2004年原水爆禁止世界大会

 

メイナード・アルフレッド

ニティジェラ、アイルック環礁

マーシャル諸島共和国

世界中から参加されているみなさん、こんにちは。

マーシャル諸島でおこなわれた核実験プログラムを生きのびた者として、原水爆禁止世界大会の舞台でみなさんにお話しすることができ、とても光栄に思います。この重要な会議で、今日は政治家としてではなく、市民社会の一員として、みなさんにお話ししようと思います。まず初めにマーシャルから、特にアイルック環礁の人々と指導者たちを代表して、心からのご挨拶を申しあげます。私は、はじめてこの大会に参加しましたが、今日ここで、核による日本の悲劇をじかに聞けることを、とても嬉しく思います。

科学技術の分野において、大国になる、もしくは大国であり続けるための国際核軍拡競争は、核兵器廃絶に向けた枠組みを築くための取り組みにたいする最大の障害です。すべての人々に、これからお話しする、驚くべき事実について知ってもらいたいと思います。各国政府は、多くの時間、お金、エネルギー、資源を、福祉の向上にではなくむしろ軍拡のために費やしています。私たちが経験した核実験の爪あとについて簡単にその経緯をお話ししたいと思います。

1946年から1958年までに、アメリカは、6回の核実験作戦を行いました。合計67回の爆発、実に10万8千キロトンのTNTに相当する核爆発エネルギーでした。その結果、マーシャルの人々が被曝に苦しむことになりました。核実験ブラボー(アメリカが強行した、最も威力があり人類にとって致命的な核兵器の実験だった) は、1954年、3月1日、TNTに換算して1万5千キロトンあまりのエネルギーをもつ爆発を引き起こしました。私は、当時2才でした。ブラボー実験は、広島に落とされた原爆の千倍もの威力がありました。その日の朝、アイルックの人たちは、空の色が赤に変わるのを目撃しました。島全体が、ゴロゴロと鳴り、ものすごい強風が村々を襲いました。村は混乱に陥りました。人々は命の危険を感じ、世界の終りがきたのかと思いました。風がおさまると、今度は霧のようなものが立ち込めてきました。放射能を帯びた灰が、空から、地面にそしてさんご礁に降ってきました。核実験後の数年間に、アイルックの人々の健康も環境も大きく変化しました。多くが、甲状腺の病気になりました。正体不明の病気で亡くなった人や奇妙な病気にかかった人もいました。多くの女性はいまだに放射能が原因の体調不良に苦しんでいます。50年間にわたり、アイルックの人たちは、アメリカ政府から核実験に関する情報を知らされておらず、村人たちにも、放射能とその危険性について独自の知識がありませんでした。そのため、何の防衛策もとりませんでした。いつもどおり、外に出て、日々の生活を送りました。彼らは、死の灰を肺に吸い込み、死の灰に汚染された水や食料を口にしました。子供たちは、死の灰の粒子で遊んだり、灰をまじまじと手にとって調べたりしていたのです。あるとき、アメリカ政府の職員が、危険レベルに達する放射能を検出し、すぐに「4つの環礁」にいる職員とマーシャル住民を避難させるよう勧告を出しました。しかし、米政府は、当時400人いたアイルックの住民は避難させなくてよいと判断したのです。いまだ米国は、アイルックの被曝について公には認めていません。健康相談も、栄養相談も、その他の相談も行っていません。アイルックの土地と人々に及ぼしている放射能の悪影響を減らすためになんの努力もしていません。核実験プログラムによってもたらされた被害にたいして、健康診断も定期検診も補償も何も提供していません。広島、長崎の被害者もまた、大国が自分たちの権益のために世界征服を狙って起こしたむごたらしい大量殺戮の悲劇を経験しました。私は、広島、長崎の悲劇が繰り返されないことを願っています。

次に、現在の国際問題についてお話ししたいと思います。みなさんもお気づきだと思いますが、神を信じていると主張し精神論の重要性を説きながら、宗教にはかかわらない人たちが増えています。政治離れが蔓延し、投票率もますます低くなってきています。宗教も政治家も自分たちのことや自分たちが直面している問題に何かしてくれるわけではないと感じているからではないでしょうか。宗教団体も政治団体も、世界が直面する問題を解決するより、自分たちの組織の生き残りのほうが気にかかるのでしょうか。カシミール問題やイスラエル−パレスチナ問題は、始まってから50年以上もたっています。朝鮮半島の分離についても台湾海峡の問題についても同じです。なぜあまり進歩が見られないのか理解することは難しいかもしれません。簡単な解決法をすぐには思いつきませんが、解決に向けた希望と方法はあるのだということなら言えます。私たちは、核兵器を廃絶することで、世界に平和と安全をもたらすための取り組みに貢献しなければなりません。世界多数の人々は、戦争など望んでいません。大多数の人々は、隣人らと話し合う用意はあるのです。問題を解決するための策を話しあう用意はあるのです。より多くの良識的な人々が、戦争反対、紛争反対、平和守れの声をあげれば、私たちの目標は達成されるのだと確信しています。私たちが、立ち上がれば、世界の人々は耳を傾けるでしょう。これがなぜこの会議が、はつらつとして、前向きで、潜在的にも意義深い発展であるかというゆえんではないでしょうか。世界平和と安全を求める地球規模の運動を代表する会議です。広範な人々とのかかわりによって、黙っていることから声をあげることへと変化するような市民社会の始まりでもあるのです。自信を持って言えるのは、この会議が、公の会議にあまり登場しない小さくて影響力のないグループをも取り込むことに成功すれば、きっと核兵器廃絶の地球的ネットワークを築くことができるはずだ、ということです。この会議は、その機会ではないかと思います。それを成し遂げることで、紛争を終わらせ、平和をもたらし、敵同士を仲直りさせ、人類を思いやりのある分かち合いのひとつの家族にする役目を担うことができるのです。聞こえない声を聞いてもらえるように、見えないものを見えるようにするということが、この集まりが新しい国際秩序に貢献するということではないでしょうか。

ありがとうございました。

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