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1996年国連第51回総会

行き詰まる核軍縮

――国連総会第1委員会終盤の論議――

『ディスアーマメント・タイムズ』
(ニューヨーク・NGO軍縮委員会機関紙)1996年12月17日号


 包括的核実験禁止条約が締結され、1997年4月からは核不拡散条約の再検討のあらたなプロセスが開始されようとしているいま、今会期の第一委員会(軍縮および国際安全保障)を占めたのは、核軍縮の次のステップをめぐる議論であった。今会期の討議は、昨年と比べると穏やかで、よりビジネスライクなものであったが、非同盟諸国と西側核保有国・その同盟国とのあいだにある深い溝のため、会議は、次のステップがどんなものとなりうるのかについて、ほとんど何の指標も示さなかった。

 今会期をしめくくるにあたり、ベラルーシ大使であるアルヤクサンドル・シチョウ第一委員会議長は、核軍縮においては前進が見られたが、「十分ではない。さらに多くが必要とされているし期待されている。しかしながら、諸国がいかにしてこの前進の動きを続けたいかについては一定の相違が存在する。(核分裂性物質)製造禁止協定の締結を次のステップとしてで段階的アプローチを強調する国々もあるし、一方では、期限をくぎった核廃絶の意向をふくむ核軍縮の段階的プログラムをつくるために多国間交渉を開始するべきであると、強く提案する国々もある。私は、こうした意見の相違が、とりわけ軍縮会議において、核軍縮の過程全体を立ち往生させてしまわないことを強く願う」と述べた。第一委員会は11月18日に閉会した。

 第一委員会は、全部で45の決議案と2つの決定案を採択し、うち21は投票なしで採択された。総会は、これらの決議を12月10日に取り上げた(本稿における投票数は第一委員会におけるものである。一覧表に示した投票は、総会のものである)。
 

核軍縮

当然ながら、第一委員会の発言を占めたのは核軍縮の次のステップについてであり、予測通り、その方法をめぐっての深い亀裂が決議に反映された。「期限内における核兵器廃絶」決議案をふくむ、非同盟諸国が提案した3つの決議は、西側核保有国により反対された。
非同盟諸国(ミャンマー提案)による決議は、軍縮会議にたいし「核廃絶の段階的プログラムに関する、また、核兵器禁止条約による期限内の核兵器の最終的廃絶をめざす交渉を1997年早期に開始するための核廃絶に関する作業委員会を、優先事項として設立すること」を要求した。この計画は、28カ国が8月に軍縮会議に提出した「グループ21」の行動計画(ただし、「グループ21」の目標とする2020年は含まれていない)と、1995年におこなわれた非同盟諸国首脳会議の宣言を具体化したものである。ミャンマーは、この決議案を「論理的で、適切かつ時宜にかなっている」と述べたが、その一方でアメリカは、この計画を「行き詰まりのもと」と呼んだ。この決議案に対する票決は、賛成(87中国も含む)反対38 (フランス、イギリス、アメリカを含む)、棄権20 (ロシアを含む)であった。

 最も重要な新しい決議は、国際司法裁判所が下した核兵器の使用または使用による威嚇にたいする勧告的意見を歓迎したマレーシア提案である。同案は、「あらゆる側面において核廃絶に導く交渉を終結させる」義務が存在するという裁判所の全員一致の結論を引き、核兵器禁止条約締結のための交渉を、1997年中に開始することを要求した。票決は、賛成94、反対22、棄権29であった。中国が「賛成」票を投じた一方、その他の4核保有国は「反対」票を投じた。核軍縮問題について中国が投票したのは今回が初めてである。同案に反対を唱えた国々の主張は、本案の発起人たち国際司法裁判所の意見を「選別的」に引用しており、よって、決議案の内容は均衡を欠く、というものである。ロシアは同決議案を「不正確かつ不完全」とし、アメリカは、提案者らは「裁判所の意見を法的命令にしようとしている」と述べた。

 日本が提案した前年までの案と同様の、「核兵器の究極的廃絶を展望した核軍縮」決議は、賛成132、反対0、棄権11で採択された。棄権した国々は、この決議案は廃絶にたいする十分に強いコミットメントがない、と主張した。

 また、二カ国間核軍縮交渉に関して出された競合する2つの決議案のうち一方にたいし、同様の批判が浴びせられた。アメリカとロシアによる決議案は、両国が最近おこなった軍備管理、STARTおよび旧ソ連の共和国からの核兵器の撤去といったイニシアチブを歓迎したもので、賛成129、反対0、棄権12で採択された。これと同様の問題を扱った非同盟諸国の提案による決議案は、賛成83、反対36、棄権21で採択された。これにたいし、核保有国では中国のみが賛成し、他4カ国は反対している。この決議案もまた、軍縮会議にたいして期限内の核兵器廃絶を交渉するよう要求している。アメリカが、この非同盟諸国の決議案はNPTの延長を無視していると不平を述べたのに対し、南の数カ国は、米ロの決議案は 国際司法裁判所の勧告意見を無視していると述べた。

 包括的核実験条約は第一委員会での議論の中心であったが、この条約をあつかった決議はなかった。唯一、NPTをあつかった決議は、2000年の検討会議のための第一回準備委員会が1997年4月7日から18日に開かれることにふれたものであった。この決議は、賛成142、反対0、棄権2(インド、イスラエル)で採択された。

 ここ数年では初めてのことだが、核兵器用分裂性物質の製造停止に関する決議案は提出されなかった。西側諸国からはこの構想に好意的な言及がおこなわれ、製造停止のなかに現在貯蔵されている分裂物質も対象とすることを要求している非同盟諸国からは反対意見が表明されたにもかかわらずである。

 通例の、核兵器の使用または使用の威嚇を禁止する条約にかんする決議案(インド提出)と、非核保有国にたいする核保有国による消極的安全保障提供の条約の決議案(パキスタン提出)は、非同盟諸国の強い支持をうけ、西側諸国からの反対をおさえて、採択された。
 

非核兵器地帯

 非核兵器地帯(NWFZ)に関する新しい提案は、ブラジル提出の、南半球および隣接地域の非核地帯化に関する決議に盛り込まれた。

 この決議案は、60カ国以上が共同提案国となっており(そのほとんどが非核兵器地帯のメンバーである)、すべての関係諸国が、現存する諸非核兵器地帯条約および議定書を批准することを要求し、新たな非核兵器地帯の創設を強く要求したものである。ブラジルは、この案は新たな法的義務を課すものではなく、単に、南半球非核兵器地帯が「漸進的に出現していること」を認識するものである、と主張した。パキスタンは、この本文に対して修正をを提案した。南アジアが、さらなる非核地域の対象として交渉される可能性をもつ地域であることを特定した内容のこの修正は、賛成89、反対1(インド)、棄権51で、本文に盛り込まれた。この非核地帯決議案の最終投票は、賛成111、反対4(アメリカ、イギリス、フランス、カナダ)、棄権36であった。中国は賛成し、ロシアは棄権した。反対した核保有3カ国の主張は、半球規模の非核地帯化は、公海における通航権を侵害しかねないことを懸念する、というものであった。総会においては、カナダは、決議案の解釈が明確にされたことにともなって、態度を反対から棄権に変えた。

 中東における核兵器にかんしては、2つの決議案が第一委員会に出された。これまでの慣行として、中東非核地帯にかんする交渉をよびかける決議案は、票決なしで採択されている。しかし今年は、中東における和平プロセスにおける見方の違いから、従来より活発な論争がおこなわれた。決議案本文は、共同提案国による二つの修正とイスラエル提案による修正一つをとりいれた後に、今回も票決なしで採択された。イスラエル提案による修正(賛成61、反対28、棄権33)は、中東の和平プロセスにかんする表現を「二カ国間中東交渉の重要性」というものから、「進行中の二カ国間中東和平交渉の重要性」に変えるというものであった。

 もう一つの決議案??「中東における核拡散の危険性」??は常に論争点となってきたところである。それは、イスラエルがNPTの加盟国でないということを特定して言及ているたためである。今年の決議案は、本文部分から「イスラエル」という文句を削ったが、NPTに加盟していない「この地域の唯一の国家」という形で言及し、NPTへの署名を要求している。決議案は、賛成98、反対2(イスラエル、アメリカ)、棄権32で採択された。

 これ以外に出された、二つの非核地帯決議案??ラテン・アメリカおよびアフリカの非核地帯条約の実行にかんするもの??は、票決なしで採択された。南アジア非核地帯創設にかんする決議案は、賛成130、反対3(インド、ブータン、モーリシャス)、棄権8で採択された。

 モンゴルが提案した、中央アジア非核地帯創設を求めた決議案は、さらに協議をおこなうまでは投票にはかけられないこととなった。ベラルーシが提案していた「空間」をめざす中欧、東欧の非核兵器イニシアチブは、さらには追求が行われなかった。
(「化学兵器」「地雷」「通常兵器と小火器」の項、翻訳省略)
 

軍縮特別総会

 この件に関する決議案については集中的な交渉がおこなわれ、2つの修正がおこなわれてたにもかかわらず、第4回軍縮特別総会(SSODW)にかんしてのコンセンサスは生まれず、そその開催日程は未確定である。票決は、賛成137、反対2 (アメリカとイスラエル)、棄権1 (ロシア)であった。決議案は、SSODIVを「その目標と議題にかんしてコンセンサスが生まれることを条件として」1999年に開催することを求めていると同時に、1997年の国連総会の開始前に、軍縮委員会の1997年会期の「審議の結果によって」準備会議を開くと決定している。アメリカは、SSODWの日程を設定するためにはコンセンサスを必要とすることを指摘した上で、1997年と1998年の軍縮委員会において、この提案されている特別総会については討議する用意があると述べた。
 

立ち往生する実験禁止機構

  包括的核実験禁止条約(CTBT)加盟国による第一回準備会議は、国連において11月20日から22日に開かれたが、代表らが、誰が条約機構の運営にあたるかについて合意にいたることができなかったため膠着状態のもとに閉会した。

 南アフリカのヤコブ・セレビ大使が議長を務めたこの会議は、条約が求める、CTBT監視機構の設立を開始するためのものであった。しかしながら、機構の上層機関における議席のの地域的配分をめぐるするどい対立のため、コンセンサスは得られなかった。機構の責任者の唯一の候補はドイツのウォルフガング・ホフマン大使であるが、全体の行き詰まり状態により、会議は同大使を任命する決定をおこなうことができなかった。セレビ議長により、ホフマン大使が小人数のスタッフと共に業務を開始してはとの妥協案が出されたが、受け入れられなかった。よって、各国は、何も確定していないまま、1997年3月にジュネーブで再開される会議で話し合いをおこなう予定である。

 化学兵器禁止条約機構をモデルとし、CTBT機構は、CTBTが発効したときには運営を開始していなければならない。そのためには、先端核技術能力をもつ44カ国による批准が必要である(本紙1996年9月20日号参照)。12月16日現在 (1996年)、そのリスト中にある3カ国??インド、パキスタン、北朝鮮??は条約に署名しておらず、しかもインドは署名ををおこなわない旨を表明している。署名国は138あり、そのうち一カ国(フィージー)のみが批准している。
 

核保有国はどう投票したか

 5核保有国の全体的投票パターンは、総会の今会期においてはほとんど変化がない。アメリカは、ひきつづき一番多く10回「反対」票を投じており、中国の反対票は最も少なく、ゼロであった。欧州連合のパートナーであるフランスとイギリスの投票記録はまったく同じである。その一方で、ロシアはヨーロッパの立場への接近を続けている。
第一委員会からだされた47の決議・決定のうち、投票にかけられたのは、1995年の24から26に増加した。

 4カ国の「反対」票の大半は、彼らの公式の核政策とは相容れない考えを含んだ、期限内での廃絶や多国間交渉といった核軍縮決議に投じられている。アメリカは、最多の反対票を投じることで先頭にたっただけでなく、それらの票決の多くにおいてごく少数派となっている。アメリカが「反対」した10の決議のうちの6つにおいて反対の側にたったのは4カ国かそれ以下であった。しかし、この記録でさえ、アメリカが11の票決中7つにおいて孤立した状態におかれた1995年よりはわずかにましだったのである。5カ国のうちいずれも投票拒否戦術にうったえなかったのは、ここ何年もの間においてはじめてである。

 

賛成 反対 棄権
アメリカ   9  10   7
イギリス  14   8   4
フランス  14   8   4
ロシア  14   2  10
中国  23   0    3



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