原水爆禁止2001年世界大会
長崎・開会総会(8月7日)

駐日バングラデシュ大使
ジャミル・マジッド


  原水禁世界大会・長崎大会の開会総会でご挨拶する機会を与えられ、全人類の死活的にかかわる核軍縮、国際協力・連帯に関する問題についてお話しできることを大変嬉しく思います。核兵器の発明と存続は、基本的には国家および国際的な安全保障に関わる問題です。安全保障は、平和と不可分ですが、広い意味では、発展とも密接に関連しています。安全が保障されなければ平和はありません。また発展がなく、紛争、不満、欠乏の根本原因に効果的に対処できなければ、安全保障はありません。

  核兵器が半世紀以上も存在し続けているという事実は、少なくとも軍事的には、この兵器の保有が安全保障を強化し、戦争を抑止すると考えられているという事を示しています。しかし、このような考え方を支持せず、核兵器の存在は人類にとって脅威であり、その廃絶は全ての人のためになると強く確信している人々もいます。核抑止論者でさえも、原則的には、核軍縮には反対していません。したがって、過去50年以上にわたって、最も明晰な頭脳の人々でさえも頭を悩ませてきた問題は、どうすれば、これら意見の違う人々すべてが受入れることのできる方法で、核軍縮を達成できるのかということです。核兵器は、権力と特権と権威の道具であり、安定と安全保障を確保するために必要であるとする考え方と、このような兵器は、人類の生存にたいする脅威であるとする考え方があり、問題は両者の溝を埋めることです。

  この問題がすぐ解決されたり、奇跡がおこることは期待できないかもしれません。しかし、辛抱強く、熱心に核軍縮という目標に向かって努力することはできます。また、希望を失うこともありません。原則的には、誰もが核兵器の究極的な廃絶には反対していないからです。これは、ゆっくりと急ぐことしかできない分野なのです。

  核兵器保有国は、軍縮が自分たちの利益になることが保証されない限り、軍縮をしないでしょう。したがって、信用と相互信頼を強化するさまざまな活動と、検証を容易にする科学技術の進歩によって、彼らを説得しなければなりません。世界の諸国に、人類には弱肉強食の慣習を捨てる能力があることをわからせなければなりません。世界の善良な男女は、恒久平和、繁栄、幸福という同じ夢を抱き続けています。しかし、平和はいまもなお最も古く、最も実現の難しい人類の要求です。私たちの課題の大きさを過小評価するべきではありません。戦争に勝利し、ノーベル平和賞を授賞したジョージ・マーシャル将軍は、米国陸軍参謀長として1945年米国議会に提出した隔年報告書で、皮肉を込めてこう書いています。「人間が世界平和の問題の解決策を見出せば、それはかつてないほど革命的な人類の歴史のどんでん返しになるだろう」。

  核軍縮は、私たちが追求するべき最も価値のある、もっとも野心的な目標ですが、それでもなお、それだけで完結するわけではありません。それは、すべての国と人民の平和、安全保障、発展、繁栄というより大きな枠組みの一部でしかないのです。これらは、人間の条件の互いに関連し、結びついている側面です。意味のある平和とは、誰も除外されることのないプロセスでなければなりません。

  この大きな枠組みにおいて、核軍縮は最も重要な要素あるいは要因であることは確かです。そして最終的には核軍縮は必ず達成されるでしょう。しかし、この問題には、理想主義よりも、現実主義をもって対処しなければなりません。もちろん理想は、人々に意欲を与えるものであり、理想を見失ってはなりません。理想とは、そのために努力する人々を導く目印です。また、これは、政府のみが関わるべき問題ではありません。NGO、NPO、市民社会も死活的で建設的な役割を果たさなければなりません。目標に向かう進歩の速度は、これら異なる主役たちが、自分たちの役割をどれだけ成功裏に、一生懸命に果たすかに大きく左右されるでしょう。核軍縮は、一晩では実現できないでしょう。しかし、そのための努力とエネルギーを、平和的に、真摯に、決意をもって維持していかなければなりません。


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