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2007年01月31日

名古屋地裁判決に対する声明

声明  原爆症認定集団訴訟名古屋地裁判決にあたって

2007年1月31日
                                          原水爆禁止日本協議会


 原爆症認定を求めた裁判で名古屋地裁は1月31日、原告4名中2名について、原爆症認定却下処分の取り消しを命じる、原告勝訴の判決を下した。
 注目すべきことは、昨年の大阪、広島地裁に続いて今回の判決も、厚労省が固執する被曝線量の算定方式について、その機械的適用は、「誤った結果を招来する危険性がある」と、厳しい判断を下していることである。
 これまでの判決もくり返し指摘しているように、原爆症の審査は被爆と後遺の実態に即しておこなわれるべきであり、援護行政は、原爆被害の特殊性から見ても被害者救済を精神としておこなわれるべきである。
 原爆投下から61年半、被爆者には心身の傷に加えて、高齢化が進んでいる。現在の訴訟でも、229人の原告のうちすでに30名が亡くなった。これ以上いたずらに時間稼ぎをして解決を遅らせるべきではない。
 政府は勝訴した2名の判決を受け入れ、ただちに原爆症を認定すべきである。さきの大阪、広島の地裁判決についても控訴を取り下げるべきことはいうまでもない。問われている原爆症認定の在り方を抜本的に改善することをはじめ、被爆者援護行政そのものを被害者救済の立場に立って見直すことである。日本原水協は、核兵器廃絶とともに援護と補償を求める被爆者への支援をいっそう強めるものである。

2007年01月30日

米原子力空母母港化撤回を求め外務省へ要請

 日本原水協と首都圏の原水協(神奈川、東京、千葉、埼玉の各都県原水協事務局長)合同で1月30日、原子力空母母港化撤回を求める外務省要請をおこないました。

 外務省からは、北米局日米安全保障条約課主席事務官の有馬裕、同課長補佐の安部憲明の両氏が対応。参加者は永沢丈夫(神奈川県原水協事務局長)、齋藤君子(神奈川県原水協代表理事)、今野宏(横須賀市民の会共同代表)、石村和弘(東京原水協事務局長)、椎葉重盛(千葉県原水協事務局長)、吉野良司(埼玉県原水協理事長)、市瀬陽三(埼玉県原水協事務局長)、水谷辰也(日本原水協事務局次長)、加藤益雄(全労連労働局国際部長)各氏の計9名に加え、笠井亮衆議院議員(日本共産党)が同席しました。

 水谷事務局次長から要請の趣旨・内容について報告に続き、有馬氏から外務省としての回答がおこなわれました。有馬氏が述べた中心点は、「2008年に現在の通常型空母キティホークから原子力空母のジョージ・ワシントンに交代することで日米政府として合意している」、「国民の合意を得てすすめている」、「アメリカによってアジア・日本の平和が保たれている」、「北朝鮮の核実験・ミサイル発射など危険な動きがあるなかで、アメリカは日本の防衛義務があり、米軍はこの地域の抑止力になっている」、「原子力空母配備は、この地域の平和に貢献するものである」、「安全性の問題で言えば、アメリカ政府がくりかえし言っているように、これまで原子力艦船の原子炉事故は50年間なく、ファクトシートで示されているとおり」であり、「原子力艦船はこれまで1200回以上入港しているが、まったく事故はない。100%アメリカを信頼している。ファクトシートを引き続き信用してよい」と述べ、徹頭徹尾アメリカ追従の姿勢に終始しました。

 これにたいし、神奈川の今野氏から原子炉事故はありうること、物理的にもありうる。万が一でもおこってからでは遅い。憲法で禁止されている「武力によって抑止」するのは重大な問題である。永沢氏から「来てもらっては困る」というのが、圧倒的な住民の声である。「安全保障は国の専管事項」ではない。50年間事故を起こしてないと言うが、原子力軍艦事故は起こっているではないかなどの厳しい質問に対し、有馬・安部両氏は、住民の危惧があることを知っている。国の安全のために当該地域の住民に負担をお願いしているところ。原子炉事故は50年起こってないとアメリカが言っているのだからこれを信頼していると述べるにとどまりました。

 吉野、椎葉両氏などから、国の安全性と言っているが、国民の安全を本当に考えているのではない。アメリカの方に目を向けているだけだ。外務省が高い税金をかけて30万部もつくったパンフレットは、いかに原子力艦船が安全かということや、放射能などの影響はないことを知らせるといった、住民を欺くものであり許せない。ましてや、小学校4年生向けのパンフレット(外務省を参考にした横須賀市作成)は子どもに原子力空母の安全性を教えているもので問題だと強調。有馬氏らは、住民に安全性の理解を得るために作成したと述べました。

 有馬氏らの「北朝鮮脅威への抑止力として、自衛隊だけでは不十分で米の抑止力に頼る」との見解にたいし、要請団は「不穏な状況があればなおさら原子力空母配備という軍事力対応でなく、非核と憲法9条を生かした平和的対応が必要である」ことを強調し閉会しました。

横須賀の米原子力空母母港化撤回を求める要請書
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
外務大臣   麻生太郎 殿

2007年1月30日 原水爆禁止日本協議会
同 神奈川県協議会
同 東京協議会
同 千葉県協議会
同 埼玉県協議会

 私たちは、米原子力空母「ジョージ・ワシントン」の横須賀母港化を日本政府が受け入れ、来年にも配備が強行されようとしていることに強い懸念をもっています。

 東京湾沿岸は3000万人近い市民が生活する世界最大の人口密集地帯であり、その入り口にあたる横須賀を世界最大級の原子力空母の母港とすることは、それ自体、世界に類例のない暴挙です。

 加えて、横須賀に配備された米軍は、太平洋からインド洋海域を作戦範囲とし、国連憲章とイラクの主権を蹂りんして強行されたイラク攻撃とその後のイラクでの軍事作戦でも公然と出撃し続けています。これは、戦争放棄を謳った日本国憲法ばかりか、「日本の防衛」を任務として規定した日米安保条約さえも無視した無法な行動です。

 ましてやいま、アメリカのイラク攻撃が米国民をふくむ世界の圧倒的多数の人びとの批判を受け、北朝鮮の核開発をめぐっても、なによりも日本の外交的平和的解決のイニシアチブが求められているとき、逆に、アメリカの「核の傘」を強調し、核攻撃をふくめて世界最大級の攻撃力を持つ原子力空母を日本に配備することは、まさに、世界平和と日本国民の安全に逆行するものとしか言いようがありません。

 原子力空母の安全性についても重大な問題があります。日本政府は、アメリカ当局の言いなりに原子力空母についても原子力潜水艦についても、くり返し「安全」だと言明してきました。しかし、現在でも米軍の艦船が引き起こした事故は、さきのアラビア海でのタンカーとの衝突事故をふくめて相次いでおり、しかも、日本に入港した原子力潜水艦がくり返し放射能汚染を引き起こしているにもかかわらず、日本政府が必要な調査さえ放棄していた事実さえ浮かび上がっています。

 地元の横須賀では、昨年末にとりくまれた「原子力空母母港化の是非を問う住民投票条例制定を求める直接請求」の署名が市内有権者の10分の1、直接請求に必要な署名数の5倍を越える3万8千人余に達しました。それは地元住民が配備につよい危惧をいだいているからに他なりません。

 被爆国であり平和憲法をもつ日本が、世界とアジアの平和のために果たすべき役割は、先制攻撃を戦略とする米軍の配備増強を許すことではなく、国是としての非核三原則と憲法9条を生かすことです。

 以上の理由から、私たちは東京湾沿岸の都県で住民とともに活動する運動として、日本政府に対し、米原子力空母の横須賀配備・母港化への同意をただちに取り消し、米国に通告すること、あわせて、東京湾周辺都県における米軍基地の強化を許さず、それに伴う自衛隊の米軍との作戦一体化の諸措置を取りやめるよう強く要請するものです。

2007年01月28日

フランス「平和の家」開館

被爆60年・原水爆禁止2005年世界大会に130人の代表団を送り出したフランス平和運動が1月27日、パリ市郊外のサントワン市で「平和の家」の開館式を行いました。フランス留学中の村越茜さんからレポートを寄せてもらいました。

1月27日夜の開館式には、マリー・キュリーの孫であり、また1949年にフランス平和運動を創設したフレデリック・キュリーの娘であるエレーヌ・ジョリオ・キュリーさん、アニメ「つるにのって」の製作者、美保シボさんを迎え、500人あまりが集まり開館を祝いました。

「平和の家」のあるサントワン市長、セーヌサンドニ県会議長などが発言する中、フランス平和運動の共同議長ピエール・ヴィラール氏は、「平和の家」の意義を以下のように語りました。「私たちの団体は、フランスにおける平和運動の再活性化と、平和のための恒久的な対話の場を作ることを目的としています。『平和の家』が、フランス平和運動の拠点であるのと同時に他の平和団体の活動の場でもあり、各団体同士の交流、協力の場でもあるのはそのためです。私たちはこの会館をできるだけ多くの人と共有し、ともに活かしていきたいと思っています」。

「平和の家 メゾンドゥラペ」と名付けられたフランス平和運動の新しい本拠地は、平和に関わる資料・情報センターとして書籍やビデオ、映画などを、教育機関や一般の人々に提供していきます。

60人を収容する会議室、平和運動のスタッフが常駐するオフィスをもつこの真新しいセンターのエントランスには千羽鶴と日本の「ダルマ」が飾られていました。「日本の平和活動家との友情の印だよ」とヴィラール氏が教えてくれました。

平和の家@フランス平和運動.JPG

2005年の大横断幕の発起人、ジュリアン・コロンバによる「Maison de la Paix平和の家」のプレートと、開館式に集まった人々

川中優子さんの原爆症訴訟を支援する岡山の会・結成

裁判支援・500名の会員・50万円募金など活動方針を確認

 1月27日、倉敷市で「原爆症認定訴訟を支援する岡山の会」結成総会が開かれました。総会には県内各組織・団体から63名が出席、川中優子さんの裁判闘争を必ず勝利しようと決意を固めました。水島サロンで午前10時から開催された総会で、開会挨拶に立った呼びかけ人の杉山信義倉敷医療生協理事長は「安倍首相の憲法改悪の動きの中で、原爆症認定を勝ち取ることは憲法を守ることとつながる大事なこと」と挨拶されました。平井「会」事務局長が経過報告と活動方針、会則を提案し満場の拍手で確認されました。

 確認された活動方針は①裁判闘争を支援する②闘いの宣伝、学習活動を強める③当面500名の会員にすることと、闘いを支える50万円募金を集める④原水爆禁止、憲法9条を守る平和運動との連携⑤全国ネットワークとの連携です。

  「会」の事務局は、倉敷医療生協労組内(倉敷市水島南春日町6-10 ℡086-445-1258)に置き、8人の世話人の代表に松岡健一氏(反核医師の会・ソワニエ看学校長)、事務局長に平井昭夫(県原水協事務局長)を選出しました。

原爆被害は現在進行形
斉藤先生の記念講演

 記念講演は、広島・福島生協病院斉藤紀院長が「原爆症認定訴訟の意義」と題してお話されました。斉藤先生は、アメリカが広島・長崎で人類初の核兵器による大量殺戮を行った意図から説明され、「2030年には地球上から被爆者はいなくなる。投下から80年余におよぶ『核の実験』の終末期に私たちはどう立ち向かっていくのかが問われている」「原爆被害は現在なお進行形である」と強調され、白血球減少症は被爆者で5%、非被爆者で0%という状況や、被爆によるダメージを受けた体が長期の潜伏期間を経て「多重がんの発症」などの形で現れていることを説明されました。国の「基準」では救いきれない被爆者の存在を、科学者の立場でわかりやすく説明されました。

勝利をめざし頑張ります

 「私は、1歳のとき爆心地から4Kmの地点で被爆しました。幼少期病弱な体で過ごしました。核兵器による人類初の犠牲者として、二度の大手術を乗り越え今日まで生きてきました。健康不安で眠れない夜もたびたびです。もうこれ以上私たち被爆者を苦しめないでください。勝利を目指し皆さんと一緒にがんばります」と川中さんは決意を語りました。

川中さんがんばろう

加百智津子(岡山コープ職員・被爆二世)さん
  「私の母は爆心地から800メートルで被爆。奇跡的に助かりました。被爆後紫色の体で生まれた2人の兄は亡くなるという悲しみを背負って生きてきた母です。二世として核兵器廃絶、川中さんの勝利のためにがんばりたい」

中本輝夫(国民救援会県副会長)さん
 「県本部として組織をあげて支援したい」

田辺昭夫(水島原水協副会長)さん
 「原告の地元としてがんばる」 

それぞれ川中さんを激励、救援会、水島原水協から支援カンパが寄せられました。

1月30日(火)13:10~岡山地裁で第1回公判が行われます。

2007年01月26日

【神奈川県原水協】米原潜ヒューストン入港抗議文

抗 議 文

米原潜ヒューストン入港に抗議する!
米原潜衝突事故の原因究明がされないままの入港は許せない!
原子力空母ジョージ・ワシントン横須賀配備を撤回せよ!
原潜入港非公表措置をただちに撤回せよ!
原潜への核トマホーク配備を中止し作戦計画を撤回せよ!
核兵器使用計画を撤回せよ!

 米海軍は25日、ロサンゼルス級攻撃型原潜ヒューストン横須賀入港を強行した。原潜の入港は今年初めて、原子力艦船の入港は通算755回目となるものである。しかも原潜の入出港公表を中止させて以降、65回目の入港である。断じて許せない。

 しかも、1月9日ペルシャ湾で米原潜は衝突事故を起こし、その原因が究明・公表されないままの入港である。我々は10日、原因究明がないままの原潜入港を控えるよう要請したばかりである。何という暴挙か。許せない!

 そしてヒューストンは、核トマホーク積載を米軍が認めた「核認証原潜」である。

 非核三原則が蹂躙され、核兵器が持ち込まれている危険が濃厚なのと、放射能汚染の危険を思うと決して認められないものである。

 米軍は攻撃型原子力潜水艦への核巡航ミサイルトマホーク配備を強行し、その作戦を強化しており、核持ち込みの危険が増大している中でのヒューストン入港である。しかも米軍は原潜の6割を太平洋に集中配備する計画をすすめている。さらに米軍は原子力空母配備のための関連施設建設を強行しており、それは原子力空母と原潜を一体のものとして扱う工事の強行である。断じて許せない!

 ヒューストンは非核証明を提出せよ!ただちに出ていけ!

 一昨年12月2日、米政府は2008年原子力空母ジョージワシントン横須賀配備・母港化を正式表明し、市議会、市民あげての反対の声が渦巻く最中の原潜入港である。

 また、空母艦載機のスーパーホーネットの配備を強行し、池子基地への米軍住宅700戸追加建設計画、そして今度は米海軍だけではなく、米陸軍第一軍団司令部を新司令部に改変し座間に持ってくる計画まで決め、これも県知事、市長、市議会、市民あげて反対運動が広がっている最中の原潜入港である。

 米軍の基地再編強化計画に強く反対する。基地の縮小・早期返還をこそ実行せよ。

 我々は横須賀基地を米軍が他国侵略の出撃基地として使用することを断じて許せない。

 最近、米解禁文書による米軍有事核持ち込み密約の存在が明らかになっている。

 1953年空母オリスカニが米空母として初めて横須賀に入港した時、核兵器を積んで入港していた事実、そして1973年空母ミッドウェーが横須賀を母港とした時も核兵器を積載していた事実が判明した。

 米日両政府は50年間も日本国民をだましたまま横須賀に核兵器を持ち込みつづけてきたのである。断じて許せることではない。また、横須賀を「母港」とする11隻の艦船に「劣化ウラン」弾の搭載と基地内貯蔵が判明している。「劣化ウラン」弾が常時艦船に積まれ、イラク攻撃で使用され、浦郷弾薬庫に貯蔵されているなど言語道断である。

 米軍はイラクから撤退せよ。

 県民の多数の世論、そして国連をはじめ多数の国際世論は、イラク占領に反対し、横須賀の核基地化、出撃基地化に反対している。我々は、この世論にそむく原潜の入港を断じて許せない。

 一、原潜ヒューストン入港に強く抗議する!ただちに出ていけ!核兵器を持ち込むな!
 一、原潜の入出港公表中止措置を撤回せよ!
 一、原子力空母ジョージワシントンの横須賀配備計画を撤回せよ!
 一、空母の母港を撤回せよ!最新鋭艦載機スーパーホーネットの配備強行に抗議する。
 一、米軍の新司令部の座間キャンプ移転計画を撤回せよ!
 一、艦載機の日中訓練、NLP、超低空飛行訓練を中止せよ!
 一、池子米軍基地への700戸住宅追加建設を中止せよ!遊休基地を即時無条件返還せよ!
 一、核兵器の存在を否定も肯定もしない政策をやめ、非核三原則を厳守し、核兵器の廃絶を実現せよ!
 一、米軍はイラクから撤退せよ!

2007年1月26日

原水爆禁止神奈川県協議会
安保廃棄・諸要求実現神奈川県統一促進会議
神奈川県平和委員会
神奈川県原爆被災者の会
神奈川県労働組合総連合
米原子力空母の横須賀配備を阻止する三浦半島連絡会

第七艦隊司令官殿
在日米海軍司令官殿
米軍横須賀基地司令官殿

2007年01月14日

ポロニウム「毒殺」事件のミステリー

ポロニウム「毒殺」事件のミステリー
野口 邦和(日本大学、放射化学・放射線防護学)

2006年11月23日、毒を盛られた疑いで重体となっていたロシア連邦保安庁(FSB)元中佐がロンドンの病院で死亡した。尿から高濃度のポロニウム210が見つかったため、ロシア治安当局関係者による毒殺関与が疑われている。FSBはロシアの防諜、テロ・過激派対策、国際テロ対策などを担当する治安組織で、前身は旧ソ連のKGB(国家保安委員会)だ。

元中佐は、1998年にロシア政府と対立する政商ベレゾフスキーの暗殺をFSB幹部から命じられたが、それを拒否したと記者会見を開き内部告発した。また、1999年夏にモスクワなどロシア国内で起こったアパート連続爆破テロはチェチェン独立派武装勢力によるものではなく、FSBの仕業であると2002年に著書の中で告発したこともある。

11月1日、元中佐はロンドンの某ホテルのバーでロシア人実業家と元FSB職員の2人と面談した。その後、すし店でイタリア人と食事をした。同日夜から体調を崩し、17日に入院。22日に容体が悪化、23日に死亡した。

元中佐の死についてロシア治安当局関係者の関与が疑われているのは、元中佐がプーチン政権の批判者だったことに加え、病床で口述した痛烈なプーチン批判の書簡を友人が公開したからだ。

一方、FSBの元同僚による復しゅう説やチェチェン共和国の親ロシア政権による暗殺説もある。プーチン政権の信用失墜を画策したベレゾフスキーの周辺が、同政権の仕業と見せかけ殺害した説もある。元中佐が自らの死を覚悟してポロニウムを飲み、同政権の仕業と偽装した可能性も排除できないという。
ホテルのバーのカップから高レベルのポロニウムが見つかったため、犯行現場は同店とみられている。同店の従業員、元中佐と面談したロシア人2人やイタリア人の汚染も確認されている。ロシア人実業家にいたっては元中佐と同様の症状を示し、危篤状態という。

ポロニウムは銀白色の金属で、その同位体はすべて放射性だ。最も重要なのはポロニウム210だ。ビスマスを原子炉で中性子照射して生産でき、ロシアは月8グラムを生産・輸出しているという。

元中佐から見つかったポロニウムは致死量の100倍を超え、入手には2000万ポンド(約45億円)かかるという。個人の犯行ではなく資金力豊富な組織の犯行に相違ないが、ポロニウムなどという超希少物質を使い、死ぬまでに3週間以上かかる内部被ばくを殺害方法として用いていることから、実行犯は殺しのプロではなく素人であるといわざるをえない。それにしても不可解な事件だ。

2007年01月12日

【声明】原子力空母配備の是非を問う住民投票条例制定請求署名の縦覧期間終了にあたって

市議会は条例案の可決を!
市内有権者9人に1人以上、有効率91%
原子力空母配備の是非を問う住民投票条例制定
請求署名の縦覧期間終了にあたって、声明

2007年1月12日
原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会
請求者代表者
呉東 正彦
小林麻利子
今野   宏
新倉 裕史
三影 憲一

 本日、横須賀市選挙管理委員会より、「原子力空母の横須賀配備についての横須賀市住民投票条例制定請求署名」の縦覧期間が昨日をもって終了し、その最終の審査結果が報告されました。署名総数4万1,591筆、有効署名数は3万7,858筆とのことでした。

 「縦覧」は地方自治法に則り、直接請求署名の効力決定に関して正確を期する目的で行われるものです。この有効署名数は横須賀市の有権者(35万5,663名)の9人に1人以上に相当し、条例制定請求に必要な数(7,114名)の5.3倍以上、総署名数のうち有効率は91%とという極めて高い数値です。

 私たちは、この最終審査結果を受けて、改めて横須賀市民の多くが原子力空母の配備ならびに、その安全性について強い懸念を抱いていること、そして配備にあたっては市民一人ひとりの意思を尊重して欲しい、住民投票の実施への強い支持の表れであると評価するものです。

 私たちは、来る1月17日に住民投票条例制定の「本請求」を市長に対して行います。地方自治法に基づき、条例案を制定する市議会の開催は、本請求を受理した時から20日以内、2月初旬が予想されます。

 私たちは、市議会ならびに市議会議員のみなさんが、市議会での「原子力空母配備反対の決議」、そして今回の直接請求署名の重みに真摯に応えて、住民投票条例を可決されるよう強く望みます。

一部にある「空母問題は国の専管事項だから、住民投票にはなじまない」との意見は、憲法や地方自治法の理念に反するものです。憲法では国防、基地問題が国の専管事項であると規定していませんし、なによりも住民投票は横須賀市にとって重要な原子力空母配備問題について、市民の意思を確認する制度として憲法の「主権在民」にも合致します。

 今年、市政100周年を迎えた横須賀市が憲法、地方自治法の理念を守り、市民一人ひとりの意思を尊重する歴史的な一ページを刻むことを切望して声明とします。

2007年01月06日

米元高官ら「核兵器のない世界」提言

ニクソン、フォード政権のキッシンジャー元国務長官のほか、レーガン政権のシュルツ元国務長官、クリントン政権のペリー元国防長官、ナン元上院軍事委員長は「核兵器のない世界を」と題する論説をウォールストリートジャーナル紙1月4日付に寄稿しました。

先制核使用も辞さず、小型核開発に熱心なブッシュ政権への批判が、米核世界戦略を立案、推進してきた人々にも及んでいることを示す注目すべき動きです。

以下、全文を紹介します(翻訳=日本原水協国際部)

核兵器のない世界を

ジョージ・P・シュルツ、ウィリアム・J・ペリー、ヘンリー・A・キッシンジャー、およびサム・ナン

ウォールストリートジャーナル電子版 
2007年1月4日付

核兵器は今日非常に大きな危険を作り出しているが、同時に、歴史的な機会をももたらしている。アメリカの指導者たちは、世界を次の段階へと導くよう求められている。つまり、核が危険な者たちの手へと拡散することを防ぎ、最終的には世界に対する脅威である核兵器を廃絶するための重要な貢献として、核兵器への依存を止めるという強固なコンセンサスを目指す、という段階である。

核兵器は抑止の手段であったため、冷戦期には国際安全保障を維持するために不可欠であった。冷戦の終結により、米ソの相互抑止ドクトリンは時代遅れになった。多くの国家は今なお抑止力を他国の脅威に対抗するために有効だと考えている。しかしその目的で核兵器に依存することは、いっそう危険度を増し、その反対に有効性は低下している。

北朝鮮の最近の核実験と、イランがおそらくは兵器級の濃縮ウランを目指す計画の中止を拒否していることは、世界が現在、新しい危険な核の時代の瀬戸際にあるという現実を浮き彫りにしている。最も憂慮すべきことは、国家ではないテロリストが核兵器に手を伸ばす可能性が増大していることである。テロリストが世界秩序に対抗して闘っている今日の戦争において、核兵器は大量破壊のための究極の手段である。そして、核兵器を持つ非国家テロリスト集団は、概念的に抑止戦略の枠を超えており、困難な安全保障上の問題をつきつけている。

テロリストの脅威の他にも、緊急に新しい行動がとられなければ、アメリカはまもなく、新たな核の時代に突入することを余儀なくされるだろう。その時代とは、冷戦期の核抑止よりも不安定で、心理的に混乱させられ、経済的により大きな費用がかかるものであろう。世界中で増え続ける核兵器を持つ可能性のある敵たちとの間で、かつて米ソ間にあったような「相互確認破壊」体制をうまく再現しようとすれば、核兵器使用の危険性を劇的に高めることにならざるを得ないだろう。新しい核保有国には、冷戦期に行われたような、核事故、判断の誤り、あるいは無許可の発射などを防ぐため何年もかけて段階的な安全措置を設けるという余裕はない。アメリカとソ連は、致命的には至らなかったミスから学ぶことができた。どちらの国も、冷戦期に、故意であれ偶発的であれ、決して核兵器が使用されないよう保証するため真剣に努力した。新しい核保有国とこの世界は、次の50年間、冷戦期のわれわれと同じくらい幸運に恵まれるだろうか?

* * *

指導者たちは以前にこの問題を取り上げている。1953年、国連での「平和のための原子力」という演説のなかで、ドワイト・D・アイゼンハワーは、次のような誓約を行った。「アメリカは、恐ろしい原子力のジレンマを解決するため、この奇跡のような人類の発明を、人類滅亡のためではなく、人類の生命のために捧げる道を、全身全霊を注いで探し出す決意である」。核軍縮の行き詰まりを打開しようとしてジョン・F・ケネディは次のように述べた。「世界を、人類が処刑されるのを待つ刑務所にしてはならない」

ラジブ・ガンジーは、1988年6月9日の国連総会において、次のように訴えた。「核戦争は、1億人の死、あるいは10億人の死を意味するものでもない。それは40億人の消滅を意味する。現在この地球上で生きているものすべての終焉を意味するのである。私たちは、みなさんの支持を求めるために国連に来た。この狂気を終わらせるために、みなさんの支持をいただきたい」。

ロナルド・レーガンは全ての核兵器の廃絶を呼びかけた。彼は、「核兵器は」、「完全に不合理で、全く非人間的で、殺すこと以外何の役にもたたず、地球上の生命と文明を破壊してしまうかもしれない」と考えた。ミハイル・ゴルバチョフはこのビジョンを共有していた。これはまた、以前の米国大統領たちも表明してきたものである。

レーガンとゴルバチョフ氏は、レイキャビクでは、すべての核兵器をなくすという協定を結ぶという目標には到達しなかったが、軍拡競争をくつがえすことには成功した。攻撃用ミサイルの全廃を含む、配備済みの長・中距離核戦力の大幅な削減に通じる措置を開始したのである。

レーガンとゴルバチョフ氏が共有したビジョンを復活させるためには何が必要だろうか?核の脅威の大幅な低減に通じる一連の実際的なステップを明確にするような世界的なコンセンサスを作り出すことは可能だろうか?この二つの疑問によって提起されている課題に緊急にとりくむことが必要だ。

核拡散防止条約(NPT)はすべての核兵器の終結を目指したものだ。この条約は、(a) 1967年の時点で核兵器を保有していない国は、核を取得しないことに同意し、(b)核兵器を保有している国は、やがては核兵器を放棄するということに同意する、と定めている。リチャード・ニクソン以来、民主共和両党のすべての大統領は、これらの条約義務を再確認してきたが、非核保有国は、核保有国の側の誠意に対して次第に疑念を深めるようになった。

強力な核不拡散の努力が進行中である。脅威削減協力計画、地球規模脅威削減イニシアチブ、拡散に対する安全保障構想、そして追加議定書は、NPTに違反し世界を危険にさらす活動を発見するための強力な新しいツールを提供する革新的なアプローチである。これらは全面的に実施するべきである。北朝鮮とイランによる核兵器拡散に関して、国連安保理常任理事国すべてにドイツと日本を加えた国々が関与する協議を行うことは極めて重要である。これらは精力的に追求されねばならない。

しかし、それらの措置はいずれもそれだけでは、この危険に対処するには不十分である。レーガン大統領とゴルバチョフ書記長は20年前レイキャビク会談で、それ以上のものを達成しようとした。つまり、核兵器の完全廃絶である。彼らのビジョンは、核抑止専門家に衝撃を与えたが、世界中の人々に希望を抱かせた。最大の核兵器備蓄をもつ2国の指導者が、最も強力な兵器の廃絶について議論したのである。

* * *

何をなすべきだろうか? NPTが約束した内容とレイキャビクで思い描かれた可能性は実現されるだろうか?具体的な段階を通じて前向きな解答を生み出すためには、アメリカが大きな努力を開始すべきだとわれわれは考える。

何よりもまず、核兵器を保有する各国の指導者たちに、核のない世界を目指すことを共同の事業にするために熱心に働きかけることが必要である。核兵器を保有する国々の基本戦略の変更を含むこの共同事業は、北朝鮮とイランの核武装化を避けるためすでに行われている努力に、さらなる重みを加えることになるだろう。

核の脅威から解放された世界の土台を作るため、一連の合意に基づいた緊急の措置からなる計画に合意を求める努力が必要である。この諸措置は以下のものを含む。

●配備済み核兵器の冷戦期態勢を変更し、警告用の時間を延長することによって、核兵器の偶発的あるいは無許可の使用の危険性を低減すること。

●核兵器を保有する国々の核戦力の規模を引き続き大幅に縮小させること。

●前進配備用の短距離核兵器の廃絶。

●包括的核実験禁止条約の批准を達成するため、この条約への確信を強め、定期的見直し実施への理解を含め、上院において超党派のプロセスを開始すること。このために最近の技術的進歩を利用し、他の重要な国々の批准を確実にする努力も行う。

●世界のあらゆる場所において、核兵器備蓄、核兵器に利用可能なプルトニウム、および高濃縮ウランに対して、可能な限り高い水準の安全管理を行うこと。

●ウラン濃縮過程の管理を、原発用のウランがまず核供給国グループから、次にIAEAまたは他の管理下にある国際的備蓄から供給されることの保証と結び付けて行うこと。発電用原子炉からの使用済み燃料が引き起こす拡散の問題に取り組むことも必要である。

●兵器用核分裂性物質の全世界での生産を停止し、民生用商業から高濃縮ウランの使用を段階的に廃止し、世界中の研究設備から兵器利用可能なウランを除去し、これらの原料を安全に管理すること。

●新たな核保有国を発生させるような地域的対立や紛争を解決する努力を倍化すること。

核兵器のない世界という目標を達成するには、国家あるいは人民の安全に対して脅威となる怖れのあるいかなる核関連の行為をも阻止し、対抗するための効果的な措置が必要であろう。

核兵器のない世界というビジョンと、その目標達成に向けた具体的な手段を再び主張することは、アメリカの倫理的伝統に合致する大胆なイニシアチブとなるであろうし、また、そのようにみなされるであろう。その努力は、将来の世代の安全保障に非常に積極的なインパクトを与えることができる。この大胆なビジョンなしに行動しても、それは公正とも緊急性があるとも受け取られないだろう。そして行動を伴わないビジョンは、現実的でもなく可能性もないと受け取られてしまうだろう。

われわれは、核兵器のない世界という目標を設定することに賛同し、先に述べたような諸措置をはじめとする、その目標達成に必要な行動を精力的に行うことを支持する。

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スタンフード大学フーバー研究所の優れた特別研究員であるシュルツ氏は、1982年から1989年まで国務長官をつとめた。ペリー氏は、1994年から1997年まで国防長官をつとめた。キッシンジャー氏は、1973年から1977年まで国務長官の任にあった。ナン氏は、元上院軍事委員会委員長。

シュルツ氏とシドニー・D・ドレルが主催した会議はフーバー研究所において行われ、レーガンとゴルバチョフがレイキャビクに持ち込んだビジョンを再検討することを提案した。シュルツ、ドレル両氏に加えて、以下の会議参加者が、本論説の見解を支持している。マーティン・アンダーソン、スチーブ・アンドリーセン、マイケル・アマコスト、ウィリアム・クロウ、ジェイムス・グッドバイ、トーマス・グレアム・Jr、トーマス・ヘンリクセン、デイビッド・ホロウェイ、マックス・カンペルマン、ジャック・マトロック、ジョン・マクローリン、ドン・オーベルドルファー、ロザンヌ・リッジウェイ、ヘンリー・ローウェン、ロアルド・サグディーブおよびアブラハム・ソファー。