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ノーモア・ヒバクシャ訴訟

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1次、2次と続く全員勝訴の意味すること~ノーモア・ヒバクシャ訴訟の今後の課題
ノーモア・ヒバクシャ東京訴訟弁護団 芝田佳宜

1.6月29日の原告6名全員勝訴判決(2次訴訟)

2016年6月29日、東京地方裁判所民事38部において、原爆症認定申請却下処分取消訴訟(ノーモア・ヒバクシャ東京2次訴訟)の判決の言い渡しがありました。その内容は、原告6名全員について、国の原爆症認定申請却下処分を違法として取り消す画期的なものでした。

国は敗訴した6名のうち既に他の疾病(胃がん、大腸がん)で原爆症認定を受けている原告1名(慢性心不全)については控訴したものの、他5名については控訴をあきらめ判決は確定しました。

2.2015年10月29日の原告17名の全員勝訴判決(1次訴訟)

これに先立つ昨年10月29日、東京地方裁判所民事第2部は、原告17名に対して、その全員について、原爆症認定申請却下処分を違法として取り消す判決を言い渡しました。国はそのうち6名について控訴し、現在、東京高等裁判所で審理が続けられています。国は、これまで被爆者側が立証に用いてきた論文の執筆者に被爆者に不利な意見書を書かせ、それを証拠として提出するなど、なりふり構わず争う姿勢を示しています。

今回の2次訴訟地裁判決は、これに引き続く2度目の原告全員勝訴判決です。

3.2度にわたる全員勝訴が意味するところ

これら東京の2訴訟は、いま全国でたたかわれているノーモア・ヒバクシャ訴訟の一環として提訴したものです。2009年8月6日、国は日本被団協代表との間で「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」を締結して「訴訟の場で争う必要のないように、定期協議の場を通じて解決を図る」ことを約束しました。それにもかかわらず、国は、従前の原爆症認定行政を改めなかったため、被爆者は再び全国の裁判所に提訴せざるを得ない状況となり、7地裁(東京、名古屋、大阪、岡山、広島、長崎、熊本)に119名の原告が提訴したのが、ノーモア・ヒバクシャ訴訟です(現在、5地裁54名、2高裁14名、最高裁2名が係属中)。

東京での2訴訟の原告全員勝訴判決は、このような国による原爆症認定行政が全くもって誤っていることを改めて示し、高齢化する被爆者に対し、なおもって司法判断と乖離した原爆症認定行政を続ける厚生労働省に対する批判を含んだ判決といえます。

4.これからの被爆者救済に向けた課題

被爆者が、地裁で勝っても国は控訴し、被爆者が控訴審で勝って判決が確定すれば、その被爆者は救済されます。しかしながら、そもそも訴訟を起こすことができる被爆者はそれほど多くはありません。また、国は訴訟を起こされることを懸念してか、訴訟であれば却下処分が取り消されるだろう被爆者に対する原爆症却下処分を先延ばしにしているという分析もあると聞いています。

そもそもこのような争いが起こるのは、現在の原爆症認定が、発症した疾病が放射線に起因すること(放射線起因性)を要求しているからに他なりません。

被爆者が、そのような争いに巻き込まれることなく適切な給付を受けられるようにするためには、日本被団協が提言している、「被爆者が一定の疾病に罹患した場合は、放射性起因性の有無を問うことなく、一定の給付を行う」制度に抜本的見直しを行うほかありません。

現在、生存する被爆者の平均年齢は80歳を超えています。それにもかかわらず、国は、ことさら司法判断と乖離した原爆症認定行政を続け、声を上げた被爆者には重い裁判の負担を、声を上げることのできない被爆者には泣き寝入りを強いる、という冷酷な対応を続けています。このような事態を解消するためには、原爆症認定制度を抜本的に改革することが今後の課題です。(しばた・よしのり)

出典:『原水協通信』2016年8月号



 
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