マレーシア決議案提案理由発言
核兵器の使用と威嚇の適法性にかんする
国際司法裁判所の勧告的意見について
マレーシア国連大使 ハスミ・アガム
国連第53回総会第一委員会
1998年10月29日
議長、
1.わが代表団は、当委員会に1998年10月26日付けで決議案A/C.1/53/L.45号「核兵器の使用と威嚇の適法性にかんする国際司法裁判所の勧告的意見について」を提案できることを光栄に思う。この決議案は以下の政府代表団によって共同提案されている。
アルジェリア、バングラデシュ、ブラジル、ブルネイ、ブルンジ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、フィジー、ガーナ、ガイアナ、ホンジュラス、インドネシア、イラン、イラク、ジャマイカ、ケニア、ラオス、レソト、マラウイ、メキシコ、モンゴル、ミャンマー、ナミビア、ニジェール、ナイジェリア、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイ、ペルー、フィリピン、サモア、サンマリノ、シエラレオネ、シンガポール、ソロモン諸島、スリランカ、スーダン、スリナム、タイ、アラブ首長国連邦、ウルグアイ、ベトナム、ジンバブエ、そしてわが国の代表団である。
2. 今総会第一委員会の討論から明らかなことだが、国連加盟国の大多数は、最終的に核兵器廃絶に至る核軍縮にむけた交渉において真摯な努力が欠けており、また、非常に進展が遅いことに、引き続き重大な懸念を抱いている。最近の出来事は、これらの懸念を増大させ、状況をいっそう複雑にしている。よって、国際社会が、最終的な目標である核兵器の完全廃絶を実現するために、核軍縮の努力を強めることが急務となっている。
3. 提案され、今日採決がおこなわれるこの決議案は、その方向にむけた努力のひとつである。これは前回総会が大多数の賛成で採択した決議 52/38O号にもとづき、それを更新したものである。昨年の決議の根拠となった提案理由は、昨年と同様に今年も有効である。
4. この決議案は、国際司法裁判所 (ICJ) が裁判官全員一致で「厳格かつ効果的な国際管理のもと、すべての面にわたって核軍縮につながる交渉を誠実におこない、これを完了する義務が存在する」とした勧告的意見を、再度強調するものである。この勧告的意見からみても、諸国はこのような交渉をおこなう努力をするだけでなく、これを早期に締結する義務を負っていることは明らかである。当決議案はまた、すべての国が、核兵器の開発・製造・実験・配備・貯蔵・移転・使用あるいは威嚇を禁止し廃絶することを定める核兵器条約に至る多国間交渉を1999年に開始し、直ちにこの義務を遂行することとした総会決議 52/38O号の呼びかけを再度おこなうものである。これは核兵器不拡散条約 (NPT) 締約国が、同条約第6条の下で負う、核軍縮にかんする効果的な措置について誠実に交渉をおこなうという厳粛な義務と、核兵器の最終的な廃絶の目標にむかい核兵器の全地球的削減のため組織的かつ漸進的な努力をおこなうという締約国の決意に合致している。当決議案の提案者たちは、この義務が存在するとした世界法廷の全員一致の意見は、国連加盟諸国が世界から核兵器を一掃するという決意を持った努力をおこなっていくなかでの、法廷意見の後追いの行動の確固とした基盤であると考える。
5. この決議案を今53回総会に提案するにあたって、いくつかの追加的な点を述べたい。その一部は、これまでにこの決議の提出に反対した政府代表の意見に応えるものである。まず指摘したいのは、決議案は、核兵器(禁止)条約につながる多国間交渉を直ちに、とりわけ1999年に開始することを求めたものではあるが、その形態としては、核軍縮のほかの側面にかんする交渉を除外せず、むしろそれを認め、奨励しており、そのプロセス全体が核兵器条約にかんする交渉につながるべき、としている点である。決議案はとりわけ、核兵器条約に「つながる」交渉と述べており、そうすることにより核兵器保有国自身が支持を誓約している軍縮のステップなども考慮に入れている。昨年もわが国の代表によって特に言及されたことであり、そのことに私は感謝しているが、この決議が、核兵器条約に「つながる (leading to)」交渉を呼びかけているのであって、「かんする (on) 」交渉を求めているのではないことに注意すべきである。よって、この決議案の起草者たちがとった現実的なアプローチは、非同盟運動などが議論している段階的・漸進的な措置と相容れないものではない。したがって、核兵器国により、積極的で建設的な態度である、と受け取られるべきものである。
6. わが代表団は、決議案が、ICJの意見の特定部分、つまり、「厳格かつ効果的な国際管理のもと、すべての面にわたって核軍縮につながる交渉を誠実におこないこれを完了する義務が存在する」という個所を選択し、これに焦点を当てていることを進んで認めるものである。想起されるべきことは、ICJ が核兵器にかんして2つの主要な結論を下したことである。ひとつは核兵器の威嚇と使用について、もうひとつは軍縮交渉をおこなう義務についてである。この二つには異なる対応が必要であるため、国連総会がこれらの結論を別々に扱うことが適切である。決議案は「国際司法裁判所の勧告的意見の後追い」と題されているため、この二つの意見をひとつの決議にあわせて入れることは、問題を混乱させるだけである。各国代表団は、適切な行動の過程を支持しても、もう一方を支持しないかもしれないからである。
7. この決議案は、法的効力のあるパラグラフ第一項に示されているように、各国の軍縮の義務に焦点を当てたものである。というのは、この結論は、世界法廷が全員一致で下したものであり、さまざまな解釈がなされている核兵器の威嚇と使用についての結論とは異なり、この結論の意味については、ほとんどあるいはまったく議論の余地がないからである。この結論を、軍縮交渉を促進する数々の任務を負っている総会が実行するのは、まったく適切なことである。
8. 昨年、二、三の国々によって出された、必要なのはさらなる二国間交渉であり、多国間交渉は二国間交渉締結の成功をさまたげるとの論点については、私は、わが国の代表団が昨年の決議案を提案したときに述べたことを繰り返すのみである。われわれはこう述べた。「二国間交渉を通じた核兵器削減をめざす現在の努力と過去の成果を」認める…「(しかし)…これらの二国間交渉は核兵器の数を一定の上限まで減らすことのみをとりあげたものであって核兵器の完全廃絶をめざしたものでも、核兵器の使用と威嚇にかんする既存の政策の変更にかんするものでもない」。私は再度、二国間交渉の重要性と引き続く関連性を強調するものであるが、これが多国間交渉の重要性から関心をそらせるものであってはならない。むしろ、二つの道程は相互に補完・補強しあうものである。それはつまるところ、核軍縮が全人類にとっての重要問題であり、核兵器保有国だけの問題ではないからである。
9. また、この決議は、非核兵器保有国からあらゆる軍縮の責任を免除するものであるという主張がある。これはもちろん、根拠がなく、誤解を招くものである。というのは、この決議は「すべての」国々が核軍縮交渉をおこなう義務を履行するよう呼びかけており、核保有国のみを特定してはいないからである。
10. ある国の代表団は、この決議案が、「全面完全軍縮」に関連したNPT第6条が定めた義務を除外している、と主張している。これについては、われわれの目の前にあるこの決議案が、ICJ勧告的意見の実行にかんするものであって、NPTのそれではないことを指摘したい。NPT第6条の規定は国際法の一部を構成しており、ICJはこれを使ったわけであるが、ICJはまた、結論を下すにあたって他の軍縮・慣習法も引用している。法廷が核軍縮交渉をおこなう義務が存在するとした結論には、そのような義務と「全面完全軍縮」との間に何の連関があるとも述べられていない。NPTも直接の関連性を述べてはおらず、たんに両方についておこなう義務があると述べているだけである。
11. さらに、決議案は、法廷が核兵器の威嚇と使用を禁止する国際法は存在しないと結論したことを黙殺している、という議論もある。わが代表団は、昨年ある政府代表がおこなった、「法廷は、核兵器の威嚇あるいは使用は一般的に違法であると確かに結論付けたのであり、法廷が例外を認めていると言うことは正しくない」という発言に感謝し、これに全面的に賛成するものである。法廷は核兵器の合法的な使用はありうるとの主張をしりぞけ、極端な状況のもとでは結論を出すことができない、と述べたのである。
12. 以上の理由により、わが代表団は、過去にこの決議の提案に反対した人々から出された、これが選択的で、偏向的で、非現実的であるとする主張に意義を唱えるものである。この決議はそのどれにもあたらない。この決議案を現在の形で提出することは、第一委員会と総会の軍縮問題にかんする活動において、法廷意見を実際に適用するという問題に過ぎない。最終的に核兵器の全地球的廃絶につながる多国間交渉を支持する諸国には、――われわれすべてがそのために尽力しているのであるが――長期的には、まさにそれだけをめざすこの決議案に反対する理由は何もない。
13. この決議案を提出するにあたり、わが代表団は、共同提案諸国および、この決議に賛成投票をしてくださる諸国代表団に心からの感謝を表明する。
「核兵器のない世界へ:新たなる課題の必要」
決議案共同提案国を代表して
アイルランド外務省軍縮不拡散局長
ダラーク・マクフィオンバー
国連第53回総会第一委員会
1998年10月27日
議長、
1.私は、文書番号L. 48「核兵器のない世界へ:新たなる課題の必要」と題した決議案を、ベニン、ボツワナ、ブラジル、カメルーン、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、グアテマラ、アイルランド、レソト、リベリア、マレーシア、マリ、メキシコ、ニュージーランド、ナイジェリア、ペルー、サモア、スロベニア、ソロモン諸島、南アフリカ、スワジランド、スウェーデン、タイ、トーゴ、ウルグアイ、ベネズエラ(訳注:共同提案国にはその後変動あり)の政府代表団を代表して提出したい。
2.この決議案の目的は、核軍縮の課題へのわれわれのアプローチの方法を再活性化することである。その意図は、核兵器をきっぱりと根絶する目的で、国際社会を共同の行動に駆り立てることにある。人類にとりこれほど重要な問題についての国際社会の意志を検討し表明することは、今総会に集まった国連加盟国の特権であり任務である。
3.この決議案にふくまれる提案を制定することは、核保有国、核兵器開発の選択肢を放棄することによって国際社会に合流するのであるがまだ合流していない諸国、そして、多国間的で無差別で普遍的な核兵器のない世界の体制を実現する責務を負っている国際社会全体にとって、大きな影響を及ぼすだろう。
4.この委員会に提案されている決議案は、課題、あるいは課題の輪郭を提案するものである。これは、当委員会にかけられている他の核軍縮決議にとって代わることを意図したものではない。これが前進の道を開くかどうかは、核兵器保有国が核軍縮にかんする自らの責任に新たな見地で接近するというきっぱりとした誓約をおこなうかどうかにかかっている。つまり、速やかで全面的な自国核兵器の廃絶である。この決議案は、彼らにたいしその実行を求めている。それがなければ、われわれは、引き続く核兵器の存在と無期限の保有という見とおしに直面する。
5.この決議案は、もし国際社会が核兵器廃絶に真剣に努力すべきであるなら、広い意味でとりくむことができ、また、とりくまなければならない課題を示すものである。課題は、現存の機構やアプローチを利用しなければならないと強調している。これは、それぞれの点で核軍縮の追求と達成に貢献することができ、また、貢献しなければならない二国間、複数国間 (plurilateral)、多国間のそれぞれのアプローチの間のバランスを与えるものである。
6.この決議に述べられたアプローチを追求すれば、その影響は決定的なものであろう。これらの兵器は時代錯誤として急速に退けられ、それらの解体プロセスにおいてのみ、核保有国間で細かく取り決められる安全保障上の条件での注意深い取り扱いを必要とする脅威として残るだけのものとなろう。拡散の脅威は、核保有国と非核保有国に分かれた世界ではつねに懸念でありつづけるが、それも、和らぐ結果がもたらされるであろう。
7.早急かつ完全な核兵器廃絶の緊急性を無視した結果は、今年前半、われわれにのしかかってきた。こうした出来事を、われわれすべてにとって、今すぐともに行動するための明確な転換点にしよう。
8.この決議案は、行動計画の輪郭を提案している。その詳細はどの計画もそうであるように変更可能である。予定表を作成することもできるし、新たな、別のアプローチを検討することもできる。そのすべてが可能である。核保有国が自国の核軍備の迅速かつ完全な廃絶の明確な誓約を示し、それに続いて、核軍縮に至るプロセスの最初かつ不可分の一部をなすそれらの交渉の新たなレベルの関与がなされるまで、われわれのできることはごくわずかである。
9.この決議で提案国が企図していることは、現存する法的拘束力をもった核保有国の誓約に依拠した道理ある提案によって、核不拡散条約第6条の実現にむけて最後の一突きを加え、こうして国際社会による条約全体の諸目標の達成を可能にすることである。
議長、
10.私は、一部の代表団によってこの決議案に加えられた一連の批判に回答したい。
提案諸国がおこなった言明は、この決議を他国も受け入れられるようなものにするための変更を考慮する用意がそれら提案国にはないことを示している、という主張がある。
提案国は、1998年6月9日の核軍縮にかんする共同閣僚宣言(A/53/138)以来、国際社会の圧倒的多数の支持を得られる決議案をつくり上げるためにたゆまず作業を続け、協働する意思を持つすべての代表団と関わり、数多くの代表団がそうした対話に加わった。こうして提案国は各国代表団の懸念に対応するため、原テキストの多くのパラグラフを修正した。本決議の提案国は、五大核保有国にもこのテキストについての対話に加わるよう招いた。
このテキストは、「核兵器能力国家」など、危険な新しい概念を提示しているという議論がある。
1998年6月9日の共同宣言で、閣僚たちはこの言葉によってあらわされる国家、すなわちイスラエル、インド、パキスタンについては、具体的に述べた。しかしながら、それ以上のいかなる起こりうる誤解も避けるため、提案国は、核兵器能力という文言を、国家という文言の後に移した。それは、提案国が核保有能力国という新しい地位をつくろうと企てているかのようなふくみを与えないためであった。したがってテキストは、「核兵器の能力をもち、NPTに加入していない国家」と述べている。そうした非NPT加盟国はたった三カ国である。
テキストは、分裂物質製造停止条約(FMCT)について合意された用語を、交渉をあらかじめ判定しうるようなやり方で定式化しなおすことにより、具体的に害を及ぼしているとの議論がなされている。
当初の決議案は、総称的であり、かつ、これらの条約交渉権限にもとづくコンセンサスによる運営機関、軍縮会議(CD)での合意があるのだから誤解することのありえない「分裂物質条約」という定式を使った。しかしながら、多くの代表団がむしろ付託全文テキストの方を好んだので、それにそって決議案のテキストも修正された。
国際社会がインド、パキスタンの核実験について深刻な懸念の声をあげているとき、決議案はそれらについて言及しておらず、そうであることによってインドとパキスタンに救いの手と慰めとを与えているという議論、さらに、それはインドとパキスタンの実験に報いを与えるものであり、安保理事会決議1172号にそぐわない、とも議論されている。
本委員会には、核実験について個別的に扱った別の決議案が出されている。この決議案の源は、最近の実験よりかなり以前に準備されていた共同閣僚宣言にある。この決議案の諸目標は普遍的なものである。それらは前向きのものであり、最近の核実験の前も後もその重要性は変わるものではない。これは新しい課題のための提案であり、一部の国家がおこなった行動への対応ではない。提案国の目的は、現在求められている行動に焦点を当てている。核兵器廃絶のための即時の行動が持つ緊急性は、最近の実験によって高まった。
決議案は、条約下の自国の義務を守らないNPT加盟国が与えている脅威について認めていない、とも論じられている。
この決議案は、遂行すべき課題をよびかけるものである。国連総会全体会議に提出された国際原子力機関(IAEA)の報告についての決議案は、NPT第2条、第3条下での義務を実施するために結ばれた保障取決めの遵守の問題を検討している。安全保障理事会は、拡散に関わる問題についても報告を受けている。
案文は、1995年のNPT再検討延長会議で合意された「原則と目標」にふくまれている課題を暗に拒絶することにより、国際不拡散体制を弱めていると言う議論がある。
1995年のNPT再検討延長会議で打ち出された課題には、a)CTBTの交渉、これはその後完結した、b)分裂物質条約交渉、これはまもなく始まろうとしている、c)消極的安全保障、これも現在検討中、などがふくまれている。この案文は、なすべきこととして第1項の調印ないし批准(第10条)、第二項の確固とした追求(第12条)、第3項の交渉完結(第17条)をそれぞれ呼びかけている。核軍縮の追求をふたたび起動するこの決議の目的は、いかなるときにおいてもNPTの原則と目的に即し、また同条約加盟国によって採択された決定ないし決議に即して綴られている。実効項目15項の提案文は、1995年の再検討延長会議でうちだされた課題と再検討プロセスの双方の重要性を強調している。決議案全体が、NPTとその全面的遂行への提案国の明確なコミットメントによって特徴づけられているのである。
地球的な不拡散体制を弱める可能性の大きいイニシアチブを受け入れることはできないとの十分に強力な合図を送るには、この決議にかんする反対票が不可欠であるとする議論がある。
NPTの非核保有加盟国を代表する代表団からなる本決議の提案国は、その不拡散諸条項をふくめ、NPT条約を守るために行動している。この課題は、本総会のすべての代表団によって採択されるなら、それらの諸条項を強めるものとなるアプローチなのである。
最後に、議長、
11.私はこの決議案の共同提案国を代表して繰り返し確認したい。われわれは多くの国々と対話を重ねてきており、他の国々にたいしても、彼らの懸念にたいする考慮が払われるよう、われわれと連絡を取るよう呼びかけるものである。
新アジェンダ連合決議案にかんする説明文
核兵器のない世界に向けて:新たな課題の必要性
T
第一委員会に提出された、決議案に盛り込まれている課題は三つの部分に分かれており、これらは全体として国際社会すべての国々を包含する課題を示している。第一の部分は核兵器保有国によっておこなわれねばならない行動を呼びかけており、この部分は、核保有国自身が定めた行動、方法論やアプローチ、あるいは、現在討議されている行動計画にもとづいている。
決議案のうち、法的効力のある本文部分の第1パラグラフは、速やかで全面的な自国の核兵器廃絶への明確な誓約を基礎として、決意を持って核軍縮を追求するよう呼びかけている。
第2パラグラフは、最大の核兵器保有量を持つ二大国が選んだプロセスであるSTARTプロセスの追求にかんして直ちに行動をおこすよう呼びかけており、第1パラグラフで求めた明確な誓約を基礎として遂行されるものである。
第3パラグラフは、他の核保有三カ国を核削減交渉に合流させることを呼びかけている。これらの国々は、米ロがそのような合流に適切なレベルまで二国の核兵器レベルを下げればすぐにでも核軍縮交渉に参加する意志があることを表明している。決議案は、STARTから五大保有国すべてが参加する交渉へと至るプロセスが首尾よく準備され、前者の完了次第速やかに後者を開始できるよう、すべての核兵器国間の対話を早期に開始するよう求めている。
第4パラグラフは、非戦略的核兵器への依存を減らすことと、核兵器廃絶の交渉を核軍縮プロセス全体における不可欠な要素として旺盛に追求することを求めている。これは国際社会、特に核兵器の配備によって新たな標的となっている国々にとっての主要な懸念である。このような新たな脅威をなくし、また核戦力削減の経済において速やかな核兵器廃絶に特に焦点を当てるには、このパラグラフに反映されているような、国際社会からの強い呼びかけが必要である。
決議案は核兵器の廃絶に焦点を定めている。これはまた、核兵器が廃絶されるまでの時期の安全保障上の懸念に責任を持って答えるものでなければならない。第5および第6パラグラフは、その前の三つのパラグラフの中に概括された、核兵器国自身が定めた諸措置にもとづいて自国の核兵器廃絶のプロセスを新たなはずみをもって迅速に完了するという合意が核兵器国間に存在するもとにあっても取り組まねばならない、中間的な措置について取り上げている。これらは軍縮の措置ではない。これらは国際的安全保障に寄与し、核兵器の偶発的あるいは意図的な使用を早期に防止するのに役立つものである。
第5パラグラフは、その価値について幅広い合意が存在するそのような中間的措置を一つ選び出している。つまり、核兵器発射に至る反応時間を制御することのできる措置である。他にも、戦略的安定性を高める中間的諸措置もある。それはつまり先制使用禁止であるが、これは現在核保有国により考慮されているもので、さらに、そして意識的に探求する必要がある。
U
決議案の二番目の部分は、核兵器不拡散条約の枠組みの外にとどまっており、かつ核兵器を開発してきた国々によってとられるべき行動を呼びかけている。
第7パラグラフは、これらの国々にたいして、すべての核兵器開発や配備を続けることをやめ、地域的・国際的平和と安全保障および核軍縮と核兵器不拡散をめざす国際社会の努力をそこないかねないようないかなる行動もとらないよう、断固として呼びかけている。決議案はこれらの国々を核兵器国とは認めていない。
決議案は第8パラグラフで、これらの国々に核不拡散条約を遵守するよう求めている。この決議案のアプローチは、前向きであり、包括的である。これらの国々は自らがとった主権行為から生じた責任を負っており、国際社会はそれゆえに、われわれがこの決議案で概要を示したプロセスの一部となるよう、彼らに一致して呼びかけなければならない。
V
決議案の第三の部分では、すべての国々に求められている行動が詳述されている。既存の核兵器の廃絶を実現する必要性とは性質の異なるものとして核軍縮を達成するために、国際社会は一丸となって進まなければならない。核兵器のもはや存在しない世界というのは、普遍的に無差別的かつ多国間で交渉された体制が、核兵器が世界のどこにも再現しないよう国際社会を守っている世界のことである。このプロセスは、多国間でおこなわれねばならない。というのはこの適用も普遍的でなければならないからである。
決議案第9パラグラフは、まだ国際原子力機関(IAEA)と全体にわたる保障措置の取り決めを締結していない国々にたいして、それをおこない、さらに1997年に多国間で合意された付属議定書も締結するよう呼びかけている。国際社会の側は、核兵器目的での逸脱が起こらないことを確実なものとするため、多国間で合意され強化された諸措置を断固として守るとの誓約をはっきりと表示せねばならない。強化された保障措置の拡大が成功することは、われわれがここで打ち出した目標にとって重要である。そして核兵器のない世界に接近する中で、さらなる措置が必要となるだろう。
決議案第10パラグラフは、すべての国々に、包括的核実験禁止条約に調印・批准し、その発効までは実験の一時停止を守るよう求めている。
第11パラグラフは、すべての国々に、核物質の物理的保護にかんする条約を遵守するよう求めている。核物質の安全な保管と安全な所在の管理は、核兵器のない世界にとって基本的な必要条件である。
第12パラグラフは、軍縮会議(CD)において最近合意された分裂物質条約にかんする交渉を迅速に遂行するよう求め、兵器目的の分裂物質生産の暫定的停止を呼びかけている。
第13パラグラフは、現在進行中の協議にもとづいて核軍縮を扱う適切な補助機関を設置するよう求めている。これは、決議案が主張しているように、これ以上の遅滞なく合意に達するためには優先課題として追求されねばならない。
第14パラグラフは、核軍縮と核不拡散にかんする国際会議開催について検討がおこなわれるよう提案している。これは他の場においておこなわれている努力を補完し、核兵器のない世界のための新たな課題を強化するものである。この提案はいかなる他の提案や既存の提案を妨げることを意図したものではない。このような会議開催の検討はもちろん、これから進展する核軍縮プロセスの行方次第となるだろう。このような会議の目的は、他の場でおこなわれている諸努力、特に1995年NPT再検討延長会議の決定である「条約再検討プロセスの強化」の全面履行の最重要性を強調する、次の第15パラグラフに概括されているような努力を補完することである。
第16パラグラフは、この決議案の採択が意味することになる進展を背景にして、国際社会は核軍縮に向かう前進の中で新たな段階に入ることを提起している。したがって、IAEAが他の関連国際組織・機関とともに、核兵器のない世界を維持するために必要となる検証体制の要素を探求し始めることが適切である。NPTが条件づけている既存の保障措置を維持する機関であるIAEAが持つ独自の資源は、この点にかんして速やかな示唆をおこなうために理想的なほど適している。この呼びかけが適切であることは、IAEAが最近CDにおいて核分裂物質条約の検証要因に協力を申し出たことにも現れている。
第17パラグラフは、NPT締約国の非核兵器国が、核兵器の使用あるいは威嚇を受けないことを事実上保証する法的拘束力のある取り決めを締結するよう呼びかけている。
第18パラグラフは、とりわけ中東と南アジアなどの緊張の高まっている地域において非核兵器地帯を追求・設置・拡大することの重要性を強調している。
第19パラグラフにおいて、決議案は、核兵器のない世界につながるプロセスにおける国際社会の役割を再確認し、強調している。核兵器のない世界は、いかなる地域における拡散の危険も防止されるとの確信が維持される際の基礎となる、多国間の取り決めあるいは多国間で交渉された一連の協定が必要となるだろう。このような協定あるいは一連の協定は、必然的に、核兵器の保有・開発・生産・移転・使用の禁止を定めたものになるだろう。この協定あるいは一連の協定の条項は核兵器のない世界を保証するために必要な包括的なメカニズムをふくむものになるだろう。これは幅広くかつ費用のかかるものである。しかし、これは国際社会が支払う準備をしておかねばならない対価である。
第20および21パラグラフは、一年後に第一委員会においてこの決議の履行を再検討することを展望して、国連事務総長にたいし、この決議の履行情況についての報告書を作成するよう求めている。
『核兵器ゼロへの確実な道』
(Fast Track to Zero Nuclear Weapons)
中堅国(ミドルパワーズ)イニシアチブ発行
ロバート・D・グリーン著
共同提唱者
国際反核法律家協会 (IALANA)
国際平和ビューロー (IPB)
地球的責任のための技術者・科学者国際ネットワーク(INES)
核戦争防止国際医師会議 (IPPNW)
核時代平和財団
地球的行動のための議員の会
世界の情況フォーラム
ダグラス・ローチ(元カナダ軍縮大使・核兵器廃絶カナダネットワーク・中堅国イニシアチブ議長)
コリン・アーチャー(国際平和ビューロー)
マイケル・クライスト(核戦争防止国際医師会議)
アラン・クランストン元米上院議員(世界の情況フォーラム)
ケイト・デュース(国際平和ビューロー)
ジョナサン・グラノフ(法律家世界安全保障同盟)
ロバート・グリーン(元英海軍司令官・世界法廷プロジェクト)
デービッド・クリーガー(核時代平和財団)
ラース・G・リンズコグ(スウェーデン核兵器反対医師の会)
ロナルド・S・マッコイ(核戦争防止国際医師会議)
ジェニファー・アレン・サイモンズ(サイモンズ財団)
アリス・スレーター(地球的資源行動・環境センター)
フェルナンド・デ・ソウサ=バレス(拡散反対技術者・科学者国際ネットワーク)
テリエ・ストクスタッド(核兵器ノー・ノルウェー)
マイブリット・テオリーン(欧州議会議員・地球的行動のための議員の会)
アラン・ウェア(核政策にかんする法律家委員会)
ピーター・ワイス(国際反核法律家協会)
スザンヌ・ピアース(中堅国イニシアチブコーディネーター)
多国間交渉への誓約
核保有国がとるべき、第一の措置としてもっとも重要なものは、核兵器禁止条約による核兵器の廃絶につながる多国間交渉を開始することにより、完全核軍縮へ無条件の誓約をすることである。その他すべての措置は、この目標に貢献するものとして考えるべきである。新アジェンダ連合は、「核兵器のない世界の維持は、普遍的で多国間で交渉された拘束力ある条約、あるいは、相互に強化しあう一連の協定を包含するような枠組みという土台で支えることが必要とされる」と述べている。
しかし、核保有国が今すぐ、一方的もしくは二カ国間で、あるいは多国間でおこなうことのできる暫定的で達成可能な措置もある。これらは世界をより安全にし、また核兵器保有能力をもつ国にたいして責任ある前例を示すことができる。これらの措置のなかでもっとも重要なのは、新アジェンダ連合が強調しているように、すべての核戦力を一発即発的な警戒態勢から解くことである。
警戒態勢の解除
キャンベラ委員会は、1996年8月の報告書で、核弾頭を装備したミサイルの警戒態勢が継続して維持されていることについて、次のように指摘している。
・これは、冷戦時代の態勢と仮定の永続であり非常に遺憾なことである。
・一触即発態勢の危険性を不必要に維持する。
・米ロ関係の正常化の重要な進行を阻害する。
・核兵器がきわめて重要な安全保障上の役割を果たしているとの、明白な、そして軍備管理上の視点からみてひどく有害なメッセージを発している。
・大きく変化しつつある国際的安全保障環境にまったくそぐわない。
報告はまた、「これらミサイルの警戒態勢解除は、1991年後半に実行された、爆撃機からの核態勢解除に相対する当然の措置である」と付け加えている。核態勢を解除することにより、
・偶発的もしくは許可なしの核兵器発射の可能性が大幅に減る。
・核兵器保有国間の政治的機運にもっとも肯定的な影響がおよぶ。
・さらなる協力のための段階を用意するものとなる。
同委員会は、「核戦力を警戒態勢から解いたか否かは、各国の技術的手段と核保有国の査察取り決めにより検証できる。第一段階として、核保有国は一方的に警戒態勢の縮小措置を採用することができる」と述べている。
このようなイニシアチブに当然続くべき第二の段階として、同委員会は、運搬手段から弾頭を外すことを勧告している。弾頭が除去されれば、警戒態勢解除で得られた前進をさらに強化することになろう。同委員会は、利点として次のような点をあげている。
・この措置は、核戦力を、知られているかまたは合意された時間内でのみ再度警戒態勢に編成しうるという範囲で実行でき、これは爆撃機戦力の場合と同様の範囲である。
・核の脅威にたいする相当の反応は残るが、核の大規模な先制使用または奇襲核攻撃の危険性や即座の報復という緊急事態は避けられる。
・不注意または偶発的使用を防ぐ手段が大幅に強化される。
委員会はこれに加え、先制使用に備え核戦力を再び組み立てる能力という点において、いかなる国も優位を握ることができないような体制を作る基礎として、米ロ間にすでに存在する一連の検証手続きが適用できると指摘している。
1991年、リー・バトラー将軍はブッシュ大統領に、自身の司令下にあった戦略司令爆撃機の出撃態勢の解除を勧告した。バトラー氏は後にこう述べている。「その利点は数々あるが、これは説明が容易であり、また物理的に元に戻すことも容易である。しかし、いったん実行されれば、政治的にみて、元にもどすことはきわめて難しいのである」。
クリントン大統領は、最初に標的解除を検討した際、それを警戒態勢の解除のことだと明らかに誤解していたが、誤りを正されるまえに、警戒態勢解除を受け入れた。もっと最近の例では、1997年5月のNATO−ロシア基本文書の調印式の際、エリツィン大統領が同様の間違いをした。このことは、今、冷戦式の抑止ドクトリンを離れ、核兵器の保有とその運搬能力のみに依存する「実在的」抑止の方を選ぶことに広範な支持があるかもしれないことを示している。
最近おこなわれた英国戦略防衛見直しで、英国政府は、トライデントの最高警戒態勢を解除したと発表した。しかし、ミサイルから弾頭を外し、それらを検証可能な貯蔵管理の下におくことは拒否している。
非戦略核兵器の配備をやめる
新アジェンダ連合が要求しているように、核保有国は、一方的措置としてすべての非戦略核兵器を配備地点から撤去し、自国領土内の限られた数の安全な貯蔵施設へ移すべきである。この措置は、米ソが1991年におこなった一方的宣言の論理的延長線上にある。この宣言のなかで、両国はそれぞれ、艦船に積載されている非戦略核兵器を陸地に移動することを誓約している。
キャンベラ委員会は次のように述べている。「北大西洋条約機構(NATO)にかんして言えば、ワルシャワ条約解体とそのあとに続くすべての出来事により、この同盟がこれまで危惧してきた核の脅威は消散した。西ヨーロッパに配備されているアメリカの戦術核兵器は、すでに安全保障上の目的にかなうものではない。それどころか、これらの核兵器は、ロシアはまだ信用ならぬ、という微妙ながら紛れもないメッセージを発しており、したがって、NATOはロシアに侵略的意図を抱いている、という恐れを助長しているのである。これらの核兵器を米国領土に戻して貯蔵すれば、警戒態勢から外された戦略核兵器のように、直ちに再配備することはできない」。とはいえ、このような行動をとるためには、米ロ両国がそれぞれ潜水艦に積載している非戦略核弾頭装備巡航ミサイルの撤退も条件となるであろう。
先制不使用
新アジェンダ連合はこう述べている。「法的拘束力をもつ協定文書が、核保有国による共同先制不使用誓約について作られるべきである…」。NATOの核保有国およびロシアは、中国に習い、いかなる状況下でも核兵器を先制使用しないとの誓約をおこなうべきである。これまでのところ、NATOは、核兵器は、圧倒的な通常兵器による攻撃への反撃として必要になるかもしれないという理由で、先制不使用の誓約を拒否している。ロシアの方にも今や、NATOの通常兵器が優位にあるという、同じ口実がある。こうなると、とりわけ国際司法裁判所の勧告的意見に照らせば、最初に行動をとるべき責任はNATOの側にあるということになる。
しかし、先制不使用の合意ができても、核兵器が使用される脅威はなくならないことを認識しなくてはならない。紛争となれば、核兵器を持った敵は、自分の相手が先制不使用などという約束を守るのか疑うかも知れず、あるいは、核攻撃への反撃のつもりで誤って先制使用をするかも知れない。こうしたことから、先制不使用は、警戒態勢の解除と共におこなわれ、そのあとすぐ解体、廃絶へとすすまなければならないのである。
強化措置
新アジェンダ連合は、以下にあげた核保有国がとるべき措置のほとんどを提案に取り入れている。こうした措置は、即時行動としてこれまで推薦してきた諸措置を実行する過程で確立される責任、成果、親善のしっかりとした基盤の上に築かれることになる。
・非戦略核兵器を配備からはずすという1991年の一方的宣言を、法的拘束力をもつ核
廃絶条約へと変える。
・「消極的安全保障」(核をもたない国にたいし、核保有国は核兵器を使用しないとい
う誓約)にかんする拘束力のある合意を結ぶ。
・貯蔵核兵器の大幅削減。
・すべての核兵器と兵器級分裂性物質の登録制度の確立。
・すべての分裂性物質を国際管理下に置く。
・すべての核兵器研究、設計、開発、実験、製造を止める。
・核兵器のない世界のための検証取り決めを発展させる。
こうした方法は、1996年8月に「28カ国グループ」が軍縮会議で提案した「核兵器廃絶のための行動計画」の内容と似ている。
1996年10月、マレーシアが国連総会に提出した決議案は、国際司法裁判所の意見、とりわけ、すべての国は核軍縮の交渉をおこない終了する義務があるとした全員一致の結論に注目したものであった。この決議は、核兵器の開発、製造、実験、配備、貯蔵、移動、威嚇もしくは使用を禁止し核兵器の廃絶を規定した、核兵器禁止条約の早期締結につながる多国間交渉を、1997年中に開始することを求めたものであった。
ニュージーランドは、この決議は「核兵器を禁止する条約という最終目標にむけての中間的措置の計画を…考慮にいれている」と述べた。「28カ国グループ」の計画と同様、マレーシア決議は、このような軍縮措置を孤立して扱うのではなく、核兵器の廃絶につながる進行中の計画の一部とすることを構想したものであった。しかしながら「28カ国グループ」の計画と違って、マレーシア決議は、講じられるべき措置を特定せず、その完了の期限も定めていないため、核保有国にかなりの柔軟性を与えたものである。
もっとも重要な点は、同決議が、核兵器廃絶のための国際体制において何が必要とされるのかについて注目を集めたことである。この提案に応え、コスタリカは、国連事務総長に、核兵器廃絶条約のモデルを提出した。これは、実際の世界的条約を達成するために検討すべき法的、技術的、政治的問題を示したものであった。このモデルは国連文書として、検証可能で強制力ある核廃絶体制にかんして出されている制度上の疑問点のいくつかを解消するものとなるであろう。
このような目標を定めた上で多国間交渉を開始するということは、核保有国が、核軍縮に負っている義務にたいする誓約をどうしたら一番いい方法で示せるか、ということになろう。この開始するという行為そのものが――交渉がどれほど長くかかるか、あるいは何が合意されるかに関わらず――核軍縮へむけての政治的勢いを復活させることになる。核兵器開発能力をもつ国々は、インドがおこなったように、廃絶への前進がないことを指摘することで自国の核兵器保有を正当化するようなことはできなくなるであろう。
中堅国イニシアチブの当初の計画は、冷戦時代の陣営とは無関係の、それぞれの大陸で核軍縮分野での業績を残し影響力をもつ中堅国政府による新しい連合体の結成を促進し、その連合体と共に核保有国が核兵器依存をやめるよう援助するというものであった。その後、1998年6月9日、この計画とはまったく別のところから八つの中堅国の外相が新アジェンダ連合を結成し共同声明を発表した。この大胆かつ勇敢な行動は、中堅国イニシアチブが目標としていた第一段階を、予期したより一年近く早く実現するものであった。
新アジェンダ連合への支援
共同声明の内容は、中堅国イニシアチブが提案している点までは至っていないものの、新アジェンダ連合は、期待を抱かせるスタートを切った。中堅国イニシアチブの目下の課題は、したがって、新アジェンダ連合による、核軍縮の行きづまりを打破する運動、とりわけ、即刻とるべき第一の措置として全核戦力の警戒態勢解除の要求を支援することにある。しかしながら、ミドルパワーズ・イニシアチブの主たる目標は、核兵器廃絶条約の調印につながる多国間交渉の開始を追求することにある。そのほか以下のような点を目標にしている。
・ 重要諸国から、新アジェンダ連合の支援をとりつける。
・ とりわけ新アジェンダ連合諸国と核保有国の意思決定にかかわる人びとの支持を生み出すためのセミナー開催。
・ マスコミの認識を高める。
・ 世論の動員。
前述したように、この過程は中間的諸措置も考慮に入れており、完全核軍縮への交渉の道筋にしっかりと位置づけられている。このような枠組みが、新アジェンダ連合が核兵器廃絶条約を最終目標として話し合うことを可能にしている。この枠組はまた、すべての国が軍縮措置の交渉に加わり、包括的核実験禁止条約に調印し、批准さえしうる共通の基盤を提供している。要するに、核兵器廃絶条約の締結という要求と、実践的な段階的前進をとっていくという要求は、互いを強化しあう戦略でこそあれ、相反したり排除しあうものではない。この方法は、マスコミと世論の、また政治的な関心をかなり集めうる可能性をもっているであろう。
核保有国は、原則では核兵器の究極的廃絶を誓約している。核廃絶という目標を達成するまでの道のりは、明らかに測り知れぬ複雑さをともなう。そこで、検証や遵守といった懸念への具体的解決策を示すため、また、交渉の出発点として核兵器廃絶モデル条約が役立つのである。
問題の核心はなにか
新アジェンダ連合の挑戦は、対人地雷による惨害にたいしよせられた世論とマスコミの支援に匹敵する支援に値し、また、それを必要としている。核兵器にたいする無関心さは、たいていの場合、核の脅威が地雷よりも危険なのに、見えないところに隠されていることから生じている。地雷で失われた手足は一目みて判るが、核兵器実験や核兵器工場から漏れた放射線によるがんや遺伝的奇形は分かりにくく、核兵器を病気の直接的原因として断定することは難しい。
同様に、海中の潜水艦や厳重な防衛体制の下にあるサイロに核兵器が配備されていることで、「去る者は日々に疎し」的な心理状態を生み出される。よって、世論は圧倒的に核廃絶を支持しているにもかかわらず、こうした問題の見え難さにより、核保有国は核をなくす義務を回避し易いのである。
中堅国イニシアチブは、したがって、核の脅威をより分かりやすくすることの緊急の必要性にマスコミの目をむけさせることによって人びとの支援を得ることをめざす。具体的には、次のような点があげられる。
・ 何千回(とくに、アメリカ、太平洋、オーストラリア、カザフスタン)もの核実験による死傷者。
・ 固有の、将来の世代にわたって蓄積される影響を含む核兵器の本質、核兵器を一触即発の警戒態勢の下に置きつづけることの不合理な危険性、小型核兵器の爆発でさえ起こる唖然とするほどの被害。
・ 現在の核抑止政策の非道義性、違法性、無責任さ。
中堅国イニシアチブはまた、こうした情報に核兵器の意思決定者らの目をむけさせることを重視する。抽象的な戦略や政策への彼らの関心は、とくに広島、長崎の恐怖から彼らが疎外されている今、核兵器のもたらす物理的現実、とりわけ、大規模な核爆発があれば数分内に何万人もが死ぬという可能性にかんして、目をふさいでいる。
なぜ緊急なのか
事態が緊急を要する理由としては、以下の点があげられる。
・ 人間はかならず誤りを起こすものであり、核兵器の応酬は究極的には避けがたいこと。
・ このような応酬は、周知のとおり、文明を破壊する。
・ 行動を起こすことが緊急に求められる理由は、私たちがいま―おそらくそう長くは続かないであろう―大規模な世界的紛争の中休みの時期にあり、そのため国内的にも国際的にも、行動する政治的条件が存在するからである。
核軍縮の行きづまりやインドとパキスタンによる実験は、迅速かつ大胆な行動を今まで以上に強く求めている。
中堅国イニシアチブは、破滅へと漂いながら核の現状を維持する危険性と、核兵器のない世界でおこりうる抜け駆けの危険性とを比較してみた。いま核保有国が有する計画では、最悪のケースは全面核戦争である。他方の危険性というのは、核兵器が化学兵器や細菌兵器のように禁止されたもとで起こりうる、核兵器の限定的使用の危険である。だから、問われている質問は、核兵器のない世界は望ましいかではなく、現在の核保有国の政策よりも非核の世界が好ましいかどうかである。上述した理由により、その答は圧倒的に「イエス」である。
「核のノート」
ロバート・S・ノリス、ウィリアム・M・アーキン
(天然資源防衛協議会)
(『ブレティン・オブ・アトミック・サイエンティスツ』1998年11/12月号より)
最後に『判明している世界各地の核実験』の最新情報(1996年5/6月号『核のノート』参照)を発表して以来、数度の実験がおこなわれ、いくつかの国の核計画にかんする追加情報が入手できるようになった。1945〜1998年の間に七カ国がおこなった2,051回の実験を表にまとめたが、そのうちの85%をアメリカとソ連が占めている。ほぼ26%の実験(528回)は、大気圏内で実施された。
55ページ〔注:『情報資料』上のページ〕に、(核不拡散条約が認めた)公然核保有五カ国およびインドとパキスタンによるすべての実験を完全に網羅しているとわれわれが確信する一覧表を発表する。次ページの表はインドとパキスタンの核実験にかんするいくつか予備的な情報である。
アメリカとソ連(ロシア)が採用している1回の実験の定義(直径2キロの範囲内で0.1秒以内に起爆される1回あるいは2回以上の爆発を実験1回と数える)を適用するなら、1998年5月のインドの実験回数は3回で、パキスタンは2回である。以下論じるように、インドとパキスタンの実験で使用された爆発装置の正確な数と正確な爆発数は明らかでない。何が起こったかを正確に決定づけるには、さらに多くの情報が必要とされる。
| 日付 | 世界時 | 経緯度数 | 爆発威力(推定値) | |
| インド核実験 | 1974/5/18 | 02:34:55 | 北緯27.095東経71.752 | 2〜5Kt |
| 1998/5/11 | 10:13:44 | 北緯27.078東経71.719 | 12Kt*(9〜16Kt) | |
| 1998/5/11 | 10:13 | ? | ?* | |
| 1998/5/13 | 06:51 | ? | ?** | |
| パキスタン核実験 | 1998/5/28 | 10:16:17 | 北緯28.830東経64.950 | 9Kt***(6〜13Kt) |
| 1998/5/30 | 06:54:06 | 北緯28.495東経63.781 | 4Kt(2〜8Kt) |
| 大気圏 | 地下 | 計 | |
| アメリカ | 141.0 | 38.0 | 179.0 |
| ソ連 | 247.0 | 38.0 | 285.0 |
| イギリス | 8.0 | 0.9 | 8.9 |
| フランス | 10.0 | 4.0 | 14.0 |
| 中国 | 21.9 | 1.5 | 23.4 |
| インド | ― | 0.014 - .017 | 00.014 - .017 |
| パキスタン | ― | 0.014 - .017 | 00.014 - .017 |
| 計 | 427.9 | 82.428 - .434 | 510.328 -.334 |
公然核保有五カ国がはじめて成功させた近代的水爆実験は、1.6メガトンから10メガトンをこえる爆発威力を伴なうものであった。そのすべてが、1950年代と60年代に大気圏内でおこなわれた。ただし、この間アメリカとソ連は、数メガトン級の実験を地下でもおこなっている。
技術的には、高爆発を伴う水爆の二段階目の爆発を10〜20キロトンに縮小する、あるいは「燃料を低量化する」ことは技術的には可能である。しかし、これは精密さを要する過程であり、最初の(そして可能性としては最後の)熱核実験で試みられるようなものではない。また、1998年5月11日の実験で観測された爆発威力に相当するような、きわめて低い二次的爆発威力をもつ二段階式熱核兵器を設計することも可能である。
しかし、観測された爆発威力が、実験に使用された12キロトン「核分裂装置」というインド発表の爆発威力とかなり符合するという事実を前にすると、こういった潜在的可能性についての説明は無効となる。入手できる証拠からすると、二段階目の熱核爆発、あるいは熱核爆発装置全体が爆発に失敗したというのが、もっとも単純な説明である。しかしながら、これにはいく通りかの説明が可能であり、これ以上の情報なしに正しい結論に達することはできない。
インドの発表によると、5月13日には実験があと2回実施され、爆発威力は0.2キロトン(200トン)と0.6キロトン(600トン)だったという。これらの実験は、核の基準に照らせば小規模だとはいえ、地域の地震計のなかには記録を残している地震計があってもよいぐらいの規模ではある。しかし、記録はされていなかった。データを公開している観測所のなかで最もインド核実験場に近いのは、核実験場から750キロメートル離れたパキスタンのニロール観測所である。
これに先立つこと5月11日の実験で記録された信号対雑音比によると、ポカランでの爆発にたいするニロール観測所の探知能力の限界は、たいていの地質における通常の「組合せの」爆発なら10〜15トン、インドの報道機関による5月13日の事件の記述にあった「砂丘」のような、非常に多孔性の(かつ乾燥した)地帯における爆発では、おそらく100〜150トンと計算される。たとえ後者の「衝撃が一部吸収された」シナリオだったと考えても、今回主張されている600〜800トンの爆発威力であれば、ニロールで観測できるだけの信号が生じたはずである。
この実験にかんする地震観測記録が欠如しているということは、実際の爆発威力が計画よりかなり低かったか、あるいは、発表された爆発威力が、――核爆発装置の初期段階の性能についてのコンピューターモデルを測定し確認するために故意に低くしておこなった――実験の真の目的について外国の観察者を混乱させ誤解させることを意図したものだったかのどちらかであることを示している。5月11日の実験の場合、インド側からのさらなる情報なしには、これらの爆発でどのような目的が達成されたのか、それとも一回目は成功したのか、あるいは本当に二回とも爆発があったのか、いかなる確信をもって述べることも難しい。
アメリカ ソ連 イギリス フランス
中国
年 A U
A U A U
A U A U
計
1945 1 0
0 0 0 0
0 0 0 0
1
1946 2 0
0 0 0 0
0 0 0 0
2
1947 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
0
1948 3 0
0 0 0 0
0 0 0 0
3
1949 0 0
1 0 0 0
0 0 0 0
1
1950 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
0
1951 15 1
2 0 0 0
0 0 0 0
18
1952 10 0
0 0 1 0
0 0 0 0
11
1953 11 0
5 0 2 0
0 0 0 0
18
1954 6 0
10 0 0 0
0 0 0 0
16
1955 17 1
6 0 0 0
0 0 0 0
24
1956 18 0
9 0 6 0
0 0 0 0
33
1957 27 5
16 0 7 0
0 0 0 0
55
1958 62 15
34 0 5 0
0 0 0 0
116
1959 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
0
1960 0 0
0 0 0 0
3 0 0 0
3
1961 0 10
58 1 0 0
1 1 0 0
71
1962 39 57
78 1 0 2
0 1 0 0
178
1963 4 43
0 0 0 0
0 3 0 0
50
1964 0 45
0 9 0 2
0 3 1 0
60
1965 0 38
0 14 0 1
0 4 1 0
58
1966 0 48
0 18 0 0
6 1 3 0
76
1967 0 42
0 17 0 0
3 0 2 0
64
1968 0 56
0 17 0 0
5 0 1 0
79
1969 0 46
0 19 0 0
0 0 1 1
67
1970 0 39
0 16 0 0
8 0 1 0
64
1971 0 24
0 23 0 0
5 0 1 0
53
1972 0 27
0 24 0 0
4 0 2 0
57
1973 0 24
0 17 0 0
6 0 1 0
48
1974 0 22
0 21 0 1
9 0 1 0
55*
1975 0 22
0 19 0 0
0 2 0 1
44
1976 0 20
0 21 0 1
0 5 3 1
51
1977 0 20
0 24 0 0
0 9 1 0
54
1978 0 19
0 31 0 2
0 11 2 1
66
1979 0 15
0 31 0 1
0 10 1 0
58
1980 0 14
0 24 0 3
0 12 1 0
54
1981 0 16
0 21 0 1
0 12 0 0
50
1982 0 18
0 19 0 1
0 10 0 1
49
1983 0 18
0 25 0 1
0 9 0 2
55
1984 0 18
0 27 0 2
0 8 0 2
57
1985 0 17
0 10 0 1
0 8 0 0
36
1986 0 14
0 0 0 1
0 8 0 0
23
1987 0 14
0 23 0 1
0 8 0 1
47
1988 0 15
0 16 0 0
0 8 0 1
40
1989 0 11
0 7 0 1
0 9 0 0
28
1990 0 8
0 1 0 1
0 6 0 2
18
1991 0 7
0 0 0 1
0 6 0 0
14
1992 0 6
0 0 0 0
0 0 0 2
8
1993 0 0
0 0 0 0
0 0 0 1
1
1994 0 0
0 0 0 0
0 0 0 2
2
1995 0 0
0 0 0 0
0 5 0 2
7
1996 0 0
0 0 0 0
0 1 0 2
3
1997 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
0
1998 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
5**
計 215 815 219 496 21 24*** 50 160 23 22 2,051
* 1974年のインドの実験を含む。
** 『インドとパキスタンの実験:実験と数値』参照。
***イギリスの核実験はすべてアメリカで実施された。
<脚注>
核のノート(Nuclear Notebook)は、天然資源防衛協議会(Natural Resources
Defence Council)のロバート・S・ノリスとウィリアム・M・アーキンが執筆した。質問の宛先は、同協議会(NRDC)まで。住所:1200
New York Avenue, N.W., Suite 400, Washington, D.C., 20005 電話:202-289-6868。
(『ブレティン・オブ・アトミック・サイエンティスツ』誌1998年11/12月号より)