2004年原水爆禁止世界大会

原水爆禁止2004年世界大会

国際会議

国際反核法律家協会(IALANA)会長

国際司法裁判所、元副所長

クリストファー・G・ウィラマントリ判事

 議長、2004年世界大会実行委員会、市長、全国組織代表、平和運動の代表、被爆者のみなさん、そして善意あるすべてのみなさん、

 私たちはみな、世界を覆っている核の脅威をなんとか終わらせようとここに集まっています。今日、このような非常に重要な会合の始まりにあたって、出席者を前にお話しすることができるのは、非常な名誉であり光栄であります。ご承知のように、私たちは、全人類史上最も悲惨で破壊的で恐ろしい瞬間を思いおこし、それについて熟考しようとしています。それは、人類が到達した破壊的力と、その力の行使について規制ができなかったことを象徴した瞬間でした。これは、巨大な規模の残虐さをうみだす力に何らかの歯止めをかけられなければどんな結果が起こるかを象徴する出来事となりました。道徳的であれ法的であれ、文化的・宗教的であれ、いかなる同情心や社会的な抑制も、人道的・国際的規制も、このような人類に対する恐ろしい被害と苦しみを防ぐことはできませんでした。それゆえにその後は、「注意せよ、人類がこの兵器を破壊しなければ、この兵器が人類を破壊することになるだろう」が、その後の人類への非常に強い警告となりました。

 これは、古いやり方での紛争処理や、平和と戦争の扱い方が失敗し、この大きく変化した状況で問題に対処するのに適切な国際的管理の新しい原則が発展させられなければならないという警告でした。私たちが重視する人間、人類文明、生態系や、あらゆる価値感が危機に瀕しているという警告でもありました。それはまた、これらの事柄は大統領や首相、外交官や将軍に任せることはできず、世界の人々が自らを主張し、問題を自らの手に取り戻し、世界の指導者たちが共感し理解することができる方法で、意思を明確に示さねばならないという警告でもありました。人々がそうするまでは、何も達成することはできません。

 これはまた、学校のカリキュラムであれ大衆的討論であれ、完全に無視されているさまざまな観点で、集中的な教育プログラムが始められなければならないという警告でもあります。人類としての私たちの相互義務、各国の近隣諸国に対する義務、人類の破壊的な力、紛争の平和的な解決、共存しなければならない同じ地球上の市民同士としての地球規模の相互依存性——これらすべてが世界中で、教室から始まる社会のすべてのレベルで一般的教育のテーマとなる必要があります。これは、私たちすべてが立ち向かうべき課題です。これは、私たちが前の世代に伝えられなかった教育です。原爆投下は、将来に全力でこれらを行うべきだという教訓を私たちに与えました。

 ハーグの国際司法裁判所(ICJ)にいた際、国連総会から核兵器の適法性についての勧告的意見を求められました。私たちに投げかけられたその時の主要な議論は、「国際法の中のどこで、その原則が述べられているのか。国際法によって認められているどの典拠が核兵器使用の禁止を記しているのか?」ということでした。しかし、いまや、国際法の最も基本的土台が無視されています。すなわち、国際慣習法です。世界の慣習と伝統は、道徳の原則が発展してきた源泉であり、これが国際法の土台となっています。いまでは、これらの道徳的原則は、目にすることができるすべての文化に存在します。世界を見回せばすべての大陸で、すべての宗教の教えや伝統のなかに、これらの原則をうちたてる基本となる強固な土台があります。極度の残虐行為、不必要な苦しみを与える兵器、戦闘員と一般市民を区別しない兵器、環境の破壊、これらすべてが、世界の主要な伝統によって禁止されています。しかし私たちは、このことに基づいて事を進めることをしていません。法律を狭く解釈しているからです。法律は、人間社会のこれらの共通の伝統から発展してこなくてはなりません。全ての人道法が基礎にしている世界のあらゆる倫理的道徳的伝統を無視するせまい法的な定式化に限定されるべきではありません。

 私は国家の生存が危機に陥った際の極限の自衛という状況における核兵器使用の余地を残した国際司法裁の勧告に非常に強く反対しました。私はそれに完全に意見を異にします。私は、核兵器はたとえどのような状況においても違法だと主張しました。これは(小数の判事による)「反対意見」ではありましたが、いまやこの問題について法を正しく叙述したものとして受け入れられていることを嬉しく思います。

 しかし、国際司法裁判所の見解は重要でもありました。それは、一人の例外もなくすべての裁判官が、全世界の国々が、核兵器廃絶と核兵器を国際管理のもとにおくことを成功裏に行うため意義ある措置をとるという義務を負っている、と判断したことです。今それは実施されてはいません。マレーシアが毎年国連総会に、加盟国のその義務を想起させる「モデル核兵器条約案」を提出していることを歓迎します。

 

 また今年4月20日、国連安保理によって採択された決議1540は、全加盟国に対して、非国家主体が核兵器、化学・生物兵器を保有、取得、開発することを防止する措置をとるよう求めました。また同じ決議の他の部分では、拡散の防止はすべての加盟国の義務だとしています。現在、拡散には、より多くのものたちが核兵器を入手する「水平拡散」がありますが、すでに核兵器を保有する国々がそれを高性能化し、改良し、新たな兵器を開発する「垂直拡散」もあります。ですから、この国連安保理決議はまた、核兵器反対運動に利用することもできます。

 「いま核兵器の廃絶を」キャンペーンもあります。これは世界の市民から支持され、個人や市民団体、教育当局、地方政府に対して、この挑戦に対して立ち上がるようよびかけました。彼らは、2004年8月6日から2005年8月5日を「核のない世界ための記念の一年」として宣言しました。

 現在、私たちの目的である核兵器廃絶の達成を支援するためさまざまな措置が行われています。しかしなお、主要な努力は世界の世論から生まれ出てこなければなりません。世界中のすべての人々は、それを生み出すために団結しなければなりません。そのために、人間がつくりだした惨害の犠牲となったここ広島・長崎から、そのリーダーシップが生まれてほしいと思います。私たちの経験と決意を用いて、世界中の市民の意見が結集された堅固な統一体を築くことで指導力を発揮しようではありませんか。それなくしては、私たちが目的を達成することはできません。

 私たちの目的は、核兵器のない世界です。これを達成することは可能です。しかしそれは、努力とリーダーシップなくしては達成できません。人類が自らと自らの価値、人類文明、また全生命の破壊のために生み出した最も破壊的な兵器が使用されてから六十周年の日が近づいています。これを世界に思い起こさせるための準備を進めるなかで、この努力とリーダーシップをこの場所から生み出すことができるでしょう。 /////

 

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