原水爆禁止2000年世界大会
国際会議
 

ノルウェー
核兵器ノー
事務局長
ウーレ・コプレイタン
 
 

核兵器の実情


 1970年、核兵器不拡散条約が25年期限で発効しました。1995年、条約は無期限に延長されました。この条約は核保有国が、自らの核兵器を法に従って廃絶すると約束した唯一の条約です。無期限延長後の初めての再検討会議が、今年ニューヨークで4月24日から5月19日まで開かれました。

 核軍縮は1995年以来、ゆきづまり状態にあります。フランスとイギリスは現有核兵器を若干削減しましたが、同時に残存する核兵器を近代化しました。これは、中国をふくめすべての核保有国にあてはまることです。とりわけアメリカは、現有核兵器のいわゆる「安全と信頼性」を確保するための巨大な体制、いわゆる「備蓄核貯蔵管理計画」を進めています。この体制はまた、少なくとも核弾頭の改良と近代化を可能にします。未臨界核実験も、この計画の一端をなすものです。周知のように、ロシアもまたノバヤ・ゼムリャで未臨界核実験をおこなっており、核出力の比較的小さい戦術用核兵器を製造しようとしていると伝えられています。

 ロシアが第2次戦略兵器削減交渉(STARTII)を批准したことは良いニュースで、アメリカとロシアは内内にSTARTIIIについて話し合いをおこなってきました。しかし、ロシアによるSTARTIIフ批准は、ABM(弾道弾迎撃ミサイル制限)条約が不変であることを前提にしているため、STARTIIIが早いうちに締結されるかどうかはまだ確かではありません。さらに問題なのは、アメリカ上院がSTARTIIとABM条約に言及したいくつかの議定書を批准しなければならないことです。これらの議定書は1997年9月ニューヨークで調印されたものです。

 もうひとつ良い知らせは、ロシアが復活祭直前、CTBT(包括的核実験禁止条約)も批准したことです。そうすると、核保有5カ国中、この条約を批准していない国は、アメリカと中国だけとなります。おそらくロシアの批准によって、アメリカと中国にはなんらかのプレッシャーがかかるでしょう。

アメリカの本土ミサイル防衛計画(NMD)は、ロシアや中国の国内だけでなく、大きな関心を呼んでいます。これは、NPT再検討会議の主要問題ともなり、国連のコフィ・アナン事務総長が開会あいさつの中でも次のよう言及しました。

「核軍縮分野において、われわれが直面している最近の課題、本土ミサイル防衛システムを配備しようとする圧力の高まりに目を向けたい。この圧力は、「戦略的安定のかなめ」と呼ばれてきたABM条約を危険にさらすものであり、新たな核軍拡競争、核軍縮と核不拡散の後退につながり、ミサイル拡散への新たな動機を生み出しかねないものである。」

 第6条として知られるNPT条約の軍縮条項は次のこう述べています。
「本条約の加盟国は、核軍拡競争の早期停止と核軍縮に関する効果的措置ならびに厳格かつ効果的な国際管理の下での、全面完全軍縮に関する条約について、誠意をもって交渉を追求することを約束する」。

 これは、核保有国が後悔しているようである義務であり、彼らが軍縮の努力よりも核拡散防止の方に熱心である理由を説明ともなっています。しかも彼らにとって、軍縮とは削減を意味し、廃絶を意味しないようです。核兵器を削減し、近代化し、新たな世界情勢の中で、より効率的にする。核保有国の核ドクトリンは、維持されているか、そうでなければ、更新されています。世界にはいまだに3万近い核兵器があり、その大半はアメリカとロシアに集中しています。そしてこれら両国は、不明な理由により、その中4千発の核兵器をいつでも発射できる最大限の警戒態勢に置いています。

 多くの報告書の中で多くの問題が論じられ、解決策が提案されてきました。キャンベラ報告(1966)、全米科学アカデミー報告(1997)、東京フォーラム(1999)をあげるだけで十分でしょう。

 これら報告書の考え方の多くは、「新アジェンダ連合」(ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、スウェーデン、南アフリカ)が1998年と1999年に国連総会に提出した決議の中に取り入れられました。こうした考え方は、激しい論議を呼び、結果として昨年この決議に反対したのは13ヶ国だけでした。棄権した国には、NATO加盟国のうち14ヶ国が含まれていました。この決議は、間違いなくこの秋にも再提出されるでしょうし、新アジェンダ連合は、NPT再検討会議にも作業文書を提出しています。彼らの要求の中心は、核保有国が核兵器の全面廃絶を実現することを明確に約束することです。まあ中間的措置として、とりわけ次のことを提案しています。
 ・ 核兵器使用の可能性をなくすために、核兵器態勢と核政策を変更する
 ・ 核兵器の警戒態勢レベルを下げる
 ・ 戦術核兵器を削減し、その廃絶に向けて進む
 ・ 現有核兵器ならびに貯蔵する核分裂物質に関する透明性を高める
 
 ジュネーブの軍縮会議(CD)が、核軍縮を交渉する唯一の場です。昨年は、何ひとつ実現されませんでした。実際、1996年以来行き詰まっており、これまでのところ今年も同じ状況です。ある課題についての話し合いを開始するためには全会一致が原則とされています。理論的には、軍縮会議は、核軍縮や、核兵器用分裂物質の製造、宇宙空間における軍備に関する条約について交渉を開始したいのです。しかし、ある課題の交渉を開始するために、ある1ヶ国または数カ国の合意を得ようとすると、これらの国は別の議題も交渉の対象とするように、と強く要求するのです。

 インドとパキスタンが公然と核保有国宣言をしたという事実に世界が憂慮しているのは当然のことです。イスラエル、イラク、北朝鮮などについても憂慮すべきです。しかし、核軍縮問題は核5大国の手中にあるという事実は変わりません。

 彼らが核兵器を維持する限り、他の国も核兵器を所有したいと思いに駆られるでしょう。「核兵器は我々のためにあって、おまえ達のためにあるのではない」という核大国の考えはやめにしなけれなりません。


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