原水爆禁止2002年世界大会

国際会議宣言

(1)この半世紀余、人類の生存と平和を願う世界諸国民の運動は、核戦争を防ぎ、核兵器廃絶の世界的な合意をつくりだしてきた。「新アジェンダ」諸国や非同盟諸国の努力により、核不拡散条約(NPT)再検討会議ですべての核保有国が核兵器廃絶の「明確な約束」に合意し、国連総会でも核兵器廃絶交渉の開始を求める決議が採択されるなど、国際政治の場でも重要な前進を生みだしてきた。

 この一年、世界は、「9.11」テロと報復戦争という悲しむべき事態を目撃した。これを契機とした核大国アメリカによる核兵器使用の新たな企てが、世界に深刻な脅威をもたらしている。核保有国となったインド・パキスタン間の軍事緊張の高まりにも危惧が広がっている。地球上には、いまなお3万発の核兵器が存在し、人類の生存を脅かしている。核兵器の使用を封じ、核兵器廃絶の約束を実行させることは、21世紀のいまを生きる人々の共通の課題である。

(2)アメリカ政府は、核兵器廃絶の声に逆らい、覇権を求めて、核兵器の先制使用をもくろんでいる。ブッシュ政権は、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約の破棄、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准拒否、ミサイル防衛計画の促進などの新しい核政策をうちだし、絶対的な核戦力の優位をうちたてるとともに、非核保有国を含む7カ国への核攻撃を想定した有事計画の策定や、地下施設を破壊するための小型核兵器の開発などをすすめている。本来、国際社会の一致した努力で解決すべき「テロ」「大量破壊兵器拡散」の問題を口実に、国際法や国連憲章などの諸原則も踏みにじって、核兵器使用を含めた先制攻撃の準備をすすめている。

 国連では、毎年、核兵器使用は「人道に対する犯罪」であるとして、その禁止を求める決議が採択され、国際的な合意となっている。アメリカを含む国連安全保障理事会でさえ、「核兵器を使用するいかなる侵略も、国際の平和と安全を脅かす」と述べ、核兵器を持たない国々の安全を保障することを決議している。米政権の新しい方針は、こうした国際的な約束をも捨て去るもので、アメリカの同盟国も含め、全世界の政府と人々から非難と憂慮の声があがっている。

 また、国境紛争をかかえた印・パ両国は、核兵器使用の危険性をはらみながら軍事的対立を深めており、その平和的解決が切実に求められている。

(3)核兵器廃絶は、広島・長崎をくりかえさず、世界平和と人類の生存のために、ますます緊急の課題となっている。特定の国による「一国支配」を許さず、民族自決、主権平等、紛争の平和的解決など、国連憲章に定められた平和秩序を確立するうえでも、この実現はきわめて重要である。

 われわれは、核保有国に要求する。核兵器先制攻撃政策を放棄し、不使用を宣言せよ。新型核兵器の開発、ミサイル防衛計画、核実験の再開をはじめ、あらゆる核軍備の増強、核戦争態勢の強化を中止せよ。すべての核保有国は、核兵器廃絶の約束を実行せよ。

 われわれは、国連と各国政府が、核兵器の廃絶が核兵器の使用を防ぐ「唯一絶対の保証」であるという合意を想い起こし、核兵器全面禁止・廃絶国際協定を実現するために、ただちに行動することを求める。そのために世論と運動をつよめることを、世界のすべての人々によびかける。

(4)被爆国・日本では、政府首脳が、米政権の先制核攻撃政策を「選択肢の一つ」と容認し、「核兵器をもたず、つくらず、もちこませず」という「非核三原則」の見直しにさえ言及するなど、許しがたい事態が生まれている。日米軍事同盟のもとで、沖縄をはじめ日本各地に100カ所余りもある米軍基地は、「テロ対策」を理由にした先制攻撃戦略の最前線基地とされている。日本政府がすすめようとしている有事法制は、この戦略に日本を組み込み、自衛隊の海外での武力行使に道を開くものであり、国民の大きな反撃を受けている。

 核兵器廃絶を訴え、戦争への動きに反対し、憲法第9条を守ろうとする日本国民の運動の前進は、世界の反核・平和運動を発展させるためにも、国際的責務となっている。

(5)原爆が広島と長崎にもたらした惨禍と、今日なおつづく被爆者の苦しみは、核兵器使用の非人間性を告発し、核兵器は廃絶する以外にないことを教えている。いま核兵器使用の新たな危険が強まるなかで、多くの原爆被爆者や、核実験など核開発に伴う世界各地の被害者が、補償や援護施策の改善を求めてたたかいながら、その痛苦の体験とねがいを伝えようと決意を新たにしている。この思いをしっかりと受けとめ、連帯をさらにつよめ、原爆被害と世界の核兵器被害の実相を人々に知らせるため、証言活動や原爆展など創意あるとりくみを全世界ですすめよう。

(6)20世紀から21世紀へ、反核・平和の世界の流れは大きく発展している。戦争と核攻撃の企てを許さず、核兵器廃絶の展望を開くため、思想、信条、宗教、国籍の違いをこえた諸国民の世論と運動を広げよう。核兵器廃絶を求める諸国政府との協力を広げよう。「核兵器の使用を許すな、核兵器を廃絶せよ」を共通の要求として、全世界で、署名をはじめ多様な行動にとりくもう。

われわれは、公正・平和・民主主義を基調とする新しい世界秩序をもとめ、飢餓・貧困・対外債務の解決、地球環境の保護などのために努力する諸国民の運動に連帯する。

 われわれは、核の暴力が人類を破局に導くものにほかならないことを知っている。いまこそ、核兵器のない平和な世界を築くため力をあわせて前進しよう。

 ノーモアヒロシマ、ノーモアナガサキ、ノーモアヒバクシャ!

        20028月4日

                                 原水爆禁止2002年世界大会国際会議