ENGLISH 旧サイトへ
原水協(原水爆禁止日本協議会)
被爆者との連帯 ビキニデー 平和行進 世界大会

ビキニデー

Share|

ブラボー・デーの発言

2016年3月1日
トニー・デブルム
マーシャル諸島共和国前外務大臣

 この非常に特別な機会にみなさんとともに集うことができて光栄です。まず、これまでご招待いただき参加を約束しながら、自分ではどうすることもできない理由のゆえに来日できなかったことをおわびします。

 みなさんにマーシャル諸島の国民からのごあいさつを送ります。私たちは、みなさんと同じように、核兵器の恐ろしさと、それが人間生活、母なる地球、子供たちにもたらす脅威が増大しつつあることを知っています。

 私たちが経験した核兵器の被害は、日本の兄弟姉妹のみなさんが経験されたものとは比べるべくもありませんが、それは、永遠に価値ある教訓を、人類全体に与えています。人間を意図的に被ばくさせたことから、重大な健康上の影響を一貫して隠蔽し、被ばく島民に人体実験を行い、早すぎる帰島を強制し、被害の申立てを否定し、被害の全体像の理解に必要な基本情報を公表してきませんでした。マーシャル諸島の核の歴史は、まさに、強い力と野心を持つ者たちが同じ人間に対して行った、虐待に次ぐ虐待と人間の尊厳の否定に他なりません。
 最も需要な教訓は、いかなる種類であれ核兵器は不道徳で違法であり、文明社会と人類とは共存できないということです。核兵器は世界の平和と安全の維持に必要なのだと主張する国がありますが、核兵器はどんな理由をもってしても、決して正当化できないものです。
 核兵器には良心もなく、標的を区別することも、善悪を見分けることもできません。他の大量破壊兵器と同様、核兵器は赤ちゃんや子供に対して憐れみを抱いたり、花も木も食べ物も土壌も選んで攻撃したりすることもできません。核兵器はあらゆる生物を皆殺しにし、最終的で、完全で不可逆的な破壊をもたらすのです。そのことだけでも、地球上から核兵器を禁止すべき十分な理由です。

 1946年から1958年にかけて、アメリカはマーシャル諸島で原水爆の爆発実験を行いました。これら爆発実験の総出力は、ビキニ環礁島民の弁護士ジョン・ワイズゴールによると、「広島型原爆を一日1.6個、毎日毎日、12年間にわたって爆発させたもの」に匹敵します。一連の実験のうち、1954年3月1日のブラボー実験は、広島型原爆の1000倍の威力がありました。この実験はこの島国に壊滅的な被害をもたらした、という言い方は、無神経で私たちをばかにした控えめな言い方です。実際は、私たちを永遠に侮辱し傷つけるものなのです。アメリカの核実験プログラムは、実験の被害を受けた者たちに痛みと苦しみをもたらし、生き延びた人々の体と心をむしばみました。そして未来に生きる世代も、わが国のこの暗黒の歴史の傷を背負っていくことになるのです。

 私たちは、アメリカに実験に関する情報を公開せよと要求してきましたが、今も非公開とされています。わが国の国民と土地が被った被害の真実を理解するのに重要な情報を、今も機密にしています。米国政府は、核の機密は国家の利益に関わることであり、公的な詮索にさらされないよう非公開としていると言っています。国連が任命した特別報告者が検討し、非常に明確な勧告を行っているにも関わらず、アメリカは未だに、マーシャル諸島における核活動について秘密にするという立場を頑固に崩さないでいます。

 米国政府が機密扱いにしている情報は、マーシャル諸島での核実験の全容を理解するために必要です。これらすべての情報が公開されなければ、いかなる政府も、有能な指導者も、議会も、委員会も、科学者も、核被害をめぐる意見の相違に対して公正かつ公平な解決策を提起することはできません。完全な情報公開なくして、この問題の最終解決はあり得ません。

 今も、マーシャル諸島では核実験が直接原因となった環境破壊と汚染が続いており、わが国の国民の健康と生活が脅かされ、子供たちと将来の世代の健康と幸福に計り知れないほどの危険がもたらされています。核兵器を運ぶミサイル実験場となっているクワジェレン環礁では、土地と水への重金属などによる汚染が深刻で、魚や海産物の摂取は人間の生活と健康に危険とされています。私たちはこの不正義を、沈黙と恐怖の中で傍観することはできません。私たちが臆病さから、法のもとでの正義を果敢に求めることをしなければ、将来の世代は永遠に傷つくことになります。あらんかぎりの力を尽くして核の真実を暴き、この狂気を終わらせることを、世界的な課題にすることができないなら、指導者として、土地と遺産を受け継ぎ守るものとしての私たちの存在意義は、無いに等しいと言わねばなりません。それができて初めて、真の平和は達成され、先人たちの犠牲は正当な敬意と名誉を受けることができるのです。

 最近マーシャル諸島は、核保有国が核不拡散条約(NPT)第6条を順守するよう求めて、国際司法裁判所(ICJ)に提訴しました。この行動は、核保有国がただちに核兵器を廃棄するための交渉を開始し、誠実に核兵器廃絶の合意を結ぶよう求めています。今年3月7日からオランダのハーグで口頭弁論が開始されます。私たちは正義が勝利することを確信しています。核保有国は必ずや、NPTに調印したとき自らが行った「世界から核兵器をなくす」という約束を果たすしかないと理解するでしょう。ここではっきり述べておきたいことがあります。このICJへの提訴で、私たちは補償を求めているのではなく、また、どの核保有国に対しても法的責任をとれと非難し追求しているわけでもありません。私たちはこの提訴で、核保有国に対し、自らがNPTで合意した核兵器廃絶のための交渉を行うということを求めているだけなのです。

 日本の兄弟姉妹のみなさん、マーシャル諸島の国民は、核兵器の拡散を止め、私たちを脅かす恐ろしい核兵器開発を全面的に禁止するために、みなさんとともにたたかっています。原子力は軍事用の核兵器も民生用の原発もやめるべきです。核兵器が存在する限り、また、数秒の指令で配備される限り、私達は危険にさらされています。核兵器の使用は、意図的であれ偶発的であれ、起こりうるのです。軍事的計画によっても、狂った個人の行為によっても起こります。核兵器が存在する限り、人類は核戦争の標的となります。これをやめさせなければなりません。私たちは核兵器のない世界を実現し、真の平和と調和を取り戻すために運動の一端を担わねばなりません。それは、私たちの先人たち、そして将来の世代に対して私たちが負っている義務です。そして、子供たち、孫たちにしてやれる最低限のことです。核兵器のない世界の実現に向けて、私たちは核兵器廃絶の使命のもとに団結し、ひとりひとりが命の続く限り、そのために力を尽くさねばなりません。

 今日ここにお集まりのすべての友人のみなさん、マーシャルの私たちからの愛をお受け取り下さい。日本の兄弟姉妹の皆さん、ポリネシアの皆さんに、そして世界の隅々の人々に平和がありますように。私たちのたたかいは正義であり、必ず勝利します。



 
PDFWEB署名