核不拡散条約(NPT)再検討会議
(2000年4月〜5月)
ニューヨーク
NPT再検討会議最終文書
各国政府代表などの発言
コフィ・アナン国連事務総長
新アジェンダ連合(メキシコ)
非同盟運動(インドネシア)
アイルランド
マレーシア
ニュージーランド
アメリカ合衆国
ロシア
中国
イギリス
フランス
日本
提出された作業文書・共同声明
新アジェンダ連合の作業文書
核保有5カ国の共同声明
新アジェンダ連合の核保有国共同声明への反論
非同盟運動作業文書
日本原水協「世界のすべての国の政府首脳への手紙」
核不拡散条約(NPT)再検討会議
(2000年4月24日〜5月19日、ニューヨーク)
NPT再検討会議最終文書
(抄訳)
<編集注>ここでは、第I巻 (NPT/CONF.2000/28 Part I and II)の第1部「1995年NPT再検討延長会議で採択された諸決定および決議を考慮に入れた、本条約の実施についての再検討」のうち、第6条と前文第8から12段落(1〜15)と、第7条と非核保有国の安全保障(1〜16)のみ訳出・掲載します。
<最終文書の構成>
第I巻 (NPT/CONF.2000/28 Part I and II)
第1部 1995年NPT再検討延長会議で採択された諸決定および決議を考慮に入れた、本条約の実施についての再検討
第1、2条と前文第1から3段落(1〜12)
第3条、前文第4と5段落、特に第4条と前文第6、7段落とのこれらの関係において(1〜56)
第4条、前文第6と7段落
NPT条約と核エネルギーの平和利用(1〜11)
核・放射線の安全性、放射性物質の安全な輸送、放射性廃棄物と責任
核・放射線の安全性(1〜8)
放射性物質の安全な輸送(9〜12)
使用済み燃料と放射性廃棄物(13〜15)
責任(16)
技術協力(1〜11)
核物質の平和的利用への転換(1〜4)
第5条
第6条と前文第8から12段落(1〜15)
15(1〜13)
第7条と非核保有国の安全保障(1〜16)
16. 中東、特に1995年中東にかんする決議の実行(1〜10)
南アジアとその他の地域問題(11〜16)
第9条(1〜10)
NPTの強化再検討プロセスの有効性の向上(1〜9)
第2部 会議の任務機構
第II巻 (NPT/CONF.2000/28 (Part III)
第3部 会議で発行された諸文書
第III巻(NPT/CONF.2000/28 (Part IV)
第4部 概略的記録
* * * * *
第6条と前文第8から12段落
1. 本会議は、締約国が本条約の第6条と前文第8から第12段落にたいする誓約を再確認したことに留意する。
2. 本会議は、二カ国間および一方的軍備削減における成果にもかかわらず、配備され、貯蔵されている核兵器の総数がはいまだ何万にもおよぶことに留意する。本会議は、これらの核兵器が使用される可能性にみられるように、人類がひきつづき危険性にさらされていることに深い懸念を表明する。
3. 本会議は、核の危険を除去する方法の明確化を促進する主要な国際会議の開催をミレニアム・サミットで検討するとの国連事務総長の提案に留意する。
4. 本会議は、いっさいの核兵器の実験爆発、その他の核爆発の停止が、あらゆる側面における核兵器不拡散、核兵器の完全廃絶につながる核軍縮のプロセスに寄与し、よって、国際平和と安全のいっそうの強化に寄与するであろうことを再確認する。
5. 本会議は、1996年9月24日ニューヨークにおいて国連総会が包括的核実験禁止条約を採択し、こうして同条約が調印に開放されたことを歓迎し、また、同条約に調印した155カ国のうち、その批准が同条約の発効要件とされている28カ国をふくむ56カ国が、批准文書を寄託していることに留意する。本会議は、フランスとイギリス、および最近のロシア連邦議会による同条約の批准決定を歓迎する。本会議は、すべての国、とりわけ、その批准が包括的核実験禁止条約の発効の必要条件とされている16ヶ国にたいし、同条約の早期発効実現の努力をつづけるよう呼びかける。
6. 本会議は、包括的核実験禁止条約の第14条に即して1999年10月にウィーンで開かれた、同条約の発効促進会議において採択された最終宣言を歓迎する。
7. 本会議は、1996年7月8日ハーグにおいて発表された「核兵器の威嚇または使用の適法性」にかんする国際司法裁判所の勧告的意見に留意する。
8. 本会議は、1998年8月、軍縮会議(CD)により、軍縮会議の議題第一項「核軍拡競争の停止と核軍縮」のもとに小委員会が設置されたことに留意する。この小委員会は、特別コーディネーター報告(CD/1299)および同報告にふくまれる権限にもとづき、非差別的で、多国間による、国際的かつ効果的に検証可能な、核兵器もしくはその他の核爆発装置用分裂性物質の製造禁止条約を交渉するものである。本会議は、1995年に決定された「核不拡散および軍縮のための原則と目標」の第4段落b項が勧告しているこの問題について交渉が追求されてこなかったことを遺憾とする。
9. 本会議は、核軍縮にむけた措置として、戦略兵器削減条約(START)のプロセスで、一方的もしくは二カ国間でおこなわれた核兵器の削減での重要な成果を歓迎する。ロシア連邦によるSTARTUの批准は、戦略兵器を削減する努力における重要な措置であり、歓迎されるものである。米国によるSTARTUの批准は今後とも優先課題である。
10. 本会議はまた、核兵器関連施設の閉鎖と解体をふくむ、その他の核保有国による重要な一方的削減措置も歓迎する。
11. 本会議は、核軍縮措置を逆転し得ないものとする上で、いくつかの国が協力しておこなっている努力、特に、軍事目的に過剰と宣言された分裂性物質の検証・管理・廃棄にかんするイニシアチブを歓迎する。
12. 本会議は、ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナが、自国領土からすべての戦術および戦略核兵器を自主的に撤去させることで、本条約第6条の実行に重要な貢献をおこなったことを再確認する。
13. 本会議は、1997年9月、ベラルーシ、カザフスタン、ロシア連邦、ウクライナ、米国がおこなった、「了解覚書」をふくむ、弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM)にかんする重要な諸合意の調印を歓迎する。本会議は、ロシア連邦によるこれらの文書の批准を歓迎する。ロシア連邦以外の関係国による、これらの文書の批准はひきつづき優先課題である。
14. 本会議は、核保有国がおこなった、自国の核兵器はいかなる国も標的にしていないという宣言に留意する。
15. 本会議は、核兵器不拡散条約第6条および「核不拡散および軍縮のための原則と目標」にかんする1995年決定の第3段落および第4段落b項を実行するための、体系的かつ漸進的努力のための以下の実際的措置に合意する。
1) 包括的核実験禁止条約の早期発効を達成するために、遅滞なく無条件かつ憲法上の手続きに従って調印し、批准することの重要性と緊急性。
2) 同条約が発効するまでのあいだの、核兵器実験爆発やその他いっさいの核爆発の一時停止。
3) 軍縮会議(CD)における、非差別的で、多国間による、国際的かつ効果的な検証が可能な、核兵器やその他の核爆発装置用分裂性物質の製造禁止条約にかんする交渉をおこなう必要性。この交渉は、核軍縮と核不拡散の両方の目的を考慮に入れ、1995年特別コーディネーター声明および同声明にふくまれる権限に即した交渉である。軍縮会議は、五年以内に妥結するためにこうした条約の交渉を即時開始することをふくめ、作業プログラムに合意することが求められている。
4) 軍縮会議(CD)に、核軍縮をあつかう権限をもつ適切な補助機関を設置する必要性。軍縮会議には、そのような機関の即時設置をふくむ作業プログラムにかんして合意に達することが強く求められている。
5) 核軍縮、核およびその他の関連軍備管理・軍縮措置に適用する不可逆性の原則。
6) 第6条のもとですべての締約国が責任を負う核軍縮(nuclear disarmament)につながる、自国核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束。
7) 戦略的安定性のかなめ石である、戦略兵器のいっそうの削減の基礎としてのABM条約をその条項に即して維持強化しつつ、STARTUの早期発効と全面的実行、およびSTARTVの可能な限り早い妥結をはかること。
8) 米国、ロシア連邦、国際原子力機関による三者イニシアチブの完結と実行。
9) 国際の安定を促進し、いかなる国の安全も損なわないという原則にもとづいて、すべての核保有国が核軍縮につながる措置をとること。
−核保有国による、自国の核兵器を一方的に削減するさらなる努力。
−核保有国による、核兵器能力および第6条遂行の合意にかんする透明性の強化と、自発的な信頼構築措置としての核軍縮進展の支持。
−一方的イニシアチブにもとづく、また、核兵器削減と軍縮プロセスに不可欠な要素としての、非戦略核兵器のいっそうの削減。
−核兵器体系の作戦上の状態をさらに引き下げる合意措置の具体化。
−核兵器使用の危険を減らし核兵器の完全廃絶のプロセスを促進するため、安全保障政策における核兵器の役割を縮小する。
−適切な限り早期における、自国核兵器の完全廃絶にいたるプロセスへのすべての核保有国の参加。
10) 核保有国は、それぞれがもはや軍事目的に不必要と指定した分裂性物質を、実行可能になるやただちに、このような物質が永久に軍事計画の外に置かれることを保証するため、そうした物質の平和目的への処分にむけ、国際原子力機関(IAEA)ないし他の関連国際検証機関のもとに置くことを取り決めること。
11) 軍縮プロセスにおける各国の努力の究極目標は、効果的な国際管理のもとでの全面完全軍縮であることの再確認。
12) 強化されたNPT再検討プロセスの枠組み内における、第6条および「核不拡散と軍縮のための原則と目標」にかんする1995年の決定第4段落c項の実行にかんする、また、1996年7月8日の国際司法裁判所勧告的意見を想起した、全締約国による定期報告。
13) 核兵器のない世界を達成し維持するための核軍縮諸協定の遵守を保証するために必要条件とされる、検証能力のいっそうの発展。
第7条と非核保有国の安全保障
1. 本会議は、各国が国連憲章に即し、その国際関係において他国の領土保全と政治的独立にたいする武力での威嚇や行使、あるいは、国連の目的に相反する他のどんな方法によるものも控えなければならないことを再確認する。
2. 本会議は、核兵器の完全廃絶が核兵器の使用や使用脅迫を防ぐ唯一絶対の保証であることを再確認する。本会議は、核保有五カ国が、核兵器不拡散条約(NPT)に加盟する非核保有国に、法的拘束力をもつ安全保障の言質をあたえることが、核不拡散体制を強化することに同意する。
3. 本会議は、核兵器不拡散条約加盟の非核保有国にたいする安全保障の約束について核保有国が国連安全保障理事会984決議(1995年)への誓約を再確認したことに留意する。
4. 本会議は、1998年3月に軍縮会議(CD)が、核兵器の使用ないし使用の威嚇をおこなわないことを非核保有国に保証するため、効果的な国際的取り決めにかんする小委員会を設置したことに留意する。
5. 本会議は、あらたな非核兵器地帯の創設と、新旧非核兵器地帯の議定書への核保有国の調印が、当該地帯の核兵器不拡散条約締約国にたいして消極的安全保障を拡大する役割を果たしてきたことを認める。本会議は、関係諸国が、非核兵器地帯条約およびその議定書を発効させるための措置を講じることの重要性を強調する。
6. 本会議は、1995年以来、さらに非核兵器地帯条約を締結するためにとられた措置を歓迎、支持するとともに、関係地域諸国間で自発的意思により合意された取り決めにもとづく、国際的に承認された非核兵器地帯の創設が世界と地域の平和と安全を向上させ、核不拡散体制を強化し、核軍縮の諸目標実現にむけ貢献するとの確信を再確認する。
7. 本会議は、非核兵器地帯がまだ存在していない中東や南アジアなどの地域における非核兵器地帯創設の提案を支持する。
8. 本会議は、モンゴルによる自国の非核保有国の地位についての宣言を歓迎、支持するとともに、最近モンゴル議会がこの地位について、核不拡散の目的推進の具体的貢献、同地域の政治的安定と予測可能性を向上させる実質的貢献としてのこの独特の条件を考慮に入れ、自国領土における核兵器の完全な不在を保証する一方的措置としてこの地位を確認する法律を制定したことに留意する。
9. 本会議はさらに、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国のあいだの朝鮮半島非核化共同宣言を歓迎し、同宣言の迅速な履行を求める。
10. 本会議は、南極条約および、トラテロルコ、ラロトンガ、バンコク、ペリンダバ各条約が特に南半球と隣接地域で核不拡散と軍縮の諸目的の達成にむけ貢献していること、さらに、これら条約の適用地域を国際法に即し、非核兵器地帯として維持するために貢献していることを認める。この点で、本会議は、締約国とこれら条約の調印国のあいだで、これら諸国の共通目的を促進するためにおこなわれている精力的な努力を歓迎する。
11. 本会議は、トラテロルコ、ラロトンガ、バンコク、ペリンダバ条約の締約国には安全保障の約束がなされることを認め、全地域諸国がこれら条約を調印、批准することとともに、まだそうしていない核保有国がこれらの条約の関連議定書を調印、批准することの重要性を強調する。この点で、本会議は、ラロトンガとペリンダバ条約にかんし二、三の未批准国において批准にむけた国内手続きが進行中であること、また、バンコク条約締約国との協議が加速され、核保有五カ国によるバンコク条約議定書の支持に道を開きつつあることに注目する。
12. 本会議は、国連総会が35回総会以来、中東における非核兵器地帯の創設が国際の平和と安全を大きく向上させることについて合意に達していることを歓迎する。本会議は、直接の当事国すべてにたいし、総会の関係諸決議に即して、中東地域に非核兵器地帯を創設する提案を履行するために必要な実質的かつ緊急の措置を真剣に検討するよう求め、この目的を促進する手段として、関係国にたいし核兵器不拡散条約を遵守し、このような地帯が創設されるまでのあいだ、自国の核活動すべてをIAEAの安全保障措置のもとに置くことに合意するよう求める。
13. 本会議はさらに、関係地域諸国のあいだで自主的に合意された取り決めにもとづく非核兵器地帯の創設にかんする報告が、1999年4月30日に軍縮委員会(Disarmament Commission)で合意により採択されたが、この報告を歓迎する。
14. 本会議は、さらにあらたな非核兵器地帯の創設を優先課題と考え、この点から、中央アジア五カ国の、彼らの地域に非核兵器地帯を創設するという意向と誓約を支持し、この提唱の履行にむけて講じてきた実際的措置を歓迎し、中央アジア非核兵器地帯創設条約案の作成と合意においてこれら諸国がとげてきた実質的進展に満足の意をもって留意する。
15. 本会議は、締約国によって講じられてきたすべてのイニシアチブに留意し、国際社会は、国連軍縮委員会(UNDC)の一連の指針に従って、あらたな非核兵器地帯の創設を促進しつづけるべきだと考え、この精神のもと、1995年以来世界のさまざまな地域で、締約国により進められてきた努力と提案を歓迎する。
16. 地域問題
中東、特に1995年の中東にかんする決議の実行〔(1)〜(10)略〕
南アジアとその他の地域問題
11) 本会議は、核軍縮と核不拡散が相互に強めあうものであることを強調する。
12) 1998年5月、インド、そしてパキスタンによっておこなわれた核爆発に関し、本会議は、1998年7月全会一致で採択された安全保障理事会1172号決議(1998年)を想起し、この両国にたいし、同決議に述べられたすべての措置を講ずるよう呼びかける。両国の核実験にもかかわらず、インドとパキスタンは、核保有国としての地位を有するものではない。
13) 本会議は、インドとパキスタンに、非核保有国として不拡散条約に加盟し、自国の全核施設を包括的なIAEA安全保障措置下に置くよう求める。本会議はさらに、両国に、核兵器およびそれらの運搬システムに使用されうる技術、原料、装備にたいする不拡散輸出規制措置を強化するよう求める。
14) 本会議は、インドとパキスタンが、今後の実験にかんするモラトリアム(一時停止)と、包括的核実験禁止条約に調印し、批准することにより、これ以上のいかなる核実験も実施しないための法的誓約をおこなう意思を言明したことに留意する。本会議は、両国にたいし、この誓約に従って、同条約に調印するよう求める。
15) 本会議は、インドとパキスタンが、核兵器とその他の核爆発装置用核分裂性物質製造禁止条約の軍縮会議(CD)での交渉に参加する意思を示したことに注目する。本会議は、法的手段の締結がおこなわれるまで、両国がこのような物質の製造のモラトリアムを守るよう求める。本会議はまた、両国が、前向きの精神で、合意された権限にもとづき、早期に合意を実現するために、この問題にかんする交渉の早期開始を積極的に追求する他の国々の取り組みに加わるよう求める。
16) 本会議は、朝鮮民主主義人民共和国がひきつづき不拡散条約の締約国でありながら、朝鮮民主主義人民共和国がおこなった、核物質についての当初の宣言の正しさと完全性とをIAEAがなお検証できないでおり、よって、朝鮮民主主義人民共和国には核物質の流用はおこなわれていなかったとの結論を下せないでいることに、懸念をもって注目する。本会議は、ひきつづき拘束力をもち効力を有する、IAEAとの安全保障措置協定に全面的に従うという同国の公式の意向が、朝鮮民主主義人民共和国により果たされることを待望する。本会議は、朝鮮民主主義人民共和国が、当初の保有在庫一覧を検証するために必要なすべての情報を保存し、IAEAに供することができるようにすることの重要性を強調する。
核不拡散条約(NPT)再検討会議
(2000年4月24日〜5月19日、ニューヨーク)
各国政府代表などの発言
コフィ・アナン国連事務総長
NPT再検討会議開会演説
(4月24日)
会場のみなさんが、この重要な会議においで下さったことに感謝したい。各国間ならびに各国内のもろもろの関係において異例の変化と課題の時であるいま、私たちは、共通の未来にとってきわめて重要な問題で前進をとげようとここに集っている。その問題とはすなわち、核不拡散条約(NPT)に盛り込まれた不拡散と軍縮の誓いをどう実現するかということである。
平和と安全に対する新たな脅威の時代にあって、私たちはこれまで以上に、この地上における人類の存続そのものを脅かし続ける大量破壊兵器である核兵器の拡散防止と削減に焦点を当てる必要がある。
新千年紀の最初の年に、NPTはこれまで以上に必要とされるものになった。しかし、こんにち、この条約はひとつの逆説でもある。187カ国が締約しているという事実は、この条約が全世界から求められていることのあかしである。しかしながら、これまでその実施の度合いにかんしては誰も満足していない。
現在のそして今後の課題は、すべての締約国にこの条約のすべての条項を完全に実施させるプロセスに乗り出すということである。
まだやらなくてはならないことがたくさん残ってはいるが、これまでの5年の間に、本当の意味での前進もあったと思う。それは、みなさんの努力に自信と励ましをあたえるものである。
冷戦の終結以来、核兵器の数は減り続けている。大半の核保有国は、兵器用の核分裂物質の生産はおこなっていないと宣言している。
かつて核のライバル同士であった国々が、いまはそれぞれのもつ兵器による脅威を削減しようと協力しあっている。核の安全措置が強化されてきた。非核地帯への参加国が増えた。包括的核実験禁止条約(CTBT)の交渉がおこなわれ、まだ条約の発効はしていないものの、事実上の核実験のモラトリアムは続いている。そして今月はロシア議会がSTARTII(第二次戦略兵器削減条約)とCTBTを批准したばかりである。私はこれらの決定を歓迎するとともに、これらの条約発効の見通しが高まることを期待する。
これは紛うことなき成果であり苦労して勝ち得た前進である。しかし、核戦争の脅威にかんして言えば、いまは油断すべきときではない。核戦争は21世紀を目前にしたいま、依然としてきわめて現実味のある実に恐ろしい可能性なのである。これがいま、みなさんの前に立ちはだかる厳然たる現実であり、それは、あらゆる手を尽くしこのNPT条約の不拡散と軍縮の目的を等しく揺るがぬ決意で追求する義務を、私たちに課しているのである。
これがいかに大変な課題であるかは、秘密の核兵器開発計画を発見することを考えるだけで分かる。
核兵器などの大量破壊兵器の拡散は依然として平和に対する大きな脅威であるし、どの国連加盟国にとっても依然大きな課題である。NPTの不拡散義務は依然として完全には守られておらず、これまで必ずしも満足できるものではなかったというのが事実である。今日私は、すべてのNPT締約国に対して、この共通の脅威に立ちむかう努力を倍加するよう、そして順守を確実たらしめるための国際原子力機関(IAEA)の議定書に署名して発効させるよう呼びかける。インドとパキスタンによる1998年の核実験は、核実験と核拡散にかんする世界的規範にとっては重大な後退であり、私たち全員に拡散とたたかう必要性を明らかにするものである。
私たちはまたNPTの軍縮の目標を達成するうえでも大きな課題に直面している。およそ35,000発の核兵器が依然として核保有国によって備蓄されており、何千もの兵器が即時警戒態勢で配備されているのである。戦略的あるいは戦術的核兵器にかんしては何年もの間核軍縮交渉はおこなわれていない。ジュネーブ軍縮会議(CD)は、軍縮にかんしては依然として唯一の多国的交渉機関であるが、核軍縮などの問題で前進をというCDの努力はコンセンサスの欠如によって挫折している。
きわめて率直に言って、既存の多国的軍縮機構の多くは錆びつき始めている。これは、機構そのものが原因ではなく、それを活用しようという政治的な意志が明らかに欠如しているからである。
事実ここ数年の間に私たちはすべての核保有国が核兵器ドクトリンを再確認するのを目の当たりにしてきた。一部の国は核先制攻撃のドクトリンを保持しているし、一部の国は非核保有国に対しても核兵器使用の可能性を排除していない。
さらに、一部の核保有国は備蓄する兵器にかんしあらたな情報は提供したが、兵器の数にかんして、また核物質の量にかんしては透明性の欠如が依然として問題となっている。
ここで核軍縮の分野で私たちが直面する最も新しい危険に目を向けよう。すなわち、国家ミサイル防衛システムを配備しようという圧力が増していることである。この圧力は、「戦略的安定のかなめ」と言われてきた弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約を危機に陥れつつあり、新たな軍拡競争や、核軍縮・不拡散に後退をもたらし、ミサイル拡散を新たに刺激しかねないのである。
私はすべての国連加盟国がこのような危険と問題を十分考慮し、地球の安全を高めるどころか低減しかねないような道をすすまないよう望む。
私がこのような問題を指摘するのは、絶望にかられてではなく、みなさんにはこれらの課題にこたえ、これまでの5年間の成果をふまえてさらに前進する力がおありだと信じるからなのである。それをなし得る最も効果的な方法は、具体的な到達目標を設定して結果指向の条約検討のプロセスを始めることだと思う。
ひとつの到達目標として、CTBTの発効をあげることができるであろう。さらには、場所はどこであれ核兵器備蓄の大幅で逆行不可能な削減、三つ目に既存の非核地帯の強化と新たな非核地帯設置の交渉、四つ目に拘束力ある安全の保証を、核をもたないNPT締約国に対しておこなうこと、そしてさらに、保有核兵器と核物質にかんする透明性を改善することなどがあげられるであろう。
最後に私は、既存の核兵器ならびにさらなる拡散から生じる危険の削減に努めるという誓いを、国連加盟国が各国政治の最高のレベルにおいて再確認することを提案したい。
このような方面で私たちが前進することができるなら、この条約の前途は実に明るいものである。しかしもし前進できなければ、残念ながらこの新たな千年紀は不吉な始まり方をしたことになるであろう。
みなさんの討議が実を結ばんことを祈念したい。
新アジェンダ連合を代表して
メキシコ外務大臣 ロサリオ・グリーン
(4月24日)
私は、ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ、スウェーデンを代表して発言し、本条約前文と条文の目的の実現をはかるうえでわれわれが重要と考えている核軍縮と核不拡散の若干の問題について述べたい。
1995年の3つの決定と一つの決議の無投票採択以来、初めて、核不拡散条約締約国が条約の実施を再検討するために集まっている。この一括決議の土台は、核軍縮と核不拡散の目標を追求するさいのわれわれの行動規準としてわれわれが同意した、「原則と目標」であった。
実効ある核軍縮措置について誠意をもって交渉を追求するという1995年のわれわれの新たな誓いの中には、核保有国による地球規模での核兵器削減に向けて系統的で漸進的な努力を断固として追求することが含まれていた。
われわれは、このたびの再検討の対象期間、核保有国による系統的で漸進的な努力はおこなわれず、核軍縮分野の多国間協定の発効もなかったことを認めなければならない。国際的な核不拡散体制が危険をはらんだ状態にあり、NPTが緊張状態にあることをわれわれは認めなければならない。
ほかならぬこうした状況の中でわれわれは共同して宣言「核兵器のない世界をめざして - 新しいアジェンダの必要」を打ち出した。そうしたイニシアチブをとるにあたってのわれわれの目的は、核の課題(アジェンダ)を軌道にのせ、これ以上の言い逃れなしに核兵器のない世界を実現するという、新しい明確な約束を通して明確な展望と支持をあたえることにあった。
「新アジェンダ」は、核兵器のない世界の実現にいたる過程の各段階の事情や必要条件に十分柔軟に対応できる行動計画である。それは、現在進行中のプロセスの要素をとらえている。これは、国際社会が、核不拡散条約の義務を実行するための一連の措置を実際的かつ現実的にまとめたものである。
このイニシアチブの根本は、核保有五カ国がそれぞれ保有する核兵器を全面的に廃絶するよう求めている点である。それは、初めての約束である。それは核保有国それぞれの将来の一切の行動を決定づけるものである。それは、核不拡散条約の履行状況を再検討するために、2005年に再会する時に、この条約の目標に向けどこまですすんだかを評価する参照点を提供するものである。そしてそれは、核軍縮の要請を支持する決意を表すものである。
NPT締約国の特別の目標は核兵器の全面廃絶である。そのためには、国際司法裁判所の全員一致の結論であり、要請でもあった、あらゆる側面での核軍縮交渉の結論を出すことが必要となる。4カ国(その中の3カ国は保障措置下に置かれていない核施設を稼働させ、核兵器政策をいまだ捨てていない)を除くすべての国が核不拡散条約を堅持していることは核兵器のない世界の実現に対する国際的誓約のひろがりの証である。こうした無二の誓約に裏書きされている以上、核保有国の側にはこの挑戦を受けてたつ責任がある。そして彼らは核兵器全面廃絶をはっきりと約束するかたちでこの課題にとりくまなければならない。これは削減のプロセスを早めるかたちで明白に示されることになるであろう。こうした新しい決意の合図は、力を合わせてとりくんでいる国際社会の努力と相まって、現実的であると同時に差し迫った、核兵器のない世界という目標の実現を可能にする。
この再検討会議に集まった187カ国は、わかりやすい言葉で議論しなければならない。われわれは、前回1995年に集まって以来、核不拡散条約の目的に対抗して続く、さまざまな挑戦を目撃してきた。2つの非締約国が核実験を強行した。これら非締約国ともうひとつの非締約国は、保障措置の下に置かれていない核施設を稼働させ続けており、核兵器選択の道を放棄していない。他の国々の不順守についても指摘されてきた。条約に加盟する2つの核大国が達成したこと、1995年の再検討延長会議が要求した地球規模での核兵器削減に向けた系統的で漸進的な努力にまではいたらなかった。多国間交渉では、CTBT(包括的核実験禁止条約)交渉を完了したこと以外には、ほかに何ひとつ実現されていない。要するに、核兵器存続の課題に対する対処の仕方は、陣営によっては安住的もしくは無関心なものであった。
今回の重大な再検討会議は、核兵器のない世界の実現に向けてはっきりとわれわれが前進するまたとない機会である。われわれは、これまで以上に広範囲な行動を決めなければならない重大な局面に来ている。大量殺りく兵器の概念に入るすべての兵器の廃絶にいたるプロセスを始めるために、断固たる措置がとられた先例がすでにある。核兵器の場合には広島、長崎から半世紀以上も経過していながら、われわれは同じ方向で断固とした措置をとる点では時間的にもはるかに遅れをとっている。
しかしそうした決意のかわりに、戦略的概念における核兵器の中心的役割や、核兵器を使った戦争の可能性を再確認する政策や態勢が繰り返し述べられている。端的に言うと、核保有五カ国のあいだでは、核兵器の最初の拡散を生み出した状況が遠い昔に消え失せてしまっているのに、われわれは核兵器の再合理化論を目にしているのである。
われわれが提起したアジェンダの要素はそれ自体は目新しいものではない。これらの要素のひとつ一つは、これまでも詳細に検討すべき問題であった。この再検討会議のプロセスの中で、われわれは核不拡散条約と1995年の「原則と目標」を基礎に、核軍縮目標を共同で発展させることが求められている。「新アジェンダ」が提唱しているものは、そのために必要な政治的言質があって実現できるアプローチ面での一貫性である。
われわれの共通目標の実現には、すべての国の行動が必要となる。核保有国の第一義的責任である交渉の詳細にわれわれは口出しするつもりはない。われわれは、米国とロシアが、核戦力削減面でリーダーシップと最初の一歩をとる責任を負っていると認識している。われわれは、ロシア連邦によるSTARTU(戦略兵器削減条約)の批准を歓迎し、条約の完全かつ実効ある履行ができるよう、米国に対して批准手続きを可及的すみやかに完了することを強く要請する。核保有五カ国のうち2カ国によって単独の措置がとられたが、核保有五カ国すべてが、自国の核兵器廃絶の実現に早期にとりくむよう要請する。われわれは、不可逆性の原則がすべての軍縮措置に適用されるべき、と考える。核軍縮のプロセスが速度を増すにつれ、われわれはより高い透明性を望む。
速度を速めた戦力削減計画の実行をともなう場合でも、核兵器廃絶のプロセスには時間がかかることをわれわれは認識している。しかしわれわれは、廃絶以前に、意図的にせよ偶発的にせよ核兵器を使用してしまう可能性を小さくする決意と合致した中間的措置を核保有国がとる責任がある、ということも意識している。われわれが提唱する措置は、どんな場合に即効性があるとは言わないまでも、少なくともそのもとにある核兵器削減と軌を一にして実現が可能であるとわれわれ各国の政府がみなしている措置である。
われわれは、核政策や核態勢にかんするいかなる評価結果も、核保有国相互間での核先制不使用、および非核保有国に対する核不使用の方針をすべての核保有国が採択することにつながるべきであると提案する。
われわれは、警戒態勢解除、ならびに運搬手段から核弾頭を分離するための取り決めが前進するよう提案する。
われわれは、非戦略核兵器を配備から撤去し、これを廃絶することの重要性を強調する。
本条約に加盟するすべての非核保有国に安全を保障する、法的拘束力をもつ規定を提唱する。
核軍縮の過程では、核兵器のない世界実現に求められる信頼醸成の条件を保証するのに必要な協定の締結と並行して、核保有国による核戦力削減が優先的に追求される必要がある。核軍縮はすべての国の責任であり、すべての国がこの目標にいたる過程に参加しなければならない。核兵器のない世界を維持するには、多国間で交渉された、一つ、ないしは一連の複数の協定が必要とされることであろうし、またこれが結果として差別のない普遍的な核不拡散体制をもたらすであろう。
包括的核実験禁止条約の締結は、核軍縮の課題の中で不可欠なものであった。核分裂性物質製造禁止条約にかんする交渉を緊急に開始することがもうひとつの不可欠の要素とならなければならない。それは、核兵器のない世界で必要とされるように、一切の兵器用核分裂性物質を範ちゅうに入れる多国間検証体制のひろがりのスタートとなるからである。これらの条約の締結、発効まで、われわれは、核保有国が核兵器目的の核分裂性物質のこれ以上の製造を一時中止し、自らが署名したCTBTの目的を支持することを要請する。われわれはまた、保障措置下にない核施設を稼働させている本条約未締約国に対し、核兵器用の核分裂性物質の製造をただちに停止するよう強く要請する。
既存の非核兵器地帯の一層の拡大と発展、ならびに関係議定書の順守を通じ、核保有国が非核兵器地帯化を尊重することは、核不拡散の努力を地球規模で推進する力と、非核兵器地帯が核不拡散に貢献するという国際的合意を強化することになる。われわれはまた、特に中東や南アジアのような緊張地域に、非核兵器地帯を追加的に設けることを要請する。
これまでは軍縮会議(CD)が、核兵器のない世界実現への課題づくりにとって最も重要であった。いまや、核兵器の地球規模での禁止を実現するために必要な包括的枠組みだけでなく、われわれの約束を次の段階へとすすめる時である。ほかの組織、なかでもIAEA(国際原子力機関)には、核兵器のない世界で必要とされる検証のしくみを入念につくりあげる努力を強化させるべきである。
われわれは、国連事務総長が国連ミレニアム総会にあてた報告の中で、「核の危険を除去するさまざまな方法を確認するのに役立つ国際会議を召集する」ことを考慮すべきと提唱している事実に励まされている。われわれは、他のさまざまな場でおこなわれている努力を効果的に補完する核軍縮と核不拡散にかんする国際会議が、核兵器のない世界実現のための新しい課題の地固めを促進できるものと考えている。
本日集まった核不拡散条約締約国は、国連の192加盟国のうちの187カ国を占めている。保障措置下にない核施設を稼働し、核開発に従事する3つの条約未締約国は、核軍縮の実現に向け最も重要である。この再検討会議は、これらの未締約国に語りかけ、非核保有国として彼らが不拡散条約に加盟し、自国の核施設を国際原子力機関の保護下に置くように、努めなければならない。
われわれはこの条約を支持している。しかし、この条約が生み出された当初の約束が果たされないのであれば、いかなる条約も支持されない。これは核不拡散条約にとって重大な事態である。この再検討会議は、本条約の目標実現に向け明確に動きだし、核兵器の保持が人類に決してあたえ得ない安全をつくり出す、最後にして最善の機会かもしれない。ただちに行動して新たな決意の合図を送ることができないなら、核兵器は容認された通貨となるであろう。核の悪用を許し、人類に自己破滅の無謀な手段をあたえてはならない。新アジェンダは、責任ある関係諸国の安全な未来への提唱である。行動の過程を加速させるための、新たな政治的約束の呼びかけを支持することによって、このメッセージに実質的な中身をあたえるのはこの再検討会議の責務である。
さらなる進歩を追求すべき地域と追求手段とを明確化する必要性にこたえて、ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ、スウェーデンの各代表団は、核軍縮実現のために本条約第6条の義務にかんする各種の措置を列挙した作業文書を提出している。本会議の公式文書として、この作業文書が回覧に付されるよう事務局に要請する次第である。
核不拡散条約加盟の非同盟運動諸国が提出した作業文書の紹介
インドネシア国連常駐代表 マラキム・ビビソノ
(4月24日)
非同盟運動(NAM)は、この再検討会議に準備段階から実質的にかかわってきた。準備委員会の会合で提出した作業文書は、この会議に対する非同盟運動の強い願望と期待をはっきりと明確に宣言したものだ。非同盟運動の実質的なとりくみと参加の続きとして、非同盟運動のNPT締約国を代表してこれらの作業文書を紹介することを光栄に思う。これら作業文書は、会議で取り上げられる諸問題のすべてに言及している。
非同盟運動の立場は、現在にいたるまで一貫して1995年のNPT再検討延長会議で採択された「再検討プロセス強化」の決定に基づいている。この強化された再検討プロセスの準備委員会は、率直に言って、1995年の決定および1997年にニューヨークで開始したわれわれの作業に対する期待にこたえるのもではなかった。したがって、この会議は、条約を無期限延長した1995年の一連の決定を評価する重要な場となるだろう。
非同盟運動は、この会議開催期間に機能する2つの補助機関を設置する決議を歓迎する。非同盟運動は、1995年の決定「条約再検討プロセスの強化」を、条文、精神ともに真に履行する保証として、この決議が重要だと考える。
非同盟運動はまた、条約の前文と条項に含まれる問題についての見解を明確かつ内容豊かに表明してきた。私が提出した作業文書でも、これらの問題について具体的な提案をおこなっている。これは、今月初めにカルタヘナで開かれた非同盟運動のおこなった審議のかなりの部分を反映している。
報告書は、序説、前文、条約の諸条項についての非同盟運動の立場、中東に関する1995年決議および安全保障に関する非同盟運動の見解からなっている。
序説では、条約の課している義務および1995年文書の誓約を迅速かつ効果的に履行するために、誠実な努力と内実ある作業に専心することをこの会議に求めている。こうしたアプローチによってこそ、再検討プロセスが強化され、われわれの再検討作業を確実に実らせることができるというのが非同盟運動の見解である。
前文では、NPTが、垂直・水平両方向の拡散を阻止し、保有国と非保有国の義務と責任の公平なバランスを追求するうえで重要な役割を果たすという考えが述べられている。また、NPT規定の履行に関する勧告の実施状況を監視するために、2つの再検討会議の間の常に開催されている常設委員会を設けることを提案している。
第1条については、さらなる拡散を阻止し、それによって平和と安全保障に対する条約の重要な貢献を保護する主軸として、この条項の厳守を求めている。また、これを完全に履行するとの誓約を再確認する一方で、条約に加盟していない国が、核技術を入手する可能性について懸念を表明している。
第2条について、非同盟運動は、これを完全に履行するとの誓約を再確認している。その意味で、非同盟運動は、関連する締約国に対し、どのような安全保障措置の下でも、軍事目的で核兵器を共有しないよう要求する。
第3条については、条約に定められた義務の厳守を検証する権限をもつ機関としてIAEAの役割を確認し、IAEAの保障措置がこの厳守を保証するための重要な要素であることを再確認している。また、核保有国および条約未加盟国に対しては、それぞれの核施設をIAEAの完全な保障措置のもとに置くよう要求する。条約の不履行についての懸念は、IAEAに対して表明されるべきである。非同盟運動は、特定核分裂物質移転のための新たな供給取り決めの前提条件として、IAEAの完全な保障措置を受け入れることを原則とすることを支持する。さらに、技術協力、保障措置、原子力の安全性に関するIAEAの責任を満たすために必要な財政的・人的資源の不足にも注意を喚起している。
第4条については、締約国が、差別なく、平和目的での原子力の研究、製造、使用をおこなうことができるという譲渡し得ない権利もつことを再確認している。この意味において、非同盟運動は、保障措置の範囲外で一方的に課された、平和的核開発を妨げる強制的な制限措置を解除するよう求める。非同盟諸国の見解では、拡散疑惑の最良の対策は、多国間交渉による普遍的、包括的、平等な協定を結ぶことである。非同盟運動は、発展途上国の正当なエネルギー需要を満たさなければならないという供給国の責任を再確認している。発展途上国に対しては、核技術の移転に参加し、利益を最大化し、持続可能な開発を達成することを認めるべきである。非同盟運動はまた、平和的核産業の、武力行使からの不可侵性を再確認している。
第5条については、CTBTの全条項を考慮し、その目的に従って、あらゆる種類の実験を止める必要を強調している。さらに、非同盟運動は、全核保有国を含め、条項の普遍的な厳守を達成する重要性を強調している。CTBTはまだ発効していないものの、締約国は、CTBTの条文および精神に従うよう求められている。
第6条の誓約の履行について、非同盟諸国は大きな懸念を抱いてきた。これは、NPT第6条に定められた規定の履行に進展が見られない事情を反映している。非同盟運動は、核軍備が人類および文明におよぼす危険を喚起し、核軍備競争の逆転と核兵器の完全廃絶を求める。
非同盟運動はまた、弾道弾迎撃ミサイル防衛システムの開発・配備、および宇宙空間の軍事利用による否定的な影響を懸念している。これらの構想は、軍縮と安全保障の促進に役立つ国際環境を破壊する一因となってきた。この意味において、非同盟運動は、ABM条約の規定に従うことを要求する。
第7条に定められた非核地帯について、非同盟運動は、新たに非核地帯を創設しようとする締約国または締約国グループの努力に支持を表明している。また、トラテロルコ条約、ラロトンガ条約、バンコク条約、ペリンダバ条約について特に言及している。
第8条に関して、非同盟運動は、条約の前文および規定の目的を確実に実現させるため、条約の再検討プロセスを強化する努力を続ける。
第9条の規定に従い、非同盟運動は、条約の普遍性確立の緊急性と重要性を強調している。この目標の達成に向けて決然と努力する必要がある。
安全保障の問題について、非同盟運動は、非核保有国に対し核兵器の使用または使用の威嚇をおこなわないことを保証する法的措置の交渉を要求する。これは、議定書としてNPTに添付することも考えられる。
最後に、非同盟運動は、中東に関する1995年決議を、3つの決定とこの決議からなる1995年に採択された一連の決定の不可欠な部分だと考える。非同盟運動は、中東を早期に核兵器その他の大量破壊兵器がない地域にすることなど、この決議の完全な履行に努力する。
最後に、非同盟運動は従来どおり、これらの問題すべてに対しそれぞれにふさわしい真摯な態度でとりくむ。これらの提案は、われわれがこの会議に参加するうえでの基礎となっている。われわれは他の条約締約国に対し、この提案を注意深く研究し、非同盟運動がこの再検討会議の準備および参加において示したのと同じような柔軟さを示すよう求める。
アイルランド政府の声明
アイルランド外務大臣 ブライアン・カウエン
(4月24日)
この再検討会議を始めるにあたって、いくつかの特に肯定的な状況の進展が見られる。ロシア連邦による START II(第二次戦略兵器削減条約)の批准手続きの完了は、この再検討会議を開始するにあたって歓迎すべきことであり、時期を得たものである。われわれは、本条約(不拡散条約)の十分にして効果的な実施がすすむよう、米国に対してSTART IIの批准手続きの早期完了を強く求める。同時にわれわれは、こうした重要な一歩が見られた以上、ただちに次の START IIIの段階にのりだし、核軍縮に向けて前進するうえで不可欠なはずみをふたたびつくることができるよう期待している。
われわれは、米ロが相互に約束した核兵器削減を歓迎するとともに、両国は新たなエネルギーをもって次の段階の交渉にとりくんでいただきたい。
CTBT(包括的核実験禁止条約)のロシアの批准に必要とされる立法措置がこの金曜に採択されたことはこの条約の発効に向けたもうひとつの重要な貢献である。EU(欧州連合)締約国であるフランスとイギリスという2つの核大国による批准によって、われわれは目的に大きく近づいている。残る2つの核保有国もCTBTを是非とも批准していただきたい。そうすることで、「核不拡散条約」の中で明確に述べられている目標のひとつの実現に向けてさらに自信を深め前進することができるからである。核実験は、地球というわれわれの小さな惑星上でおこなわれてはならない、という規準をわれわれはすみやかに確立しなければならない。
国連事務総長は、最近の「ミレニアム報告」の中で次のように述べた。「核の恐怖の二極バランスが過去のものとなったら、核兵器に対するわれわれの関心も人びとの意識から離れていったようにみえた...かつてはあったかもしれない核兵器の根拠はとうの昔にしぼんでしまった。核兵器の実際の使用に対する政治的、道義的、法的抑制は、不慮の戦争や核拡散の危険を小さくするわけではないが、核兵器の戦略的有用性をさらに土台から突き崩す。」
この2000年再検討会議は、核不拡散条約を発展させるうえで決定的意味をもっている。一方では182カ国が核兵器保有を手控えるという約束を内外に明示した。これは無類の成果である。他方、核兵器の全面廃絶実現というこの条約の目標はいまだ実現には程遠い。
私にとって最も重要な問題は、1958年に最初にそうした条約を提案したわが先駆者、フランク・アイケン氏の大志がいま実現されつつあると正直に断言できるかどうか、である。そして、条約発効以来30年経過したいまもわれわれが核廃絶の実現にまだ近づいていないとすれば、はたして自分の子どもたちに、こうした恐るべき兵器が間違った時代の思い出にすぎなくなるようなより安全な世界を約束できるであろうか。
NPT(核不拡散条約)は、核兵器開発を手控えてきた国々に対して、ほかの国も同様に自制するという保証をあたえてきた。本条約に加盟する非核保有国は、こうしたNPTの約束を、自国の核兵器を廃絶するという核保有国の対応する法的拘束力をもつ約束との関連で履行していた。それがこの条約の基調にある約束である。
本条約の履行状況を再検討するために締約国が集まった過去5回の再検討会議では、それぞれ、非核保有国は、核保有国が核兵器のない世界という目標を実現するより強い決意を示すべきであるとつねに主張してきた。
冷戦が終って10年、アイルランドにとって明らかになったことは、核戦略も軍備管理努力も、早期の核兵器廃絶を予測したものではなかったという事実だった。以前われわれは進歩に対するいくつかの制約を認めていたが、今世紀が終りに近づくにつれ、もはやそれらを認めることはできない。
「核兵器のない世界に向けて− 新アジェンダの必要」は、こうした事態への対応としてアイルランドならびにその他6カ国が共同提案し、この2000年再検討会議までに国連加盟の60もの国々が共同発起人として名を連ねた構想である。メキシコの外務大臣が今日の午後概要を説明したように、「新アジェンダ」は核兵器のない世界の実現にいたる現実的綱領である。これは5つの核保有締約国によってなされる核兵器全面廃絶の新たな政治的約束を前提とし、それをふまえ核軍縮にいたる交渉と手順のプロセスを速める作業に入るというものである。
そうした約束を求めることが必須と大多数の加盟国が考えるのはなせか。それは核兵器のない世界実現という核核不拡散条約の目標を実現するいくつかの新たな機会にこたえる十分な対応がこれまでなされてこなかったからである。確かに、先にも触れたように、かなりの核兵器削減がおこなわれたが、これは核兵器の近代化と抱き合わせになっている。無限の未来への戦略的概念にとって最重要として核兵器が再確認されているというのに、どうしてわれわれは核の脅威を取り除くことができるだろう。戦場核兵器が依然として実際配備されており新型核兵器が未臨界実験やコンピューターシミュレーションなどによって開発され続けているのに、何をもって人類を安心させ得るのであろうか。
アイルランドの外交政策の基本目標は、核不拡散条約とその不拡散体制を擁護することである。この重大時にあってわれわれの関心事は、その目的や規定をささえるための真剣な新しい手だてをとることもなくこの条約が自己満足や軽視によって死滅しはしまいか、ということである。われわれは冷戦後の新たな現実に合わせて、この条約を修正することもできる。そのつもりになれば、新しい条約をつくることさえできる。しかし、むしろ現行の核不拡散条約を履行し、しかも核軍縮と核不拡散の礎石としてこれを補強する方向でこの条約を履行すべきではないであろうか。
核廃絶の早期実現には政治的決断が必要となる。核兵器はすべての大陸、そこに住むすべての民族とその文化の相互絶滅の可能性という重荷を負った時代に開発された。しかし、これまでどの段階においても、核兵器使用が道義的に一般に受け入れられることはなかった。それどころか、1996年に国際司法裁判所が結論づけたように、新しい千年紀に核兵器を無限に保有し続けても、防衛の役に立たない。残念ながら、こうした大きな課題への対応を、世論も非常に甘く見てきた。この条約は、すべての国や人々によるとりくみに根本的変化がなければ、あと5年間このままで生き延びることはできないかも知れない。いまこそ世界から核兵器をなくすために、真剣に先へすすむときである。
条約の履行状況を再検討するためにわれわれがここに集まっている一方で、インド、パキスタン、イスラエルの3つの条約未加盟国は、187カ国が自らの規範としているまさにそのものを無視し続けている。NPTに加盟する核保有国と非核保有国は、相互の条約義務を履行することによって、核兵器拡散に乗り出す国に対しては、その合法性を否定する。
新たに目にする安全へのそのつどの脅威への対応を理由にした核兵器保有をめぐる果てしない議論を克服しなければならない。そしてわれわれは、新たな核拡散源を予測することによって核兵器のない世界を断固追求する道からそれてしまうのではなく、むしろそのつど、こうした難題にとりくまなければならない。われわれがここで問題としてとりくんでいるのは、意図的にせよ偶発的にせよ、ハルマゲドン(世界の終末における大決戦)の前兆となる何千発の核兵器である。
核兵器以外の大量破壊兵器を所有している国々に対して使用する目的でならば核兵器をもち続けることも許される、という考え方も、われわれは受け入れない。そうした議論は、究極的には、同じような脅威にさらされているいかなる国の核兵器入手をも是認することになり、核不拡散条約の目的を台無しにする。
この再検討会議は、核兵器のない世界という目標実現につながる計画を実施させるわれわれの最後の絶好の機会かもしれない。それには今の核兵器政策を変える政治的決断が必要である。5月19日に再検討会議を終えるころまでには、核不拡散体制と不拡散条約そのものの未来が保証されない事態とならないことがきわめて重要である。そうするためには、私が「新アジェンダ」の中で概説したようなとりくみ方が必要となる。
1995年の「原則と目標」の中で、核兵器など爆発物用の核分裂性物質の製造を禁止する条約について「交渉の即時開始、その早期締結」を約束した。核保有五カ国による核兵器目的の核分裂性物質の製造を禁止することは、当初提案されたときほど差し迫った目標にはみえないかもしれない。五カ国中の一国はすでに自国の製造施設を、後戻りできない段階まで解体した。しかし、核分裂性物質製造禁止条約(カットオフ条約)の締結は核軍縮のNPTがめざすものの重要な予備的な一歩である。それは核兵器用のいっさいの核分裂物質に対する規制の着実な拡大につながるプロセスのスタートとなる。
われわれはNPT締約国として、この再検討会議にわれわれを結集させている国際的合意の外にとどまろうとする3つの国によって、この交渉のペースが決められるのを許してはならない。それと同時に、われわれが何も行動ぜずこれらの国による核兵器選択の方向をおしすすめる手助けをする結果となってもならない。核不拡散体制の土台としてのこの条約の役割をつき崩しかねない出来事が繰り広げられている時、われわれはぐずぐずしてはならない。
アイルランドは、軍縮会議(CD)におけるFMCT(核分裂性物質禁止条約=カットオフ条約)にかんする交渉の早期再開をめざしている。しかし、その主要目的である核保有五カ国に対するFMCTの適用を促進するために、これらの国がまず条約草案の内容で交渉に入ることが可能なのではないか。その場合五カ国は、この草案を共同で軍縮会議に提出し、さらに繰り上げて多国間条約としての採択をめざし、その一方で五カ国みずからは締結がおこなわれるまでのあいだ、その条約の核心的条項の暫定的実施をすすめるということである。
履行状況の再検討にあたってわれわれは、本条約のすべての目的と条項の順守の問題を討議しなければならない。原子力の平和利用に参加する権利とともに、安全保障措置はNPTの核心をなす条項である。前回の再検討会議以来、非核保有国による違反の新たな申し立てはこれまでひとつもみられなかったが、それ以前のケースについては、満足のいく解決をはかることが依然としてアイルランドの関心事である。「保障措置協定の追加議定書」にかんする1997年の合意は、必要な場合の核不拡散保証を強化したいとする非核保有国側としての政治的意志の重要なあらわれであった。私はこの再検討会議に対し、この「追加議定書」にかんする批准立法がアイルランド議会で先週中に提議されたことをお知らせしたい。
1995年、条約加盟国は、核不拡散条約のための再検討プロセスの強化を決めた。われわれの努力にもかかわらず、この点にかんしてはわれわれ共通の意図はまだ達成されていないことに誰もが同意している。明らかに、選択された機構である準備委員会は、1995年にイメージされた目標を実現するには不十分である。
私は、議長がこの再検討会議をつうじて再検討機構の実効性の問題に対応する意図をおもちであることを承知している。協議をおこなうにあたっては、1995年に意図された、より系統的で定期的な実行情況の検討をおこなうために、小規模の事務局が補佐する条約締約国年次総会の開催を検討することを提案したい。この点にかんしては、ラテンアメリカ核兵器禁止機構の経験から学ぶことができよう。
こころざしを同じくする代表団とともに、わが代表団は、NPTを支え強化するこの再検討会議からよい結果がでるよう、努力をおしまない。核保有国、非核保有国をとわず、すべての条約締約国に対し断固たる態度でいどまなくてははならない。それぞれの責任を果たすにあたり、本条約を強化するに必要な適切な手だてをとらなければならない。核兵器を国際の安全保障を構成する要因としてみなすことをやめ、どれだけ低かろうが、核兵器を新たな段階に強化してはならない。道を選ぶのはわれわれである。この条約は強化する必要がある。実現されてこなかったことを、2000年に達成するために奮闘しようではないか。核不拡散条約を完全に履行するに必要なもの、世界の人びとがわれわれに望むものはなにか、いまこそ明確に合意しようではないか。
国際情報資料 13 もくじ
核不拡散条約締約国2000年再検討会議への声明
マレーシア国連常駐代表 ハスミ・アガム大使
(4月25日)
わが代表団は、昨日、非同盟運動の作業文書を提出したインドネアの優秀な常駐代表の声明に賛同する。
5年前に核不拡散条約の無期限延長が合意されたとき、核保有締約国は、核軍縮にかんする効果的な措置について誠実に交渉をおこなうとの彼らの約束を再確認した。このとき到達した合意によれば、厳格かつ効果的な国際管理の下における核兵器廃絶を究極的目標として、核兵器の全地球的削減のために核保有国が体系的かつ漸進的な努力を断固として追究するうえで、無期限延長は不可欠とのことであった。無期限延長は、世界からこれらの大量殺りく兵器をなくすための真剣なとりくみの新たな始まりと、おおくから歓迎された。しかし、マレーシアを含む多くの代表団は、条約の無期限延長というやり方に留保を表明した。当時マレーシアは、NPTの無期限延長は核保有国への「白紙委任状」であり、条約の普遍性の促進を励ますものとはなり得ない、と述べた。再検討の対象期間内に核軍縮がほとんどすすんでいない状況を見れば、わが代表団は、当時の結論を訂正する理由はどこにもみつからないと考える。われわれはいまでも、NPTの無期限延長によって国際社会は核保有締約国への唯一の影響力を失ってしまったのだと確信している。条約の無期限延長という焦眉の課題を達成したあとの核保有国は、核兵器の削減と廃絶に向け真剣に努力するためのさらなる動機や強制力を認識していない。核保有国の誠意を全面的に信頼してきたより広範な国際社会の利益を犠牲にして、プロセスは、自己利益を優先する核保有国の手に握られているのである。
1995年の再検討延長会議の決定1では、今後の再検討会議が、特に「過去と同様に将来も議論の対象」とすべきこと、締約国による約束の履行状況など対象期間の結果を評価し、将来的に追求すべき領域とその方法を特定することを、締約国に求めている。締約国はまた、条約の履行を強化し、普遍性を達成するためにとりうる方策を明確に示すべきである。換言すると、この再検討会議においてわれわれは、過去5年間に何を達成し何を達成しなかったかを客観的かつ率直に分析し、今後5年間のロードマップを作成すべきである。
「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」にかんする延長会議の決定2に基づいて、再検討対象期間における締約国の履行状況を分析すると、積極的な面よりも否定的な面のほうが多く浮かび上がってくる。
積極面としては、いくつか賞賛すべき進展が見られた。包括的核実験禁止条約(CTBT)は、軍縮の重要な成果として認める必要がある。発効にはまだ何カ国かの批准が必要だが、先週のロシア下院の批准は、この目標への明確な貢献として歓迎すべきである。一方、それより先に米国上院で下されたCTBT批准拒否の決定は、とくにこの重要な問題について国際社会が米国のリーダーシップを期待しているなかで、われわれを失望させるものであった。米国上院が次の機会には条約を批准し、軌道を修正することを望むものである。
われわれはまた、戦略兵器削減条約(START)にかんする成果、興味深いことにこの再検討会議に先立っておこなわれた、ロシア下院によるSTART IIの批准も歓迎する。われわれはSTART IIIプロセスの開始を期待しているが、ABM条約(弾道弾迎撃ミサイル制限条約)との連関が形成されつつあることにも注目している。非同盟運動諸国(非同盟運動)と同様にマレーシアも、弾道弾迎撃ミサイル防衛システムの配備が不安定化をもたらす影響を懸念し、この連関によってSTART IIプロセスに困難や遅延が生じないことを希望する。そのような困難を回避するため、われわれは米国に対し、伝えられている防衛システムの開発と配備の意図を再考するよう迫る用意がある。その他の核保有国もゆくゆくはSTARTプロセスに加わるべきである。
わが代表団は、非核地帯にかんする情勢の進展にも満足している。なかでも、アフリカと東南アジアに非核兵器地帯が確立すれば、南太平洋およびラテンアメリカとともに、南半球において途切れなくひろがる非核兵器地帯が形成される。非核兵器地帯設立の進展は非常に喜ばしいことであり、非核保有締約国の継続的な誓約を積極的に反映するものである。これまでのところ、4つの大陸で100以上の非核保有国が非核の傘の下に入っている。中央アジア非核兵器地帯条約の創設や、「単一国家非兵器地帯」というモンゴルが始めた革新的な概念も、広く受け入れられるようになっている。同様に、「非核兵器回廊」というベラルーシの革新的な提案は、核軍縮に向けた地球規模の協調的努力の一環として真剣に考慮する価値がある。中東や南アジアなど、その他の地域にも非核兵器地帯が設立されることを期待する。
しかし、再検討の対象期間には、次にあげるように否定的な情勢や懸念すべき情勢さえ見られた。
−核保有国は、「原則と目標」の決定2で要求されている、NPTが定める核軍縮にかんする約束を「決意をもって履行」することを怠った。これら「原則と目標」の規定にもかかわらず、核不拡散および核軍縮は「精力的に追求」されていない。それどころか、多国間軍縮交渉では何ら真摯な努力がなく、二国間交渉では中途半端な努力しかなされなかったことは、核軍縮プロセスのなかでも最悪の時期のひとつであった。
−NPTの普遍的な厳守を実現するどころか、南アジアで新たに2つの国が事実上の核保有を宣言した。決議2の規定に反し、未締約国を「できる限り早期に」条約に加入させるという目標達成に向けた真摯な努力はなされなかった。新たに9カ国がNPTに締約したのは喜ばしいことだが、4カ国は依然として未締約のままであり、そのうちの3カ国は核兵器を保有するオプションを有しており、保障措置の対象外にある核施設を操業している。われわれがこれら諸国との真摯な対話を早くから提案していたにもかかわらず、これらの諸国をNPT制度に組み込むための真剣な努力がなされていないのは遺憾である。
−決定2が呼びかける「核兵器およびその他の核爆発装置の拡散を防止する」どころか、再検討の対象期間中、前述の非締約国が、核保有国の地位を獲得するために、一連の実験をたてつづけに遂行し、それによって核兵器の拡散をすすめ、地域および世界の安全保障に深刻な影響をあたえた。
−決定に明記された目標に反し、核保有締約国は、核軍縮にかんする効果的な方法についての交渉を「誠実に追求」しなかった。それどころか、再検討延長会議の直後に2つの核保有国が一連の核爆発実験を開始した。
−決定2に明記された目標に反し、「核兵器その他核爆発装置用核分裂性物質の生産禁止(カットオフ)」にかんする「交渉の即時開始と早期締結」は、なされなかった。
−また、1995年NPT会議の中東にかんする決議に反して、同地域の安全保障に深刻な影響をあたえるこの重大問題にとりくむ真剣な努力は何らなされなかった。われわれは、今回の再検討会議が、この重要な問題について明瞭明白な宣言を出すことを強く求める。
以上のことからわれわれは、1995年のNPT再検討延長会議で結ばれた合意が完全には履行されなかったという見地に立つものである。この5年間の核軍縮のプロセスは、ためらいがちに小さな一歩を踏み出して二歩下がるというような調子であった。過去10年間で、核保有国が配備する核兵器の総数はわずかに減少したものの、核保有国は、防衛政策および安全保障政策のかなめ石として、危険かつ時代錯誤な核抑止ドクトリンへの全面的なコミットメントを再宣言している。核兵器を保有することで安全が強化されるという誤った信念のもと、核保有国は、「厳格かつ効果的な国際管理のもと、…核軍縮につながる交渉を誠実におこない、これを完了する」という国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見を無視し続けている。軍縮会議(CD)は、「核軍縮にかんする作業グループ」の設立と兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)にかんする交渉開始が挫折したことからも明らかなように、依然として暗礁にのり上げた状態である。核武装という死のゲームに新たな参加者が加わって、地域と世界の安全保障にさまざまな影響をおよぼしている。
この5年間に確認されたことがあるとすれば、それは、核保有締約国が核抑止ドクトリンを安全保障に不可欠な要素であると確信していることである。核兵器の総数は経済的または戦略的事情から、やがて減少するかもしれないが、そうなっても核兵器のおよぼす威力が変わらないことは明らかである。そのため保有国は、より小さくより効果的にという哲学に基づいて殺傷力および破壊力の強い兵器の製造を重視している。そればかりか、核兵器にかかわる戦略立案者や政策決定者の側には、無期限に核兵器に頼りたいという恐るべき傾向が見られる。そのために核兵器完全廃絶の課題の重要性を低くみせようとする勢力もある。核兵器の完全廃絶など考えるのは世間知らずで危険ですらある、とはっきり言う者までいる。
NPTの義務を完遂するために今後とるべきステップを熟考するうえで、国際司法裁判所(ICJ)の歴史的な勧告的意見は、想起する価値がある。国際法の発展においても特に意義ある重要な一里塚のひとつとして、国際司法裁判所は、核兵器の使用は、不必要で無差別な戦争の影響から文民および戦闘員を保護するという人道法の規定とは「ほとんど相容れない」ものであるとし、さらに、核保有国が自衛の正当な理由付けとして国家の存亡が危機に瀕する状況を論証してみせたことは一度もないとの判断を下した。また、国際司法裁判所は自らの判断で、核軍縮に向けた誠実な交渉を求めるNPT第6条の意味にかんする勧告を出した。これは全裁判官の承認のもと、決定の2F項に次のように明記されている。「厳格かつ効果的な国際管理のもと、すべての面にわたって核軍縮につながる交渉を誠実におこないこれを完了する義務が存在する」。
すべての面にわたって核軍縮につながる交渉を完了する義務について、国際司法裁判所のアルジェリアのモハメド・ベジャウィ裁判長の発言を引きたい。「核兵器が存在するもとでは、人類は執行猶予で生存しているようなものだ。…1945年8月6日朝の広島以来、恐怖は徐々に人類の第一の性質になってきている。地上での生活は、終りのみえない悪夢のような、コーランにある『長い夜の旅』の様相を帯びている」。ベジャウィ氏はさらにこう続けている。「人類は、邪悪で絶え間ない核の脅迫に自らをさらしている。問題は、これをどのように止めるかだ。…法廷が(それが示した意見が不満足と思われようと)自らの使命を果たしたことに、国際社会が評価をあたえることが望まれる。そして、結局は、諸国家がつくりあげた以上のものではない国際法の不完全な部分が、できるだけ迅速に是正されるよう国際社会が真剣に努力することが期待される。
国際司法裁判所の勧告的意見を受け、マレーシアは1996年以来、国連総会のたびに、第一委員会および総会の決議で、勧告的意見の後追いをおこなってきた。4つの核保有国のうち、中国だけが、国際司法裁判所の全員一致の結論を強調する条項である、法的拘束力をもつ決議第1項に賛成票を投じた。一方、イギリスは棄権し、遺憾なことにその他の核保有国はひきつづき反対している。
核不拡散条約は岐路にたっている。核保有国の側が、厳粛に結んだ取り決めを履行する政治的意思をはっきり示さないため、非核保有国の善意や忍耐は、きびしい試練にさらされている。核保有国の側に真摯な態度の変化がなければ、核不拡散の目標や条約そのものがひどく損なわれるおそれがある。それこそ、誠に遺憾な事態である。
軍縮のプロセスを推進する方法については実にさまざまなアイデアが出されている。二、三の例をあげても、キャンベラ委員会、新アジェンダ連合、東京フォーラムなどの提案があり、もちろん、真剣に考慮すべきものもおおくある。しかし、すべての面において核軍縮に向けた誓約を真剣に考えるなら、われわれに真に求められていることは、効果的な国際管理のもと核兵器の開発、製造、実験、配備、貯蔵、威嚇もしくは使用を禁止し、それらを解体するための、法的拘束力をもつ包括的な国際協定にむけとりくむことである。実際、1997年以降、国際的に著名な軍縮専門家や法律家が定式化した核兵器禁止条約モデルが普及しており、これは国際社会により真剣に考慮される価値があるものである。
われわれが直面している問題は、アイデアの欠如ではない。問題は、プロセスを前にすすめる政治的意志の欠如である。そのことは、この再検討会議の準備プロセスでも明確に論証されている。この会議の成功とNPTの長期的な成功を確実にしたいと望むのならば、すべての締約国、とりわけ核保有国が、その政治的意志を表明する必要がある。一夜のうちにではなく予測できる将来に、単独または集団で完全核軍縮の目標を達成する条件を生み出すことは、彼らの力の範囲内にあるとわれわれは確信している。願望される政治的意志と創造的な方法をもってすれば、この目標は達成可能なのである。この点について、事務総長が、最近の「ミレニアム報告」において核軍縮問題も強調したことを賞賛する。
無期限延長後、NPTの履行状況に具体的な進展がないことには依然として失望させられるが、マレーシアはひきつづき条約に言質をあたえ、他の締約国との協力のもと、条約の完全な実現に向けてあらゆる努力を尽くすものである。われわれは、この再検討会議が、条約への普遍的順守という原則に基づいて、条約を強化し、その実行性を高めるという所定の目的にかなうものとなるように努力するものである。
国際情報資料 13 もくじ
ニュージーランド政府の声明
ニュージーランド軍縮・軍備管理相 マット・ロブソン
(4月24日)
今年はじめ、国連事務総長はわが国にゲストとして招待されていた。そのときニュージーランド国会は、新しいミレニアムの開始にあたり核軍縮の問題ととりくんでおり、2月23日、議会は全会一致で次のように決議した。
「2000年の始まりを記念し、すべての国連加盟国、特に核保有国が、ニュージーランドとともに、厳重かつ効果的な国際管理の下での全面的な核軍縮につながる交渉を実現するため誠意をもって努力するという義務を達成するよう呼びかける。」
政府はこのアピールを広範囲にわたって呼びかけた。議会はまた次のように決議した。
「ニュージーランド政府は、あらゆる適切な国際的討論の場においてその義務の遂行のために努力する。」
わが国のヘレン・クラーク首相は動議の提出にあたって、核軍縮のプロセスに多くの期待がかけられていたがそれはしぼんでしまった、とコメントした。前進するのは容易ではないだろう。だがニュージーランドは、長いあいだ核軍縮運動の先頭に立ってきており、そこから後退するつもりはない。
われわれは今日、この議会アピールの決意を新たにする。
この会議が開始された日は、われわれにとって意味深いときであった。ニュージーランドおよびオーストラリア国民は毎年4月25日、戦争に従事した人々を思いおこす。それはわれわれの歴史、戦争体験、自己認識、世界の中における位置を考える日である。今年オーストラリアとニュージーランドの首相はトルコ大統領とともにガリポリ上陸85周年、アンザック(ANZAC)デーの始まりとなった日の記念式典に参加する。それはわれわれにとって追悼の日である。
今年はまた国際平和の文化年でもある。ニュージーランドでは、両親や祖父母が体験した戦争の直接的経験をもたない世代が成人となっている。かわりに、われわれは、通常国連がおこなっている平和のための、あるいは平和の強化に貢献する国際的努力に積極的に加わっている。他の国々の人々はもっと不幸な経験をしている。世界にはさまざまな小規模の戦争がひろがり、大量殺りく兵器の脅威に覆われている。ニュージーランド国民は平和をつくる側に立ってきたことを誇らしく思うが、われわれも紛争の危険をいまだに感じている。
この会議に参加しているわれわれは、戦争の歴史から地球的規模の平和の文化に向かう運動を継続できるだろうか。核不拡散条約によって、われわれにはその義務が課せられている。
先月の軍縮会議で私は、新たな核軍拡競争を防止し、軍縮に向けて行動し、平和を守るために、可能な機会をとらえなければならないと述べた。私は、すでに存在する非核地帯における締約国の成果を強化し、他の諸国政府のイニシアチブを基礎に築き上げることで、非核の南半球をつくるというビジョンを示した。核の道に背を向けて非核の国として国家的・地域的に安全な選択をした国々に私は敬意を捧げたい。私は、ジュネーブの会議が最近ほとんど成果をあげていないことを懸念しており、NPT再検討会議で前進が可能になることを期待していると率直に語った。
私は1999年12月の総選挙後誕生した、ニュージーランド新政府の軍縮・軍備管理大臣を務めている。ニュージーランド新政府は軍縮に向かって積極外交を展開するだろう。われわれは、この再検討会議は1995年の再検討・延長会議以後の前進をともに注意深く検討するときであると思っている。そしてわれわれが現在立ちむかっている問題に、新たに、ふさわしい理想をもって対応できるようにしなければならない。
この5年間をふり返ったとき、正しい方向に向かう積極的な歩みがみてとれる。
東南アジア、アフリカなどでの非核地帯の前進、南太平洋のラロトンガ条約の議定書、そして中央アジアで進行している動きなど、非常に確かな前進に拍手をおくるものである。われわれはNPTの新たな締結国を歓迎する。いまや187カ国がNPTに拘束されている。普遍的といえる状況に限りなく近づいているが、まだ十分ではない。
CTBT (包括的核実験禁止条約)はまだ発効してはいないが、多国間の軍縮にとって巨大な成果であった。先週ロシア下院がCTBTの批准を決めたことは大きな前進への一歩である。ニュージーランドが、国際的な監視体制に貢献する観測所の設置を通じて、CTBTに非常に実際的な支援をあたえることができてうれしく思う。また、ネットワークをつくり上げることで南太平洋の隣人たちと緊密な関係ができてうれしい。
われわれはいくつかの核保有国がより安全な世界のために努力していることを評価する。先週、ロシア下院がおこなったSTART II(第二次戦略兵器削減条約)の批准決定を非常にうれしく受け止めた。そのほかにも、米国・ロシア・国際原子力機関(IAEA)の兵器用核分裂性物質にかんする三者間イニシアチブ、イギリス政府の核兵器削減、フランスの南太平洋における核実験施設の撤去、中国のひきつづく先制不使用政策、など前進的成果がある。
付属議定書によってより厳しいものになったIAEAの保障措置が1995年に合意された。これらはわれわれ非核保有国が核不拡散条約のとりきめの中の該当部分を順守していることを検証する新しい基準を提案している。
しかしこれら達成されたなかには多くの欠陥が存在するものもあり、また以下のように多くの否定的な進展もある。
- 兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)にかんしては何も報告すべきことがない。
- 消極的安全保障(訳注:非核保有国に対し核兵器を使用しないという保証)については何の進展もない。
- 一部の非核保有国が条約上の義務を果たしていないという懸念が続いている。
- 核保有国のあいだに核ドクトリンがいまだに根強く残っており、核兵器のいわゆる「新たな正当化」によって新たな価値さえ生み出しつつあること。
- 米国大統領と政府による非常に積極的な公約をくつがえして、米国上院がCTBT批准を拒否したという明白な失敗。そしてCTBTに調印しない国がいくつかあり、まだまだ多くの国々が批准していないという事実。
- 貯蔵核兵器の老朽化への懸念および、進行中の近代化計画に対する懸念。
われわれはインドとパキスタンの核実験の事実を無視することはできない。1998年におこなわれた核実験は、われわれ全員がおこなった誓約に真っ向から挑戦するものであった。彼らがこの条約を破ったわけではないことは認める。ニュージーランドにとって、そしてここに参加している多くの国がそうだと思うが、これらいわゆる「新しい現実」にNPTを合わせるべきだという提案は驚くべきものである。ニュージーランドはそう考えない。この条約の規範に挑戦しようとする国々を中心として国際的不拡散体制をつくり上げるべきではない。
NPT締結国でないもうひとつの国イスラエルが、安全保障措置の下に置かれていない施設を稼動しているというのも実に懸念すべきことである。ニュージーランドは1995年の中東にかんするNPT決議を支持しており、今回の再検討会議が、その決議が完全に実行されるべきであるという明確なメッセージを打ち出すことを願っている。
核兵器の道を選択した国は、それによって自分たちの安全が脅かされ、大きな危険へ向かってすすもうとしていることに気づくだろう。ほかの国々はそれに気づき、その道に背を向けたのだ。
われわれはそうした難題には積極的に対処しなければならない。NPT、われわれのNPTは、核不拡散と軍縮に不可欠である。間違いなくこの再検討会議で、われわれは数少ない非締結国に条約に加わるよう呼びかけ、包括的核実験禁止条約(CTBT)やカットオフ条約(FMCT)をめぐる広範なとりくみに加わるよう呼びかけるだろう。
われわれは、それぞれのきわめて重大な国家的・集団的利益のために、たがいに誓約をおこなったのである。
進行中の作業を完成させることで、これら共通の利益を前進させることができる。つまり、CTBTの基準の強化、IAEA安全保障措置の追加議定書の採択、カットオフ条約交渉の開始、目的がより安全で平和な世界をつくることであり、締結した取り決めを全面的に守ることを全員が誓約していることに確信をもって、この条約の非締結国に対して加盟を呼びかけることである。
ニュージーランドはそのすべてをおこなう用意がある。今日参加したほとんどの国が同じ立場だと思う。だが、失敗を唱える声が絶え間なく聞こえてくる。
失敗の影がつきまとうのは、戦争の歴史から平和の文化にいたる道のあいだに、埋められていない隔たりがあるためだ。
NPTに照らしてみるなら、182の非保有国の行為のあいだにはそのような隔たりはほとんど存在していない。ほとんどすべての国が誓約を十分果たしている。締結国でない数カ国が、成功の基礎に対し難題を投げかけているが、そうした行為やあいまいな態度のなかにそのような隔たりが存在するのでもない。われわれが失敗を恐れる理由は、こうした課題をかかえるなかで、NPTの取り決めの核心部分である軍縮が成功しているという十分な確証が得られていないためである。これがわれわれの懸念の中心である。
核兵器廃絶を義務づけられた核保有国が、いまだにそれを「究極」の課題と表現するなど、あまりにもあいまいであることにも懸念をいだく。われわれは、核兵器が「無限の」将来にわたって安全保障上必要であると主張されていることに不安を感じる。核兵器と核物質の管理をおこなう機構に新たな圧力が加えられていること、集団的安全保障を支える新しい方法に広い支持を集めるのがだんだんと困難になっていること、条約のさまざまな違反を止められないことを懸念する。
条約を強化するために、締約国のうち五カ国だけがおこなうことに焦点をしぼるのであれば、五カ国がやってきたことを見過ごしたり、過小評価したりするのでなく、これからすべきこと、やれることを直視すべきである。
ニュージーランドは小国であり、諸国の共同体のなかではひとつの声にしかすぎない。しかし一国だけでやっていける国は存在しない。ニュージーランドはここでは核軍縮を求める新アジェンダ連合とともに、中道の協力者たちとともにしっかりと立ち上がっている。われわれはブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、南アフリカ、スウエーデンと手を結んでいる。ほかにも多くの国が、国連総会での決議を共同で提案した国のように、われわれの努力の側に身をゆだねている。そして新アジェンダ連合とわれわれの呼びかけを支持している。
この再検討会議でわれわれすべてが、NPTの誓約遂行に対する決意を新たにしようではないか。
締結国が1995年に支持した条約の無期限延長は、核兵器の無期限保有を許可したものではない。この仕事を完遂するためにわれわれは、核保有五カ国がこの会議において、自国の核兵器の完全廃絶に向け、新たな明確なとりくみに着手するよう要望したい。われわれは五カ国がNPTに調印したときの誓約を問題にしているのではない。われわれすべてが自国の誓約に拘束されているのと同様、五カ国もまたその誓約の達成に法的に拘束されている。しかし核保有国は、新たなエネルギーをもって、そして新アジェンダ連合が提起した現実的な措置を通じて、再検討会議における成功を保証することができるのである。
核保有五カ国すべてを核兵器完全廃絶につながる過程に参加させ、いまこそ二国間START(戦略兵器削減条約)のプロセスを前進させよう。これらの国々に政策を変更させ、戦術核戦力も含むすべての核戦力の配備をやめさせ、透明性を示し、軍縮への前進が決して後戻りしないような手段を講じさせよう。30年間の積極的な経験も消極的な経験もすべてふまえて前進することに合意しよう。
議長、各国代表のみなさん。われわれの追悼の日である今日、戦争から遠ざかり、平和に向かう次のステップに踏み出そうではないか。
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核不拡散条約(NPT)再検討会議における演説
アメリカ合衆国国務長官 マドレーン・オルブライト
(4月24日)
5年前、私たちはNPT条約の運命を決めようとここに集った。私たちは、NPTを恒久的なものとする二度とないチャンスに直面し、この欠かすことのできない条約をすべての国、すべての人、すべての時代のために守ることによって、私たちの子どもや私たち自らに対し、非常に貴重な贈り物をしたのである。
その贈り物にはいくつかの側面があった。まず、私たちは条約を無期限に延長することにより、将来核兵器を保有しないとの決定をしても不利にはならないとの各国の確信を強めたのである。
第二に、期限を条件と設定する危険性を拒否することによって、私たちは、個別の軍備管理の目標が一定の期日までに達成されなかった場合不拡散体制の全体が崩壊する、という事態を避けたのである。
最後に、不和を生じる採決によらないですべての決定に達したことにより、私たちはこの条約の強さを示し、その目標達成のための正しい筋道をつけた。そしてこれまでの5年の間に、新しく9カ国の加盟があり、NPT体制に加わっていないのはわずか四カ国となった。
1995年の私たちの賢明な一致した決定は、NPTが依然として私たちの不拡散と軍縮の努力の中心に位置することを保証した。これからの4週間は、その中心の保持を確認する機会となる。そして、私たちのお互いの努力でNPTをさらに強くすることができるのである。
今回の再検討では3つの重要問題が焦点となる。すなわち、核拡散を防ぎ、核軍縮を前進させ、原子力の平和利用の協力を拡大するために、この条約がいかに機能するかということである。これらの分野のそれぞれにおいて、私たちは少なくとも「逃したチャンス」を指摘することができると私は自信をもって言える。これほど複雑で、重大で、それぞれの思いも熱い人間の問題は、完璧にはなかなか行かないものである。
しかし結局のところ、これまでの実績を公平に評価すれば、NPTはその役目を果たしていると米国は考え、したがって私たちに今必要なのは、進路を急激に変更することではなく、ここに集まった各国のさらなる努力の継続、誠意、忍耐強い政治的な意志だと考える。
NPTの成功は、たとえば原子力平和利用の促進など、ほとんど疑いの余地がない。二カ国間で、またIAEA(国際原子力機関)を通じ、各国は協力して癌治療、幼児の健康改善、電力需要の充足、食料生産の増加、乏しい清潔な水の有効利用に努めている。
NPTによって促進されている原子力の平和利用に値札をつけることはできない。ただ、それは、この分野におけるNPTの価値を浮き彫りにしている。
この条約の核兵器の拡散防止能力についてはもっと実質的な問いが突きつけられている。インドとパキスタンが1998年5月におこなった実験は、世界的不拡散体制に対する重大な挑戦であった。
しかしこれらの実験への世界の対応は、NPTとその力と強靭さ、それにNPTが打ち立てた地球的規模の規範を明らかにした。国連安保理決議1172号などで国際社会はひとつの明白な声を発した。それはこの条約が、核兵器の能力の獲得を、国家の誇りをかけた行為から国際的な警戒を呼ぶ行為へと変えたからである。
この条約のなかに、新たな核保有国にかんする条項はないし、今後そのような条項が設けられることもないであろう。それは私たちが、旧ソ連から南アメリカ、南アフリカにいたるまで、NPTに加盟することによって自らの安全保障と不拡散の目的を強化するという賢明な決定をしたどの国家の信義をも裏切らないからである。私たちは歴史の潮流がこの条約の方向に流れ続け、核拡散でなく核兵器廃絶に向かってすすむことを望む。
そのために、米国は、南アジアなどでもNPTへの世界的支持を今後とも追求し続ける。
中東関係においては、私たちは1995年の決議において、私たちそれぞれがこの地域で形成されることを望む大量破壊兵器のない地域の創設に向けた見通しをよくするのは、より広範な和平プロセスである、と認識した。そして私は、イスラエルとその近隣諸国が平和を達成するようクリントン大統領がたゆまぬ努力を続けるのを見てきた。よって、米国は今年の会議において、中東における普遍的NPT加盟に注意が向けられることに反対はしないが、それは、域内かつ域外のほかの重大な問題との公平さとバランスをとっておこなわれるべきである。
最後に、キューバは南北アメリカで唯一NPT体制から外れている。しかもその指導部は、この歴史上最も広く共有された軍備管理合意に参加すれば、対キューバ禁輸はおこなわれないのだ、ということを知っている。
もちろん、すべての国がNPTに加盟したからといって、すべての国のNPT順守が保証されるわけではない。そして平和への寄与として、私たちが最も評価するのは、実際の具体的行動であって、紙の上の約束ではない。
だからこそ米国は、ごまかしを抑止し、探知するためのIAEAの新しい保障措置を強く支持するとともに、すべての締約国にその採用を求めるのである。だから私たちは、イラクがNPTの義務や国連決議の順守条件を自ら決めるようにさせてはならないと主張し続けている。それゆえ私たちは、北朝鮮とのあいだに生れた部分的前進を歓迎するのであり、NPT下の査察で、この国の疑惑の活動が初めて明るみにされたことを喜んでいるのである。
しかしながら多くの方面で、この条約下における一番厳しい疑念が、核保有五カ国ははたして核軍縮実現に向けNPT第6条のもと十分なことをしているのだろうか、という点に向けられていることを私たちも承知している。米国は軍備管理に背を向けているという懸念がある。そして、世界から核兵器をなくす動きを速めるために「新しいアジェンダ」をという声が一貫して続いている。
確かにこれらの意見は善意のものであり強固なものではあるが、ここで事実を注意深く見ておくことにしたい。
まず、ロシア下院がSTART II(第二次戦略兵器削減条約)を批准したことにより、ニカ国間の戦略的兵器削減交渉に未来はないとする考えの根拠は弱まった。米国の上院も四年あまり前、圧倒的多数でこの条約を承認し、その削減過程を支持したのである。
一部の人たちは、ロシアがSTART IIとCTBT(包括的核実験禁止条約)に対して最近とった措置は諸刃の剣だと考えている。しかし私たちは、ロシア政府からの朗報を歓迎する。このような「軍備競争」を米国は望んでいる。
ミサイル防衛が引き起こしている懸念にかんしては、クリントン政権が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約と戦略的軍備管理を妨害しようと考えているのなら、こんな不思議なやり方もないはずである。公開の場で、慎重を期して、米国議会との協議だけでなく、同盟国やそのほかの国、なかんずくロシア、中国を含む国々とも長い時間をかけて話し合いをした上でのことだからである。
ABM条約が調印されてからおよそ30年のあいだ、世界は劇的に変化した。この条約は以前にも修正されたし、再び修正して戦略的抑止体制外の第三国からの新たな脅威を反映させることもできないはずはない。
しかも私たちが言っているのは、せいぜいミサイル10発に対して防衛できるシステムであることを忘れないでほしい。ロシアの抑止力を弱めることがその意図ではないし、そのような結果をもたらすこともない。
今後ロシアとの戦略的交渉がどこに向かおうと、冷戦終結以来、私たちは、核軍縮ですでに顕著な前進を達成している。START IIのもと、米国とロシアは、配備済みの戦略核弾頭を冷戦時の水準からおよそ三分の二削減することを誓った。そして1997年には、最高時から8割を削減するSTART IIIの枠組みに合意した。
ロシアがSTART IIを批准したことで、私たちのSTART IIIへのとりくみに新たな弾みがつくであろう。クリントン大統領とプーチン大統領が最近発表したように、戦略的削減の継続に向け前進することが、間近に迫る両大統領の首脳会談の重要な目標のひとつになっている。
米国とソ連の核兵器は、40年にわたって、量を増やし、性能を高めた。11年近く前のベルリンの壁崩壊以来、米国だけで自国核兵器のおよそ6割を解体した。簡単な算術と常識で分かることだが、まさにNPT第6条の要求を実行しているSTARTの過程を放棄することは、愚の骨頂である。
算術と言うと、米国の納税者は、旧ソ連の核軍縮にかかる多くの費用のうち、すでに50億ドルあまりを提供している。これらの脅威削減協力計画は真の軍備管理にあたる。ミサイルの廃棄、核分裂性物質の安全管理、核の専門家の平和的分野での雇用、兵器用プルトニウム生産の停止をおしすすめている。私たちはこれを世界の安全に対する賢明な投資の継続と考える。そして私たちはこれをNPT第6条における米国の「帳簿」のいわば貸し越し勘定とみなしている。
私たちはまた、1991年からNATO内の核兵器の数を85パーセント削減するために、同盟国諸国との協力もしてきた。核兵器が私たちの防衛態勢に果たす役割は、冷戦の到来以来、今が一番小さくなっている。
このような成果はほかにもまだたくさんある。時間がないためここでは言及できないので、それらを今日発表する冊子にまとめてある。米国が第6条の義務をどう果たしているのかにかんするものである。みなさんにお勧めする。そこで語られているのは、ほとんどの人が思っている以上に説得力のある話だからである。
クリントン大統領がこの冊子に「前書き」を寄せ、次のように述べている。
「米国は、どの国よりも多くの時間と努力と金を、核の軍備管理と軍縮に注いできた。私はこれが今後も継続することを確信している。この新しい千年紀を迎えて、私たちみなが、核兵器のない世界を達成する誓いを新たにすべきだと思う。米国はこの目標への誓約を今後も維持するし、その究極的な達成に向かってたゆまぬ努力を続けるものである。」
米国の大統領がこう述べているのである。そしてこれが、私たちみなが共有する目的に向けた米国の政策なのである。
最後に、米国と包括的核実験禁止条約(CTBT)について手短かに述べる。クリントン大統領は元統合参謀本部議長のジョン・シャリカシュビリ将軍を任命し、CTBTについての上院の懸念に対する最適な対応について彼の助言を受けることで、CTBTへの支持を固め、最終的な批准をめざしている。
一方、私たちは、実験を再開しないことを明らかにし、ほかの国々にも同じようにするよう、そしてCTBTの調印・批准をおこなうよう呼びかけている。そして、CTBTの準備委員会に対する私たちの協力と支持は継続されてきた。
こうした理由により、私は大統領と同じく、米国がCTBTを批准し、核軍拡競争が20世紀の遺物となって、21世紀に悪夢が再現するようにならないことを確信しているのである。
米国は核軍縮にかんする国際的な合意に加わっている。私たちも、核兵器のない世界への歩みがのろいことに歯がゆさをおぼえている。しかし私たちは、各国が非現実的で時期尚早の措置を要求すれば、NPTを損ない、みんなの大義を後退させることになるとも分かっている。
残念ながら、私たちの誰も、完全な核軍縮が可能な状況を一夜にしてつくり出す力をもっていない。しかし、それぞれの地域で、それぞれのやり方で、それぞれが貢献できるのである。
私たちは、共通の目的地への道をよく知っている。平和を築く困難な作業は、一歩一歩辛抱強く歩みをすすめていかなくてはならない。それは結局、カットオフ条約(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)のように、なじみのある実現可能な措置をとるということであり、5年前のNPT会議できわめて賢明に指し示された進路を外れないということである。
これこそ私たちみながともに歩むことのできる道である。そして私は、力を合わせれば、このかけがえのない条約に助けられ、私たちみなにとってより安全でより安定した世界を築くことに成功すると確信している。
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核不拡散条約締約国再検討会議への声明
ロシア連邦外務大臣 イゴール・S・イワノフ
(4月25日)
ロシア連邦大統領ウラジミール・V・プーチンが核不拡散条約再検討会議の参加者のみなさんにあてたメッセージを読み上げさせていただく。
「核不拡散条約(NPT)締約国第四回再検討会議に参加されている方々に心からの挨拶を送りたい。この会議は、条約の無期限延長という歴史的な決定の採択以来、初めて開かれる会議である。
核不拡散条約は、その有効性の試練にも耐え、30年の歴史をつうじて、核拡散の脅威を封じ込める最も重要な手段としての役割を果たしていることが確認されてきた。条約の履行は、地域および世界の安定の強化に貢献してきた。この条約は、核軍縮に向かうくつがえすことのできない前進の基礎を築き、核戦争勃発の危険性を減少させた。
ロシアは、核軍縮の義務を果たすべく努力し、この数十年に確立された戦略的安定と核不拡散体制の維持、および戦略的攻撃兵器のさらなる削減および制限の基礎として、軍縮にかかわる条約の定めた条件のもとで、ひき続きその責務を順守していくものである。
不拡散条約の締約国としてまたその受託国としてロシアは、NPTを、検証能力をもった安全保障体制を支える主力のひとつと考えている。NPTは、核兵器拡散防止のための基本的しくみである一方、原子力の平和利用における国際協力をすすめる保証ともなっている。
われわれは、この会議を非常に重視している。この会議には、条約および国際的不拡散体制全体をさらに強化することが求められているからである。
私は、参加者の方々が、この会議で成功をおさめられ、建設的な作業をおこなうことを期待するものである。 ロシア連邦大統領代行 V・プーチン」
核不拡散条約は、軍備管理および軍縮にかんする諸協定の地球的な体制を支える柱のひとつとなっている。この10年間、国際社会が、核による世界的な破滅の脅威をなくすという、国際的な安全保障の中心問題の解決に成功してきたのは、この体制のおかげである。
新しい国際関係システムの基礎が築かれようとしている世紀の変わり目に、こうして不拡散条約の再検討がおこなわれるのは、象徴的である。この条約によって確立された核不拡散体制の将来は、この体制がどのようなものになるかに大きく左右される。だからこそ、世界の安全保障と戦略的安定が現在直面している問題をひろく視野に入れ、この手段の有効性を評価する必要がある。
ウラジミール・プーチン大統領が最近決定したロシア連邦の国家安全保障概念では、核不拡散体制強化を主な優先課題としてかかげている。われわれは、この条約の維持と強化こそが国際社会全体の利益に役立つという強い信念をもってこの会議に臨んでいる。
こんにち、この課題へのとりくみは困難な状況におかれている。それは主に、国際的な安全保障と安定に対し、重大な脅威が新たに生じていることに関連している。地域紛争、国際的テロリズム、好戦的な分離独立主義によって、核兵器をはじめとする大量破壊兵器とその運搬手段が拡散しやすい状況が生み出されているからである。
既存の戦略的安定システムを破壊しようとする傾向や、他国の利益を犠牲にして国家の安定を築こうとする企て、国連憲章および国際法の基本原則に反した武力行使権の乱用なども、同様に危険である。これらは、まさに地球上で新たな軍拡競争を引き起こす直接的な原因にほかならない。
端的には、いま世界は大きな岐路にあると言える。核兵器の不拡散と制限の分野で積み重ねてきた成果を、共同の努力で守りぬき、さらに拡大していくのか、それとも、軍事独裁者が唯一の「規制者」となる、混沌とした制御不能な国際情勢の進行を現実にはびこらせるのか。私は後者の道は、誰の利益にもならないと考える。
したがって、私たちの核不拡散体制強化の努力を、すべての国家および地域の相互信頼と平等な安全保障に基づいた、公平で民主的な世界秩序の建設と有機的に調和させることが、きわめて重要である。そうしたシステムの枠内でこそ、核不拡散条約の目標と潜在力は、真に効果的に実現できるからである。
ロシアは、核不拡散条約第6条の義務の完全履行にとりくんでいる。われわれは、核保有五カ国が、作為的に遅延をはかったり、不必要に急いだりすることなく、歩調を合わせて、段階的に核軍縮をすすめていくことを追求する決意である。
数日前、ロシア連邦は、この分野で最も重要な一連の協定、とりわけロ米間のSTART II および1997年のABM協定を批准した。これらの協定の履行は、核軍縮に向けた重要な一歩となるであろう。その重要性は、ロシア、米国両方の戦略攻撃兵器が、全体として1990年のレベルから約三分の二も削減されることを指摘するだけで明らかである。
さらに、ロシア連邦下院は先週、包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准した。この条約は、核兵器の質的強化への道を確実に封じることを目的としている。繰返しになるが、われわれは、これに関連する能力をもつすべての国家が条約に加盟することを希望している。これらの国がCTBTを批准することは、この条約の発効に決定的に重要である。
われわれは、よく次のような質問を受ける。最近おこなわれた大統領選のあと、ロシアは外交政策をどのように展開するのか。 ロシアの軍事政策における核の位置づけはどうなるのか。 これらの質問について、私がいま概要を説明した諸決定は、国際社会に対する明確なロシアの意思表示となるであろう。
ロシアはまた、以前に調印した戦略核兵器削減協定もひきつづき履行している。START Iに従って、われわれはすでに2,000発以上の弾道ミサイル、950基以上の陸上および海上ミサイル発射装置、約30の原子力潜水艦、約80の重爆撃機を廃棄した。START Iに定められた削減量は、すべて実施されれば、ロシアおよび米国の戦略核戦力の約40パーセントに相当することになる。
1997年5月27日にロシア大統領が戦略核兵器の標的解除にかんして発表した声明も、核の脅威をなくすための重要な一歩であった。現在、ロシアの弾道ミサイルはすべて、いわゆる「ゼロ」フライト・ミッション(ゼロ飛行任務)に指定されている。これは、ロシアのミサイルの無許可発射を防ぐもうひとつの確実な安全装置である。
さらにロシアは、一貫して10種類の戦術核兵器にかんする一方的イニシアチブを実施してきた。これらの兵器は、水上艦や多目的潜水艦からも、地上発進の海軍機からも完全にとり外され、貯蔵施設に集められ、保管されている。また海上発射の戦術ミサイルおよび海軍機が使用する核弾頭全体の三分の一が削減された。戦術ミサイル、砲弾、核地雷の核爆弾の解体も完了しつつある。さらに、対空ミサイルおよび重力核爆弾の核弾頭の半分を解体した。
われわれは、核兵器のいっそうの大幅削減を実施する用意がある。1997年3月、ロシア、米国の両大統領は、2007年末までに核弾頭のレベルを2,000〜2,500発まで下げることに合意した。しかし、われわれはこれで終りとは考えていない。ロシアは、両国の核兵器を1,500発レベルまで削減することを検討する用意がある。
このように、いまや国際社会の財産のひとつとなっている核軍縮の分野において協定とイニシアチブを完全に履行するだけでなく、質と量の両面で新たな進展の可能性が大きく開かれている。ロシアがまさにこの目標達成に向かってとりくむ意志があることを、私は責任をもって言明する。
同時に、世界の戦略的安定の基礎、事実そのかなめ石である1972年の弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約が損なわれれば、この歴史的な機会は失われるかもしれないことを認識する必要がある。残念なことに、この条約が禁止しているABMシステムを全土に配備するという米国の計画のために、その可能性はきわめて現実性を帯びている。
われわれはこれに対して、立場を明確にしなければならない、戦略攻撃兵器のさらなる削減は、ABM条約の存続の前提がなければ、検討できないということである。この条約の歴史的な役割は、安定性と透明性をもって戦略攻撃兵器を大幅に削減する道を開いたことにある。
ご承知のように、現在の軍備管理協定の体制は、複雑で非常にもろい構造になっている。主要な要素がひとつでも弱まれば、この体制全体が不安定になる。そのうえ、グローバル化を背景に、これらの要素の相互依存性は劇的に強まっている。したがって、ABM条約が損なわれれば、過去30年間に締結された軍縮協定全体が崩壊してしまうであろう。そのために、核兵器をはじめとする大量破壊兵器とその運搬手段にかんする不拡散体制が崩壊する恐れも大きくなる。
だからこそ、ABM条約を現在の形のまま、修正を加えずに順守することが、不拡散条約第6条に従って核軍縮交渉をさらにすすめる前提条件となるのである。また、このことが、すべての国家および国際社会全体の安全保障上の利益に影響をおよぼす。この重大な事実に対する認識度は、関連する国連総会決議の投票結果にはっきりと示されている。
われわれは、ミサイルの脅威および拡散には、ABM条約に違反することなく対処できるし、またそうすべきだと強く確信している。ロシアは、米国ともほかの諸国ともこの問題について広範な協議をおこなう用意がある。
全世界的なミサイルおよびミサイル技術不拡散管理システム(GCS)を確立しようというロシアのイニシアチブは、まさにこの目的に役立つものである。これは、2000年3月16日に開かれたGCSにかんするモスクワ国際専門家会議で提唱された。私は、広範な自由意志に基づくこのシステム開発への段階的なアプローチこそが、正しい方向へすすむ一歩になることを確信している。
このように、ABM条約崩壊を防ぐ対案は現実に存在し、明確な形をとりつつある。それはさらに大幅な核兵器の削減と、ミサイルおよびミサイル技術拡散の脅威に対する共同行動を基礎としている。ほかでもないこの選択肢を選ぶことは、不拡散体制の運命だけでなく、国際情勢の発展に対して明るい見通しを守るためにきわめて重要である。
ロシアは、核不拡散条約をさらに強化する責任を十分に認識し、この課題が核保有国のみの努力の範囲を超えているという前提で、これにとりくんでいる。これは、締約国すべてに課せられた課題である。
この条約の普遍性を保障することは、ひきつづき緊急の課題である。核不拡散体制にいまだ加盟していない国を組み込む努力を積極的に続ける必要がある。
世界のいくつもの地域で非核地帯が設置されていることをわれわれは歓迎する。これは、核不拡散体制の発展と強化にとって意義ある貢献である。非核地帯を初めて設置したトラテロルコ条約の調印から30年余のあいだに、加盟国の数は何倍にも増え、現在、100カ国を超えている。
非核地帯の設置によって、加盟諸国は地域と世界の安全保障の強化および相互信頼と協調の高まりに貢献している。
ロシアは非核地帯にかんする国際協定の大部分に加盟している。ロシアが自国領土外に核兵器を置いていないという事実は、ロシアが非核地帯制度の強化に意義ある貢献をしていることの例証である。われわれは、まだロシアの例にならっていないほかの核保有国にそうするよう再度要請するものである。
もうひとつの緊急課題は、核兵器用の核分裂性物質の製造禁止である。ロシアは、兵器級プルトニウムの製造施設の操業をすべて中止する計画を実施し、兵器への使用目的でまだ製造されているプルトニウムの使用を自制している。また兵器級ウランの製造は、数年前に中止している。われわれは、この問題についての交渉機関として設置された軍縮会議(CD)の小委員会の討議を、できるだけ早期に開始するため積極的に努力する。
同時に、軍縮会議のしくみ自体も改善する必要がある。率直に言って、われわれは、軍縮会議の将来に深刻な懸念を抱いている。軍縮会議をかつて支配していた協調の雰囲気に代わって、さまざまな問題を関連づけようとする諸国の意志が強くなっているからである。したがって、軍縮会議の議論が2年連続して何ら実質的な進展をみていないのは、たんなる偶然ではない。ここでもまた、政治的な利己主義か、それとも共通の目標にかかわる直接的な利益の放棄かの選択が迫られている。私は軍縮会議で良識が支配的となり、円滑で建設的な作業が再開されることを望むものである。
核不拡散条約は、エネルギー、医療、科学研究などを含む原子力の平和利用で、今後たゆみなく国際協力をひろげていくための環境づくりにも重要な役割を果たしている。ロシアは、こうした協力をさらにひろげる用意がある。たとえば、われわれには、途上国の利益のために、IAEA(国際原子力機関)をつうじて、あるいは、特に二国間での、核不拡散の目標に完全に合致した平和的な核燃料サイクル技術の共同開発にかんする具体的提案がいくつかある。
ロシアは、IAEAの保障措置を、全締約国が不拡散条約を順守すること、および無許可の行為の見逃しや未調査の防止を保障する効果的な管理手段として、つねに支持してきた。IAEAの保障措置を技術的な措置で補えば、核不拡散体制の管理装置になるとともに、非常に強力な信頼醸成装置にもなるであろう。
30年前、国際社会は、核不拡散条約を締結することにより、傑出した人道主義者のマーティン・ルーサー・キング牧師の言った「核の地獄へとつながる核軍拡競争のはしごを各国が次々に登っていくという皮肉な概念」を拒否した。私は、この会議が、条約の無期限延長を確認することにより、不拡散条約を21世紀における国際的安全保障の不可侵の原則のひとつにするというわれわれの決意をはっきり示すことを信じている。
国際情報資料 13 もくじ
核不拡散条約締約国2000年再検討会議への声明
中華人民共和国政府代表団団長 シャ・ズカン大使
(4月24日)
新しい千年紀の始まったいま、われわれは将来への希望を抱くとともに、両肩に重くのしかかる責任を深く認識している。人類の歴史が発展するなかで、科学技術の進歩や知識の普及は、われわれを無知と後進性から救い出し、文明と進歩を生み出した。しかし、繁栄と幸福に向かうその途上で、人類は何度も戦禍に苦しんできた。20世紀におこなわれた2つの世界大戦は、血と涙の記憶を人類に残した。40年以上にわたる冷戦期間中、東西ブロックの対立によって人びとは戦争の脅威におびえながら暮らさなければならなかった。こうした苦い経験から、平和と安定を求める人びとの気持ちはますます切実なものとなっている。永遠の平和と持続可能な成長を達成することは、世界の人びとに共通する願いである。
冷戦終結後の一時期、国際情勢にいくぶんの緊張緩和が見られた。しかし、世界平和はいまだ達成されていない。最近では、世界の安全保障に対する不安定要因や不確定要因が増え、冷戦の終結以来最も深刻かつ複雑な変化が世界に生じている。
注意すべきは、冷戦が終結しても、冷戦的思考はいまだに残っているということだ。軍事同盟は強化され、覇権主義とパワーポリティクスが折りにふれ姿を現す。少数の国が、いわゆる「人道的な介入」を唱導し、その名のもとで国家主権を侵害している。国連を経由せず主権国家に対して武力行使までするありさまだ。このような行為は、世界の平和と安定をひどく損ない、国際法および国際関係の規範をはなはだしく踏みにじるばかりでなく、2つの世界大戦後に形成された国連の集団安全保障体制の根幹にかつてない困難を生じさせている。
戦略的に優位性を高め、自国の絶対的な安全を確立するため、最新鋭の弾道弾防衛システムの開発、配備、拡散をすすめ、それによって世界の戦略的な均衡と安定に重大な脅威をあたえている国がある。
いくつかの地域では、民族分離主義勢力や過激な宗教集団が勃興し、地域の平和を脅かすとともに、世界の安全保障に対する新たな不安定要因となっている。
こうした状況は、国際関係の軍事要因を増加させ、国家間の安全保障を悪化させるばかりでなく、国際的な軍備管理における信頼と協力をはなはだしく損なう。冷戦終結後に軍備管理と不拡散の分野に生じた積極的な勢いは大幅に後退し、国際的な不拡散体制は繰り返し重大な打撃を受けている。軍縮プロセスの先行きには大きな懸念がもたれている。
今回の再検討会議は、こうした背景のもとで開かれている。このきわめて重要な会議の結果は、世界の不拡散体制と核軍縮プロセスの先行きに直接の影響をおよぼす。したがって、この会議を確実に成功させることは、この場に集う全加盟国の責務である。再検討会議の目的は、過去を評価し、将来の計画を立てることだ。ここで、軍備管理と軍縮をめぐる現在の国際情勢にかんがみ、核不拡散条約(NPT)の3つの目的、すなわち核不拡散、核軍縮、原子力の平和利用について、中国代表団の立場を説明したい。
NPTの主要な目標のひとつは、その名が示すとおり、核兵器の不拡散である。1995年、われわれは条約の無期限延長を合意した。これは、核兵器の拡散防止、核軍縮プロセスの推進、核兵器のない世界の実現における重要な一里塚となっている。しかし、残念なことにそのわずか3年後、まずラジャスターン(インド)で、次にバルチスタン(パキスタン)で核爆発が起こされ、国際的な核不拡散体制の将来に暗い影を投げかけた。これに対し国際社会は強く反応した。国連の安保理決議1172は、南アジアの核問題の解決に向けて正しい原則と方向を定めている。しかし残念ながら、実質的な進展はほとんど見られず、決議1172はいまだ履行されていない。
この南アジアの2カ国が、「新たな核実験」はおこなわない、または「新たな核実験を先にはおこなわない」、そして「包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効を妨げない」と宣言していることにわれわれは注目している。この約束を尊重することを2カ国に強く求める。同時に、決議1172が、南アジアの核問題について国際社会に共通する意志を反映していることは強調すべきである。そのために、決議の権威と完全性を守らなければならない。2カ国は、この決議を早期に履行すべきである。
中国はNPT締約国として、核不拡散に向け真摯で責任ある態度を一貫してとってきた。中国は、ほかのいかなる国へのいかなる形態の核拡散にも断固として反対する。中国は核拡散を提唱、奨励または関与しない政策を厳守する。われわれは、ほかのいかなる国の核開発に対しても、IAEAの安全保障措置の範囲外にあるいかなる原子力施設に対しても援助をおこなわない。中国は、輸出品は平和目的にのみ利用する、IAEAの保障措置に従う、中国の許可なしに輸出品を第三国に移転しない、という核関連輸出について3つの原則を順守している。核関連輸出の管理体制を強化および改善するために、中国政府は、1997年9月10日に「核関連輸出の管理規制」を、1998年6月1日に「核の(軍民)両用利用品目および関連技術輸出規制」を公布した。また、1997年10月に、国際的な核関連輸出規制システムであるザンガー委員会に参加した。さらに、IAEAの安全保障措置の効果および効率を上げることを目的とした「93+2」議定書の交渉にも参加した。1998年12月31日には、「中国における保障措置適用のための中国・IAEA協定」の追加議定書に署名した。
科学技術の進歩、グローバル化の進行、情報時代の到来によって、核拡散の防止はますます困難になるであろう。封鎖や抑止といった従来の方法だけで不拡散の目標を達成できないことはすでに実証されている。この新たな状況の下で核兵器の拡散を防止する効果的な方法は何か。その答えは国際社会全体で出さなければならない。中国の見解としては、不拡散問題に対処するために次の3つの分野でいっそうの努力を尽くす必要がある。第一に、安定、協力、相互信頼に基づく世界の安全保障環境を確立することである。これは、核兵器の拡散を防止する基本的な保証となる。周知のように、いくつかの国が大量破壊兵器の開発に莫大な財源を注ぎ込むのは、主に、安全感の欠如と、自衛の効果的な方法を探す必要からである。良好な国際関係を築き、国際紛争の平和的解決を追求し、国際社会の全構成員の安全を保障すれば、大量破壊兵器を獲得しようとする諸国の動機を取り除くのに役立つだろう。第二に、核不拡散の分野における二重基準や複数基準を破棄することが、核不拡散の成功には欠かせない。核不拡散の目的は、すべての国家の安全強化でなければならない。NPTの履行を唯一の規準とすべきである。限られた国々の安全保障上の利益にのみ不拡散を利用すべきではない。ましてや、一国の好き嫌いを判断基準とすることは絶対にしてはならない。さもないと、核不拡散体制の信頼性は崩れ、広範な支持が失われる。第三に、集団的安全保障の枠内で国際的な統一、協力、共同作業の努力を強化することが、大量破壊兵器の拡散を解決する唯一の正しく効果的な方法である。どれほど強力な国家であっても、ほかの諸国の協力なしに自国とその同盟国の力だけで不拡散の目標を達成することはできない。いかなる単独主義的傾向や行動も、不拡散の努力の中心的な流れに逆行する。
核保有国は核軍縮に向け誠実に義務を果たす必要がある。このことは、国際的な核不拡散体制を維持する保証として欠かせない。非核保有国によって無条件に合意されたNPTの無期限延長は、核保有国が核兵器を無期限に保有する権利を認めたものでは決してない。
核兵器の誕生と開発は、技術進歩によってのみもたらされたわけではない。むしろ、国際的な安全保障環境と各国による安全保障の認識にこそ大きな原因がある。核兵器は第二次世界大戦の終盤に誕生し、東西ブロックの対立と不信が顕著な冷戦期にその開発がすすめられた。1980年代末から1990年代初頭にかけて、冷戦の終結、世界の緊張緩和、主要国間の関係改善がすすみ、それとともに国際的な核軍縮プロセスにも重要な進展が見られた。米国とロシア(旧ソ連)は、INF条約、STARTT、STARTUなど、核兵器削減にかんしていくつかの条約を締結した。何年にもわたる国際社会の尽力を経て、ついに包括的核実験禁止条約(CTBT)にもたどり着いた。1990年代以降、国際的な安全保障情勢の変化により、核軍縮プロセスは再び行き詰まっている。米国とロシアの二国間核軍縮諸条約は批准も実施もなかなかすすまず、米国の上院はCTBTの批准すら拒否した。
最近、ロシア連邦下院が、数年間の紆余曲折を経てSTARTU条約を正式に批准したのは喜ばしいことである。われわれは、この条約の早期履行とSTARTV交渉の開始を期待する。核軍縮のプロセスは包括的で逆行し得ないものであるべきだというのが中国の見解だ。旧式の核兵器だけを削減し核戦力そのものは拡大したり、配備する核兵器の数を削減しその分をいわゆる「非現役の予備」としていつでも再配備できるように保持または更新すらしたのでは、とうてい真の核軍縮とは言えない。
全世界の戦略的な均衡がなければ地球規模の核軍縮は達成できないということを、特に強調する必要がある。江沢民主席は、昨年3月の軍縮会議で、いわゆるミサイル防衛プログラムは「間違いなく国際的な安全保障と安定に大きな否定的影響をあたえ、新たな地域で新しく一連の軍備競争を引き起こし、それによって、核軍縮と核不拡散の国際的な努力をひどく妨げるか無力にしてしまう」と指摘した。江沢民主席はまた、こうした危険な情勢を回避するために必要な手段をとるよう国際社会に強く訴えている。
ロシア連邦下院はSTART IIを批准したときに、米国が1972年のABM条約を侵害すれば、ロシア政府はSTART IIだけでなくほかのすべての軍備管理協定を撤回することも辞さないと宣言した。歴史が示しているように、1972年に締結された弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約は、全世界の戦略的な均衡と安定のかなめ石として、米国およびロシアが貯蔵核兵器を削減するために必要な安全保障上の枠組みを提供し、二国間核軍縮プロセスの継続的な進展を保証するうえで欠かせない重要な役割を果たした。某軍事大国は、過剰殺りく力をもつ膨大な核軍備を有しているにもかかわらず、経済、科学、技術における圧倒的な優位を頼みに、自国の絶対的な安全保障を求めて全土ミサイル防衛(NMD)システムの開発を強力に推しすすめている。絶対的な安全保障などというものが達成可能かどうかはともかく、このような行動は、核兵器の増強にも等しく、ABM条約の統合性と生命力、および全世界の戦略的な均衡と安定をはなはだしく損なうばかりでなく、米国とロシアの二国間核軍縮の基礎を突き崩し、国際的な核軍縮プロセスを妨げ、したがって核不拡散の前提条件と基礎を打ち砕くものである。ロシアによるSTART IIおよびCTBTの批准は、核軍縮プロセスに希望の光をもたらした。われわれは、関係諸国がこの機会をとらえて軍備管理と軍縮を正しい軌道に戻すことを望む。冷戦終結後の10年間をふり返れば、この道が実現可能であることは明らかだ。
中国は核兵器の用途を自衛に限定している。それゆえ、核兵器の開発にはつねにできるかぎりの制約を課してきた。核兵器を保有した最初の日から、中国は無条件に先制不使用を宣言している。また、非核保有国や非核地帯に対して核兵器の使用または威嚇をおこなわないことも無条件に約束してきた。中国は、核軍縮にかんするみずからの責務を一度たりとも回避せず、核兵器の完全禁止と完全な解体を主張し続けてきた。CTBTに対しても誠心誠意をこめて交渉に参加し、最初の加盟国のひとつとなった。中国政府は、審議および批准のため、条約を全国人民代表大会に正式に提出したのである。ここで、あらゆる軍備管理交渉、特に核軍備管理交渉に参加する際に中国が基本的な前提条件としている2つのことを強調しておきたいと思う。ひとつは、これらの交渉および条約または協定が全世界の戦略的な均衡と安定を脅かしてはならないということ、もうひとつは中国の安全保障上の利益を害してはならないということだ。国際社会の強い反対にもかかわらず、某国は全世界の戦略的安定を崩しかねないNMDの開発に傾注している。国際的な安全保障環境で最近起こったこれらの大きな変化が、中国の軍備管理政策に影響をおよぼすことは避けられない。
兵器用核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約(FMCT)は、核拡散の防止および核軍縮の促進に役立つだろう。この理解に基づき、中国は交渉を通じてFMCTの締結を支持した。しかし、中国の見解としては、某国が宇宙空間を拠点基地とするミサイル防衛システムの開発を決定すれば、宇宙空間の軍事利用を防止することのほうがFMCT交渉よりもいっそう緊急の課題となる。したがって、ジュネーブの軍縮会議(CD)では、合理的で釣り合いのとれた方法で、宇宙空間、核軍縮、FMCTという少なくとも3つの主要な軍縮問題をあつかうべきである。実際、軍縮会議でこれら3つの問題を均等にあつかえるかどうかは、たんなる手続きの問題というよりも原則の問題だ。いま問われているのは、多国間軍縮交渉の唯一の場である軍縮会議で、各国の正当な安全保障上の懸念を平等にあつかえるかどうかである。軍縮は、すべての国家の共通の安全保障の強化に役立てるべきであって、少数の国家が自国の軍事的優位を強化したり他国を弱体化または抑止したりするための道具にすべきではない。
現在、軍備管理の分野で核の透明性が取り沙汰されている。中国は、核兵器の完全禁止と完全な解体に向けて努力するうえで肝要な要素として、正当な理由があれば一定のガラス張り処置は必要であると考える。しかし、現在の状況では、これらの透明性措置を講じる時間と条件が熟しているかどうか、また、それが期待どおりに相互信頼を強化できるかどうかは、考慮を要する問題だ。核保有国の核戦略や種々の核兵器はそれぞれ大きく異なっているため、同時に同じ透明性措置をとるよう求めるのは不合理である。また、軍事分野で国家が受容できる透明性の度合いは、その戦略的安全保障環境に直接にかかわってくる。こんにち、他国の内政に暴力的に干渉し、何がなんでも武力に頼ろうとするある超大国が、圧倒的な先制核攻撃能力を増強し続けている。一方、その国は、小規模または中規模の核保有国が先制核攻撃を受けた後に反撃をおこなってもそれを無力化するような最新鋭のミサイル防衛システムの開発に余念がない。このような状況のもとでは、小規模または中規模の核保有国に透明性措置をとるよう求めても、それらの諸国の安全保障にも全世界の戦略的な均衡と安定にも役立たない。
現在最も合理的で実行可能な信頼醸成措置は、核保有国が無条件に先制核不使用を約束し、また、非核保有国や非核地帯に対して核兵器の使用または威嚇をおこなわないと約束することだとわれわれは考える。先制核使用の禁止は、何か具体的な核軍縮措置の代わりになるわけではないが、核保有国と非核保有国の相互信頼だけでなく核保有国間の相互信頼をも深め、核戦争の危険を減少させ、国際的な核不拡散体制に内在する差別的な性質を減ずるのに役立つ。結果として、この体制の普遍性と有効性が高まり、核兵器の完全禁止に必要な条件が生み出されるだろう。
原子力の平和利用の促進は、NPTで定められた3つの目標のひとつである。原子力はとてつもない力を秘めたクリーンで効率の良いエネルギーであり、原子力技術は、人間生活のあらゆる面に広く適用されてきた。
中国は、原子力産業である程度の力をもつ発展途上国として、NPTの関連規定を厳守し、原子力の平和利用において互恵的な国際協力を積極的におこなっている。中国は、ロシア連邦やフランスなど16カ国の政府とともに、「原子力の平和利用の協力にかんする協定」に署名した。また、原子力、核医学、核技術の応用の分野で発展途上国を援助している。
多国間分野では、十分に協力的な態度で、原子力発電所の建設、原子力の安全性、核廃棄物の管理、核技術の応用についてIAEAと協力、交流を重ねてきた。IAEAの「技術援助基金 (TCF)」に時機を逃さず十分な資金を提供しただけでなく、予算外の資金も供与した。発展途上諸国から科学技術の関係者が調査と訓練のため中国を訪れることもある。また、中国はIAEAの要請を受け、複数地域にまたがるプロジェクトや国際シンポジウムに専門家を派遣して技術サービスを提供したり講義をおこなったりしている。中国は、アジアおよび太平洋で原子力にかんする科学技術の協力に積極的に参加し、この地域における原子力の平和利用促進に大きな貢献をしている。
NPTで定められた原子力の平和利用と国際協力の促進義務を完全に履行するため、中国は発展途上国への技術支援の強化や発展途上国への核技術の移転にかんする不合理な制約の解除を主張する。また、原子力の恩恵を全人類のものとするために、発展途上国が原子力を平和目的で開発および使用するのを積極的に支援する。
原子力を平和的に利用する権利はすべての国にある。核不拡散および原子力の平和利用は、相互補完的なものだ。原子力の平和利用と核技術の応用の拡大における国際協力を強化することは、国家の経済発展を促進し国民の生活水準を向上させるだけでなく、核拡散の防止にも役立つ。しかし、発展途上国による原子力の平和利用への希望と要求が無視され、一方で核不拡散と原子力関連輸出管理が過剰に強調されて、核不拡散を理由にさまざまな国家での原子力の正常な平和利用が妨げられれば、NPTの初期の目的からそれるばかりでなく、関係諸国の利益にも害がおよぶだろう。そうなれば、核不拡散体制は支持を失い、長続きしなくなる。
ある国々は、自らの好みで世界を分類している。それら諸国は自分たちの気に入らない国を「ならず者国家」など種々の奇妙な名で呼び、原子力の平和利用の権利を大幅に奪っている。こうした二重基準または複数基準は、きわめて不公平かつ無責任である。これでは、核拡散の問題解決に役立つどころか、諸国間の不信を強め、特に発展途上国などさまざまな国家が現在の核不拡散体制に失望と疑問を抱く原因を生むことにしかならない。
NPTは軍備管理にかんするもっとも重要な国際条約であり、最も幅広い代表団が参加している。現在、国際情勢は激しく変動しており、軍縮の努力は重大な岐路にきている。このような状況のもとで、この会議を確実に成功させることは、国際的な核不拡散体制の強化、国際的な核軍縮の促進、世界の平和と安定の拡大にとってきわめて重要である。中国は、この会議の終りに最終文書が総意によって作成され、会議の成功が示されることを心から願う。最終文書にかんして、再検討と将来の見通しをひとつの文書にまとめるかふたつに分けるかは些末なことである。重要なのは、過去5年間の条約の履行状況を正確に評価し、今後5年間に達成すべき目標について実際的な合意を結ぶことだ。この会議は、1995年に無期限延長が決められてから初めての再検討会議である。われわれはこの歴史的な機会を大切にし、種々の否定的要素を克服して、慎重さと責任感と柔軟性を兼ね備えた態度であらゆる主要な問題について合意を得るため努力する。それにより、今後、条約を再検討および履行するための十分な基礎を築きたい。
中国の銭其 副首相が1994年に国連総会でおこなった演説から一節を引用して、この発言を終えたい。「人類は20世紀に核兵器を製造し、原子力を平和目的に利用し始めることができたのだから、21世紀には必ずや、核兵器を完全に禁止および解体し、原子力を幸福の拡大に十全に活用できるだろう」これは、到達しがたい目標ではない。重要なのは、この目標を実現する十分な政治的意志が各国にあるかどうかである。21世紀に入ったいま、核の脅威の影で暮らすのか、平和と幸福の光のなかで暮らすのかは、われわれにかかっている。平和と自由を愛する世界中すべての人々が手を取り合い、核兵器のない世界に向けて努力しようではないか。
非核の世界に向けて―イギリスと不拡散条約
イギリス外務連邦省大臣 ピーター・ヘイン
(4月24日)
核不拡散条約に完全に従う核保有国として、イギリスはこの重要な会議が、新たな核軍拡競争の脅威を抑制するとともに非核世界の実現というわれわれの究極目標を追求するうえでさらに一歩前進することを願う。
イギリスはEU(欧州連合)の議長国、ポルトガルによって先におこなわれた声明を全面的に支持する。われわれは、この声明が普遍性、核不拡散、平和利用、軍縮という重要な問題にかんして述べているすべての内容を支持する。
核不拡散条約は発効30年を迎えた。この間さまざまな圧力を受けてきたが、NPTが核兵器の拡散を阻止する主要な手段であることに変りはない。182カ国が、非核保有国としてこの条約を順守することにより核兵器を放棄してきた。
現政府の下、われわれは核軍縮プロセスにおけるイギリスの役割を変化させてきた。われわれは、核軍縮を追求することに対し明確な約束をおこなってきた。有言実行のため、いくつか実用的な手段を講じてきた。核軍縮の早い進展を願う非核保有国のおおくにわれわれも同意する。われわれは、模範を示すよう努めてきた。
本条約締約国が1995年再検討会議で同意した「核不拡散および軍縮の原則と目標」は、共通の軍縮目標を達成するため、三項目が特に重要であることを確認した。
われわれは第一の課題を達成した。それは、1996年までに軍縮会議(CD)において、包括的核実験禁止条約(CTBT)のための交渉を終了することである。これまでに55カ国がCTBTに批准したが、これらの国のなかには、その批准が条約発効の要件とされる44カ国のうち28カ国が含まれている。われわれはロシア下院によるCTBT批准決定を大いに歓迎し、ロシア連邦による正式批准が早くおこなわれることを期待する。
CTBTが調印に開放されて以来、どの核保有国も核装置の爆発をおこなっていない一方で、インドとパキスタンは核実験をおこなった。さらに、北朝鮮とならんで、インドとパキスタンは未だCTBTに調印していない。これには大きな失望をおぼえるが、われわれはこれら三カ国に対し、一刻も早くCTBTに調印し批准するよう強く求めるものである。
同様に、米国上院が、大統領の提起に反してCTBT批准を否決したこともにも失望をおぼえる。われわれは、クリントン政権がこれをCTBTに対する最終決断として受け入れないとしていることを大いに歓迎する。われわれは米国、また中国、イスラエル、ならびに条約に調印はしたが、条約発効の要件としてその批准がまだ必要である国々に対しても、同条約の早期の批准を強く求め続けるものである。
また、CTBTが時期を失せずに完全に実行されるための検証制度の確立に向け努力を続けなくてはならない。これは最優先課題である。十分な資金供給を通したものも含め、CTBT機構設立に向けた準備委員会の作業を全面的に支援する必要がある。
1995年再検討会議で条約締約国が特に重要と確認した第二番目の課題は、核兵器およびその他核爆発装置用核分裂性物質製造禁止条約の交渉であった。
1995年に合意された「原則と目標」に沿って、イギリスは、軍縮会議(CD)の特別コーディネーター声明および同声明に含まれる権限に従って、核分裂性物質製造禁止条約(分裂性物質カットオフ条約)交渉の即時開始、ならびに交渉の早期締結を一貫して追求してきた。ほかの国々の立場が、この目標の実現に反対してきたことにわれわれは深い挫折感を感じている。
CTBTは、核軍縮実現に向かううえで絶対的に不可欠の一歩であることに変りはない。核兵器用分裂性物質の今後の製造を禁止しなければ、現在貯蔵されている分裂性物質を処理するとりくみの意義もつねに疑問に付されるであろう。また、分裂性物質カットオフ条約に含まれなくてはならない、再処理および濃縮施設にかんする検証協定がなければ、核軍縮は実現し得ないであろう。
軍縮会議(CD)のメンバーでもあるすべての国に対し、ほかの問題についての意見の違いは脇に置いて、こういった交渉をただちに開始するよう強く要請する。
1995年再検討会議が確認した三番目の課題には、核兵器廃絶を究極目標とする、全世界規模での核兵器削減に向けた、核保有国による系統的かつ漸進的な努力の確固たる追求が含まれていた。イギリスはこれを実践してきた。
しかし、主導的な国は、米国とロシア連邦である。両国は過去5年のあいだ、START I(第一次戦略兵器削減条約)の要件どおり、きわめて重要な削減をすすめてきた。実際、両国はこの点では予定より早く行動している。
両国はまた、自国の防衛にとっての要件を超える分裂性物質についての問題でも、かなりなとりくみをすすめてきた。両国は首尾よく交渉をすすめ、1997年9月にはSTART II(第二次戦略兵器削減条約)議定書ならびにABM条約に関連するさまざまな取り決めを結んだのである。これらは、ほかの進展とならんで重要な成果であり、心から歓迎したい。
ほかの諸国と同様に、われわれはSTARTプロセスにおけるこのきわめて前向きな勢いが、
ここ数年間いくぶん衰えたようであることを懸念している。そうしたなか、ロシア下院と連邦評議会がSTART IIを承認したことは、喜ばしい知らせである。これは軍縮プロセスにとって、重要かつタイムリーな勢いづけとなっている。これによって、米ロそれぞれの核兵器を、さらに相当数削減するよう約束するSTART III(第三次戦略略兵器削減条約)交渉を、米ロが早期に開始する道が開かれることを期待する。われわれは、これら交渉の進展が、ABM条約と全米ミサイル防衛(NMD)システムの将来にかんする複雑で新たな論議と緊密に結びつく可能性を認識している。
米国によるNMD構想がすすめられてきた背景には、すでに確立した抑止関係を構成していないいくつかの国が長距離弾道ミサイル能力を獲得するのではないかという懸念が増していることがある。これは理解できることであり、対応が必要とされる。しかし、現役のミサイル防衛は、複雑で難しい問題を生じさせる。米国は、NMDの決定を下すにあたり、自国が、戦略的安定を維持する必要性を含む、多くの重要な問題を考慮する必要があることを明らかにしている。これは歓迎すべきである。これらの問題は、ロシアとの二カ国間による冷静かつ慎重な対話によりとりくまれるべきである。それゆえわれわれは、昨年6月におこなわれた、米ロがSTART IIIおよびABM条約にかんする討議を開始するとの声明を歓迎する。わが国は、この数カ月間この討論がすすむなか、米ロ両国と緊密に連絡をとってきた。明らかな意見の相違はあるものの、両国は合意に達することができるものと期待している。われわれは、ABM条約を評価し続け、それが堅持されることを願っているといいうことを双方に対し明らかにしてきた。
核軍縮を追求するあたり、米ロは明らかに特別の役割を負っているが、それ以外の核保有国は、核軍縮に対し独自の貢献をしなくてはならない。イギリスは、全世界的な核兵器廃絶を実現するに必要な条件に向け、たいへん積極的に行動してきた。
過去5年のあいだ以下のことを達成してきた。
−CTBTに調印、批准し、条約の検証制度確立の実現に努力し、もちろん1991年以降いかなる核爆発もおこなっていない。
−FMCT(核分裂性物質製造禁止条約)の交渉を強く主張してきた。1995年に核兵器用分裂性物質の製造を中止した後、わが国の濃縮および再処理作業は、EURATOM(欧州原子力共同体)の安全保障措置下に置かれ、IAEA(国際原子力委員会)による査察を受けたか、査察の対象となっている。
−全世界的核兵器廃絶という目標に向けた進歩に満足したときには、交渉にイギリスの核兵器が確実に含まれるようにすると名言している。
またわが国の核戦力を次のことによって削減してきた。
−すべての空中攻撃用核兵器を現役配備から撤退、解体することにより、潜水艦を拠点とする発射体制のみに依拠する。
−巡視をおこなう潜水艦は |