原水爆禁止2003年世界大会
国際会議

原水爆禁止日本協議会 事務局長
高草木 博


被爆60周年へ
世界平和のルールをまもる草の根の力を結集し、核兵器も戦争もない世界を

  イラク攻撃に見られるように、ブッシュ政権による「先制攻撃」の戦略は、いま世界に新たな危険をつくりだしています。しかし、他方で私たちは、無法な覇権追求が、これまでにない大きな抵抗に直面していることも目の当たりにしました。世界の主要都市で、何百万もの人びとが街頭に出て、条件に応じて形は違っても、7割、8割の人びとが武力行使に反対し、問題の平和的解決を要求しました。一方的な戦争を禁じ、国際紛争の平和解決を定めた国連憲章上のルールが侵されようとしたとき、世界の人々はみずからの行動を通じてその前に立ちふさがりました。
  日本原水協は、この世界大会が、つくりだされている「平和のルールをまもれ!」の多数世論を合流させ、核兵器も戦争もない世界をめざす地球的流れを、さらに発展させるものとなることを願っています。

  討論の最初に、私もまた、イラク攻撃に反対する世界諸国民のたたかいから教訓を引きたいと思います。
  イラク攻撃が強行された後、主要なマスコミでは、圧倒的な力をもつ米国の前には、結局「国連も無力であった」、「平和運動は挫折を免れ得なかった」といった論調がくり返し流されました。 確かに、米英の軍事攻撃の力は圧倒的なものでした。世界の軍事費全体の半分を使う米国が、12年の経済制裁で疲弊し尽くしたイラクに襲いかかったわけですから、結果がどうなるかは明らかなことでした。しかし、では、国連や平和運動が果たした役割は本当に無意味だったのか? 大事なことは、イラク攻撃が、戦争を主張した側の孤立と国際政治上の敗北の結果としておこなわれたことを直視することだと思います。
  事実、査察を通じた問題解決の可能性が明らかになる中で、米英の孤立は議論を重ねるごとに明らかになりました。ブッシュ大統領は戦争を強行した側を、くり返し「連合軍」と呼んでいます。しかし、それが国連安保理事会にも承認されず、国連加盟国の中でも2割に満たない少数派で、世界の世論に糾弾され、当のアメリカやイギリスや、この日本の世論の中でも圧倒的少数派の孤立した戦争であったことは明らかです。人類が到達した国連中心主義、国際紛争の平和解決は世界の主要な流れであること――ここに第一の教訓があると思います。

  第二に、イラク攻撃を軸に展開された米国の「先制攻撃」戦略のなかで、核・非核の敷居を限りなく低めるその核戦略は、核兵器が現実に使用される重大な危険性をつくり出しています。同時に私たちは、だからこそこの戦略もまた、新たな反発とブッシュ政権の孤立を促していることも見る必要があります。今年4月、NPT再検討会議準備委員会でも新たな核使用の危険に対し、非同盟諸国、新アジェンダ諸国から強い批判が加えられ、期限を切った核兵器廃絶の必要性があらためてつよく主張されました。さらに、非核保有国をも核攻撃の標的とするこの政策に対し、カナダ政府が批判を加えるなど、アメリカの同盟国にも新たな亀裂がうまれていること、また、イラクの「大量破壊兵器査察」とこの努力を破壊した米英の態度に対して、査察を通じて真摯に解決を求めた人たちからも、「査察は、拡散に反対する世論とともに、最終的には核兵器廃絶をねがう世論に支えられた」(ブリックスUNMOVIC委員長−当時)など、核兵器廃絶につながる新たな批判が生み出されています。

  第三に、イラク問題をめぐる、こうした世論と国際社会の大勢にもかかわらず、日本政府は、対米追随を第一とし、イラク開戦の1時間後には、「アメリカは『日本に対する攻撃を自国に対する攻撃とみなす』と明言している国であり、米国を支持しないわけにいかない」と言明しました。 こうして対米追随のためには国際正義も日本国憲法をも投げ捨てる小泉政権が、その支持率の急落に対応するため、ブッシュ政権からの知恵と情報を求めながら、新たな「脅威」を必死になって探しました。
  こうして、日本政府は、国際紛争の解決手段としての武力行使を禁じた憲法九条をじゅうりんし、アメリカの戦争に日本社会を動員する有事法制を強行し、今また、イラクへの自衛隊派兵法を強行しました。しかし、当初多数を占めたイラクへの派兵支持の世論がいまや圧倒的少数に減っていることに見られるように、「偽り」の理由による戦争はけっして長い間、国民の支持を得られるものではありません。私たちは、日本政府が憲法と非核三原則に即して、核兵器の廃絶とアジアの平和にこそ貢献すべきことを強く要求しています。

  北朝鮮の核開発についていえば、日本原水協はどの国によるものであれ、新たな核兵器開発には絶対に反対です。北朝鮮による核兵器の開発は、北東アジアと世界の安全にとどまらず、みずからの安全をも脅かすことは明白です。同時に私たちは、核保有国、とりわけアメリカの先制攻撃戦略、核攻撃戦略こそ、他の国に核兵器開発の衝動を強めさせる基本的な要因となっていることを直視し、先制攻撃と核使用脅迫をやめるよう要求し、すべての当事国に問題の平和的解決をはかるよう求めるものです。

  みなさん、
  4月、NPTの準備委員会におくったメッセージでコリン・パウエル国務長官は、「ある国がNPTから脱退し、別の国は秘密裏に核施設を作り、さらに他の国は核分裂物質を入手しようとしている」などと述べ、核拡散の危険をつよく警告して、「いまこそ行動のとき」と呼びかけました。そのとおり、行動が必要です。しかし、もし拡散の危険があるのなら、求められる行動は核脅迫でなく、核兵器を全面的に禁止することです。 他方、このメッセージを読み上げたジョン・ウォルフ国務次官補は、「大多数の国はNPTの義務を誠実に履行している」とも述べています。 もし、こちらが事実であれば、まさに、その大多数が非核国としてみずからに条約上の義務を課している今こそ、アメリカは全面禁止に動くべきではありませんか?

  イラク攻撃とそれに対する諸国民の行動をへて、世界の一人ひとりの行動こそ歴史を動かす原動力、との確信が生まれています。そのうえに国際政治とそれぞれの国の両面で、核兵器廃絶の力をさらに圧倒的に強めるために、私はひとつの提案をしたいと思います。それは、この国際会議参加者が、広島・長崎の被爆60周年の年、2005年に向けて、今日の情勢にたったあらたな核兵器廃絶の署名運動を発足させ、圧倒的な世論をつくり上げることです。
  1954年、ビキニ水爆実験に抗議する3400万の署名が、この原水爆禁止世界大会をつくり出し、1985年から日本国民6000万の署名、「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」が、「核兵器廃絶」の世界的世論を生み出したように、この署名の高まりが、この21世紀、真に人類に核兵器も戦争もない平和な世界を約束することを確信して、私の発言とします。


原水爆禁止2003年世界大会へ