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『核兵器ゼロへの確実な道』
(Fast Track to Zero Nuclear Weapons)
 

中堅国(ミドルパワーズ)イニシアチブ発行
ロバート・D・グリーン著

中堅国イニシアチブとは

 1998年3月に結成された中堅国イニシアチブ (ミドルパワーズ・イニシアチブ) は、核保有国の指導者にたいし、核兵器廃絶に必要な即時とるべき実際的措置と交渉を誓約するよう促すために、国際的な市民団体のネットワークによって確立された。中堅国イニシアチブは、軍縮にかんして良好な態度を公式に示してきた影響力のある「中堅」国を各大陸から選び出し、この目標の達成のために動員するのを促進するものである。中堅国イニシアチブの計画には、セミナー、出版、各国政府や国家間組織、NGOとの協議を通じて、核兵器のない世界を達成する政治的意志を築き上げることがふくまれている。ダグラス・ローチ元カナダ軍縮大使を議長とする国際運営委員会がこのキャンペーンを率いている。中堅国イニシアチブ運営センターは、マサチューセッツ州ケンブリッジにある核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の本部内に置かれている。

共同提唱者
国際反核法律家協会 (IALANA)
国際平和ビューロー (IPB)
地球的責任のための技術者・科学者国際ネットワーク(INES)
核戦争防止国際医師会議 (IPPNW)
核時代平和財団
地球的行動のための議員の会
世界の情況フォーラム
ダグラス・ローチ(元カナダ軍縮大使・核兵器廃絶カナダネットワーク・中堅国イニシアチブ議長)
コリン・アーチャー(国際平和ビューロー)
マイケル・クライスト(核戦争防止国際医師会議)
アラン・クランストン元米上院議員(世界の情況フォーラム)
ケイト・デュース(国際平和ビューロー)
ジョナサン・グラノフ(法律家世界安全保障同盟)
ロバート・グリーン(元英海軍司令官・世界法廷プロジェクト)
デービッド・クリーガー(核時代平和財団)
ラース・G・リンズコグ(スウェーデン核兵器反対医師の会)
ロナルド・S・マッコイ(核戦争防止国際医師会議)
ジェニファー・アレン・サイモンズ(サイモンズ財団)
アリス・スレーター(地球的資源行動・環境センター)
フェルナンド・デ・ソウサ=バレス(拡散反対技術者・科学者国際ネットワーク)
テリエ・ストクスタッド(核兵器ノー・ノルウェー)
マイブリット・テオリーン(欧州議会議員・地球的行動のための議員の会)
アラン・ウェア(核政策にかんする法律家委員会)
ピーター・ワイス(国際反核法律家協会)
スザンヌ・ピアース(中堅国イニシアチブコーディネーター)
 
 

第4章 新アジェンダ連合のリーダーシップ

 核軍縮の過程を核兵器保有国の手に委ねたままでおけないことは、明らかになっている。核不拡散条約の第6条は、核軍縮の交渉と全面完全軍縮の交渉をすべての締約国に義務づけている。国際司法裁判所が確認したように、この二つの要素は互いに依存するものではない。核兵器が文明と地球にもたらす脅威は他にはありえないものであるため、核兵器廃絶が最優先されなければならない。
 
 核兵器保有国の指導者たちは、マンハッタン計画に始まる50年間、財政的、物質的、人的、心理的な巨大な資源を核兵器につぎ込んできたことによる遺産にとらわれ、身動きができないでいる。彼らがこのくびきから脱するには何が必要なのであろうか。
 
 残念なことに、多くの場合、人びとは災害がおきてはじめて行動にでる。ある国家またはあるテロ集団によって偶発的あるいは計算ミスで、もしくは意図的に核兵器が使われたとすると、結果はあまりにも壊滅的であるため、世界の人びとの憤激と恐怖が、核兵器の廃絶へむけた進行速度を勢いづけることが期待される。しかし、われわれの前に立ちはだかる大きな問題は、このような悲惨な事実が起こる前に、いかにして核廃絶への政治的勢いをつくりだすか、ということである。
 
 どの国も一国だけで核兵器保有国を動かすことはできない。核軍縮の危機が深まるなか、核保有国に、彼らの潜在的に自殺的かつ全滅的な核政策を変えるよう説得するには、いくつかの影響力をもつ国々による、一致した努力が必要である。
 
 したがって、中堅国イニシアチブは、冷戦ブロックとは無関係の各大陸からの八カ国で構成された、1998年6月9日の新アジェンダ連合の歴史的発足を歓迎したのである。連合の発足と同時に、この八カ国の外相によって、共同宣言はそれぞれの国―ブラジル、エジプト、メキシコ、アイルランド、ニュージーランド、スロベニア、南アフリカ―の首都において発表された。この宣言は、核兵器ゼロへの確実な道のりを実現する実践的で現実的な計画を提案する前に、核保有国と核保有能力をもつインド、イスラエル、パキスタンの三カ国の両方にたいして勇気ある批判をおこなうものであった。この計画は、当然、核保有国の指導者らが完全軍縮への無条件の誓約をおこなうことから始めている。新アジェンダ連合は、続いて以下のように述べている。
 
 「国際社会は、現情勢が核兵器を永遠に根絶し禁止するまたとない機会をもたらしているときに、核兵器保有が無限の未来にわたって合法とみなされるような見通しを持ったまま、次の千年紀を迎えてはならない。」
 
 核保有国および核保有能力を有する国がとるべき即刻かつ実際的ないくつかの措置を特定したあと、宣言は次のように結んでいる。
 
 「われわれとしては、上記の目標を追求する努力をおしまない。われわれは、核兵器を世界からなくすという目標を達成することをともに決意した。われわれは、『ポスト核時代』をむかえる決然とした迅速な準備を今すぐ始めねばならないことを断固主張するものである。」

多国間交渉への誓約
 核保有国がとるべき、第一の措置としてもっとも重要なものは、核兵器禁止条約による核兵器の廃絶につながる多国間交渉を開始することにより、完全核軍縮へ無条件の誓約をすることである。その他すべての措置は、この目標に貢献するものとして考えるべきである。新アジェンダ連合は、「核兵器のない世界の維持は、普遍的で多国間で交渉された拘束力ある条約、あるいは、相互に強化しあう一連の協定を包含するような枠組みという土台で支えることが必要とされる」と述べている。
 
 しかし、核保有国が今すぐ、一方的もしくは二カ国間で、あるいは多国間でおこなうことのできる暫定的で達成可能な措置もある。これらは世界をより安全にし、また核兵器保有能力をもつ国にたいして責任ある前例を示すことができる。これらの措置のなかでもっとも重要なのは、新アジェンダ連合が強調しているように、すべての核戦力を一発即発的な警戒態勢から解くことである。

警戒態勢の解除
 キャンベラ委員会は、1996年8月の報告書で、核弾頭を装備したミサイルの警戒態勢が継続して維持されていることについて、次のように指摘している。
・これは、冷戦時代の態勢と仮定の永続であり非常に遺憾なことである。
・一触即発態勢の危険性を不必要に維持する。
・米ロ関係の正常化の重要な進行を阻害する。
・核兵器がきわめて重要な安全保障上の役割を果たしているとの、明白な、そして軍備管理上の視点からみてひどく有害なメッセージを発している。
・大きく変化しつつある国際的安全保障環境にまったくそぐわない。
 
 報告はまた、「これらミサイルの警戒態勢解除は、1991年後半に実行された、爆撃機からの核態勢解除に相対する当然の措置である」と付け加えている。核態勢を解除することにより、
・偶発的もしくは許可なしの核兵器発射の可能性が大幅に減る。
・核兵器保有国間の政治的機運にもっとも肯定的な影響がおよぶ。
・さらなる協力のための段階を用意するものとなる。

 同委員会は、「核戦力を警戒態勢から解いたか否かは、各国の技術的手段と核保有国の査察取り決めにより検証できる。第一段階として、核保有国は一方的に警戒態勢の縮小措置を採用することができる」と述べている。
 
 このようなイニシアチブに当然続くべき第二の段階として、同委員会は、運搬手段から弾頭を外すことを勧告している。弾頭が除去されれば、警戒態勢解除で得られた前進をさらに強化することになろう。同委員会は、利点として次のような点をあげている。
・この措置は、核戦力を、知られているかまたは合意された時間内でのみ再度警戒態勢に編成しうるという範囲で実行でき、これは爆撃機戦力の場合と同様の範囲である。
・核の脅威にたいする相当の反応は残るが、核の大規模な先制使用または奇襲核攻撃の危険性や即座の報復という緊急事態は避けられる。
・不注意または偶発的使用を防ぐ手段が大幅に強化される。
 委員会はこれに加え、先制使用に備え核戦力を再び組み立てる能力という点において、いかなる国も優位を握ることができないような体制を作る基礎として、米ロ間にすでに存在する一連の検証手続きが適用できると指摘している。
 
 1991年、リー・バトラー将軍はブッシュ大統領に、自身の司令下にあった戦略司令爆撃機の出撃態勢の解除を勧告した。バトラー氏は後にこう述べている。「その利点は数々あるが、これは説明が容易であり、また物理的に元に戻すことも容易である。しかし、いったん実行されれば、政治的にみて、元にもどすことはきわめて難しいのである」。
 
 クリントン大統領は、最初に標的解除を検討した際、それを警戒態勢の解除のことだと明らかに誤解していたが、誤りを正されるまえに、警戒態勢解除を受け入れた。もっと最近の例では、1997年5月のNATO−ロシア基本文書の調印式の際、エリツィン大統領が同様の間違いをした。このことは、今、冷戦式の抑止ドクトリンを離れ、核兵器の保有とその運搬能力のみに依存する「実在的」抑止の方を選ぶことに広範な支持があるかもしれないことを示している。
 
 最近おこなわれた英国戦略防衛見直しで、英国政府は、トライデントの最高警戒態勢を解除したと発表した。しかし、ミサイルから弾頭を外し、それらを検証可能な貯蔵管理の下におくことは拒否している。

非戦略核兵器の配備をやめる
 新アジェンダ連合が要求しているように、核保有国は、一方的措置としてすべての非戦略核兵器を配備地点から撤去し、自国領土内の限られた数の安全な貯蔵施設へ移すべきである。この措置は、米ソが1991年におこなった一方的宣言の論理的延長線上にある。この宣言のなかで、両国はそれぞれ、艦船に積載されている非戦略核兵器を陸地に移動することを誓約している。
 
 キャンベラ委員会は次のように述べている。「北大西洋条約機構(NATO)にかんして言えば、ワルシャワ条約解体とそのあとに続くすべての出来事により、この同盟がこれまで危惧してきた核の脅威は消散した。西ヨーロッパに配備されているアメリカの戦術核兵器は、すでに安全保障上の目的にかなうものではない。それどころか、これらの核兵器は、ロシアはまだ信用ならぬ、という微妙ながら紛れもないメッセージを発しており、したがって、NATOはロシアに侵略的意図を抱いている、という恐れを助長しているのである。これらの核兵器を米国領土に戻して貯蔵すれば、警戒態勢から外された戦略核兵器のように、直ちに再配備することはできない」。とはいえ、このような行動をとるためには、米ロ両国がそれぞれ潜水艦に積載している非戦略核弾頭装備巡航ミサイルの撤退も条件となるであろう。

先制不使用
 新アジェンダ連合はこう述べている。「法的拘束力をもつ協定文書が、核保有国による共同先制不使用誓約について作られるべきである…」。NATOの核保有国およびロシアは、中国に習い、いかなる状況下でも核兵器を先制使用しないとの誓約をおこなうべきである。これまでのところ、NATOは、核兵器は、圧倒的な通常兵器による攻撃への反撃として必要になるかもしれないという理由で、先制不使用の誓約を拒否している。ロシアの方にも今や、NATOの通常兵器が優位にあるという、同じ口実がある。こうなると、とりわけ国際司法裁判所の勧告的意見に照らせば、最初に行動をとるべき責任はNATOの側にあるということになる。
 
 しかし、先制不使用の合意ができても、核兵器が使用される脅威はなくならないことを認識しなくてはならない。紛争となれば、核兵器を持った敵は、自分の相手が先制不使用などという約束を守るのか疑うかも知れず、あるいは、核攻撃への反撃のつもりで誤って先制使用をするかも知れない。こうしたことから、先制不使用は、警戒態勢の解除と共におこなわれ、そのあとすぐ解体、廃絶へとすすまなければならないのである。

強化措置
 新アジェンダ連合は、以下にあげた核保有国がとるべき措置のほとんどを提案に取り入れている。こうした措置は、即時行動としてこれまで推薦してきた諸措置を実行する過程で確立される責任、成果、親善のしっかりとした基盤の上に築かれることになる。
・非戦略核兵器を配備からはずすという1991年の一方的宣言を、法的拘束力をもつ核
 廃絶条約へと変える。
・「消極的安全保障」(核をもたない国にたいし、核保有国は核兵器を使用しないとい
 う誓約)にかんする拘束力のある合意を結ぶ。
・貯蔵核兵器の大幅削減。
・すべての核兵器と兵器級分裂性物質の登録制度の確立。
・すべての分裂性物質を国際管理下に置く。
・すべての核兵器研究、設計、開発、実験、製造を止める。
・核兵器のない世界のための検証取り決めを発展させる。
 
  こうした方法は、1996年8月に「28カ国グループ」が軍縮会議で提案した「核兵器廃絶のための行動計画」の内容と似ている。
 
 1996年10月、マレーシアが国連総会に提出した決議案は、国際司法裁判所の意見、とりわけ、すべての国は核軍縮の交渉をおこない終了する義務があるとした全員一致の結論に注目したものであった。この決議は、核兵器の開発、製造、実験、配備、貯蔵、移動、威嚇もしくは使用を禁止し核兵器の廃絶を規定した、核兵器禁止条約の早期締結につながる多国間交渉を、1997年中に開始することを求めたものであった。
 
 ニュージーランドは、この決議は「核兵器を禁止する条約という最終目標にむけての中間的措置の計画を…考慮にいれている」と述べた。「28カ国グループ」の計画と同様、マレーシア決議は、このような軍縮措置を孤立して扱うのではなく、核兵器の廃絶につながる進行中の計画の一部とすることを構想したものであった。しかしながら「28カ国グループ」の計画と違って、マレーシア決議は、講じられるべき措置を特定せず、その完了の期限も定めていないため、核保有国にかなりの柔軟性を与えたものである。
 
 もっとも重要な点は、同決議が、核兵器廃絶のための国際体制において何が必要とされるのかについて注目を集めたことである。この提案に応え、コスタリカは、国連事務総長に、核兵器廃絶条約のモデルを提出した。これは、実際の世界的条約を達成するために検討すべき法的、技術的、政治的問題を示したものであった。このモデルは国連文書として、検証可能で強制力ある核廃絶体制にかんして出されている制度上の疑問点のいくつかを解消するものとなるであろう。
 
 このような目標を定めた上で多国間交渉を開始するということは、核保有国が、核軍縮に負っている義務にたいする誓約をどうしたら一番いい方法で示せるか、ということになろう。この開始するという行為そのものが――交渉がどれほど長くかかるか、あるいは何が合意されるかに関わらず――核軍縮へむけての政治的勢いを復活させることになる。核兵器開発能力をもつ国々は、インドがおこなったように、廃絶への前進がないことを指摘することで自国の核兵器保有を正当化するようなことはできなくなるであろう。
 
 

第5章 中堅国イニシアチブ

 中堅国イニシアチブ(ミドルパワーズ・イニシアチブ)は、市民組織の国際的なネットワークで、冷戦時代の考え方から脱するよう核保有国の指導者らを励まし、すみやかに核兵器のない世界へと進んでいくために、課題を慎重に絞り調整された運動である。このイニシアチブは、核兵器の廃絶をめざす「廃絶2000」運動から生れた。

 中堅国イニシアチブの当初の計画は、冷戦時代の陣営とは無関係の、それぞれの大陸で核軍縮分野での業績を残し影響力をもつ中堅国政府による新しい連合体の結成を促進し、その連合体と共に核保有国が核兵器依存をやめるよう援助するというものであった。その後、1998年6月9日、この計画とはまったく別のところから八つの中堅国の外相が新アジェンダ連合を結成し共同声明を発表した。この大胆かつ勇敢な行動は、中堅国イニシアチブが目標としていた第一段階を、予期したより一年近く早く実現するものであった。

新アジェンダ連合への支援
 共同声明の内容は、中堅国イニシアチブが提案している点までは至っていないものの、新アジェンダ連合は、期待を抱かせるスタートを切った。中堅国イニシアチブの目下の課題は、したがって、新アジェンダ連合による、核軍縮の行きづまりを打破する運動、とりわけ、即刻とるべき第一の措置として全核戦力の警戒態勢解除の要求を支援することにある。しかしながら、ミドルパワーズ・イニシアチブの主たる目標は、核兵器廃絶条約の調印につながる多国間交渉の開始を追求することにある。そのほか以下のような点を目標にしている。
・ 重要諸国から、新アジェンダ連合の支援をとりつける。
・ とりわけ新アジェンダ連合諸国と核保有国の意思決定にかかわる人びとの支持を生み出すためのセミナー開催。
・ マスコミの認識を高める。
・ 世論の動員。

 前述したように、この過程は中間的諸措置も考慮に入れており、完全核軍縮への交渉の道筋にしっかりと位置づけられている。このような枠組みが、新アジェンダ連合が核兵器廃絶条約を最終目標として話し合うことを可能にしている。この枠組はまた、すべての国が軍縮措置の交渉に加わり、包括的核実験禁止条約に調印し、批准さえしうる共通の基盤を提供している。要するに、核兵器廃絶条約の締結という要求と、実践的な段階的前進をとっていくという要求は、互いを強化しあう戦略でこそあれ、相反したり排除しあうものではない。この方法は、マスコミと世論の、また政治的な関心をかなり集めうる可能性をもっているであろう。

 核保有国は、原則では核兵器の究極的廃絶を誓約している。核廃絶という目標を達成するまでの道のりは、明らかに測り知れぬ複雑さをともなう。そこで、検証や遵守といった懸念への具体的解決策を示すため、また、交渉の出発点として核兵器廃絶モデル条約が役立つのである。

問題の核心はなにか
 新アジェンダ連合の挑戦は、対人地雷による惨害にたいしよせられた世論とマスコミの支援に匹敵する支援に値し、また、それを必要としている。核兵器にたいする無関心さは、たいていの場合、核の脅威が地雷よりも危険なのに、見えないところに隠されていることから生じている。地雷で失われた手足は一目みて判るが、核兵器実験や核兵器工場から漏れた放射線によるがんや遺伝的奇形は分かりにくく、核兵器を病気の直接的原因として断定することは難しい。

 同様に、海中の潜水艦や厳重な防衛体制の下にあるサイロに核兵器が配備されていることで、「去る者は日々に疎し」的な心理状態を生み出される。よって、世論は圧倒的に核廃絶を支持しているにもかかわらず、こうした問題の見え難さにより、核保有国は核をなくす義務を回避し易いのである。

 中堅国イニシアチブは、したがって、核の脅威をより分かりやすくすることの緊急の必要性にマスコミの目をむけさせることによって人びとの支援を得ることをめざす。具体的には、次のような点があげられる。
・ 何千回(とくに、アメリカ、太平洋、オーストラリア、カザフスタン)もの核実験による死傷者。
・ 固有の、将来の世代にわたって蓄積される影響を含む核兵器の本質、核兵器を一触即発の警戒態勢の下に置きつづけることの不合理な危険性、小型核兵器の爆発でさえ起こる唖然とするほどの被害。
・ 現在の核抑止政策の非道義性、違法性、無責任さ。

 中堅国イニシアチブはまた、こうした情報に核兵器の意思決定者らの目をむけさせることを重視する。抽象的な戦略や政策への彼らの関心は、とくに広島、長崎の恐怖から彼らが疎外されている今、核兵器のもたらす物理的現実、とりわけ、大規模な核爆発があれば数分内に何万人もが死ぬという可能性にかんして、目をふさいでいる。

なぜ緊急なのか
 事態が緊急を要する理由としては、以下の点があげられる。
・ 人間はかならず誤りを起こすものであり、核兵器の応酬は究極的には避けがたいこと。
・ このような応酬は、周知のとおり、文明を破壊する。
・ 行動を起こすことが緊急に求められる理由は、私たちがいま―おそらくそう長くは続かないであろう―大規模な世界的紛争の中休みの時期にあり、そのため国内的にも国際的にも、行動する政治的条件が存在するからである。

 核軍縮の行きづまりやインドとパキスタンによる実験は、迅速かつ大胆な行動を今まで以上に強く求めている。

 中堅国イニシアチブは、破滅へと漂いながら核の現状を維持する危険性と、核兵器のない世界でおこりうる抜け駆けの危険性とを比較してみた。いま核保有国が有する計画では、最悪のケースは全面核戦争である。他方の危険性というのは、核兵器が化学兵器や細菌兵器のように禁止されたもとで起こりうる、核兵器の限定的使用の危険である。だから、問われている質問は、核兵器のない世界は望ましいかではなく、現在の核保有国の政策よりも非核の世界が好ましいかどうかである。上述した理由により、その答は圧倒的に「イエス」である。



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