原水爆禁止2003年世界大会
国際会議

ニュージーランド
アオテアロア・ニュージーランド平和評議会名誉議長
ジェラルド・オブライエン



  イギリスのブレア首相は7月17日の米国議会での演説で、歴史はアメリカとイギリスに寛大であるだろうといいました。

  私はそうは思いません。なぜなら文明は、理性の時代あるいは法の支配によって獲得したものを失ってしまい、まだその代償を支払っていないからです。

  アメリカとイギリスが、世界を弱肉強食の時代に逆戻りさせ、人類の250年にわたる社会進歩を投げ捨ててしまった、あの先制攻撃と脅迫でいったい何をしたのか、その全容を社会進化論の典型的な例として、歴史は必ずや見とどけるにちがいありません。

  歴史は、人類が、国連やその議定書や条約による保護を失い、法の支配による法的制約も、人類の期待という道義的制約も失い、ついに全くの無防備な状態に陥ってしまったことを見とどけるでしょう。

  世界の自由な人民にふさわしく、全員の繁栄と社会正義をめざし、人類の共有財産である、これまで受継がれてきた地球の資源を、全員の利益のために管理することをめざしている諸国人民として私たちが行動しないかぎり、私たちの地球は、人間らしい道義はおろか動物としての道義すらもちあわせていない人々の手中にある、大量殺戮の兵器のなかでも最も犯罪的な核兵器・原子爆弾によってあらゆる生命が支配されるという、不当で野蛮極まりない状態におかれ、死に瀕したあわれな惑星になりさがってしまうでしょう。

  私たちは今こそ国連を守り抜くことに全力で取り組まなければなりません。国連憲章の賢明さこそが、再び息を吹き返し獰猛に暴れ回っているグローバル化した帝国主義の強欲から法と平和を守るための、これまで世界が集団でつくりだしえた唯一の手段だからです。

  私たちは、国連を、グローバル化した帝国主義の極めつけの戦略が、人類を瀬戸際にまで追い詰めているにもかかわらず、ただ黙って傍観しているだけの事務局や、曖昧な態度で何事も後回しにするような人々の手から、再び人民の手に取り戻さなければなりません。

  したがって、歴史は戦争遂行者に寛大であると考える人々への私たちからのメッセージは、生命を奪うこと、生命を脅かすことが将来の世代から好意的に見られるだろうという彼らの考えを私たちは決して共有するものではないということになるでしょう。

  今年の原水爆禁止世界大会は、かなり以前から予想され、いまや明確になった新たな環境のなかでひらかれています。この環境は過去50年の外交のあらゆる見せかけや欺瞞を全て陵駕するものです。私は、この世界大会がこれらの問題を全て取上げることを確信しています。今後の課題、すなわちこの世界大会の国際会議宣言がだした結論を実行することは容易ではなく、全面的な努力を必要としていることは明白です。

  今から82年前、現在の国連の前身である国際連盟は、軍備にかんする第一委員会の報告で、軍備管理をおこなわないことから生じる6つの重大な危険を指摘しました。これらの危険の多くは、戦争がおこなわれることによって武器の生む利益が増大することにかんするものです。私たちは皮肉にも、この6つの危険のひとつ、偽りの報告を流布することで戦争開始を正当化するという危険を、今になって確認することになりました。

  しかし、そもそも当時の国際連盟には、兵器企業が世界で最も強大な国の政府を牛耳ることになる日がくるとは、考えられもしなかったのです。

  現在はどうなったのか、国際連盟とその後を継いだ国連のもとで発展してきた人類の期待が今どのようになっているのかを見てみましょう。いまだ自由を愛する人々が新しい企業経営者階級から権力を奪うこともなく、平和と正義の世界の展望も失われてしまっています。

  法の支配は真っ向から攻撃を受け、その存続のために世界の人民が立ち上がるのを待っています。大量破壊兵器をめぐるごまかしは、よみがえった帝国主義の隠れ蓑にすぎません。しかし、これら恐怖の兵器の最大の保有国であり最大の拡散国を非難することは決して許されないのです。骨抜きにされたメディアの操作によって、議論は、世界にとっての安全保障ではなく、帝国主義とその担い手であるグローバリズムの推進者たちにとっての安全保障に限定されてしまっています。

  戦争や侵略を禁止するために設立された世界的機関である国連の責任者たちは、無数の人々の命を奪い、さらに奪い続けている違法な戦争や、国連憲章を踏みにじり、国際条約やニュルンベルク裁判の判決を無視した戦争にたいして沈黙し、その役割を果たすことができませんでした。

  戦争犯罪法廷は、完全に一方的な立場からつくられた機関であり、その他の裁判機関も、アメリカ大統領やアメリカの衛星国の同盟者たちの行動にはいかなる力ももたないといわれています。

  世界は、国際法と正義の遵守を無視する世界最大の超大国であり、最大のならず者国家である国とその衛星国から脅威を受けていると感じるあらゆる国によって、もはや相互確証破壊によってしか自分たちの国家を守ることができないという論理が世界的各地で復活するという恐るべき状態に陥ってしまったのです。

  実際、アメリカがNPT(核不拡散条約)第6条に違反して続けている小型核兵器開発は、罰せられることも、査察を受けることもありません。クラスター爆弾や劣化ウラン弾の開発・製造も同様です。

  そのため、アメリカに脅されている多くの小国は、核武装を急ぐことが、自分たちの国を守る唯一の道であると考えるようになり、世界は50年前に逆戻りしてしまいました。

  このように、広島・長崎の原爆犯罪以降、核兵器をはじめとする大量破壊兵器の全面禁止を求めた国連の第1号決議にもとづいてこの世界大会が50年近くにわたって訴えてきた要求は、いま、かつてなく緊急なものになっています。

  これを実現することは、私たち全員につきつけられた課題であり、全ての国の政府の課題であるべきです。ニュージーランド政府は、ジュネーブのNPT再検討会議準備委員会で、現在、水平拡散に重点がおかれるあまり、垂直拡散という本質的な問題がないがしろになっていると指摘しています。

  小国による大量破壊兵器保有ばかりがいつも問題視されるのは、アメリカがなんの制約をうけることもなくすすめている垂直拡散から生じる人類生存にたいする不吉な差し迫った危険から意図的に注意をそらすことが狙いです。1973年、ニュージーランドのノーマン・カーク首相(当時)は国連演説で、大量破壊兵器は「権力を握るようになったが、責任のない人々の手中にある」と言いました。彼らが責任を負うのは株主たちに対してだけなのです。

  アメリカは、世界最大の核兵器をはじめとする大量破壊兵器の保有国であり、その開発を続けています。それにもかかわらず、アメリカの大統領は、小国の核兵器の保有や開発計画を犯罪とみなし、これらの国たいして戦争をするに十分な理由であると考えているのです。

  アメリカは、第一撃攻撃で核兵器を使用するつもりだと言われていました。そして実際に先制攻撃を行いました。また、アメリカは民間人にたいして核兵器を使用した唯一の国ですが、いまでも露骨に攻撃的で、他に核保有国があるかぎり脅かされかねないアメリカの利益、つまりアメリカの企業の利益を守るために、核兵器を使用すると脅し続けています。

  アメリカは、過去50年間、毎年、戦争をしてきました。「レクサスとオリーブの木」の著者トム・フリードマンが書いたように、市場の隠れた手は、隠れた拳がなければ決してうまく機能しないのです。フリードマンは、マクダネル・ダグラス社がなければマクドナルドは繁栄できないし、シリコン・バレーのテクノロジーのために世界の安全を守っている隠れた拳は、アメリカの陸軍、空軍、海軍、海兵隊であると書いています。これらの後ろに邪悪な核兵器が潜んでいるのです。

  軍隊と警察は、いぜんとして支配者階級である企業が、その利益を強要する手先機関になりさがっています。また、こんにち「スピン」とよばれ、ゴベル博士がプロパガンダとよんだものは、いわゆる諜報機関が作りだしたもので、なんの批判もなく受入れられ、企業の共通の利益にかなっているためおそらくは信じられ、それが戦争遂行の口実に利用されています。

  これは紛れもなく「少数者すなわち少数の大企業のために、全員が奉仕する」という統治イデオロギーであり、1944年に発表されたある米陸軍資料ではファシズムとよばれたものに他なりません。

  インドの作家アルンダティ・ロイは数ヶ月前にこう書いています。  「われわれにはアメリカのもう一つの兵器―自由市場―が、こわばった厳しい顔で発展途上国にのしかかってくるのがはっきり見える。決して終らない任務とは、アメリカの完璧な戦争であり、アメリカ帝国主義の果てしない拡張の完璧な媒体なのだ」。

  幸いにも、アメリカ国内には健全性と名誉を重んじる声があります。願わくはその声が、ベトナム戦争の際そうしたように、現在起こっていることを止めてくれるかもしれません。私たちは、かれらのたたかいと連帯しなければなりません。なぜなら一つの国の国民の魂をかけたたたかいが、文明を守るたたかいとしての国際主義をこれほどはっきりと示したことはかつてないからです。

  私たちの任務は、自由で平和を愛する非核の政府を世界中につくり、社会正義、平和、人類の進歩を全て破壊しようとしている、傲慢な悪を追い払うことです。

  ニュージーランド政府は、国内のNGOの支持をうけて、さまざまな取組みのイニシアチブをとっています。ニュージーランド平和評議会のデズ・ブロー議長は、国内最大の軍縮NGOである全国軍縮協議委員会の議長として指導的な役割を果たしています。

  軍縮大臣マリオン・ホッブスは、新アジェンダグループを再び活性化するために、国連軍縮局の役員とNGOにたいし、共同して現在の垂直拡散に反対して行動するための会合をもつよう働きかけ、会合が実現することになっています。また彼女は南アフリカと共同で南半球非核地帯設置を検討しており、その実現のためには、操作された海洋法によって押し付けられている制約を保留して、統一行動をする必要があると考えています。もしこれが実現すれば、重要な前進になるでしょう。すでにある非核兵器地帯は、キューバがトラテロルコ条約に加盟したことで、ラテンアメリカ・カリブの非核地帯は完成しているため、南半球非核地帯を補完することになります。またラロトンガ条約、バンコック条約、ペリンダバ条約の批准も、この過程をすすめるうえで非常に重要です。

  ニュージーランドは国内のNGOの支持をうけて、劣化ウラン弾とクラスター爆弾を無差別効果をもつ兵器として、その使用停止を求め、小型兵器の管理を重視させようとしています。軍縮大臣は、ウェリントンにある、日本原水協から贈られた「広島・長崎平和の火」の前で行われる広島記念式典に参加することになっています。

  ニュージーランド政府は、ホッブス軍縮大臣をつうじて、NPTによって核保有国が約束した法的拘束力ある安全保障の確認を求めており、NPTに加盟する非核保有国にたいする核兵器使用および使用の威嚇を禁止する条約の草案を提出する予定です。これらの措置は、他のいくつかの措置とともに、アメリカが他の国際条約から離脱したことを十分認識したうえでおこなわれるものです。

  ニュージーランド政府は、この世界大会で私たちが認識していると同じように、世界の人民には、核兵器とその正当性、保有と使用の可能性を含む大量破壊兵器にかんして国連安保理の常任理事国がおこなった声明には拘束力があり、これらの兵器を違法とし、その完全な廃絶を急ぐという拘束力のある確認であるとみなすことができると認識しています。

  もはやこれ以上核保有国が、二重基準や二枚舌や策略を使うのを許していることはできません。

  しかし、私たちはこのような外交上の手段を尊重しつつも、それと同時に世界平和の維持機関である国連と、その国連に何がおこっているかを綿密に検討し、国連が衰退し人類の唯一の希望を破壊してしまうことを阻止しなければなりません。

  諸国人民を、北朝鮮、イラン、シリア、リビアなどの国々を不当に追及するという誤った道に進ませるかわりに、私たちは全力を傾けて、戦争こそこれらの国を武装解除させる道だと主張する核保有国自体を武装解除しなければなりません。一致して行うことはできないでしょうが、私たちが世界レベルで核保有国にたいする制裁を実施し、使用できる法的メカニズムを全て使用することはできます。たとえそれが好核勢力に全く無視されたとしても、私たちは彼らの利益に打撃を与えるだけの状況を作り出すことができるでしょう。

  それ以外の選択肢はないように思われます。外交だけに依存していた過去の50年は、核保有国の嘲笑を買っただけで、何も生み出しませんでした。ニュージーランド政府はこれまで18年間非核政策を維持してきましたが、先に紹介した軍縮大臣のジュネーブの準備会議での発言のように、いまや半ばあきれ果てています。

  ニュージーランドには、国民の95%以上が支持する、政府とNGOとの国民的な協力があります。これが人口400万人の国で実現できるのなら、もっと大きな国でもそれができ、それによって平和を否定する権力者たちを武装解除するに必要な数の政府をつくることができるでしょう。

  私たちは、そのような道を緊急に見つけなければなりません。怒りや抗議だけでは、アメリカ企業の敵とみなされた国にたいする第一撃の必要性を説き実行する侵略の権化を止めるには、不充分です。

  ユーゴやアフガニスタンにたいする戦争、そして今回のイラク戦争は、グローバル化新自由主義の仕業です。私たちは1930年代におこなわれたライン地方、オーストリア、チェコなどへの侵攻計画の再現を目の当たりにしてきました。そして私たちは、この次に、ブレア首相がいったような北朝鮮にたいする計画的な侵略がおこれば、かつてのポーランド侵略と同じようにそれが発端となって世界大戦に拡大することを恐れています。

  最近の3つの戦争につながった粗雑な戦術、うそやごまかし、プロパガンダ、そして議会も政府も実際には戦争をする理由を見つけることができなかったが、秘密警察がすべてをでっちあげたと告白されたことに、人類の将来を案じて身震いがする思いです。

  戦争はこんにちのプロパガンダのいうように利他精神から戦われたことは一度もありません。戦争は常に商売のため、資本の利潤のために戦われ、今回はグローバル化した資本の無謀さによって戦われたのです。

  ブッシュ大統領は、諸国政府や国連の非難を受けることもなく、侵略戦争を企てたことにたいし国際戦争犯罪法廷で裁かれることもなしに、国連憲章や1930年代の犯罪の繰り返しを避けるために過去50年間に苦労してつくられた重要な協定の遵守という約束をアメリカに破らせた張本人です。それにもかかわらず、自分のおこなった戦争が「これまでつくられた最も殺人的な兵器」「大量殺人の道具」をイラクから剥ぎ取るためであったのだから、自分と同盟者の行動を認めるようにと世界に要求しているのです。

  帝国主義諸国の集まりであるG8サミットは、エビアン会議の声明で、「国際安全保障にたいする恒常的な脅威は、核兵器の拡散である」と主張しています。私たちは、そうではない、核兵器の拡散ではなく存在そのものが脅威なのだと言っています。世界の民主主義、政府ではなく人民は、一握りの金権政治家たちの金儲けのために、数千人の罪もない人々の殺戮を引き起こした卑怯で下劣なうそや二枚舌やごまかしの数々にますます強く反発しています。しかもその金権政治化たちは、いかなる国際戦争犯罪法廷からの召喚も、賄賂を使って逃れているのです。しかし最近の出来事に照らしてみれば、裁判などするまでもなく、真相は圧倒的に明白です。

  民主主義が自己主張を始め、腐敗した指導者たちへの追及が強まっていることで、大量破壊兵器、特に核兵器が、地球上の生命に対する最大の脅威であり、これらの醜い兵器を大量に保有しているのが、国際安全保障にたいする恒常的な脅威をもたらしている国々に他ならないという認識が高まるかもしれません。

  大量破壊兵器の保有が、その保有者と決めつけられた者にたいする戦争の口実として使用されたいま、世界の世論を動員し、国際条約によって、あるいは核保有国にたいして国際的な制裁を実施することによって、全ての国に大量破壊兵器を廃棄することを要求しなければなりません。

  人類は、これ以上「これまでつくられた最も殺人的な兵器=大量殺人の道具」と共存することはできません。

  世界から核兵器をなくすことは私たちの義務です。核兵器が原因の負傷、病気、障害、生き地獄、死はいずれも、核保有国によって引き起こされたものであり、他の国がひきおこしたものではありません。いかなる国も、いかなる国家も、いかなる政治制度も、自己を維持するために大量殺戮をおこなう権利はありません。私はそう信じています。私たちは日本のみなさんとともにたたかいます。私たちは、日本憲法に敬意を表するとともに、それを守る人々を尊敬します。そして私たちは、被爆者にたいする正義を求める人類の要求を支持することを、ここに再び誓うものです。

ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ。
どうもありがとうございました。がんばりましょう。


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