際には、中東に関する約束の実行については後退と約束違反のみが起こったのである。これらの約束は、1995年の「中東に関する決議」のみならず、イラクにおける大量破壊兵器廃絶が中東での非大量破壊兵器地帯の確立への第一歩であるとした安全保障理事会決議687号をも根拠に行われたものである。大量破壊兵器はイラクに対しては禁止されるが他の国々に対しては正当化され得るのだろうか?関係諸国は自らの条約上の義務や関連する安保理決議に基づく義務を果たしてきたのであろうか?安保理事会は1540号のもとでの約束を加盟国が実施するよう追求したほど熱心に、決議687号のこの部分について実施してきただろうか?

 われわれには新しいビジョンが非常に必要だ。軍縮問題に多国間的枠組みで対処し、それを通じてそのような枠組みへのコミットメントを再確認し、国連への信頼性と、加盟国としてのわれわれ自身に対する信頼性を維持する努力に再度取り組むために。そのようなビジョンの輪郭についてコンセンサスで合意に至らねばならない。さもなければ、NPTと、すべての集団的・国際的軍縮努力の崩壊に直面する危険を冒すことになる。特にもしわれわれが、大体において他を犠牲にして一部の国々のみの見解を反映している安保理決議を通じてのみ核軍縮に取り組むという、現在の道に固執すれば、その危険は大きい。

 優先課題としては大量破壊兵器のあとに来る通常兵器は、近年重要度を増している。この文脈においてエジプトは、通常兵器、特に小型武器・軽兵器が、とりわけアフリカでの国家間および国内武力紛争においてもつ直接的意味合いが非常に重要であると考える。われわれは、2005年7月に開催された「小型武器非合法取引の防止、除去、撲滅に向けた国連行動計画」第2回中間会合での討議を想起し、すべての国々がこの国連行動計画を各国国内レベルで完全に履行する責任を負っていること、および、国際社会がとりわけ発展途上国に対して、行動計画の目的を達成できるよう財政的・技術的支援を行う責任を負っていることを再確認することが重要であると考える。

 この点に関してエジプトは、加盟国が小型武器非合法取引を速やかにマーキング(製造過程における刻印)し、追跡するために現在行われている努力を歓迎し、その完遂に期待する。この目的のために、エジプトはオープンエンド作業グループの活動が成功裏に終了したことに貢献した。前記の国際的取り決めは今期の国連総会に提出されており、2006年に開催される「行動計画」再検討会議の成功に向けた必要な要素の一つとなるべきものである。

 軍縮の分野での国際的努力は、二国間の枠組みあるいは安保理事会の中ではなく、多国間的枠組みの中であらゆる分野にわたって取り組みを行うことなくしては成功できない。われわれの努力はまた、第1回国連軍縮特別総会で定め、合意した優先課題にしたがって行われねばならない。「政治的および戦略的状況の変化」がこれらの優先課題の変更を必要としている、という議論を受け入れることはできないし、安全保障状況や国際的力関係のバランスが、軍縮に関する諸問題に対するわれわれの見解を変えることを要求している、という議論も受け入れることはできない。それは、われわれがすでに合意したことの実施を失敗にみちびく処方箋にほかならない。

 その上で、エジプトはつねに、多国間的枠組みのなかで軍縮問題に取り組むことをめざすあらゆる集団的努力を支持し、われわれ世界が熱望する平和と安定の実現をめざして、軍縮分野での多国間諸合意の役割を強化するために奮闘するものである。

 

 

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