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1998年3・1ビキニデー関連資料より
 

 フィリピン:別名を冠した米軍地位協定(SOFA)
 概観と突出した特徴

(非核フィリピン連合声明)

ローランド・シンブラン
フィリピン大学教授
(部分のみ)


 フィリピンの民族主権と領土保全に重大な意味と制約とをもたらす協定が、とりわけ、ラモス政権が、短命に終わったフィリピンの独立100周年祝賀準備をしている今、フィリピン国民に押し付けられようとしている。彼らは、軍寄港協定(VisitingForces Agreement = VISFA)とオブラートでくるんだ公式名で、地位協定(SOFA)をわれわれにつかませようとしているのである。これは、この100周年の年に、新しい形、新しい手法をとった帝国主義とのたたかいに決着をつける機会にふたたび身を捧げることができるかという、われわれにたいする挑戦である。これはあらたな反帝国主義的団結と連帯のための機会である。これは、とりわけ、われわれが1896年の革命と独立のたたかいが掲げた理想に誠実であろうとすれば、最大かつ緊急に注意を払うべき問題である。これは、政治的、宗教的、イデオロギー的帰属や信条を超えて、憂慮するフィリピン国民のまさに広範な戦線を必要とする問題である。
 
 地位協定の条項は、わが国におけるかつての米軍基地存続権の規定を焼き直したものにすぎない。この地位協定は、1947年の軍事基地協定、さらに1959年と1965年のボロ隠しの修正、さらに1991年にフィリピン上院が拒否した友好協力安全保障条約などの、厄介でもっとも不快な特徴点の多くを復活させ、生き返らせたものである。これらの条項の多くは、ほとんど逐語的に、一語一語、かつての廃止された文書や協定から復活させられているものである。こうして、提唱されている地位協定は、「片足をドアの内側に突っ込」み、その後、わが国の領土を国内的、地域的、世界的介入にふたたび活用するためにずかずかと入り込もうとする、アメリカ軍の姑息なたくらみである。
 
 アメリカとであれ、他のいかなる外国とであれ、外国軍にフィリピン領土のどの地点であれ上陸権や停泊権、治外法権などの特権を与える軍事アクセス協定や地位協定をでっち上げることは、フィリピンの一部高官たちが、いまだにアジアで最初の独立共和国の100周年を記念する資格をもっていないことを示している。概してこれらの高官たちは、アメリカの植民地部隊とかれらの庇護の下で、植民地状態の継続を記念するほうがお似合いであることを示している。むしろ彼らはみずからにふさわしく、売国的将軍からかいらい将軍への100年を記念しているのである。そしてこれが、アメリカ帝国主義が世界的強国としてあらわれ、アジアで最初の地上戦をたたかい、最初のフィリピン共和国を圧殺した出来事の100周年でもあることを、われわれは忘れてはならない。
 
 実際、この地位協定のでっち上げは、米軍が当地への軍事的復活を計画し、フィリピンにおけるきわめて活発な軍事的プレゼンスを準備しているのではないかという懸念を裏付けている。軍事演習あるいは寄港などで訪問してくる米軍のための地位協定などというものは、アメリカがフィリピンへの極めて活発かつ定期的な軍事プレゼンスを計画していない限り、必要ではないし、要求されるべきものでもない。以前に、比米相互防衛委員会によって準備された物品役務相互提供協定(ACSA)案の策動が1994年に挫かれたが、それは米国国際開発局(USAID)の基金によりジェネラル・サントス市とミンダナオ島のサラガニ湾につくられるプロジェクトといった、フィリピンの港や空港に、アメリカの物資や武器を事前に配置し、貯蔵するという米国防総省の計画を全面的に暴露するものであった。これは、フィリピン共和国憲法そのものに対する謀略である。

 しかし、この地位協定は、1991年にフィリピン上院によって退けられた友好協力安全保障条約の条項をはじめとする、以前の各種基地協定よりもさらに悪質なものである。以下、地位協定の突出した特徴について述べてみよう。

1. フィリピン領土に入域するすべての合衆国軍隊の構成員(以下、米軍の構成員)は、犯罪の遂行時にその構成員が公務中であるか、もしくは米軍司令官により正式公務証書(ODC)の発行を受けているかぎり、実際上フィリピン領土における犯罪についての刑事訴訟から保護される。

2. 公務についていない間およびフィリピン裁判所の管轄権の下において米軍の構成員によって遂行された凶悪犯罪を含むすべての犯罪に関しては、裁判中およびすべての訴訟手続き中の米軍の構成員の身柄は、米軍当局が拘束する。

3. 米軍の構成員は、米軍のための輸入および装置その他の財産を現地で取得する場合は、ほとんど全体的かつ全面的な免税措置を与えられる。

4. フィリピン領土を出入する米軍航空機、船舶および自動車は、着・上陸または港湾手数料、航行または上空通過料金の支払を免除される。

5. この協定は、核兵器の制約なしの入域を許し、フィリピン憲法上の核兵器禁止を事実上解除するものである。なぜなら、核武装および核搭載能力を有する米国船舶と航空機は、フィリピン当局にたいし、フィリピン領土へ核兵器を持込んでいるか否かを証明する公式文書なしで、たんに到着を通告すればよいとの義務を負うにすぎないからである。地位協定のとりきめは、このことについて沈黙することによって、憲法が核兵器を禁止していることをまったく無視している。
 

基地設置の権利のためだけの地位協定

 もう一度つぎの点を繰り返そう。

1. 軍寄港協定(VISFA)もしくは類似する地位協定の必要はない。なぜなら、このような司法権、免税、関税および入国手続きの権利放棄などをおおい隠す治外法権的協定は、米軍基地または米軍施設の受け入れ国のみが与えるものである。フィリピンには1992年以降、このような基地復活が計画されていないかぎり、米軍基地はもう存在しないのである。米軍の構成員が、一時的または短期滞在を目的にフィリピンを訪問するのであれば、彼らは、フィリピンの法律を完全に遵守せねばならない他の旅行者や訪問者と同様に扱われるべきである。そうすれば、彼らがいかなる法律違反を犯しても、わが国の法律と裁判所の管轄の対象とされる。これが、すべての主権国家および独立国を特徴づけるものである。わたしたちの領土で犯される、いかなる者にたいするどんな犯罪も、被害者がわが国の国民であれ外国人であれ、それは、わが国の法に反するものであり、その者はわが国の裁判所に身柄を拘束されるのである。アメリカが主張するように、アメリカが、すでに基地の存在しない他国においてこの種の協定をうまく結ぶことができたとしても、私たちが他国から敬意を受けたいと望むのであれば、私たちは、わが国の領土において、アメリカとそのような協定を結ぶ国と同じ様に扱われることをよしとするべきではない。地位協定または軍寄港協定案の条項は、そのほとんどが、1991年にフィリピン上院が退けた旧基地協定をそのまま引き写したものであり、これらの条項の履行を容認するような国は、すでに基地や米軍施設が存在しないとしても、それは、アメリカの事実上の植民地もしくは信託統治領でしかない。いまだに米軍基地を受け入れている日本と沖縄では、地位協定または軍寄港協定の条項がまさに、国民の反対にあい異議を唱えられているのである。

2. 軍寄港協定は、わが国の憲法の核兵器禁止条項をあざ笑うものとなる。この条項に従うためには、寄港するいかなる外国軍船舶または航空機も、税関申告と同様に、われわれの領土もしくは領水への入域にあたり、いかなる核兵器まはたは部品も搭載していない旨を公式に宣言しなければならない。軍寄港協定は、この点を完全に無視しかつ沈黙している。

3. 環境および生態学的観点からすると、この協定が批准されれば、わが国の全領土は、外国軍の大演習、射撃演習、爆撃および戦闘訓練に使われる広大な野戦場となり、したがって、残されたわずかな森林と野生生物生息地さえもさらなる破壊をうけることとなる。これに加え、この協定が成立すれば、これを模範かつ前例として、ほかの外国軍が類似の環境破壊的な協定を結ぶことに道を開くことになるであろう。アメリカ政府はまた、すでに確認されている、元基地使用地の有害物質汚染問題に照らしても、汚染除去の責任から放免されてはならない。フィリピン国民は今回、この有害物質汚染が、ACSAと地位協定の適用候補地と目されている全国22の港湾に拡大されることを認めるのだろうか?

4. フィリピンの軍事構成員にたいしては、アメリカから同様の特権が与えられたり、免罪の特権が与えられるといった互恵的関係はない。なぜなら、われわれの軍隊は、米軍と同じように何千人もの規模でアメリカを訪問するようなことはないからである。最近、大統領府が、この文書が今度は批准のため上院に提出されなければならないことを認めたにもかかわらず、われわれは、「条約」のかわりに「協定」という名称が使われていることに留意している。こうすることによって、この文書をフィリピン上院が批准したとしても、アメリカ政府の方は、これを「条約」として、批准手続きのために自国の上院に提出するという、相当する行為をとることを拒否できるからである。わが国の憲法は、フィリピン領土上に外国軍プレゼンスが「承認される」まえに、相手国の批准手続きにおいてこのような相互性が確保されるべきことを必要としている。

5. フィリピン内に入国が認められる米軍部隊の数も、フィリピン領土における米軍部隊の滞在期間にも上限はもうけられていない。また、協定の存続期間そのものにも制限がないため、この協定は無期限なのである。

(以下略)


フィリピン共和国政府とアメリカ合衆国政府との間の
合衆国軍隊のフィリピン訪問時の待遇に関する協定(全文)

前文

 フィリピン共和国政府とアメリカ合衆国政府は、

 国際連合憲章の目的と原則への誓約ならびに太平洋地域における国際的かつ地域的安全を強化するとの両者の希望を再確認し、

 合衆国軍隊の構成員が、フィリピン共和国を時おり訪問できることに注目し、

 フィリピン共和国と合衆国との協力が、両国の共通の安全保障の利益を促進することを考慮し、

 フィリピン共和国を訪問中の合衆国の要員の待遇を明示することが望ましいとの認識に立ち、

 次のように合意した。
 

第一条【定義】

 この協定において使用されているように、「アメリカ合衆国の要員」とは、フィリピン政府により承認された活動に関連して、一時的にフィリピンに滞在する合衆国軍の構成員および軍属をいう。

 この定義で、
 1.「合衆国軍隊の構成員」とは、アメリカ合衆国の陸軍、海軍、海兵隊、空軍、および湾岸警備隊の人員をいう。
 
 2.「軍属」とは、通常フィリピンに居住するフィリピン国民でなく合衆国軍隊に雇用されているもの、または、アメリカ赤十字や合衆国サービス機構(UnitedService Organization)に雇用されるもののように、合衆国軍隊に随伴するものをいう。
 

第二条【法令の尊重】

 フィリピン共和国の法令を尊重し、この協定の精神と矛盾するいかなる活動も、とくにフィリピン国内における政治的活動を慎むことは、合衆国の要員の義務である。合衆国政府はこれを保証するため、その権限の範囲においてあらゆる措置をとるものとする。
 

第三条【出入国】

 1.フィリピン政府は、この協定に含まれる活動に関連して、合衆国の要員のフィリピン入国および出国の手続を簡素化するものとする。

 2.合衆国軍隊の構成員は、フィリピンへの入国に当たって、旅券および査証に関する(フィリピン)法令の規定から除外されるものとする。

 3.合衆国軍隊の構成員は、フィリピンへの入国に当たって、次の文書を携帯しなければならない。
 (a)適切な合衆国当局が発給した、氏名、生年月日、階級および番号(もしあれば)軍の区分ならびに写真の示された身分証明書、および
 (b)適切な合衆国当局が発給した、旅行あるいは訪問を命令し、その個人または集団が合衆国軍隊の構成員として有する地位を証明する、個別的または集団的文書。
  (c)軍用航空機もしくは船舶の司令官は、健康証明書を提出しなければならず、審理権を有するフィリピン政府の代表に要求される時は、検疫をおこないその航空機あるいは船舶が検疫を必要とする疾病がないことを証明しなければならない。合衆国の航空機、船舶およびその積み荷の立入検疫は、合衆国の司令官によって、世界保健機関が発布した国際的保健諸規則および相互に合意された手続きにしたがって実施されるものとする。

 4.合衆国軍隊の軍属は、フィリピンへの入国または出国に当たって、査証に関する規定の適用から除外される。ただし、要請があれば、有効な旅券を提示しなければならない。

 5.フィリピン政府が合衆国の要員のフィリピンの領域からの退去を要請したときは、合衆国の当局は、その者を自国の領域内に受け入れるか、でなければその者をフィリピン領域外に配置しなければならない。
 

第四条【運転と車両登録】

 1.フィリピンの当局は、合衆国当局が合衆国の要員にたいして発給した軍用もしくは公用車両を運転するための許可証もしくは免許証を、運転者試験または手数料を課さないで、有効なものとして承認する。

  2.合衆国政府が所有する車両は、登録の必要はないが適切な表示をつけるものとする。
 

第五条【刑事裁判権】

 1.この条の規定に従うことを条件として、
 (a)フィリピンの当局は、合衆国の要員にたいし、フィリピン内で犯す罪で、フィリピンの法令によって罰することができるものについて裁判権を有する。
 (b)合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服するフィリピン内の合衆国の要員にたいし、合衆国の法令により与えられたすべての刑事裁判権および懲戒の裁判権をフィリピンにおいて行使する権利を有する。

  2.(a)フィリピンの当局は、合衆国の要員にたいし、フィリピンの法令によって罰することができる罪で合衆国の法令によっては罰することができないもの(フィリピンの安全に関する罪を含む)について、専属的裁判権を有する。
  (b)合衆国の当局は、合衆国の要員にたいし、合衆国の法令によって罰することができる罪でフィリピンの法令によって罰することができないもの(合衆国の安全に関する罪をふくむ。)について、専属的裁判権を有する。
  (c)この条の2および3の規定の適用上、安全に関する罪とは、次のものを意味する。
(1).当該国にたいする反逆罪
(2).妨害行為(サボタージュ)、ちょう報行為または国防に関する法令の違反

 3.裁判権を行使する権利が競合する場合には、次の規定が適用される。
  (a)フィリピンの当局は、この条文の1(b)、2(b)、3(b)で規定される場合を除き、合衆国の要員が犯したすべての罪にたいし、第一次の裁判権を有する。
  (b)合衆国の軍当局は、次の罪については、合衆国の軍法に服する合衆国の要員にたいし裁判権を行使する第一次の権利を有する。
 (1)もっぱら合衆国の財産もしくは安全のみにたいする罪またはもっぱら合衆国の要員の個人財産のみにたいする罪、および
 (2)公務執行中の行為から生ずる罪
  (c)いずれかの政府の当局は、もう一方の政府の当局にたいし、個々の事例においてその第一次裁判権の行使を放棄するよう要請することができる。
  (d)合衆国の軍当局が軍隊内の秩序と規範を保つ責任を有するとの認識にたち、フィリピンの当局は、合衆国の要請があれば、フィリピンにとって特に重要となる事例を除いて、その裁判権を第一次に行使する権利を放棄する。フィリピン政府がその事例を特に重要であると認めた場合は、合衆国からの要請をフィリピンの当局が受け取ってから20日以内に合衆国の当局にその旨を通告しなければならない。
  (e)フィリピンの当局により説示された罪が、合衆国の要員が公務執行中に作為又は不作為から生じた罪であると合衆国が判断した場合は、司令官は、その判断を説明する証明書を発給する。この証明書は、フィリピンの適切な当局に届けられ、この条の3(b)(2)に掲げられた公務執行(に該当すること)を充分に証明するものとなる。フィリピン政府が、事件内容が公務証明書の見直しを要すると信じる場合は、合衆国の軍当局とフィリピンの当局は直ちに協議しなければならない。その際、フィリピン当局の最高機関は、その有効性にかんする情報を提示することができる。合衆国の軍当局は、フィリピンの主張を全面的に考慮に入れるものとする。合衆国の軍当局は、適切な場合において、公務執行中における犯罪者に懲戒もしくは処置を課し、その課された処分についてフィリピンの当局に報告する。
  (f)第一次の裁判権を有する政府がその権利を行使しない場合は、できる限りすみやかに他方の政府の当局にその旨を報告しなければならない。
  (g)フィリピンの当局および合衆国の当局は、裁判権を行使する権利が競合するすべての事件の処理について、相互に通告しなければならない。

 4.それぞれの法的権能の範囲内において、フィリピンの当局と合衆国の当局は、フィリピンの領域内における合衆国の要員の逮捕およびこの条文の規定に従って裁判権を行使すべき当局へのそれらの者の引き渡しについて、相互に援助しなければならない。

 5.合衆国の軍当局は、第一次もしくは専属的裁判権をフィリピンが有する合衆国の要員を逮捕または拘留したときは、フィリピンの当局に報告しなければならない。フィリピンの当局は、いかなる合衆国の要員を逮捕もしくは拘留したときも、合衆国の軍当局に報告しなければならない。

 6.合衆国の軍当局が要請すれば、フィリピンが裁判権を行使すべき合衆国の要員の身柄は、その罪を犯してからすべての法的手続きが完了するまで、直ちに合衆国の軍当局に拘束されるものとする。合衆国の軍当局は、フィリピンの当局による正式通告があった時は遅滞なく、その被疑者の罪に関する捜査もしくは法的手続に間に合うように、その者を当該当局に面会させるようにしなければならない。特別の事例においては、フィリピン政府は、拘禁に関する見解を合衆国政府に示さなければならず、合衆国政府は、その見解を全面的に考慮しなければならない。フィリピンの法的手続きが一年以内に終了しない場合は、合衆国はこの項に掲げる義務を免除される。ただし、この一年の期間には、上訴に必要な期間は含まれない。また、この一年の期間には、被告人の出頭を手配するようにとのフィリピン政府による時宜をえた通告の後、合衆国がそうしなかったために予定裁判手続き間におこった遅れの時間は含まれない。

 7.法的権能の範囲内において、合衆国の当局およびフィリピンの当局は、当該犯罪の必要なすべての捜査において相互に援助しなければならず、また証人の出廷を準備および証拠の収集と提出(犯罪に関連する物件の押収および適切な場合にはその引渡しを含む)において協力しなければならない。

  8.合衆国の要員がこの条文の規定に従って裁判をうけた場合において、刑罰が軽減または猶予されたとき、もしくは赦免されたときは、フィリピンの領域内においてその者は同一の犯罪について再度裁判にかけられることはない。ただし、この項の規定は、合衆国の軍当局が合衆国の要員を、その者がフィリピンの当局により裁判を受けた犯罪を構成した作為または不作為から生ずる軍規違反について、裁判することを妨げるものではない。

 9.合衆国の要員がフィリピンの当局により拘留もしくは監禁または起訴されたときは、それらの者には、フィリピンの法令が定めるすべての訴訟手続上の保障条項が適用されなければならない。少なくとも、合衆国の要員は、次の権利を与えられなければならない。
  (a)遅滞なく迅速な裁判を受ける権利、
  (b)公判前に自己にたいする具体的な訴因の通知を受け、弁護の準備に必要な妥当な時間をえる権利、
  (c)自己の弁護のために証拠を提出し、強制的手続により証人を求める権利、
  (d)費用を要しないで、また費用の補助を受けて自己の選択する弁護人をもつ権利、
  (e)有能な通訳を用いる権利、
  (f)合衆国の当局と迅速に連絡しまた定期的に訪問を受ける権利およびすべての法的手続にその当局を立ち会わせる権利。これらの手続きは、法廷がフィリピンの法令に従って手続きに無関係の者を排除しない限り、公開とする。

 10.フィリピンの当局による合衆国の要員の監禁もしくは拘留は、フィリピンの当局と合衆国の当局による合意に基づく適当な施設においておこなわなけれなければならない。フィリピンで服役中の合衆国の要員は、訪問と物質的援助を受ける権利を有する。

 11.合衆国の要員は、通常の裁判権を有するフィリピンの裁判所においてのみ裁判の対象とされ、フィリピンの軍事もしくは宗教裁判所の裁判権の対象とはならない。
 

第六条【請求権】

 1.契約上の取極(合衆国外国軍用販売申込書および受領書、また軍用品の賃貸契約書を含む)を除いて、両政府は、この協定が適用される活動から生ずる相互の軍隊の資産にたいする損害、損失または破壊にたいし、もしくは軍隊の構成員および軍属の死もしくは傷害にたいし、他方にたいするいかなる、またすべての請求権も放棄する。

  2.契約上の請求および1項が適用される請求以外は、合衆国にたいする請求については、合衆国政府は、合衆国の要員の作為もしくは不作為または合衆国軍隊の非軍事活動に伴って生ずる損害、損失、人体への傷害もしくは死にたいする損害賠償請求の解決において、外国の請求に関する合衆国の法令に従って正当かつ妥当な賠償金を支払わなければならない。
 

第七条【輸出入】

 1.この協定が適用される活動との関連において、合衆国軍隊のためにフィリピン国内に輸入もしくはフィリピン国内で取得された合衆国政府の資材、供給品およびその他の財産は、すべてのフィリピンの関税、租税およびその他同様の課徴金を免除される。この節で与えられる免除は、フィリピンへの輸入またはフィリピン国内での取得の際にそうした財産に適用されるはずの関税、税金およびその他同様の課徴金にもおよぶものとする。そのような財産は、そのような財産にたいして適用される租税と関税の免除資格を持たない人または物にフィリピンの領域内において譲渡される場合には、そのような租税と関税を支払い、またフィリピン政府の事前の承認を得るのであれば、フィリピンから送出またはフィリピン国内で処分することができる。

 2.合衆国の要員の私用のための個人手荷物、個人動産物件およびその他の財産は、フィリピンにおける一時的滞在の期間、すべての関税、租税および同様の課徴金を支払うことなくフィリピンに輸入し使用することができる。フィリピン領域内における、輸入特権を持たない人もしくは物への譲渡は(受け取る側による、フィリピンの法令により課される関税と租税の支払いも含み)、フィリピンの適当な当局による承認を事前に得た場合にのみおこなうことができる。
 

第八条【船舶および航空機の移動】

 1.合衆国軍隊によって、もしくは合衆国軍隊のために運航される航空機は、取極の実施を規定した手続きに従い、フィリピン政府の承認を受けて、フィリピンに入国することができる。
 
  2.合衆国軍隊によって、もしくは合衆国軍隊のために運航される船舶は、フィリピン政府の承認を受けてフィリピンに入国することができる。船舶の移動は、それらの船舶を統治する国際的慣習と慣例および必要である場合に合意された実施取極にしたがわなければならない。

 3.合衆国軍隊によってもしくは合衆国軍隊のために運航される車両、船舶および航空機は、フィリピン滞在中に、荷揚げ料または港湾使用料、航行または陸路通行料、もしくは使用料またはその他の課徴金(上陸税ならびに入港税を含む)を課されない。合衆国軍隊によってもしくは合衆国軍隊のために運航される航空機は、フィリピンにいる間は、その土地の航空交通管制法規を守らなければならない。合衆国によって所有または運航される船舶で合衆国の非商業事業にのみ従事するものは、フィリピンの港においては、強制水先を免除される。
 

第九条【継続期間と終了】

  この協定は、両締約国が外交的手段を通じ、効力発生のための憲法上の規定を満たした旨の文書を交換した日より効力を生ずる。この協定は、いずれかの締約国が他方の締約国にたいしこの協定を終了させる意志を文書で通告した日から180日が終了するまで有効とする。

  以上の証拠として、下名は、各々の政府により正当に委任を受けて、この協定に署名した。

 1998年2月10日にフィリピンのマニラで、本書2通を作成した。

(署名)ドミンゴ L.シアソン二世       (署名)トマス C.ハッバード

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(参考)フィリピン共和国1987年憲法の外国軍事基地に関する条項

第2条8項
 フィリピンは、その国益に一致するものとして、その領域内において非核兵器政策を採用し、追求する。

第18条25項
 フィリピン共和国とアメリカ合衆国との間の軍事基地に関する協定が1991年に期限切れとなった後には、上院においてあらたな条約が正式に承認され、そして議会が要求する場合には、その目的のためにおこなわれる国民投票において投票の過半数によって承認され、相手国によって条約として承認される場合を除いて、外国の軍事基地、軍隊もしくは施設は、フィリピン国内において許されない。
 



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