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被爆者援護連帯

世界の被ばく者の声・資料 オーストラリア

原水爆禁止2000年世界大会・国際会議

オーストラリア平和委員会
フィリップ・ホワイト

オーストラリアの核問題

  オーストラリア反核活動家にとって今年は多忙な年でした。主要な問題は「核軍縮」「ウラニウム採掘と輸出」「オーストラリアの砂漠地に計画されている核廃棄物投棄所」「マラリンガ核実験場の汚染除去」「シドニー郊外の研究用原子炉」「米軍基地」です。

1. 核軍縮
  多くのグループがこの問題に取り組んでいます。特に私が気づいているのはオーストラリア平和委員会と「地球の友」です。昨年来これらのグループは核拡散防止条約再検討会議の前向きな成果と2000年前に核兵器の警戒態勢解除のために強力に運動しました。
  前向きな議会の進展としては核拡散防止条約の5年毎の再検討会議における真の前進を求めるオーストラリア上院の要請でした。この動議は最大野党である労働党から提案されたものですが、政府側与党の反対を受けました。オーストラリア平和委員会はまた、世界の教会指導者に8月6日の日曜日を「国際的な祈りの日」と宣言するようにとの運動もすすめています。この運動の基本は国際平和文化年の概念を8月6日日曜日がヒロシマデーであるという事実に結びつける点にあります。この祈りの日は核兵器の開発、実験、使用の過程で命を失ったり負傷したすべての人々を追悼するものとなるでしょう。それはまた、核保有国指導者たちに対してただちに話し合いを始める決意を固めるように迫る訴えともなることでしょう。

2. ウラニウム採掘
  オーストラリアは労働党政府でしたが、南オーストラリアのアデレード北部の砂漠のロクシビイ・ドウンズ鉱と北部準州の世界遺産に登録されているカカドウ国立公園内のレインジャー鉱、という最大二つのウラン鉱をもつ方針をとりました。自由・国民党保守連合政府の下で、この方針はくつがえされました。いくつかの新しいウラン鉱が完全な承認を求めて建設準備中です。その中にはカカドウ国立公園内の別のウラン鉱や汚染度の高い「インシトウ抽出」鉱も含まれています。ここで用いられる「インシトウ抽出」(ISL)処理とは硫酸を坑内水の中にポンプで流し入れウランを溶解するものです。硫酸を基本とするISL処理法は西欧世界では用いられておりませんし、東ヨーロッパ中で汚染の歴史をもっています。オーストラリア連邦政府は該当企業に対して、地下水をもとの姿に戻す必要条件もなしで汚染する承認を与えたのです。
  ウランはオーストラリア先住民の土地から多くの場合これら先住民の意志に反して、採掘されています。原鉱の放射能の大半はウラン鉱現場近くの巨大な蒸発池に残ります。これらの溜め池は漏水すると放射能が周辺の環境、とくに地下水へと流れ込むことになります。ロクシビイで1990年代初期に発見された放射能漏れの例では約50億リットルの排水が漏れていますが、1999年9月現在でも適切な密閉措置がいまだに採られておりませんでした。この採鉱プロセス自体も使われる水が大量であることから、環境に大きな被害を与えるものです。ロキシイビイ・ドウンズ鉱は南オーストラリア最大の水と電力の消費鉱です。水は大アーテジアン地下水脈(クイーンズランドから南オーストラリアにまで延びる巨大地下水脈)から無料で採られ、その結果この地域の家畜用掘り抜き井戸や泉が干あがる原因となっています。日本はオーストラリアのウラン輸入国の一つです。輸入国には他にアメリカ、イギリス、フランス、といった核保有国があります。おそらく、やがてはインドやパキスタンも近い将来、顧客となるでしょう。

3. オーストラリアの砂漠地帯に計画中の核廃棄物投棄場
  連邦政府は核廃棄物集中投棄場を準備中です。投棄場はオーストラリアの核廃棄物用ですが、やがては世界中から核廃棄物を受け入れるかもしれません。これに反対する人たちは、これ以上の廃棄物がでない間は、廃棄物が生み出される場所に地上の長期間貯蔵施設をつくるべきだと主張しています。輸送や放射能漏れなどの危険とは別に、遠隔地の集中廃棄場は廃棄物を生み出す当事者にその責任をとる気持ちを失わせることになります。南オーストラリアのいっさいの集中核廃棄物投棄場に対する反対意志をはっきりと表すために今年の3月アデレードで住民大会がもたれました。
  事実、オーストラリアでは現在核廃棄物投棄場の提案がいくつか出されております。要約すると次のようなものです。
  1)「浅い埋め立て」方法によるウーメラやロキシイビイ・ドウンズ鉱山(南オーストラリア)近くの国立の低レベル核廃棄物投棄場および寿命の短い中間レベル放射性廃棄物?30年間危険で300年間放射性のある?投棄場。
  2)国立の寿命の長い核廃棄物用投棄場?1万年間危険で25万年間放射性のある廃棄物?地上の囲い込み式貯蔵庫で、おそらく1)の低レベル廃棄物投棄場と同じようなもの。
  3)パンギア・インターナシヨナルが計画しているハイレベルの核廃棄物?核兵器や原子炉物質から再処理された高い放射性をもった核廃棄物の投棄場で、深い地下貯蔵庫形式で南オーストラリアおよび西オーストラリアに計画されているもの。
  昨年西オーストラリア州政府はハイレベル廃棄物投棄場に反対する立法を通過させましたが、投棄場を計画中の企業(パンギア・インターナショナル)はこの立法に手を縛られる筋合いはないと主張しています。南オーストラリア州政府は今年寿命の長い中レベル放射性廃棄物の投棄を禁止する立法を議会に提出しましたが、連邦政府が低レベル廃棄物を投棄するのをくい止めることにはならないでしょう。南オーストラリア州政府の立法は連邦政府の激しい反対にあっているのです。

4. マラリンガ核実験場跡の汚染除去
  マラリンガは1950年代および60年代のイギリスの核実験場でした。マラリンガやチャルチャの住民は核実験に道をあけるため、住み慣れた土地から追い立てられましたが、遊牧民の中にはこの地に留まったものもいました。核実験中に被曝した軍人もいました。この地域は放射能に汚染されたままで放置され、数十年後になってようやくイギリス政府と汚染除去のための合意がなされました。1億800万ポンドの汚染除去費は決して十分とは云えませんが、最近になって漏れた文書によると、この汚染除去は発表された事実と違って効果の薄いものでした。連邦政府がマラリンガ核実験場跡地の安全宣言を出した丁度2週間後に、この汚染除去作業の基本に誤りがあったことが、ある漏洩文書から明らかになりました。マラリンガ廃棄物処理専門家からの手紙によると、放射性廃棄物を埋め立てる前に容器に納めるというプロセスが一年前の地下核実験の結果抛棄されたというのです。かわりに政府は放射性廃棄物をわずか地下5メートルにむき出しのまま埋めることにしたのです。「オーストラリア放射線保護・核安全委員会」によれば、当初の計画通りに放射性廃棄物を掘り出して溶解するよりもむき出しのまま埋め立てる方が安全であったというのです。こうした方針変更はその土地の水のプルトニウム汚染につながる恐れがあります。最近の研究から明らかになったことは、プルトニウムはこれまで考えていたよりも水に溶けやすいことです。約450平方キロの土地がおよそ2万4千年に亘って人の住めない土地となるでしょう。マラリンガ・チャルチャの古老、アーキイ・バートンは、この地域に関する情報を伝承する一番よい方法は口承であると信じています。2万4千年もの長期間に亘ってどんな法律でも守らせるなど、とうてい不可能なことですから。

5. シドニー郊外の研究用原子炉
  オーストラリアは核エネルギーを持っていませんが、シドニー郊外のルーカス・ハイツに研究用原子炉があります。現在の原子炉にとって代わって新しい原子炉の導入が計画されており、優先的入札者としてアルゼンチンの会社が選定されています。導入が予定されている新しい原子炉は地域住民やさまざまな平和運動、環境保護運動の強い反対にあっています。進行中の運動はその建設に反対し続けています。

6. 米軍基地
  オーストラリアは数十年に亘っていくつもの米軍基地を受け入れてきました。現存する最大の基地はパイン・ギャップ基地です。中部オーストラリアのアリス・スプリングの南西約15マイルに位置し、太平洋上空の監視衛星から信号を受けたり監視衛星をコントロールするアメリカ中央情報部の情報根拠地として機能しています。この基地の賃貸権は2008年まで続きますが、その時に賃貸権を再度延長するかどうかアメリカとオーストラリア両政府で再検討することになるでしょう。アデレードの北数百マイル、ウーメラに近いヌランガー基地は、ハイテク技術の進歩によって不要な存在となったという理由から1999年に閉鎖されました。ヌランガー基地がその一翼を担っていた「アメリカ国防支援計画(DSP)」衛星は弾道ミサイル廃棄物の発するエネルギーを感知します。中国またはロシアから発射される大陸間弾道ミサイルの発射警報を25?30分に亘って出すと言われています。これはミサイル攻撃警報を独自に確認し、誤った警報が本当のミサイル攻撃と取り違えられる危険を少なくすると言われています。しかしながら、この情報は核兵器やアメリカが配備する弾道ミサイル迎撃ミサイル(ABM)のための標的情報を提供するためにも利用されることが可能なのです。米国防支援計画(DSP)衛星は核爆発感知センサーも装備していて、大気中の核爆発を探知できるのです。大気中核爆発実験は1963年の「部分核停条約」で違法とされました。ヌランガー基地はそれ故に部分核停条約を検証する上で一つの役割をもっているのだ、と云われました。これら二つの基地はこれまで主な平和運動の抗議の焦点でしたが、現在の主な運動については私は知りえておりません。
  米国のコーエン国防長官は、7月にシドニーに滞在中

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