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ノーモア・ヒバクシャ訴訟

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ノーモア・ヒバクシャ訴訟名古屋地裁判決の意義と課題
弁護士 樽井直樹

広島・長崎の原爆被爆者が原爆症認定を求めるノーモア・ヒバクシャ訴訟の愛知訴訟の判決が9月14日に言い渡されました。4名の原告のうち2名については厚労大臣の却下処分を取り消す勝訴判決でしたが、2名については請求が認められませんでした。


名古屋地裁前で(9月14日)
 

原爆症と認定されるためには、申請疾病が原爆の放射線に起因しているということ(放射線起因性)と現に医療を要する状態にあること(要医療性)の2つの要件が必要です。名古屋地裁判決は、放射線起因性に関する国の主張を退けているという点と要医療性を厳格に解釈する態度をとったという2つの面を持っています。

判決を評価できる側面=疾病は放射線によるもの

まず、放射線起因性について。判決は、敗訴した原告を含め全員について放射線起因性を認めました。国は各地の訴訟において、放射線起因性の判断においては、①被曝線量、②申請疾病と放射線の関連性についての医学的知見、③他原因の可能性などを考慮要素だろ主張し、原告についての放射線起因性を否定しようとしています。名古屋地裁判決は、「様々な形態での外部被曝〔筆者注-初期放射線に限らず残留放射線の影響も無視してはならないということです〕及び内部被曝の可能性がないかどうかを十分に検討した上で、被爆者において、健康に影響を及ぼすような相当量の被曝をしたのか」を判断すると述べています。これは、沢田昭二名古屋大学名誉教授(日本原水協代表理事)の証言など集団訴訟から積み重ねてきた科学的知見を確認したものです。病気と放射線との関連性についても、裁判の最終盤で国が力を入れて主張した慢性甲状腺炎、心筋梗塞について、低線量域を含めて放射線被曝との関連性が認められるとし、国の主張を退けました。このように、放射線起因性について、従来の裁判例を踏まえて適切な判断をおこなっています。

判決の不当な側面=医療の必要性を認めず

ところが、要医療性については、当該疾病に関し被爆者援護法10条1項の規定する医療の給付を要する状態にあること、としながら「積極的な治療行為を伴わない定期検査等の経過観察が必要な状態にあるような場合・・・原則として健康管理としての検査等により対応すべきで・・・再発や悪化の可能性が高い等の特段の事情〔が必要〕」という判断を示し、2度目の癌が発生して10年近くが経過した原告と慢性甲状腺炎を発症しているものの甲状腺の機能がホルモン剤の投与を必要とするほど低下しているわけではない原告について要医療性を否定しました。放射線に起因する疾病にかかっている被爆者に対し、再発や悪化の高い可能性がないと要医療性を認めないという解釈は、被爆者援護の精神に反する不当な判断です。

求められる抜本的解決

このように名古屋地裁判決には2つの側面があります。私たちは、名古屋地裁判決の積極的な面について確信を持つとともに、要医療性を狭める不当な判断については控訴審で闘いたいと思います。


厚労省へ要請(9月15日)
 

同時に、高齢化した被爆者がいつまでも裁判を強いられることのないよう、「すべての被爆者に手当を支給し、症状の程度に応じて加算する」という日本被団協の提言に基づく制度改正が、(名古屋地裁判決の要医療性に関する判断を含む)原爆症認定問題の解決を可能にすることを強く訴えていきたいと思います。(たるい・なおき、見出しは編集部、『原水協通信』2016年10月号5面より)



 
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