1998年国連第53回総会:核軍縮関連決議より
 

非同盟諸国提案:核軍縮
新アジェンダ連合提案:核兵器のない世界へ—新たなる課題(New Agenda)の必要
マレーシア提案:全面完全軍縮—核兵器による威嚇または使用の適法性にかんする国際司法裁判所の勧告的意見の後追い
日本政府提案:核兵器の究極的廃絶のための核軍縮
インド提案:核兵器の使用禁止にかんする条約

マレーシア決議案提案理由発言
新アジェンダ連合決議案にかんする説明文


非同盟諸国提案

核軍縮

(1998年12月4日採択)



共同提案国:アルジェリア、バングラデシュ、ブルネイ、ブルキナファソ、カボベルデ、コスタリカ、キューバ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、エチオピア、フィジー、ガーナ、グアテマラ、インド、インドネシア、イラン、イラク、ジャマイカ、ケニア、ラオス、レソト、リビア、マレーシア、メキシコ、モンゴル、モザンビーク、ミャンマー、ナミビア、ネパール、ニカラグア、ナイジェリア、パキスタン、パナマ、フィリピン、サモア、ソロモン諸島、スリランカ、スーダン、タイ、タンザニア、ウルグアイ、ベネズエラ、ベトナム、ザンビア、ジンバブエ

 
 国連総会は、

 核の脅威の段階的削減にかんする1994年12月15日の決議(49/75E)および、核軍縮にかんする1995年12月12日の50/70P、1996年12月10日の51/45O、1997年12月9日の51/45O決議を想起し、
 
 核兵器の完全廃絶および核兵器のない世界の実現の目標にたいする国際社会の誓約を再確認し、
 
 1972年の生物兵器禁止条約および1993年の化学兵器禁止条約がすでに、生物・化学兵器の完全禁止にかんする法体制を設立したことに留意し、ならびに、核兵器の開発、実験、製造、貯蔵、貸出し、移動、使用および使用による威嚇の禁止および核兵器の解体にかんする条約の達成、そしてこのような国際条約の早期締結を決意し、
 
 現在核兵器のない世界を実現する条件が存在することを認識し、
 
 軍縮に焦点をあてた最初の特別総会であった「国連総会第10回特別総会」(訳注:SSD I )の最終文書の第50段落が、核兵器体制の質的改善および開発停止とともに、できるだけ早期の核兵器とその運搬手段の最終的かつ完全な廃絶にむかって、実現可能な場合にはいつでも合意にもとづいて期限を区切った包括的・段階的計画による核兵器の漸進的で均衡のとれた削減のために緊急交渉を呼びかけたことに留意し、
 
 「国連総会第10回特別総会」の最終文書において、また国際社会によって、核軍縮に最優先課題が与えられたことを再確認し、
 
 包括的核実験禁止条約および、核兵器またはその他の核爆発装置用分裂性物質の製造停止にかんするあらゆる条約案は、不拡散のための措置だけでなく軍縮措置を構成するものでなくてはならないと同時に、これらの措置は、核保有国による先制不使用の共同保証および非核保有国にたいする不使用かつ使用による威嚇の否定という適切な安全保障確証にかんする国際的協定、そして核兵器の使用を禁止する国際条約とともに、特定した期限内での核兵器全廃につながるプログラムの不可欠な措置とされるべきであることを認識し、
 
 ベラルーシ、カザフスタン、ロシア連邦、ウクライナ、アメリカ合衆国が締約国である、戦略攻撃兵器の削減および制限にかんする条約の発効を歓迎し、
 
 ロシアおよびアメリカによる、戦略兵器のさらなる削減制限にかんする条約の締結と、アメリカによる同条約の批准を歓迎し、STARTI およびSTARTII の締約国による完全履行と、全核保有国による核軍縮のためのさらなる具体的措置を期待し、
 
 核保有国による核軍備制限のための一方的措置に高い評価をもって注目し、このような措置をさらに講ずるよう同諸国を激励し、
 
 核軍縮にかんする二国間および多国間交渉の相互補完性、そしてこの点において二国間交渉は、多国間交渉にとってかわることはできないことを認識し、
 
 軍縮会議および国連総会において、非核保有国にたいする核兵器の使用または使用による威嚇の禁止を保証する国際条約の成立にむけた努力、ならびに、軍縮会議において、このような国際条約の合意の早期達成にむけた多国間作業がおこなわれていることに注目し、
 
 1996年7月8日の核兵器の威嚇または使用の適法性にかんする国際司法裁判所の勧告的意見を想起し、全判事が一致して「厳格かつ効果的な国際的管理の下でのあらゆる分野にわたる核軍縮につながるような交渉を誠実におこない、完了させる義務が存在する」ことを再確認したことを歓迎し、
 
 1998年8月29日から9月3日、南アフリカのダーバンで開催された「第12回非同盟諸国・政府首脳会議」最終文書の第14段落その他の関連する勧告が、軍縮会議にたいし、核軍縮の段階的プログラムおよび期限を切った核兵器の将来における廃絶のための交渉を1998年内に開始するための特別委員会を、優先事項として設立するよう呼びかけたことに留意し、
 
 核兵器廃絶のための行動計画を呼びかけた「グループ21」のメンバーである軍縮会議の28カ国代表団の提案に留意し、この提案が重要なインプットとなり、同会議においてこの問題にかんする交渉に貢献するであろう、との確信を表明し、
 
 「21カ国グループ」のメンバーである軍縮会議への26カ国代表団が、核軍縮小委員会の包括的任務を提案するというイニシアチブを発揮し、これには第一段階として、すべての国々に核兵器の完全廃絶を誓約させる普遍的で法的拘束力のある多国間合意のための交渉と、核兵器の全廃につながる時間枠つきの段階的計画に必要とされる更なる諸措置にかんする合意のための交渉、そして核兵器その他の核爆発装置用核分裂物質の生産禁止にかんする条約についての交渉が、この件にかんする特別コーディネーターの報告とこの条約の範囲についての見解を考慮した上でふくまれていることを賞賛し、
 
 1998年6月9日に、ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、スロベニア、南アフリカ、スウェーデンの八カ国政府の外相により発表され、非同盟諸国メンバーの一部をふくむ多数の国々が支持・呼応した「核兵器のない世界へ:新たなる課題の必要」宣言に注目し、

1.最近の政治情勢の発展にかんがみ、いま、すべての核保有国が、期限を切った核兵器の全廃をめざした有効な軍縮措置をとる時機が熟していることを認識する。

2.また、核兵器の役割を重視することをやめ、これに従って核政策の見直しと修正をおこなう必要も認識する。

3.核兵器保有国に、即座に、核兵器とその運搬手段の質的向上、開発、製造、貯蔵を中止するよう強く要求する。

4.核保有国にたいし、暫定措置として、自国核兵器の警戒態勢の解除と不活性化を即座におこなうよう強く要請する。

5.第一段階として、すべての国が核兵器全面廃絶の目標を誓約する、普遍的で法的拘束力をもつ多国間合意の締結を呼びかける。

6.核保有国にたいし、核の脅威を段階的に減らし、期限内での核兵器廃絶にむけた効果的な軍縮措置を実施するよう、再度呼びかける。

7.核保有国にたいし、核兵器廃絶条約が締結されるまでは、核兵器の先制不使用を共同で誓約する国際的かつ法的拘束力をもつ協定に合意するよう呼びかけるとともに、すべての国にたいし、非核保有国にたいする核兵器の先制使用を禁ずる国際的かつ法的拘束力をもつ協定の締結を呼びかける。

8.核兵器およびその他の核爆発装置用分裂性物質の製造禁止条約にかんする小委員会が、軍縮会議内に設置されたことを歓迎し、これについて普遍的かつ非差別的な協定が早期に締結されることを強く求め、ならびに、非核保有国が核兵器の使用と威嚇を受けないことを保証するための効果的な国際的合意にかんする特別委員会が設置されたことを歓迎し、この点についての努力が最優先課題として追求されるよう求める。

9.国連総会決議52/38Lが呼びかけた、軍縮委員会内の核軍縮にかんする特別委員会の設置に引き続き反対しているいくつかの核保有国の態度に懸念を表明する。

10・軍縮会議が、核軍縮の段階的計画と核兵器禁止条約による限定した期限内の核兵器の最終的な廃絶にむけた交渉を1999年内に開始するための核軍縮にかんする小委員会を、優先事項として設置するよう再び呼びかける。

11.軍縮会議にたいし、この点にかんして、28カ国代表団が提起した核兵器廃絶のための行動計画、および、26カ国代表団の提起した軍縮会議内の特別委員会設置を呼びかけた提案を考慮するよう強く要請する。

12.核兵器廃絶の段階的計画の合意達成と、核兵器禁止条約を通じた期限を区切った核兵器の最終的な廃絶のための、軍縮国際会議の早期開催を呼びかける。

13.国連事務総長にたいし、国連第54回総会において、本決議の実行状況にかんする報告を提出するよう要請する。

14.第54回総会の暫定議題に、「核軍縮」と題する議題を盛り込むよう決定する。

賛成 110カ国 アフガニスタン、アルジェリア、アンゴラ、アンティグアバーブーダ、バハマ、バーレーン、バングラデシュ、バルバドス、ベリーズ、ベニン、ブータン、ボリビア、ボツワナ、ブラジル、ブルネイ、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、カボベルデ、中央アフリカ、チャド、中国、コロンビア、コスタリカ、コートジボアール、キューバ、北朝鮮、ジブチ、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、赤道ギニア、エリトリア、エチオピア、フィジー、ガボン、ガンビア、ガーナ、グレナダ、グアテマラ、ギニア、ギニアビサウ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、インド、インドネシア、イラン、ジャマイカ、ヨルダン、ケニア、クウェート、ラオス、レバノン、リビア、マダガスカル、マラウイ、マレーシア、モルディブ、マリ、モーリタニア、モーリシャス、メキシコ、モンゴル、モロッコ、モザンビーク、ミャンマー、ナミビア、ネパール、ニカラグア、ニジェール、ナイジェリア、オマーン、パキスタン、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイ、ペルー、フィリピン、カタール、ルワンダ、セントクリストファーネビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、サモア、サウジアラビア、セネガル、シエラレオネ、シンガポール、ソロモン諸島、スリランカ、スーダン、スリナム、スワジランド、シリア、タイ、トーゴ、トリニダードトバゴ、チュニジア、ウガンダ、アラブ首長国連邦、タンザニア、ウルグアイ、バヌアツ、ベネズエラ、ベトナム、イエメン、ザンビア、ジンバブエ 

反対 41カ国 アルバニア、アンドラ、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、ミクロネシア連邦、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、モナコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、モルドバ、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、マケドニア、トルコ、イギリス、アメリカ合衆国

棄権 18カ国 アルゼンチン、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、チリ、キプロス、グルジア、日本、カザフスタン、マルタ、マーシャル諸島、韓国、ロシア、サンマリノ、南アフリカ、タジキスタン、ウクライナ、ウズベキスタン


新アジェンダ連合提案

核兵器のない世界へ:
新たなる課題(New Agenda)の必要

(1998年12月4日採択)



共同提案国:ベニン、ボツワナ、ブラジル、カメルーン、チリ、コロンビア、コンゴ民主共和国、コスタリカ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、フィジー、グアテマラ、アイルランド、レソト、リベリア、マレーシア、マリ、メキシコ、ニュージーランド、ナイジェリア、パナマ、ペルー、サモア、ソロモン諸島、南アフリカ、スワジランド、スウェーデン、タイ、トーゴ、ウルグアイ、ベネズエラ、ザンビア

 国連総会は、

 核兵器の存在により人類の生存が脅かされていることを警戒し、

 核兵器が無期限に保有されるという見込みを憂慮し、

 核保有能力を持ちながら核兵器の不拡散にかんする条約(NPT)に加盟していない三カ国が核兵器保有の選択肢を引き続き維持していることを憂慮し、

 核兵器は維持されても事故もしくは決定による使用はおこなわれないという主張には信頼性がないこと、また唯一の完全な防護策は核兵器の廃絶とそれらがふたたび製造されないとの確証であると確信し、
 
 核保有国が、速やかにかつ全面的に自国の核兵器を廃絶するとの誓約を実行していないことを憂慮し、
 核兵器能力を持ちながらNPTにまだ加盟していない三カ国がその核兵器保有の選択肢を放棄していないことも憂慮し、

 圧倒的多数の諸国が、核兵器を受け取らず、製造せず、あるいは取得しないという法的拘束力をもつ誓約をおこなったこと、またそれらの誓約が、核保有国が核軍縮を追求するという法的拘束力をもつこれに対応する誓約をおこなったという状況で結ばれたことに留意し、

 国際司法裁判所が1996年の勧告的意見において出した、厳格で有効な国際管理のもと、すべての面において核軍縮につながる交渉を誠意をもっておこない結実させる責務があるという全員一致の結論を想起し、

 国際社会は第三番目の千年紀を、核兵器の保有を無期限の将来にわたって合法だとみなすという見通しをもって迎えるべきでなく、現在の情勢は核兵器の永久的な禁止と撲滅へとすすむたぐいまれな機会を呈していることを強調し、

 核兵器の全面廃絶は、最大の核兵器備蓄をもつ核保有諸国が措置を講じることがまず必要であると認識し、近い将来、備蓄のより少ない核保有国が間断なくこれら諸国に合流しなければならないことを強調し、

 戦略兵器削減交渉(START)プロセスのこれまでの成果と今後の見通しを歓迎し、この交渉が、すべての核兵器保有国をふくむ、核兵器廃絶のための実際の核兵器解体と廃棄のための多極的機構として発展しうる可能性を示していることを歓迎し、

 実際の核兵器廃絶と必要な検証体制の発展が実行される前に、核保有国がただちに講じることができかつ講じるべきである実際的な措置が多数あることを確信し、これに関連して最近のいくつかの一方的その他の措置がおこなわれたことに留意し、
 
 このほど軍縮会議(CD)において、「核軍拡競争の中止と核軍縮」と第する第一議題のもと、特別コーディネーター報告(CD/1299)とその中にふくまれる責務にもとづいて、核兵器もしくはその他の核爆発装置のための分裂性物質の製造を禁止する、無差別・多国間・国際的かつ効果的に検証可能な条約を交渉するための小委員会の設置が合意されたことを歓迎し、そのような条約が核兵器の全面廃絶への過程をさらに補強しなければならないことを考慮し、

 核兵器の全面廃絶の達成のためには、核兵器の拡散を防ぐ効果的な国際協力がきわめて重要であり、とりわけ核兵器もしくはその他の核爆発装置のためのすべての分裂性物質の国際管理の拡大を通じてそれを強化しなければならないことを強調し、

 既存の非核地帯条約とその条約への関連議定書への調印および批准の重要性を強調し、

 1998年6月9日の(八カ国)外相共同宣言と、その中の、核兵器のない世界を達成するための新しい国際的課題を、二国間、数カ国間、および多国間レベルでの一連の相互的強化措置をとおして、またこれらと並行して、おこなうことによって追求しようという呼びかけに留意し、

1.核保有国にたいし、それぞれの核兵器の速やかな全面廃絶と、それらの兵器の廃絶にむけた交渉を遅滞なく誠意を持って追求し終結させるという明確な誓約をおこない、そうすることで核兵器の不拡散にかんする条約(NPT)第6条の義務を果たすよう呼びかける。

2.アメリカ合衆国とロシア連邦にたいし、第二次戦略兵器削減交渉(STARTII )をこれ以上の遅滞なく発効させ、およびその後ただちに第三次戦略兵器削減交渉の早期締結をめざした交渉に進むよう呼びかける。

3.核保有国にたいし、核兵器の全面廃絶へむかう過程にすべての核保有五カ国が間断なく参加するために必要な措置をとるよう呼びかける。

4.核保有国にたいし、非戦略的核兵器への依存の劇的縮小、および核軍縮活動に不可欠であるその廃絶にかんする交渉の追求を呼びかける。

5.核保有国にたいし、中間措置として、自らの核兵器の警戒態勢を解除し、核弾頭を運搬手段から取り除くことを呼びかける。

6.核保有国にたいし、戦略的安定性を強化し、それに応じて戦略的ドクトリンを再検討する措置をふくめたさらなる中間措置を検討するよう求める。

7.核兵器保有能力を持ちながら未だ核兵器の不拡散にかんする条約(NPT)に加盟していない三カ国にたいし、明確かつ緊急にすべての核兵器開発もしくは配備の追及をやめ、地域と国際の平和と安全および核拡散の阻止と核軍縮にむけた国際社会のとりくみを足元から崩しかねないようなあらゆる行為を自制するよう呼びかける。

8.核兵器の不拡散にかんする条約(NPT)に無条件かつ遅滞なく加盟し、この条約へ加盟から生じるすべての必要な措置をとるよう、まだそうしていない国々にたいして呼びかける。
   
9.国際原子力委員会(IAEA)との間に安全保証措置を全面的に締結し、1997年5月15日の国際原子力委員会(IAEA)理事会により承認されたモデル議定書にもとづいた安全保証措置取り決めへの追加議定書を締結するよう、まだそうしていない国に呼びかける。

10.包括的核実験条約に無期限に遅滞なく調印し批准するよう、そしてこの条約が発効するまで核実験の一時停止をおこなうよう、まだそうしていない国に呼びかける。

11.核物質の物理的保護にかんする条約に加盟し、その更なる強化にむけてとりくむよう、まだそうしていない国に呼びかける。

12.軍縮会議にたいし、暫定委員会における「核軍拡競争の中止と核軍縮」と題する第一議題のもと、特別コーディネーター報告(CD/1299)とその中にふくまれる責務にもとづき、核兵器もしくはその他の核爆発装置のための分裂性物質の製造を禁止する、無差別・多国間・国際的かつ効果的に検証可能な条約の交渉を、核不拡散および核軍縮の目的を考慮に入れて追求し、この交渉を遅滞なく終結させること、および、諸国にたいし、この条約発効までの間、核兵器もしくはその他の核爆発装置のための分裂性物質の製造の一時停止をおこなうよう求める。

13.軍縮会議にたいし、核軍縮をあつかい、かつその目的のために優先課題として遅滞なくその決定に到達するための適切な方法とアプローチにかんする集中的協議をおこなう、適切な補助的機関を設置するよう呼びかける。
14.他の場所で取られているとりくみを効果的に補足するような核軍縮と核不拡散にかんする国際会議が、核兵器のない世界への新たなる課題の強化を促進すると考える。

15.1995年NPT再検討延長会議の決定と決議の重要性を想起し、かつ「条約の再検討プロセスの強化」決議を全面的に実施することの重要性を強調する。

16.検証協定の発展が核兵器のない世界の維持のために必要であることを確認し、国際原子力機関(IAEA)とその他のあらゆる関連する国際組織と機関にたいして、そのような体制の構成要素を研究するよう要請する。

17.核不拡散条約(NPT)の非核保有締約国が、核兵器の使用もしくは威嚇使用を受けないことを効果的に保証する国際的に法的拘束力を持つ協定の締結を呼びかける。

18.自主的に達成された協定にもとづく非核地帯の追求、拡大、設置が、とりわけ中東や南アジアなどの緊張地域において核兵器のない世界という目標に重大な貢献をすることを強調する。

19.核兵器のない世界が、究極的には普遍的で多国間交渉による法的拘束力を持つ協定、もしくは相互に強化し合う一連の協定を包含する枠組を必要とすることを確認する。

20.事務総長に、既存の資料の範囲内でこの決議の実行にかんする報告を作製することを要請する。

21.「核兵器のない世界へ:新たなる課題の必要」と題された議題を国連第54回総会の暫定議題にふくめ、この決議の実行を再検討することを決定する。

賛成 114カ国 アフガニスタン、アンゴラ、アンティグアバーブーダ、オーストリア、アゼルバイジャン、バハマ、バーレーン、バングラデシュ、バルバドス、ベラルーシ、ベリーズ、ベニン、ボリビア、ボツワナ、ブラジル、ブルネイ、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、カボベルデ、中央アフリカ、チャド、チリ、コロンビア、コモロ、コスタリカ、コートジボアール、キューバ、キプロス、ジブチ、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、赤道ギニア、エリトリア、エチオピア、フィジー、ガボン、ガンビア、ガーナ、グレナダ、グアテマラ、ギニア、ギニアビサウ、ガイアナ、ハイチ、インドネシア、イラン、アイルランド、ジャマイカ、ヨルダン、ケニア、クウェート、ラオス、レバノン、レソト、リビア、リヒテンシュタイン、マダガスカル、マラウイ、マレーシア、モルディブ、マリ、マルタ、モーリタニア、メキシコ、モンゴル、モロッコ、モザンビーク、ナミビア、ネパール、ニュージーランド、ニカラグア、ニジェール、ナイジェリア、オマーン、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイ、ペルー、フィリピン、カタール、ルワンダ、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、サモア、サンマリノ、サウジアラビア、セネガル、シエラレオネ、シンガポール、ソロモン諸島、南アフリカ、スリランカ、スーダン、スリナム、スワジランド、スウェーデン、シリア、タイ、トーゴ、トリニダードトバゴ、チュニジア、ウガンダ、アラブ首長国連邦、タンザニア、ウルグアイ、バヌアツ、ベネズエラ、ベトナム、イエメン、ザンビア、ジンバブエ 

反対 18カ国 ブルガリア、チェコ、エストニア、フランス、ハンガリー、インド、イスラエル、ラトビア、リトアニア、モナコ、パキスタン、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロバキア、トルコ、イギリス、アメリカ合衆国

棄権 38カ国 アルバニア、アルジェリア、アンドラ、アルゼンチン、アルメニア、オーストラリア、ベルギー、ブータン、カナダ、中国、クロアチア、デンマーク、ミクロネシア連邦、フィンランド、グルジア、ドイツ、ギリシャ、ホンジュラス、アイスランド、イタリア、日本、カザフスタン、キルギス、ルクセンブク、マーシャル諸島、モーリシャス、ミャンマー、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、韓国、モルドバ、スロベニア、スペイン、タジキスタン、マケドニア、ウクライナ、ウズベキスタン


マレーシア提案

全面完全軍縮:核兵器による威嚇または使用の適法性にかんする国際司法裁判所の
勧告的意見の後追い

(1998年12月4日採択)



共同提案国:アルジェリア、バングラデシュ、ブラジル、ブルネイ、ブルンジ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、フィジー、ガーナ、ガイアナ、ホンジュラス、インドネシア、イラン、イラク、ジャマイカ、ケニア、ラオス、レソト、マラウイ、マレーシア、メキシコ、モンゴル、ミャンマー、ナミビア、ニジェール、ナイジェリア、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイ、ペルー、フィリピン、サモア、サンマリノ、シエラレオネ、シンガポール、ソロモン諸島、スリランカ、スーダン、スリナム、タイ、アラブ首長国連邦、ウルグアイ、ベトナム、ジンバブエ

 国連総会は、
 
 1994年12月15日の49/75K、1996年12月10日の52/45M、1997年12月9日の52/38O決議を想起し、
 
 核兵器の引き続く存在が、全人類に威嚇をおよぼし、またその使用は地球上の全生命に破滅的結果をもたらし、ならびに、核による破局にたいする唯一の防衛は、核兵器の完全廃絶とそれらが二度と製造されないという確実性にあることを認識し、
 
 核兵器の全廃および核兵器のない世界の創造という目標にたいする国際社会の誓約を再確認し、

 核兵器不拡散条約第6条にたいする、締約国の厳粛な義務、とりわけ、核軍備競争の早期の停止および核軍備の縮小にかんする効果的な措置につき誠実に交渉をおこなう、という義務に留意し、
 
 1995年核兵器不拡散条約締約国再検討延長会議で採択された「軍縮のための原則および目的」、および、とりわけ核兵器の究極的廃絶を目標とする核兵器の地球的削減への体系的・前進的努力をおこなうという核兵器保有国が決定した目標を想起し、
 
 1996年9月10日の50/245決議における包括的核実験禁止条約の採択もまた想起し、これまで同条約に調印し批准した国の数が増加していることにたいする満足の意を表明し、
 
 南極条約およびトラテロルコ、ラロトンガ、バンコク、ペリンダバ条約が、全南半球およびこれらの条約の範囲内にある隣接地域を、徐々に非核地帯化していることを満足をもって認識し、
 
 最大数の核兵器を保有する諸国の、二国間および一方的取り決めもしくは計画による、これら貯蔵兵器の削減の努力に留意し、ならびに、核兵器の大幅削減を加速するこのような努力を強めることを呼びかけ、
 
 非核保有国にたいする核兵器による威嚇または使用の禁止を保証する、多国間により交渉され法的拘束力をもつ措置の必要性を認識し、
 
 唯一の多国間軍縮交渉の場としての軍縮会議の中心的役割を再認識するとともに、1998年軍縮会議の会期中、軍縮交渉、とりわけ核軍縮の前進がみられなかったことを遺憾とし、
 
 軍縮会議が、期限を区切った核兵器完全廃絶のための段階的プログラムにかんする交渉を開始する必要を強調し、
 
 核兵器の開発、製造、実験、配備、貯蔵、威嚇もしくは使用にたいする法的拘束力をもつ禁止、ならびに、効果的な国際管理のもとでの核兵器の解体という目標を達成することを熱望し、
 1996年7月8日に出された、核兵器による威嚇もしくは使用の適法性にかんする国際司法裁判所の勧告的意見を想起し、
 
 第52回国連総会の38O決議の実行にかんする目標にかんする国連事務総長報告(1998年8月5日付、文書A/53/208)の関連部分に注目し、

1.「厳格かつ効果的な国際的管理のもとでのあらゆる分野にわたる核軍縮につながるような交渉を誠実におこない、完了させる義務が存在する」という国際司法裁判所の全員一致の結論を、再度強調する。

2.核兵器の開発、製造、実験、配備、貯蔵、移動、威嚇または使用を禁止し、核兵器の廃絶を規定する核兵器条約の早期締結につながる多国間交渉を、1999年内に開始することにより直ちにその義務を果たすことを、すべての国に再度呼びかける。

3.本決議および核軍縮の実行にかんして講じてきた努力および措置を、事務総長に報告するようすべての国に要請するとともに、寄せられた報告を第54回会期に国連総会に通告するよう要請する。

4.「核兵器による威嚇または使用の適法性にかんする国際司法裁判所の勧告的意見の後追い」と題する項目を、国連第54回会期の暫定議題に盛り込むよう決定する。

賛成 123カ国 アフガニスタン、アルジェリア、アンゴラ、アンティグアバーブーダ、アルゼンチン、バハマ、バーレーン、バングラデシュ、バルバドス、ベリーズ、ベニン、ブータン、ボリビア、ボツワナ、ブラジル、ブルネイ、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、カボベルデ、中央アフリカ、チャド、チリ、中国、コロンビア、コモロ、コスタリカ、コートジボアール、キューバ、北朝鮮、コンゴ民主共和国、ジブチ、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、赤道ギニア、エリトリア、エチオピア、フィジー、ガボン、ガンビア、ガーナ、グレナダ、グアテマラ、ギニア、ギニアビサウ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、インド、インドネシア、イラン、アイルランド、ジャマイカ、ヨルダン、ケニア、クウェート、ラオス、レバノン、レソト、リビア、マダガスカル、マラウイ、マレーシア、モルディブ、マリ、マルタ、マーシャル諸島、モーリタニア、モーリシャス、メキシコ、モンゴル、モロッコ、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ニュージーランド、ニカラグア、ニジェール、ナイジェリア、オマーン、パキスタン、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイ、ペルー、フィリピン、カタール、ルワンダ、セントクリストファーネビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、サモア、サンマリノ、サウジアラビア、セネガル、セーシェル、シエラレオネ、シンガポール、ソロモン諸島、南アフリカ、スリランカ、スーダン、スリナム、スワジランド、スウェーデン、シリア、タイ、トーゴ、トリニダードトバゴ、チュニジア、ウガンダ、ウクライナ、アラブ首長国連邦、タンザニア、ウルグアイ、バヌアツ、ベネズエラ、ベトナム、イエメン、ザンビア、ジンバブエ

反対 25カ国 アルバニア、アンドラ、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イスラエル、イタリア、ルクセンブルク、モナコ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スロベニア、スペイン、トルコ、イギリス、アメリカ合衆国

棄権 25カ国 アルメニア、オーストラリア、オーストリア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、クロアチア、キプロス、デンマーク、エストニア、フィンランド、グルジア、アイスランド、日本、カザフスタン、キルギス、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ノルウェー、韓国、モルドバ、タジキスタン、マケドニア、トルクメニスタン、ウズベキスタン


日本政府提案

核兵器の究極的廃絶のための核軍縮

(1998年12月4日採択)



共同提案国:オーストラリア、オーストリア、カナダ、フィンランド、ギリシャ、イタリア、日本、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ニュージーランド、ニジェール、ノルウェー、ルーマニア、スペイン、ポルトガル

 総会は、

 1994年12月15日の49/75H決議、1995年12月12日50/70C決議、1996年12月10日51/45G決議、1997年12月9日の52/38K決議を想起し、

 1998年6月6日の安全保障理事会1172号決議に留意し、
 
 戦略攻撃兵器のさらなる削減と制限にかんする条約(STARTII )の早期発効を期待し、アメリカ合衆国クリントン大統領とロシア連邦エリツィン大統領によって出された核戦力のさらなる削減数についての共同声明を歓迎し、
 
 その他の核保有国の核兵器削減の努力、最近ではイギリスによる努力を歓迎し、

 また、ブラジルの核不拡散条約への加盟を歓迎し、

 核軍縮へのさらなる進展が国際平和と安全保障を保証する国際的核不拡散体制を強化することになるとの確信を再確認し、

 さらに、核兵器やその他の核爆発装置用分裂物質の生産を禁止する、非差別的な、多国間の、国際的にまた効果的に検証できる条約にかんする1995年の特別コーディネーターの報告とそれに盛り込まれた任務にもとづいて交渉する特別委員会を設置するというジュネーブ軍縮会議の決定を歓迎し、

1.核不拡散条約の普遍性を達成することの重要性を再確認し、同条約の非加盟国に早期に無条件で加盟することを呼びかける。

2.さらに、核不拡散条約のすべての締約国が同条約の義務を履行することを再確認する。
 
3.核保有国が、核兵器を廃絶するという究極の目標を掲げて、核兵器を世界的に削減する制度的、漸進的な努力を断固として追求すること、および、すべての国家が、厳格で効果的な国際管理のもとで全面完全軍縮を追求することを呼びかける。
 
4.核兵器廃絶という究極目標を達成するために、以下に記されている行動を追求することが重要であり、必要であると認識する。
 −包括的核実験禁止条約の早期発効のために、すべての国が同条約を早期に調印し批准すること、およびその実効までの期間の核実験の中止。
 −核兵器その他の核爆発装置用分裂物質の生産禁止のための無差別的で、多国間の、国際的にまた効果的に検証できる条約について1995年の特別コーディネーターの報告とそれに盛り込まれた権限にもとづいた交渉を軍縮会議において早期に終了させること。
 −核兵器やその他の核爆発装置用分裂物質の生産禁止条約に続いておこなわれるべき可能な措置について多国間の議論を開始すること。
 −STARTII を早期に発効させ、ロシア連邦、アメリカ合衆国がSTARTII にかんする交渉を早期に開始し終結すること。
 −五つの核保有国が核兵器を一方的に削減するようさらに努力し、適切な段階に、核兵器の削減についての交渉を開始すること。
 
5.核保有国に、核軍縮の進展とそのための努力について国連加盟国にたいし、正しく滞りなく情報を与えるよう促す。
 
6.核軍縮の引き続く努力を歓迎し、その結果生じた分裂性物質の安全で効果的な管理の重要性に注目する。
 
7.すべての国に、大量破壊兵器、なかんずく核兵器の拡散を防ぐ努力を強め、必要ならば、大量破壊兵器生産に寄与するような装置、原料、技術の輸出をしないとの各国の政策を確認し強化することを呼びかける。
 
8.また、核不拡散条約のすべての締約国に、2000年に開かれる次回再検討会議の成功のために全力をつくすことを呼びかける。
 
9.適切な議論の場で、核不拡散と核軍縮にかんする真剣な討論が引き続きおこなわれるよう促進する。

賛成 160カ国 アフガニスタン、アルバニア、アンドラ、アンゴラ、アンティグアバーブーダ、アルゼンチン、アルメニア、オーストラリア、オーストリア、アゼルバイジャン、バハマ、バーレーン、バングラデシュ、バルバドス、ベラルーシ、ベルギー、ベリーズ、ベニン、ボリビア、ボツワナ、ブラジル、ブルネイ、ブルガリア、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、カナダ、カボベルデ、中央アフリカ、チャド、チリ、中国、コモロ、コスタリカ、コートジボアール、クロアチア、キプロス、チェコ、コンゴ民主共和国、デンマーク、ジブチ、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、赤道ギニア、エリトリア、エストニア、エチオピア、ミクロネシア連邦、フィジー、フィンランド、フランス、ガボン、ガンビア、グルジア、ドイツ、ガーナ、ギリシャ、グレナダ、グアテマラ、ギニア、ギニアビサウ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、ハンガリー、アイスランド、インドネシア、アイルランド、イタリア、ジャマイカ、日本、ヨルダン、カザフスタン、ケニア、クウェート、キルギス、ラオス、ラトビア、レバノン、レソト、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マダガスカル、マラウイ、マレーシア、モルディブ、マリ、マルタ、マーシャル諸島、モーリタニア、メキシコ、モナコ、モンゴル、モロッコ、モザンビーク、ネパール、オランダ、ニュージーランド、ニカラグア、ニジェール、ナイジェリア、ノルウェー、オマーン、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイ、ペルー、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、カタール、韓国、モルドバ、ルーマニア、ロシア、ルワンダ、セントクリストファーネビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、サモア、サンマリノ、サウジアラビア、セネガル、セーシェル、シエラレオネ、シンガポール、スロバキア、スロベニア、ソロモン諸島、南アフリカ、スペイン、スリランカ、スーダン、スリナム、スワジランド、スウェーデン、シリア、タジキスタン、タイ、トーゴ、トリニダードトバゴ、チュニジア、トルコ、トルクメニスタン、ウガンダ、ウクライナ、アラブ首長国連邦、イギリス、タンザニア、アメリカ合衆国、ウルグアイ、バヌアツ、ベネズエラ、ベトナム、イエメン、ザンビア、ジンバブエ

反対 0

棄権 11カ国 アルジェリア、ブータン、コロンビア、キューバ、北朝鮮、インド、イラン、イスラエル、モーリシャス、ミャンマー、パキスタン


インド提案

核兵器の使用禁止にかんする条約

(1998年12月4日採択)



共同提案国:バングラデシュ、ブータン、ボツワナ、ブルネイ、コロンビア、コスタリカ、キューバ、朝鮮民主主義人民共和国、コンゴ民主共和国、エジプト、インド、インドネシア、イラン、ケニア、ラオス、リビア、マレーシア、メキシコ、ミャンマー、ネパール、ナイジェリア、スーダン、ベトナム

 国連総会は、

 核兵器は人類の生存に最も深刻な脅威を与えるものと確信し、
 
 核兵器による威嚇又は使用の適法性にかんする1996年7月8日の国際司法裁判所の勧告的意見に留意し、
 
 核兵器の使用又は使用威嚇を禁止する多国間の普遍的で拘束力を持つ協定が、核による脅威の除去と究極的な核兵器廃絶へとつながる交渉の情勢づくりに貢献し、国際の平和と安全を強化すると確信し、
 
 核兵器の削減にむけてロシア連邦とアメリカ合衆国が講じたいくつかの措置と国際情勢の改善は核兵器の全面廃絶の目標に貢献できることを認識し、
 
 国連総会の第10回特別総会(訳注:SSD I )の最終文書の第58項が、「国際関係における諸国の平和的行動規範が合意され、核兵器の使用又は使用の威嚇が生じないような国際関係の条件を諸国間にもたらす努力にすべての諸国が積極的に参加すべきである」と述べたことを想起し、

 1961年11月24日の1635号、1978年12月14日の33/71B、1979年12月11日の34/83G、1980年12月12日の35/152Dおよび1981年12月9日の36/92号決議において宣言されたとおり、核兵器のいかなる使用も国連憲章に違反し人道に反する犯罪であることを再確認し、
 
 核兵器の開発、製造、貯蔵と使用を禁止し、それらの最終的な解体につながる、普遍的な核兵器条約を実現することを決意し、
 
 核兵器の使用禁止にかんする条約が、特定の期限を設定した核兵器の完全廃絶にむけた段階的計画の重要な一歩となることを強調し、
 
 軍縮会議(CD)が1998年の会期中に、1997年12月9日の国連総会決議52/39Cが呼びかけたこの問題にかんする交渉に着手できなかったことに遺憾をもって留意し、

1.いかなる状況においても核兵器の使用または使用の威嚇を禁止する国際条約の合意に達するため、軍縮会議に交渉を開始するよう再び要請する。
 
2.それらの交渉の結果について総会に報告するよう軍縮会議に要請する。

賛成 111カ国 アフガニスタン、アルジェリア、アンゴラ、アンティグアバーブーダ、バハマ、バーレーン、バングラデシュ、バルバドス、ベリーズ、ベニン、ブータン、ボリビア、ボツワナ、ブラジル、ブルネイ、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、カボベルデ、中央アフリカ、チャド、チリ、コロンビア、コモロ、コスタリカ、コートジボアール、キューバ、北朝鮮、コンゴ民主共和国、ジブチ、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、赤道ギニア、エリトリア、エチオピア、フィジー、ガボン、ガンビア、ガーナ、グレナダ、グアテマラ、ギニア、ギニアビサウ、ガイアナ、ハイチ、インド、インドネシア、イラン、ジャマイカ、ヨルダン、ケニア、クウェート、ラオス、レバノン、レソト、リビア、マラウイ、マレーシア、モルディブ、マリ、モーリタニア、モーリシャス、メキシコ、モンゴル、モロッコ、モザンビーク、ミャンマー、ナミビア、ネパール、ニカラグア、ニジェール、ナイジェリア、オマーン、パキスタン、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイ、ペルー、フィリピン、カタール、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、サモア、サウジアラビア、セネガル、セーシェル、シエラレオネ、シンガポール、ソロモン諸島、南アフリカ、スリランカ、スーダン、スリナム、スワジランド、シリア、タイ、トーゴ、トリニダードトバゴ、チュニジア、ウガンダ、アラブ首長国連邦、タンザニア、ウルグアイ、バヌアツ、ベネズエラ、ベトナム、イエメン、ザンビア、ジンバブエ 

反対 39カ国 アルバニア、アンドラ、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、ミクロネシア連邦、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、モナコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、マケドニア、トルコ、イギリス、アメリカ合衆国

棄権 22カ国 アルゼンチン、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、中国、キプロス、グルジア、ホンジュラス、イスラエル、日本、カザフスタン、キルギス、マルタ、マーシャル諸島、韓国、モルドバ、ロシア、サンマリノ、タジキスタン、トルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタン


マレーシア決議案提案理由発言


核兵器の使用と威嚇の適法性にかんする
国際司法裁判所の勧告的意見について

マレーシア国連大使 ハスミ・アガム



国連第53回総会第一委員会 
1998年10月29日

 議長、

1.わが代表団は、当委員会に1998年10月26日付けで決議案A/C.1/53/L.45号「核兵器の使用と威嚇の適法性にかんする国際司法裁判所の勧告的意見について」を提案できることを光栄に思う。この決議案は以下の政府代表団によって共同提案されている。

 アルジェリア、バングラデシュ、ブラジル、ブルネイ、ブルンジ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、フィジー、ガーナ、ガイアナ、ホンジュラス、インドネシア、イラン、イラク、ジャマイカ、ケニア、ラオス、レソト、マラウイ、メキシコ、モンゴル、ミャンマー、ナミビア、ニジェール、ナイジェリア、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイ、ペルー、フィリピン、サモア、サンマリノ、シエラレオネ、シンガポール、ソロモン諸島、スリランカ、スーダン、スリナム、タイ、アラブ首長国連邦、ウルグアイ、ベトナム、ジンバブエ、そしてわが国の代表団である。 

2. 今総会第一委員会の討論から明らかなことだが、国連加盟国の大多数は、最終的に核兵器廃絶に至る核軍縮にむけた交渉において真摯な努力が欠けており、また、非常に進展が遅いことに、引き続き重大な懸念を抱いている。最近の出来事は、これらの懸念を増大させ、状況をいっそう複雑にしている。よって、国際社会が、最終的な目標である核兵器の完全廃絶を実現するために、核軍縮の努力を強めることが急務となっている。

3. 提案され、今日採決がおこなわれるこの決議案は、その方向にむけた努力のひとつである。これは前回総会が大多数の賛成で採択した決議 52/38O号にもとづき、それを更新したものである。昨年の決議の根拠となった提案理由は、昨年と同様に今年も有効である。

4. この決議案は、国際司法裁判所 (ICJ) が裁判官全員一致で「厳格かつ効果的な国際管理のもと、すべての面にわたって核軍縮につながる交渉を誠実におこない、これを完了する義務が存在する」とした勧告的意見を、再度強調するものである。この勧告的意見からみても、諸国はこのような交渉をおこなう努力をするだけでなく、これを早期に締結する義務を負っていることは明らかである。当決議案はまた、すべての国が、核兵器の開発・製造・実験・配備・貯蔵・移転・使用あるいは威嚇を禁止し廃絶することを定める核兵器条約に至る多国間交渉を1999年に開始し、直ちにこの義務を遂行することとした総会決議 52/38O号の呼びかけを再度おこなうものである。これは核兵器不拡散条約 (NPT) 締約国が、同条約第6条の下で負う、核軍縮にかんする効果的な措置について誠実に交渉をおこなうという厳粛な義務と、核兵器の最終的な廃絶の目標にむかい核兵器の全地球的削減のため組織的かつ漸進的な努力をおこなうという締約国の決意に合致している。当決議案の提案者たちは、この義務が存在するとした世界法廷の全員一致の意見は、国連加盟諸国が世界から核兵器を一掃するという決意を持った努力をおこなっていくなかでの、法廷意見の後追いの行動の確固とした基盤であると考える。

5. この決議案を今53回総会に提案するにあたって、いくつかの追加的な点を述べたい。その一部は、これまでにこの決議の提出に反対した政府代表の意見に応えるものである。まず指摘したいのは、決議案は、核兵器(禁止)条約につながる多国間交渉を直ちに、とりわけ1999年に開始することを求めたものではあるが、その形態としては、核軍縮のほかの側面にかんする交渉を除外せず、むしろそれを認め、奨励しており、そのプロセス全体が核兵器条約にかんする交渉につながるべき、としている点である。決議案はとりわけ、核兵器条約に「つながる」交渉と述べており、そうすることにより核兵器保有国自身が支持を誓約している軍縮のステップなども考慮に入れている。昨年もわが国の代表によって特に言及されたことであり、そのことに私は感謝しているが、この決議が、核兵器条約に「つながる (leading to)」交渉を呼びかけているのであって、「かんする (on) 」交渉を求めているのではないことに注意すべきである。よって、この決議案の起草者たちがとった現実的なアプローチは、非同盟運動などが議論している段階的・漸進的な措置と相容れないものではない。したがって、核兵器国により、積極的で建設的な態度である、と受け取られるべきものである。

6. わが代表団は、決議案が、ICJの意見の特定部分、つまり、「厳格かつ効果的な国際管理のもと、すべての面にわたって核軍縮につながる交渉を誠実におこないこれを完了する義務が存在する」という個所を選択し、これに焦点を当てていることを進んで認めるものである。想起されるべきことは、ICJ が核兵器にかんして2つの主要な結論を下したことである。ひとつは核兵器の威嚇と使用について、もうひとつは軍縮交渉をおこなう義務についてである。この二つには異なる対応が必要であるため、国連総会がこれらの結論を別々に扱うことが適切である。決議案は「国際司法裁判所の勧告的意見の後追い」と題されているため、この二つの意見をひとつの決議にあわせて入れることは、問題を混乱させるだけである。各国代表団は、適切な行動の過程を支持しても、もう一方を支持しないかもしれないからである。

7. この決議案は、法的効力のあるパラグラフ第一項に示されているように、各国の軍縮の義務に焦点を当てたものである。というのは、この結論は、世界法廷が全員一致で下したものであり、さまざまな解釈がなされている核兵器の威嚇と使用についての結論とは異なり、この結論の意味については、ほとんどあるいはまったく議論の余地がないからである。この結論を、軍縮交渉を促進する数々の任務を負っている総会が実行するのは、まったく適切なことである。

8. 昨年、二、三の国々によって出された、必要なのはさらなる二国間交渉であり、多国間交渉は二国間交渉締結の成功をさまたげるとの論点については、私は、わが国の代表団が昨年の決議案を提案したときに述べたことを繰り返すのみである。われわれはこう述べた。「二国間交渉を通じた核兵器削減をめざす現在の努力と過去の成果を」認める…「(しかし)…これらの二国間交渉は核兵器の数を一定の上限まで減らすことのみをとりあげたものであって核兵器の完全廃絶をめざしたものでも、核兵器の使用と威嚇にかんする既存の政策の変更にかんするものでもない」。私は再度、二国間交渉の重要性と引き続く関連性を強調するものであるが、これが多国間交渉の重要性から関心をそらせるものであってはならない。むしろ、二つの道程は相互に補完・補強しあうものである。それはつまるところ、核軍縮が全人類にとっての重要問題であり、核兵器保有国だけの問題ではないからである。

9. また、この決議は、非核兵器保有国からあらゆる軍縮の責任を免除するものであるという主張がある。これはもちろん、根拠がなく、誤解を招くものである。というのは、この決議は「すべての」国々が核軍縮交渉をおこなう義務を履行するよう呼びかけており、核保有国のみを特定してはいないからである。

10. ある国の代表団は、この決議案が、「全面完全軍縮」に関連したNPT第6条が定めた義務を除外している、と主張している。これについては、われわれの目の前にあるこの決議案が、ICJ勧告的意見の実行にかんするものであって、NPTのそれではないことを指摘したい。NPT第6条の規定は国際法の一部を構成しており、ICJはこれを使ったわけであるが、ICJはまた、結論を下すにあたって他の軍縮・慣習法も引用している。法廷が核軍縮交渉をおこなう義務が存在するとした結論には、そのような義務と「全面完全軍縮」との間に何の連関があるとも述べられていない。NPTも直接の関連性を述べてはおらず、たんに両方についておこなう義務があると述べているだけである。

11. さらに、決議案は、法廷が核兵器の威嚇と使用を禁止する国際法は存在しないと結論したことを黙殺している、という議論もある。わが代表団は、昨年ある政府代表がおこなった、「法廷は、核兵器の威嚇あるいは使用は一般的に違法であると確かに結論付けたのであり、法廷が例外を認めていると言うことは正しくない」という発言に感謝し、これに全面的に賛成するものである。法廷は核兵器の合法的な使用はありうるとの主張をしりぞけ、極端な状況のもとでは結論を出すことができない、と述べたのである。

12. 以上の理由により、わが代表団は、過去にこの決議の提案に反対した人々から出された、これが選択的で、偏向的で、非現実的であるとする主張に意義を唱えるものである。この決議はそのどれにもあたらない。この決議案を現在の形で提出することは、第一委員会と総会の軍縮問題にかんする活動において、法廷意見を実際に適用するという問題に過ぎない。最終的に核兵器の全地球的廃絶につながる多国間交渉を支持する諸国には、——われわれすべてがそのために尽力しているのであるが——長期的には、まさにそれだけをめざすこの決議案に反対する理由は何もない。

13. この決議案を提出するにあたり、わが代表団は、共同提案諸国および、この決議に賛成投票をしてくださる諸国代表団に心からの感謝を表明する。


新アジェンダ連合決議案提案理由発言

「核兵器のない世界へ:新たなる課題の必要」
決議案共同提案国を代表して

アイルランド外務省軍縮不拡散局長
ダラ・マッキンバー



国連第53回総会第一委員会
1998年10月27日

 議長、

1.私は、文書番号L. 48「核兵器のない世界へ:新たなる課題の必要」と題した決議案を、ベニン、ボツワナ、ブラジル、カメルーン、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、グアテマラ、アイルランド、レソト、リベリア、マレーシア、マリ、メキシコ、ニュージーランド、ナイジェリア、ペルー、サモア、スロベニア、ソロモン諸島、南アフリカ、スワジランド、スウェーデン、タイ、トーゴ、ウルグアイ、ベネズエラ(訳注:共同提案国にはその後変動あり)の政府代表団を代表して提出したい。

2.この決議案の目的は、核軍縮の課題へのわれわれのアプローチの方法を再活性化することである。その意図は、核兵器をきっぱりと根絶する目的で、国際社会を共同の行動に駆り立てることにある。人類にとりこれほど重要な問題についての国際社会の意志を検討し表明することは、今総会に集まった国連加盟国の特権であり任務である。

3.この決議案にふくまれる提案を制定することは、核保有国、核兵器開発の選択肢を放棄することによって国際社会に合流するのであるがまだ合流していない諸国、そして、多国間的で無差別で普遍的な核兵器のない世界の体制を実現する責務を負っている国際社会全体にとって、大きな影響を及ぼすだろう。

4.この委員会に提案されている決議案は、課題、あるいは課題の輪郭を提案するものである。これは、当委員会にかけられている他の核軍縮決議にとって代わることを意図したものではない。これが前進の道を開くかどうかは、核兵器保有国が核軍縮にかんする自らの責任に新たな見地で接近するというきっぱりとした誓約をおこなうかどうかにかかっている。つまり、速やかで全面的な自国核兵器の廃絶である。この決議案は、彼らにたいしその実行を求めている。それがなければ、われわれは、引き続く核兵器の存在と無期限の保有という見とおしに直面する。

5.この決議案は、もし国際社会が核兵器廃絶に真剣に努力すべきであるなら、広い意味でとりくむことができ、また、とりくまなければならない課題を示すものである。課題は、現存の機構やアプローチを利用しなければならないと強調している。これは、それぞれの点で核軍縮の追求と達成に貢献することができ、また、貢献しなければならない二国間、複数国間 (plurilateral)、多国間のそれぞれのアプローチの間のバランスを与えるものである。

6.この決議に述べられたアプローチを追求すれば、その影響は決定的なものであろう。これらの兵器は時代錯誤として急速に退けられ、それらの解体プロセスにおいてのみ、核保有国間で細かく取り決められる安全保障上の条件での注意深い取り扱いを必要とする脅威として残るだけのものとなろう。拡散の脅威は、核保有国と非核保有国に分かれた世界ではつねに懸念でありつづけるが、それも、和らぐ結果がもたらされるであろう。

7.早急かつ完全な核兵器廃絶の緊急性を無視した結果は、今年前半、われわれにのしかかってきた。こうした出来事を、われわれすべてにとって、今すぐともに行動するための明確な転換点にしよう。

8.この決議案は、行動計画の輪郭を提案している。その詳細はどの計画もそうであるように変更可能である。予定表を作成することもできるし、新たな、別のアプローチを検討することもできる。そのすべてが可能である。核保有国が自国の核軍備の迅速かつ完全な廃絶の明確な誓約を示し、それに続いて、核軍縮に至るプロセスの最初かつ不可分の一部をなすそれらの交渉の新たなレベルの関与がなされるまで、われわれのできることはごくわずかである。

9.この決議で提案国が企図していることは、現存する法的拘束力をもった核保有国の誓約に依拠した道理ある提案によって、核不拡散条約第6条の実現にむけて最後の一突きを加え、こうして国際社会による条約全体の諸目標の達成を可能にすることである。

議長、

10.私は、一部の代表団によってこの決議案に加えられた一連の批判に回答したい。
 
 提案諸国がおこなった言明は、この決議を他国も受け入れられるようなものにするための変更を考慮する用意がそれら提案国にはないことを示している、という主張がある。
 
 提案国は、1998年6月9日の核軍縮にかんする共同閣僚宣言(A/53/138)以来、国際社会の圧倒的多数の支持を得られる決議案をつくり上げるためにたゆまず作業を続け、協働する意思を持つすべての代表団と関わり、数多くの代表団がそうした対話に加わった。こうして提案国は各国代表団の懸念に対応するため、原テキストの多くのパラグラフを修正した。本決議の提案国は、五大核保有国にもこのテキストについての対話に加わるよう招いた。

 このテキストは、「核兵器能力国家」など、危険な新しい概念を提示しているという議論がある。
 
 1998年6月9日の共同宣言で、閣僚たちはこの言葉によってあらわされる国家、すなわちイスラエル、インド、パキスタンについては、具体的に述べた。しかしながら、それ以上のいかなる起こりうる誤解も避けるため、提案国は、核兵器能力という文言を、国家という文言の後に移した。それは、提案国が核保有能力国という新しい地位をつくろうと企てているかのようなふくみを与えないためであった。したがってテキストは、「核兵器の能力をもち、NPTに加入していない国家」と述べている。そうした非NPT加盟国はたった三カ国である。

 テキストは、分裂物質製造停止条約(FMCT)について合意された用語を、交渉をあらかじめ判定しうるようなやり方で定式化しなおすことにより、具体的に害を及ぼしているとの議論がなされている。

 当初の決議案は、総称的であり、かつ、これらの条約交渉権限にもとづくコンセンサスによる運営機関、軍縮会議(CD)での合意があるのだから誤解することのありえない「分裂物質条約」という定式を使った。しかしながら、多くの代表団がむしろ付託全文テキストの方を好んだので、それにそって決議案のテキストも修正された。

 国際社会がインド、パキスタンの核実験について深刻な懸念の声をあげているとき、決議案はそれらについて言及しておらず、そうであることによってインドとパキスタンに救いの手と慰めとを与えているという議論、さらに、それはインドとパキスタンの実験に報いを与えるものであり、安保理事会決議1172号にそぐわない、とも議論されている。
 
 本委員会には、核実験について個別的に扱った別の決議案が出されている。この決議案の源は、最近の実験よりかなり以前に準備されていた共同閣僚宣言にある。この決議案の諸目標は普遍的なものである。それらは前向きのものであり、最近の核実験の前も後もその重要性は変わるものではない。これは新しい課題のための提案であり、一部の国家がおこなった行動への対応ではない。提案国の目的は、現在求められている行動に焦点を当てている。核兵器廃絶のための即時の行動が持つ緊急性は、最近の実験によって高まった。
 決議案は、条約下の自国の義務を守らないNPT加盟国が与えている脅威について認めていない、とも論じられている。
 
 この決議案は、遂行すべき課題をよびかけるものである。国連総会全体会議に提出された国際原子力機関(IAEA)の報告についての決議案は、NPT第2条、第3条下での義務を実施するために結ばれた保障取決めの遵守の問題を検討している。安全保障理事会は、拡散に関わる問題についても報告を受けている。

 案文は、1995年のNPT再検討延長会議で合意された「原則と目標」にふくまれている課題を暗に拒絶することにより、国際不拡散体制を弱めていると言う議論がある。

 1995年のNPT再検討延長会議で打ち出された課題には、a)CTBTの交渉、これはその後完結した、b)分裂物質条約交渉、これはまもなく始まろうとしている、c)消極的安全保障、これも現在検討中、などがふくまれている。この案文は、なすべきこととして第1項の調印ないし批准(第10条)、第二項の確固とした追求(第12条)、第3項の交渉完結(第17条)をそれぞれ呼びかけている。核軍縮の追求をふたたび起動するこの決議の目的は、いかなるときにおいてもNPTの原則と目的に即し、また同条約加盟国によって採択された決定ないし決議に即して綴られている。実効項目15項の提案文は、1995年の再検討延長会議でうちだされた課題と再検討プロセスの双方の重要性を強調している。決議案全体が、NPTとその全面的遂行への提案国の明確なコミットメントによって特徴づけられているのである。

 地球的な不拡散体制を弱める可能性の大きいイニシアチブを受け入れることはできないとの十分に強力な合図を送るには、この決議にかんする反対票が不可欠であるとする議論がある。
 
 NPTの非核保有加盟国を代表する代表団からなる本決議の提案国は、その不拡散諸条項をふくめ、NPT条約を守るために行動している。この課題は、本総会のすべての代表団によって採択されるなら、それらの諸条項を強めるものとなるアプローチなのである。

 最後に、議長、

11.私はこの決議案の共同提案国を代表して繰り返し確認したい。われわれは多くの国々と対話を重ねてきており、他の国々にたいしても、彼らの懸念にたいする考慮が払われるよう、われわれと連絡を取るよう呼びかけるものである。


新アジェンダ連合決議案にかんする説明文

核兵器のない世界に向けて:新たな課題の必要性
 

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 第一委員会に提出された、決議案に盛り込まれている課題は三つの部分に分かれており、これらは全体として国際社会すべての国々を包含する課題を示している。第一の部分は核兵器保有国によっておこなわれねばならない行動を呼びかけており、この部分は、核保有国自身が定めた行動、方法論やアプローチ、あるいは、現在討議されている行動計画にもとづいている。

 決議案のうち、法的効力のある本文部分の第1パラグラフは、速やかで全面的な自国の核兵器廃絶への明確な誓約を基礎として、決意を持って核軍縮を追求するよう呼びかけている。
 
  第2パラグラフは、最大の核兵器保有量を持つ二大国が選んだプロセスであるSTARTプロセスの追求にかんして直ちに行動をおこすよう呼びかけており、第1パラグラフで求めた明確な誓約を基礎として遂行されるものである。
 
 第3パラグラフは、他の核保有三カ国を核削減交渉に合流させることを呼びかけている。これらの国々は、米ロがそのような合流に適切なレベルまで二国の核兵器レベルを下げればすぐにでも核軍縮交渉に参加する意志があることを表明している。決議案は、STARTから五大保有国すべてが参加する交渉へと至るプロセスが首尾よく準備され、前者の完了次第速やかに後者を開始できるよう、すべての核兵器国間の対話を早期に開始するよう求めている。
 
 第4パラグラフは、非戦略的核兵器への依存を減らすことと、核兵器廃絶の交渉を核軍縮プロセス全体における不可欠な要素として旺盛に追求することを求めている。これは国際社会、特に核兵器の配備によって新たな標的となっている国々にとっての主要な懸念である。このような新たな脅威をなくし、また核戦力削減の経済において速やかな核兵器廃絶に特に焦点を当てるには、このパラグラフに反映されているような、国際社会からの強い呼びかけが必要である。
 
 決議案は核兵器の廃絶に焦点を定めている。これはまた、核兵器が廃絶されるまでの時期の安全保障上の懸念に責任を持って答えるものでなければならない。第5および第6パラグラフは、その前の三つのパラグラフの中に概括された、核兵器国自身が定めた諸措置にもとづいて自国の核兵器廃絶のプロセスを新たなはずみをもって迅速に完了するという合意が核兵器国間に存在するもとにあっても取り組まねばならない、中間的な措置について取り上げている。これらは軍縮の措置ではない。これらは国際的安全保障に寄与し、核兵器の偶発的あるいは意図的な使用を早期に防止するのに役立つものである。

 第5パラグラフは、その価値について幅広い合意が存在するそのような中間的措置を一つ選び出している。つまり、核兵器発射に至る反応時間を制御することのできる措置である。他にも、戦略的安定性を高める中間的諸措置もある。それはつまり先制使用禁止であるが、これは現在核保有国により考慮されているもので、さらに、そして意識的に探求する必要がある。
 
 

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 決議案の二番目の部分は、核兵器不拡散条約の枠組みの外にとどまっており、かつ核兵器を開発してきた国々によってとられるべき行動を呼びかけている。

 第7パラグラフは、これらの国々にたいして、すべての核兵器開発や配備を続けることをやめ、地域的・国際的平和と安全保障および核軍縮と核兵器不拡散をめざす国際社会の努力をそこないかねないようないかなる行動もとらないよう、断固として呼びかけている。決議案はこれらの国々を核兵器国とは認めていない。

 決議案は第8パラグラフで、これらの国々に核不拡散条約を遵守するよう求めている。この決議案のアプローチは、前向きであり、包括的である。これらの国々は自らがとった主権行為から生じた責任を負っており、国際社会はそれゆえに、われわれがこの決議案で概要を示したプロセスの一部となるよう、彼らに一致して呼びかけなければならない。
 
 

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 決議案の第三の部分では、すべての国々に求められている行動が詳述されている。既存の核兵器の廃絶を実現する必要性とは性質の異なるものとして核軍縮を達成するために、国際社会は一丸となって進まなければならない。核兵器のもはや存在しない世界というのは、普遍的に無差別的かつ多国間で交渉された体制が、核兵器が世界のどこにも再現しないよう国際社会を守っている世界のことである。このプロセスは、多国間でおこなわれねばならない。というのはこの適用も普遍的でなければならないからである。

 決議案第9パラグラフは、まだ国際原子力機関(IAEA)と全体にわたる保障措置の取り決めを締結していない国々にたいして、それをおこない、さらに1997年に多国間で合意された付属議定書も締結するよう呼びかけている。国際社会の側は、核兵器目的での逸脱が起こらないことを確実なものとするため、多国間で合意され強化された諸措置を断固として守るとの誓約をはっきりと表示せねばならない。強化された保障措置の拡大が成功することは、われわれがここで打ち出した目標にとって重要である。そして核兵器のない世界に接近する中で、さらなる措置が必要となるだろう。
 
 決議案第10パラグラフは、すべての国々に、包括的核実験禁止条約に調印・批准し、その発効までは実験の一時停止を守るよう求めている。
 
 第11パラグラフは、すべての国々に、核物質の物理的保護にかんする条約を遵守するよう求めている。核物質の安全な保管と安全な所在の管理は、核兵器のない世界にとって基本的な必要条件である。
 
 第12パラグラフは、軍縮会議(CD)において最近合意された分裂物質条約にかんする交渉を迅速に遂行するよう求め、兵器目的の分裂物質生産の暫定的停止を呼びかけている。
 第13パラグラフは、現在進行中の協議にもとづいて核軍縮を扱う適切な補助機関を設置するよう求めている。これは、決議案が主張しているように、これ以上の遅滞なく合意に達するためには優先課題として追求されねばならない。
 
 第14パラグラフは、核軍縮と核不拡散にかんする国際会議開催について検討がおこなわれるよう提案している。これは他の場においておこなわれている努力を補完し、核兵器のない世界のための新たな課題を強化するものである。この提案はいかなる他の提案や既存の提案を妨げることを意図したものではない。このような会議開催の検討はもちろん、これから進展する核軍縮プロセスの行方次第となるだろう。このような会議の目的は、他の場でおこなわれている諸努力、特に1995年NPT再検討延長会議の決定である「条約再検討プロセスの強化」の全面履行の最重要性を強調する、次の第15パラグラフに概括されているような努力を補完することである。
 
 第16パラグラフは、この決議案の採択が意味することになる進展を背景にして、国際社会は核軍縮に向かう前進の中で新たな段階に入ることを提起している。したがって、IAEAが他の関連国際組織・機関とともに、核兵器のない世界を維持するために必要となる検証体制の要素を探求し始めることが適切である。NPTが条件づけている既存の保障措置を維持する機関であるIAEAが持つ独自の資源は、この点にかんして速やかな示唆をおこなうために理想的なほど適している。この呼びかけが適切であることは、IAEAが最近CDにおいて核分裂物質条約の検証要因に協力を申し出たことにも現れている。
 
 第17パラグラフは、NPT締約国の非核兵器国が、核兵器の使用あるいは威嚇を受けないことを事実上保証する法的拘束力のある取り決めを締結するよう呼びかけている。
 
 第18パラグラフは、とりわけ中東と南アジアなどの緊張の高まっている地域において非核兵器地帯を追求・設置・拡大することの重要性を強調している。
 
 第19パラグラフにおいて、決議案は、核兵器のない世界につながるプロセスにおける国際社会の役割を再確認し、強調している。核兵器のない世界は、いかなる地域における拡散の危険も防止されるとの確信が維持される際の基礎となる、多国間の取り決めあるいは多国間で交渉された一連の協定が必要となるだろう。このような協定あるいは一連の協定は、必然的に、核兵器の保有・開発・生産・移転・使用の禁止を定めたものになるだろう。この協定あるいは一連の協定の条項は核兵器のない世界を保証するために必要な包括的なメカニズムをふくむものになるだろう。これは幅広くかつ費用のかかるものである。しかし、これは国際社会が支払う準備をしておかねばならない対価である。
 
 第20および21パラグラフは、一年後に第一委員会においてこの決議の履行を再検討することを展望して、国連事務総長にたいし、この決議の履行情況についての報告書を作成するよう求めている。



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