原水爆禁止2002年世界大会

広島 閉会総会

プラフル・ビドワイ

武力を持たず、武力に反対する親愛なる同士のみなさん、

インドの平和運動よりご挨拶申し上げます。

かつてインドはブッダ、マハトマ・ガンジー、そして非暴力の地として知られていました。

今日、インドはパキスタンとともに、「世界でもっとも危険な場所」となり、核の大災害が起こりうる国となってしまいました。現在、インドとパキスタンの国境では、完全武装した100万人の部隊が駐留しています。これは第二次世界大戦以来、世界でもっとも大きな軍事動員です。

かつて非同盟運動の先頭に立っていたインドは、現在ではアメリカの追随者となってしまいました。ブッシュ大統領のスターウオーズ戦略をいちばん最初に支持した国でした。

つい最近までインドは、多くの異なる民族、宗教、文化が多元的共存、宗教分離主義、寛容のなかで暮らす国の先頭に立っていました。これが、他の国にはないインド独自のアイデンティティーを形成していました。今日インドは、多数派の暴力と民族宗教間の憎しみが猛威をふるっています。グジャラートでの、ヒンズー原理主義による2,000人のイスラム教徒虐殺がそれを示しています。

同じ原理主義勢力によって、インドは50年も続いた核政策を転換し、1998年に核実験を強行しました。これらの勢力は、インドの27もの政党の寄り合い所帯を率いる人民党の中で圧倒的多数派を占めています。

インドのエリートとアメリカ政府はこの原理主義勢力を支持しています。そしてエリートたちは核兵器を好んでいますが、国民は彼らを嫌っています。

4年前にCNNで報道した映像を信じないでください。核実験を歓迎する動きはちっぽけなものでした。もっと大きな抗議行動がまさにその週に行われていたのです。

その抗議行動は、知識人、労働組合、農民連合、芸術家、フェミニスト、環境保護者、その他貧しい大多数の人々によって支持され、力強い平和運動へと成長しました。

核兵器をつくることは、社会的、経済的、そして政治的に損害を招くものであることを、インドの人々は知っています。インドとパキスタンは、両国とも最貧国です。国民の30%が一日150円以下で生活しています。

核兵器が製造されるたびに、核搭載機が購入されるたびに、ミサイル実験が行われるたびに、何百もの学校は閉鎖され、何千もの村の病院は消えてゆくのです。

核兵器でもうけるのは、軍国主義者、多数派の原理主義者とヒンズーのネオファシストだけです。核兵器は彼らの虚栄心、誤った「国家の威信」感覚と、世界支配への近道の欲望にあおります。そして国民を犠牲にするのです。

核兵器は、インドとパキスタンの安全保障にとってむしろ有害です。両国をいっそう不安定で、非民主的で、疲れはてた、危険な状態にしたからです。

核兵器を擁護する人々は、核兵器がインド・パキスタン関係に「安定」と「成熟」をもたらし、通常兵器による戦争を防止すると言います。

しかしインドとパキスタンはそれぞれの核実験から1年もたたないうちに、カシミールのカルギルで、大規模な通常兵器による戦争を行いました。これは二つの核保有国による史上最大の紛争でした。

彼らはカルギル戦争中、13回核で脅しあいました。これらの脅迫は入念な準備をした上でのことです。

インドとパキスタンは一触即発の状態にあることをあらためて指摘したいと思います。それは、インドがアメリカの暴力的な「反テロ」戦争をまねようとしているからです。

南アジアの核危機は、3年前よりむしろ深まっています。世界が見てきたように、南アジアは半世紀にわたり激しい冷戦が続いてきた地域です。二国とも核兵器を持ち、その使用を計画しています。過少評価してはならないのは、災害にしばしば見舞われるこの二国で偶発的で独断による核の使用がありえると言うことです。

インド・亜大陸の平和運動に携わるものは、核の危険性を減らす唯一の道はインドとパキスタンの非核化であると信じています。

これは、アメリカがインドを中国にたいする目下(めした)の同盟者とみなしているうちは、またパキスタンを反タリバンの協力者とみなしているうちは、たやすいことではありません。

私たちは、どうしても非核化を実現しなければなりません。私たちは南アジアの戦場で戦っています。しかし、私たちは世界中の平和運動の支援が必要です。

日本のみなさんは、この点で特別の立場にあります。みなさんは世界でただひとつ核攻撃を受けた国だからです。いまこそ、南アジアに広島と長崎が繰り返されるのを阻止する力になってください。

みなさんは私たちがたたかいを強め、勝利するよう、励ましてくれています。私たちは必ずや勝利するでしょう。